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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年1月26日(木)

JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

会議の様子

 この日は先日の続きで、第27条の労働条項の議論の続きから審議入りした。午後は、午前からの継続で、第28条の審議における各国政府・NGOによる発言から始め、第29条の審議をスピーディーに完遂し、第30条の審議に入ったところで終了した。


○第27条(労働及び雇用)の議論(昨日からの続き)

 昨日の報告と重なる部分があるが、この日の27条の審議で問題となったのは、開かれた一般の労働市場ではないシェルタードワークショップ(sheltered workshop)といった代替雇用形態の扱い、現在そうした雇用形態で働く人たちの保護、障害女性の保護といったジェンダーの問題、積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)の扱い、といったことが挙げられる。

 代替雇用については、イスラエルが、新しいパラグラフ(j)として「代替雇用形態から開かれた労働市場(open labour market)への移行を進めるためのすべての可能な措置を取る」を新しく創設すべきであるという案を出した。これには、ILO(国際労働機関)などが賛成している。また、ILOや国内人権委員会の代表からは、現在そうした雇用形態にいる人たちを保護すべきであるということを書き込むべきだとの意見が出された。また、代替雇用の明文化に賛成する国と反対する国があった。明文化に反対の理由としては、社会権規約7条を引き合いに出して、すべての人に保障されている労働の権利の水準を低くしてしまうというものがある。EUなどがこの立場である。

 積極的差別是正措置については、条文内での規定を望む声が多かった。

 また、ケニアなどの国からは強制雇用、奴隷労働についての言及を求める意見が上がった。これにもILOやIDCは賛成している。

 また、IDCからは職場での非差別条項が大切であるという意や、開かれたな労働市場で障害者の雇用が保証され支援された雇用が保証されるべき、代替雇用を認めれば社会権規約をないがしろにするという意見や障害女性の権利の保障を求める意見が出された。

 結局議長は、文言としては、公的部門については草案どおりであり、代替的雇用形態の概念を捉える文言を各国で検討することになった。また、ターゲットや雇用割当制度を入れるという意見があったが、現在の草案でバランスが取れているとした。

○第28条(十分な生活条件及び社会保護)の議論

 本条は基本的に議長草案が支持されたといってよい。

 社会保護(social protection)と、社会保障(social security)という言葉をめぐった議論がされた。これに関しては、社会保障に変えるべきであるという意見がかなり多く出された。また、ロシアからの「貧困削減戦略」という文言を「貧困削減プログラム」にすべきという意見が出され多くの賛成があった

 また、本条は貧困との関連の深い内容を含んでいるだけに、「清浄な水へのアクセス」等、とりわけ開発途上国における障害のある人への社会保護、環境整備に焦点を当てた発言が目立っていた。「清浄な水へのアクセス」については、日本政府は反対したが、多くの国がこのまま条文に残すことに賛成した。

 このほか、「障害のある人への年金制度について条文内で言及すべき」とするコロンビア案への支持発言が続いた。マッケイ議長はこの件について、さらにインフォーマルな議論を深めるよう求めた。

○第29条(政治的及び公的活動への参加)の議論

 条文の構成及び内容については、各国政府からほぼ全体的な支持が得られた。条文案中の文言の加筆修正等が主な論点となった。

 パラグラフ(a)の柱書きについて、"~ including the right and opportunity of persons with disability to vote and be elected INTER ALIA by"のように、INTER ALIA という文言を加えるべきとする国際障害コーカス(IDC)案に対し、カナダをはじめ多くの国から支持が集まった。

 また、意見が分かれたのが、パラグラフ(a)の柱書きにある「一般に適用のある国内法」という記述に関し、連邦制を採用している国々を中心に「適用法」等の表現への置き換えを求める意見が目立った。

 次に、パラグラフ(a)の(ii)にある「秘密投票を通じて投票する権利」。イエメン、中国、イラン等が秘密投票に関する文言削除を要望したのに対し、アメリカ、日本、ジャマイカ等が文言の保持を主張。マッケイ議長は、引き続きインフォーマルな議論を求めたが、その他の国から削除要望は出なかった。ちなみに秘密投票については、自由権規約で規定されている。

 また、障害のある有権者への情報提供・入手をアクセシブルにするため「選挙キャンペーン」にあたっての情報保障について追加規定すべきとの提案がチリからなされた。チリ提案に対してはブラジル等も支持を表明したが、「選挙キャンペーン」自体の意味が具体的でなく幅広く解釈し得ることから、採用されるかどうかは微妙である。

○第30条(文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加)の議論

 本条の審議開始時間は、この日の会議終了時間の15分前だったため、数か国が発言しただけに止まり、翌日(1月27日)午前の会議で続きが行われることになった。

 しかし、パラグラフ4にある、障害のある人が権利として有する「文化的・言語的アイデンティティ」の例示として挙げられている「手話及びろう文化」について、中国政府から削除を求める発言が飛び出した。翌日以降の会議で主要論点化するかは不透明な情勢だ。