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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年2月3日(金)

JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

午前

会議の終了時に拍手する各国の代表団。起立拍手している人も見られる

 3週間にわたる第7回アドホック委員会の最終日・2月3日の午前は、前日から続けられていた第32条〔国際協力〕についての審議から始まった。


 前日に引き続き、国際協力に関するファシリテーターズ・グループが2月1日に公表した条文草案となる「ファシリテーターズ・テキスト」をたたき台に議論が進められた。

 全体的には第32条を独立した条文として位置づけることも含め、ファシリテーターズ・テキストに対する支持が得られたと言えるが、これまでの議論でもあったように、国際協力の位置づけをより強固なものとするアフリカグループを初めとする発展途上国や中進国諸国と、それらに消極的なEU、日本等の国々の間の溝は一向に埋まっておらず、この日も細かい文言の使い方・書きぶりをめぐっての発言が相次いだ。

 また、ファシリテーターズ・テキストのパラグラフ2は「締約国は、国際協力にかかわらず、条約のもとでその義務を果たすこととする。」という趣旨の文案で、これに対して、条文タイトル〔国際協力〕と齟齬をきたすおそれがあるとして文言等の一部代替案を提示した中国への支持を表明する国もあった。

 また、パラグラフ1の(b)にある、締約国がとるべき措置として、能力形成の支援・促進だけでなくトレーニング・プログラムを加えるべきとする案に対しては、広いレベルでの支持が集まった。

 これらの事項を考慮の上、次回第8回アドホック委員会で再検討を行うこととされた。

午後

 この日の午後は、法的能力などの問題を含む12条の議論を行い、その後、モニタリングの議論に移った。その後、報告の採択が行われ、第7回特別委員会全日程を終了した。

○第12条の議論

 ここでは、8月の議論のたたき台として、議長草案とカナダやEU、コスタリカ、オーストリアなどがまとめたコンサルテーション・ペーパーのどちらが適切なのかを議論した。

 カナダなどがまとめたコンサルテーション・ペーパーは、後見人制度や人格代理人制度を明記せず、法的能力を保障するというものである。オーストラリアは、代理人の権利の濫用を防ぎ、「支援された決定」が鍵であるとして、パラダイムの転換を訴えた。

 ブラジルは、正しい方向への第一歩であるとしてコンサルテーション・ペーパーに賛成した。ニュージーランドも同様である。

 メキシコはカナダなどの案がこれからのベースとなるが、代理人制度の代替的文言が必要であるという意見を出した。

 これらに対してセルビアは、法的後見は必要になるとして議長草案に賛成した。後見制度に言及しない場合、後見制度を持つ国に対して国際モニタリングの際に条約違反になるという問題が出るという指摘もした。シンガポールやイエメン、アフリカの諸国の代表として発言したケニアも議長草案に賛成した。特にケニアは、コンサルテーション案ではアフリカ諸国は留保せざるを得ないという強い懸念を表明した。

 日本は、カナダなどの案を議論の土台にすることには反対はしなかった。文言の問題で「法的能力」を「行為能力」にすること、行為能力が財産に関して制限を受ける可能性があるということ、パラグラフ4の「定期的」を削除し、「独立した司法」という文言をもう少し柔軟にすべきであるという意見を述べた。

 これらの意見について議長は、カナダなどのコンサルテーション・ペーパーに支持が多くあったが、議長テキストにも支持が多くあった、支援を受けた決定(supported decision making)という概念をさらに明確にしていく必要があるとした。

○国内モニタリングについて

 この日の議論では、フォーカルポイント(モニタリングの実施・監視機関)の問題や、パリ原則(人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び機能に関する原則)への言及などの意見が出た。

 こうして、第7回特別委員会の全日程が終了した。最後は拍手喝采で終わった。今回は三週間という国際会議においてはあまり例のない長期のスケジュールとなった。

 議長テキストという新たな議論の土台が出たことで、各国の姿勢として、なるべく多くの国が同意できるものを作るということがあったように思われる。主張をぶつけ合うというよりは、合意点を探り、「柔軟に対応する」という姿勢が垣間見られた。

 日本政府の姿勢については、定義における文字表記の問題や自立生活の条項で、私たちの考えに近い発言を行った反面、教育などでは時代の流れに逆行するともとられかねない問題の多い発言を行った。これは日本政府の問題であると同時に障害者団体にも大きな課題を突きつけたように思われる。今後、国内施策に条約の議論をどのようにつなげて行くか取り組むべき課題は多い。

 また、IDCの存在感の増大は今後のJDFの姿勢にも大きな影響を与えるように思われる。事前のロビー活動があったのか即断しかねるが、EUやイスラエルなど多くの国がIDC案を言及あるいは引用していた。このような動きをにらんだ戦略の再構築が必要に思われる。

 今回の議論を基にした議長テキストの修正版の検討が至急の課題である。