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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年1月20日(金)サイドイベント「世界の難聴者、中途失聴者の求めること」

高岡 正
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

 1/20、13:20から国連カンファレンスルーム9号室で、「世界の難聴者、中途失聴者の求めること」と題したサイドイベントが開催されました。 サイドイベントとは、国連が障害者の権利条約の審議を促進するものとして、公式に開催されるものです。

 したがって、参加者は権利条約の審議に加わっている政府代表、各NGO障害者団体の方々です。関係者も含めおおよそ40名程の参加でした。 今回のサイドイベントには、国連日本政府代表部のご後援が得られたことで、鈴木誉里子首席事務官の開会のご挨拶を頂いた他、外務省、法務省、内閣府の担当官もご出席されました。

 カナダ政府のスティーブン・ヒル氏、スウェーデン政府代表など集まった各国の政府代表者、RI(リハビリテーション・インターナショナル)の大御所トーマス・ラグウォール博士や世界ろう連WFDのリサ・カウピネン代表、各組織の参加者にもIFHOHのメンバーに も、日本政府及び日本の統一的障害者組織JDFが難聴者問題を重視していることが、強く印象づけられたのではないかと思います。 会議は、デューガンIFHOH理事長の場慣れたスピーチで進行され、話された英語と日本語が同時通訳され、壁の一面の左側に英語の字幕、右側に日本語の字幕が表示されています。

 デューガンIFHOH理事長からIFHOHの設立の経過と活動の目的、WHOや国連と密接な関係を持ちながら活動していることが説明されました。IFHOHは傘下の組織、アンブレラが広がっているというのも印象に残りました。 全難聴の瀬谷国際部部長が力作によるDVDで「難聴者、中途失聴者の要望」が上映され、音声がないこともあり、10分あまりの英語と日本語の字幕の付いた映像を皆注視していました。

 文字情報、文字通訳、補聴援助システム、読話など、生活に密着したシーンの連続で終わると、参加者から期せずして拍手が起きました。 スウェーデン難聴者協会会長ジャン・ピーター・ストローグレン氏がろう者団体とも協力して、ラオスの病院に駐在して、難聴者への教育、啓発活動を行っていることがスライドで紹介されました。

 IFHOHと密接な関係を持つ耳鼻科医の国際組織ヒアリング・インターナショナルHIも会長が鈴木淳一帝京大学名誉教授が代表を勤められていますが、インドネシアに対して難聴予防プロジェクトを実施しています。日本はもっとアジアにこうした支援を強める必要があると感じました。

 当事者の体験談として、全難聴の清成幸仁氏が、失聴当時から現在に至るまでの経験を会場に響き渡る声で堂々と発表しました。その口調は言葉はわからなくても、デューガン理事長が自殺を考えた人が今アクティブに活動しているのに感銘したと話されたように、参加者にインパクトを与えました。

 質疑応答では、南アフリカの参加者のろう文化という言葉があるが、難聴者の文化のとらえ方の質問、カナダ政府の大学の文字通訳体制の質問、アメリカの失聴した後も文字通訳の保障を受けて看護士になりたいという意見等に、デューガン理事長、高岡、長瀬修先生 がそれぞれ答えました。この質疑応答の最中に、今回の国連の会議にも磁気ループの用意ができることが報告され、そうした反応もサイドイベントの成果です。 まとめでは、高岡は難聴という障害がどうして理解されにくいのか、4点説明し、世界の難聴者、障害者が協力して取り組もうと呼びかけました。権利条約との関わりをもう少し詳しく説明すれば良かったと思いましたが、長瀬先生がJDFの立場で、サイドイベントの開かれた意義、文字情報は健聴者にも役に立つこと、国連の特別委員会に英語だけでも字幕を出すことは、難聴者の問題を権利条約の条文に反映させる上でも、審議を深めるためにも大いに有効だなどと説明をして頂きました。

 デューガン理事長は、日本政府、JDF、通訳者などに丁寧な謝辞を述べられ、国連で始めてのサイドイベントが終わりました。

 会議後も、デューガン理事長と鈴木首席書記官、バーバラワレンクIFHOH副理事長も、ピーター会長、カナダ代表と長瀬先生などあちこちで意見交換や交流が行われていました。 サイドイベント直後のアドホック委員会の第21条の情報へのアクセスに関わる部分で、カナダ代表の文字情報、文字通訳に関する発言があり、このサイドイベントは実際の条文の審議に大きな影響を与えました。日本政府も同様の趣旨の検討をされていました。