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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年2月2日(木)

(午前)河村ちひろ(新潟青陵大)

(午後)JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

午前(河村ちひろ)

 昨日に引き続き、第6条〔障害のある女性〕と第7条〔障害のある子ども〕のファシリテータ案に対する意見表明と議長のまとめが行われ、女性と子どもに関する議事が終了した。その後、議題は〔前文〕に移り、草案にたいする各国政府からの意見表明が行われた。

第6条〔障害のある女性〕、第7条〔障害のある子ども〕

 NGOからは国際障害コーカス(IDC)の英国障害者協会、ピープル・ウィズ・ディスアビリティ・オーストラリア(WWDA)、ラテンアメリカ難聴者協会が発言した。また昨日の避難訓練の影響で発言の機会が遅れたエルサルバドルからの意見表明があった。

 英国障害者協会代表の男性は、一般社会から隔絶された環境で育った自らの経験を述べ、今でも多くの子どもたちが分離された場でのサービスを受け続けている状況があることを強く主張した。WWDAは女性に関する独立した条文を求めた。難聴者協会は発展途上国の農村地域にいる子どもが基本的な医療サービスや義務教育さえ受けられない状況を訴えた。これらNGOはファシリテータ案の第7条4にある分離した場でのサービスを容認する部分に不快感を示し、その削除をするように主張した。

 議長は、女性や子どもがとりわけ差別に直面しやすい現実を否定する者は誰もおらず、ファシリテータ案には基本的に賛成が多い、とした上で、条文ごとに修正案を整理した。女性と子どもについて独立した条文をもつかどうかについてほとんどの国が柔軟に対応するという表明をしているので、8月に結論が出るように各国間で協議をしてほしいと述べた。

前文

 午前中に日本を含む約20カ国が議長草案に対する様々な意見や修正案を述べた。

 新たにアメリカ合衆国から、第23条で議論した家族についての条項と、第25条で検討した遺伝子診断についての条項を前文に追加してはどうかという提案があり、文案が示された。

 また、フィリピンから「障害者に関する世界行動計画(World Programme of Action Concerning Disabled Persons)」(1982年、国連総会決議 37/52 )は発展途上国の障害者について具体的な方向性が示された文書であり、権利条約の前文において言及するべきであるという提案があり、文案が示された。

午後(JDF(日本障害フォーラム)条約委員会)

前文(午前の審議のつづき)

  • インド : 米国の「家族の役割」についての言及を支持するが、「遺伝子情報及び操作」に関する点は支持しない。
  • イスラエル : パラ(e)については、IDC,日本、ブラジルが支持したカナダ案(世界行動計画に言及すべき)を支持する。パラ(q)に「文化的」を入れる。米国の「家族の役割」を支持する。
  • コスタリカ : 途上国は、貧困ライン以下で暮らしている。「家族の支援」は必要である。
  • ウガンダ : 世界行動計画への言及は必要である。パラ(m)に「年齢」を入れることを支持する。パラ(l)に武力紛争とともに、「家族の役割」に言及するのは重要である。
  • ヨルダン : パラ(a)の「想起する」を「認める」に変更してほしい。パラ(a)(b)(d)など、似たような関連する文言があるパラは、ひとつにまとめたほうがよい。パラ(n)については、ジェンダー及び年齢にそくした言及をしてほしい。パラ(e) は、世界行動計画を入れる。パラ(m)には「性的指向(EU案)は入れない。パラ(o)では、武力紛争の問題に言及してほしい。
  • ケニア : 「セクシュアル」の表記には、反対。貧困の削減(フィリピン案)を支持。
  • 日本 : これまでの発言においては、国際人道法と国際人権法の要素が混在しているようなので、区別する必要がある。現時点では留保する。
  • 国内人権機関 : 障害者がいる国では、遺伝子情報・操作の乱用は、差別、人権侵害を引き起こす恐れがある。
  • IDC : パラ(m)には、障害のある先住民についてもいれるべき。パラ(e)には、世界行動計画を入れるべき。パラ(g)には、開発、発展の権利を入れる。前文には、必要な場合には国際人道法の視点を入れていきたい。

議長のまとめ

  • 前文に子ども、女性のことを入れる意見がおおくあった。
  • パラ(a)(b)(d)をどのようにまとめるか、その整理は草案委員会に任せていただきたい。
  • パラ(c)では「相互関連性」という文言を入れてほしいという意見があった。
  • パラ(d)では、「確認し」を「想起する」という表現に支持が多い。
  • パラ(l)について、「障害のある人」を「団体の代表」とするのはひとつの意見にとどまっている。「特に障害のある人」の「特に」を含むことにことに、多くの支持があった。
  • パラ(n)に「性的指向」を入れることには賛否があり、全体的には入れない方が良いという意見が多いようだ。
  • パラ(q)との関連で、国際人道法に基づく締約国の義務を明確にすべきという意見については、留保する国はなかったが、懸念を感じている委員の中で話し合ってほしい。
  • パラ(r)に関連して、他の人権文書とのバランスを考慮することの重要性が言及された。

国際協力

*ファシリテーター(案)をもとに審議された。

○ファシリテーター(マリアナさん、メキシコ)からの提起

  • 案には、国際協力に関する原則、要素が入っている。
  • 締約国が様々な措置をとることと、どういう主体が国際協力をおこなっていくかが重要なポイントである。
  • 案の脚注には、解決できない論点が書かれている。
  • 基本的には、当該国の努力に支持、協力し、代替するものではないという文言を示したい。
  • イスラエル : 条約の目的を実現するという一般的な考え方ではなく、条約の 内容を実施するとした方が良い。「適切であれば」という文言は弱いので削る。「確保する」という書き方がここで弱まることがあってはならない。
     この条約の義務を「国際協力」があるにもかかわず果たすというのは矛盾し、誤解を招く恐れがある。条約の実施にとって「国際協力」は、補完的な関係に ある。特に途上国は、国際協力がないと、条約の実施ができなくなる恐れがある。
  • 中国 : 国際協力には、国連決議との一貫性がみられるべきである。国際協力には、保護を受ける側の能力構築を欠かしてはならない。パラ1は支持する。パラ2の国際協力を受ける側の国内履行については、締約国はできるだけ補助的な役割を果たすことが必要。この修正によって、締約国に義務をより認識してもらうことができる。
  • ブラジル : 国際協力は、南と北の双方向に行われていくので、開発支援というのは、アクセシビリティだけに使われるのではなく、インクルーシブな開発が重要である。
  • ナイジェリア(アフリカグループ代表) : 国際協力を単独の条文にしてほしい。パラ1について、条約の実施は、締約国に責任がある。それとの関係で「適切であれば」を削除してほしい。
  • EU : EUは、国際協力の最大のドナーでもあるので、この条約の目的を達成することを理解してほしい。北―南、南―南など、色々な方向で行うべき。市民組織も広い考え方をもつべき。第4条の一般的義務に入れることも考えるべきかもしれないし、単独の条文にしなければ義務を果たさない国もあるので、どのようなことができるのか、慎重に検討する必要がある。どの国も国際協力を含めて、締約国は履行しなければならないことを確認したい。 パラ1-(a)の国際開発プロジェクトも重要だが、広い意味で、色々な方法で国際協力が行われなければならない。
  • ウガンダ : 国際協力は、障害者の権利の啓発に役立つ。社会権規約の漸進的なアプローチという制約があるため、それを克服しようとすれば国際協力なしにはありえない。交流と情報交換は能力構築に直接関係ないものもあるので、「技術移転」については「適切な」を加えてほしい。
  • ケニア : 開発援助は、新しい差別と排除を作り出してはいけない。国際協力は、それぞれの国の事情に合わせてトレーニングプログラムが必要という意見がある。「自発的協力」が条文に入れることができるか、検討が必要である。

(閉会の時間になり、審議は翌日の午前に継続)