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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年2月1日(水)

JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

午前

会場の様子

 2月1日は、障害のある女性と子どもに関するファシリテーターズ・グループにおいて検討され、アドホック委員会に提出された「ファシリテーターズ・テキスト」をベースにした議論が進められた。


☆ファシリテーターズ・テキスト☆

「障害のある子ども」
http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc7docs/ahc7faart7.doc

「障害のある女性」
http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc7docs/ahc7fawomen.doc

 冒頭、前日に会議時間の都合で延期された障害のある子どもの条文に関するファシリテーターズ・ミーティングに加わっていたケニア代表・ジョセフィン氏から、ファシリテーターズ・テキストに関するステートメントが行われた。その後の午前中の審議は、EU、ロシア、中国、ニュージーランド等18か国政府代表による発言のみで終了したが、1か国あたりの発言時間が各国とも他の条文審議より長めだったため、日本や韓国等の発言は午後に持ち越された。

 議長テキストでは空白となっていた第6条(障害のある女性)・第7条(障害のある子ども)について、ファシリテーターズ・テキストでは具体的な条文案が示されたが、第6、7条とも独立条項化を図るか、第4条(一般的義務)や前文の中に第6、7条の要素を規定することで独立条項化を行わずに済ませるか、あるいは、ツイントラック・アプローチ(第4条だけでなく他の条文でも規定した上で、第6、7条を設けて独立条文化する)を図るかが、議論の大きな焦点となった。なお、ファシリテーターズ・グループは、いずれの方法でも柔軟に対応する姿勢を示している。

 午前中に発言した国の中では、独立条項化(第6、7条の設置。ツイントラック・アプローチも含む)に賛成した国はロシア、オーストラリア、タイ、ノルウェー、メキシコ、カナダ、イスラエル等。逆に反対した国はEU、セルビア、ヨルダン、イエメン、ニュージーランド、ボスニアヘルツェゴビナ等で、ほぼ二分された状況となっている。この点についての第7回委員会会期中の全体合意は難しい情勢となったものの、障害のある女性と子どもについて、障害者の権利条約の条文内にしっかりした形で盛り込んでいくことに対する異論は聞かれていない。

 また、各国からの発言内容は、具体的な文言修正や特定のパラグラフの要否に関するものが多く、また、女性差別撤廃条約や子どもの権利条約で使用されている文言との一貫性を問う意見も目立っていたが、全体としては、ファシリテーターズ・テキスト自体への基本的な支持は、ほぼ得られている感触だ。

午後

 午前の議論の続きを行った。また、この日4時くらいに避難訓練が突然行われ、1時間ほど審議が中断した。国連ビルの中にいる人全員が外に警察の誘導で退避させられた。先を急ぐマッケイ議長が不機嫌になったのは言うまでもない。

 独立条項設置に賛成した国は、カナダ、ケニア、コスタリカ、シリアなどであった。反対はエチオピアやジャマイカなどがある。もともと障害女性に関する独立条項を提案した韓国政府代表は、多くの国の独立条項化への賛成に謝意の述べ、ファシリテータテキストの更なる強化を訴えた。障害を持つ子どもについても独立条項化を支持した。各国政府代表の発言の後は、国際機関やNGOの発言がされた。IDCなどからも多くの発言がされたが、まず、基準規則の特別報告者のスピーチがされ、女性条項の独立条項化に賛成した。また韓国の女性NGOがIDCの枠の中で存在感を出していた。政府と一体になって女性条項への取り組みを行っている感がある。また、アラブ障害者連盟も今回の特別委員会で目立つようになって来た存在である。ともすれば、文化の多様性という言葉をだして慣習や伝統を重んじるべきであるとする政府がアラブ圏に多い中で、ここでも途上国で特に女性が置かれている立場をのべていた。

 一日以上をかけた障害を持つ女性と子どもの議論は今後に持ち越されることになる。

 個別条項化は、障害を持つ少数民族などの複合マイノリティのリスト化の問題や、個別条項化によって女性問題が当該女性条項のみに限定されてしまうといった問題もそれなりにはらんでいる。しかし、障害女性条項の個別条項化を認容する国が増えてきた感もあり、NGOや国際機関はほぼ、独立条項化を求めている。それはやはり男性に対し女性-特に障害を持つ女性が圧倒的に社会的不利におかれている現状を変えるためには、社会的な関心を惹起する必要性を感じているからであろう。こうした点を考えると個別条項とのツイントラックアプローチという考え方は考慮に値するのではないか。