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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年1月18日(水)

崔栄繁
DPI(障害者インターナショナル)日本会議

6名の子どもたちによるプレゼンテーション

 第3日目となる18日は、会議冒頭、障害のある子ども達(Save the Children)6名によるプレゼンテーションが行われ、その後、前日から始まっていた第12条(法律の前における人としての平等の承認)の続きの審議を行う。午後には第13条の審議を経て、第14条の審議に入り、各国政府等からの意見表明を大方終了するところまで進められた。

第12条 〔法律の前における人としての平等〕

 第12条の審議においては、第2項にある「法的能力(legal capacity)」「行為能力(the capacity to act)」という文言の解釈、サブパラグラフ(a)及び「人格代理人の手続」等について規定している(b)の要否等をめぐり、議論が交わされた。

 「法的能力」「行為能力」については、各国の法律により使用される文言が異なっていたり、各国で使用される言語への翻訳上の問題などが日本や中国をはじめ多くの国から指摘があった。また、2つのサブパラグラフについては、「削除し、『締約国は障害者の法的能力を行使できるようにし、権利が侵害されないようにする』という文に変えるべき」とするカナダ案に対する各国の支持が目立った。

 国際障害者コーカス(IDC)はこれらの議論に対し、「すべての障害者に法的能力、行為能力を認めるようパラダイムシフトすべき」という立場から、人格代理人による意思決定について(議長テキストで)言及されていることに対し、慎重な審議を求める発言があった。

 第12条の議論についてドン・マッケイ議長は、「法的能力の問題についてはより合意に近づきつつあるが、パラグラフの取り扱い等の課題については、さらにインフォーマルに議論を深めてほしい」と提案した。

 前日17日午後の報告でも触れているが、いわゆる法的能力の一部制限(この場合は行為能力)と問題とそれに関連する後見制度について、JDFとしても現実の社会情勢、今後のあるべき姿などを幅広くかつ深度のある議論が必要な部分である。 

第13条〔司法へのアクセス〕

 当初の作業部会草案ではなかったが、日本政府の問題提起によって初めて独立の条文(9条bis)として議論されることになったものである。この条項は、今回のアドホック委員会では、全体的には独立した条文として位置づけることの合意が得られた。ただ、議長テキスト案が簡潔な内容となっていたため、日本やチリ、イスラエルからも「具体的な司法プロセスにおける(合理的)配慮等を明確に言及すべき」等の意見があった。あまりに詳細な内容になることへの懸念もあったが、ある程度具体性を確保すべきという意見をもとにマッケイ議長からも「議長テキストをベースにして、条文の内容をさらに洗練させていく」という方針が示された。

第14条〔身体の自由及び安全〕

 第14条については、各国政府等の意見表明のみでこの日の審議が終了したが、総論的には、身体拘束を例外的には認めることを前提とした議長テキストに対する大方の支持が得られ、障害に関連した拘束を完全に例外なく認めないとする国家はなかった。いくつかの国からはIDCの意見を支持する政府もあったが、それはIDCが打ち出した拘束の完全禁止の部分ではなく、処遇や情報面での合理的配慮を付加したセーフガードの点のみであった。

 各論では各国から意見・要望が多く出され、日本政府も、趣旨を明確にするためと称して、第1項(b)を‘~in no case shall solely / exclusively the existence of a disability justice a deprivation of liberty.’と改めるよう要望した。

 IDCの意見は原則的であるが、各国政府の意見を動かす力を有するには至っていない。かような現状で原則論だけ述べても、例外を少なくすることはできず、かえって現状に対するセーフガードを緩やかにする方向でしか機能していない現実を直視すべきであろう。