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第7回国連障害者の権利条約特別委員会

障害のある人の権利に関する国際条約:ワーキングテキスト
修正議長草案の仮訳
(2006年3月28日付)

川島聡・長瀬修

前文

この条約の締約国は、

  1. 世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものとして、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認める国際連合憲章において宣明された原則を想起し、
  2. 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての人はいかなる区別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
  3. すべての人権及び基本的自由の普遍性、不可分性及び相互依存性と、障害のある人に対してすべての人権及び基本的自由の差別のない完全な享有を保障する必要性とを改めて確認し、
  4. 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、子どもの権利に関する条約並びにすべての移住労働者及びその家族構成員の権利保護に関する国際条約を想起し、
  5. 障害者に関する世界行動計画及び障害のある人の機会均等化に関する基準規則に含まれる原則及び政策指針が、障害のある人の機会を更に平等化するための国内的、地域的及び国際的な場における政策、立案、計画及び行動の促進、形成及び評価に影響を与えるに当たって重要であることを認め、
  6. また、いかなる人に対しても障害に基づく差別は人間の固有の尊厳を侵害するものであることを認め、
  7. さらに、障害のある人の多様性を認め、
  8. 障害のあるすべての人(一層集中的な支援を必要とする人を含む。)の人権を促進し及び保護することが必要であることを認め、
  9. これらの種々の文書及び約束にもかかわらず、世界のすべての地域において、社会の平等な構成員としての参加を妨げる障壁及び人権侵害に障害のある人が依然として直面していることを憂慮し、
  10. あらゆる国特に途上国における障害のある人の生活状況を改善するために国際協力が重要であることを認め、
  11. 地域社会の全般的な福利及び多様性への障害のある人の貴重な既存の及び潜在的な貢献を認めることが重要であることを強調し、さらに、障害のある人による人権及び基本的自由の完全な享有並びに完全な参加を促進することにより、その帰属意識が高められること並びに社会の人間開発、社会開発及び経済開発並びに貧困の根絶に多大な前進がもたらされることを強調し、
  12. 障害のある人にとって、その個人の自律及び自立(自己の選択を行う自由を含む。)が重要であることを認め、
  13. 障害のある人が、政策及び計画(障害のある人に直接的に関連する政策及び計画を含む。)に係る意思決定過程に積極的に関与する機会を有するべきであることを考慮し、
  14. 人種、皮膚の色、ジェンダー、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的若しくは社会的出身、財産、出生、年齢又は他の地位に基づく複合的又は加重的な形態の差別を受けている障害のある人の困難な状況を憂慮し、
  15. 障害のある女性及び少女が、度々家庭の内外で暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(それらのジェンダーに基づく発現形態を含む。)を受ける危険に一層さらされていることを認め、
  16. また、障害のある子どもが他の子どもとの平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を完全に享有するべきであることを認め、また、このために子どもの権利に関する条約の締約国により約束された義務を想起し、
  17. 障害のある人による人権及び基本的自由の完全な享有を促進するためのあらゆる努力にジェンダーの視点を組み込む必要があることを強調し、
  18. 障害のある人の大多数が貧困の状況下で生活している事実を強調し、また、これに関しては、障害のある人に対する貧困の負の影響に取り組むことが必須であることを認め、
  19. 武力紛争の状況及び自然災害の発生が、戦時下にある国及び被災しやすい国において障害の経験を著しく増加させること、並びに障害のある人の人権に特に甚大な被害をもたらすことを憂慮し、
  20. 障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することができるようにするに当たり、物理的、社会的及び経済的環境のアクセシビリティ、保健及び教育のアクセシビリティ並びに情報及びコミュニケーションのアクセシビリティが重要であることを認め、
  21. 個人が、他人に対し及びその属する地域社会に対して義務を負うこと並びに国際人権章典において認められる権利の促進及び遵守のために努力する責任を有することを認識し、
  22. 途上国及び先進国の双方において、障害のある人の権利及び尊厳を促進し及び保護するための包括的かつ総合的な国際条約が、障害のある人の著しく社会的に不利な立場を是正することに意義深く貢献すること並びに市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野への障害のある人の平等な機会での参加を促進することを確信して、
    [家族が、社会の基礎的な集団として、障害のある人の権利の完全かつ平等な享有に貢献することを 可能とするための支援、情報及びサービスを受けるべきであることを確信し]
    次のとおり協定した。

第1条 目的

この条約は、障害のある人によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し及び確保すること並びに障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。

第2条 定義

この条約の適用上、
「コミュニケーション」には、音声言語、手話、文字表記、点字、触覚コミュニケーション、拡大文字、筆記、音声装置、アクセシブルなマルチメディア、平易な言葉、朗読者、並びにコミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態(アクセシブルな情報通信技術を含む。)を含む。
 「障害」/「障害のある人」……
 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定[並びに直接差別及び間接差別]を含む。)を含む。
 「言語」には、音声言語、手話及び他の形態の非音声言語を含む。
[「一般に適用のある国内法」とは、社会全体に適用する法律であり、かつ、障害のある人に関し区別を設けないものをいう。「一般に適用のある国内法及び国内的手続」並びに「一般に適用のある国内法、慣習及び伝統」は、それと同一の意味を有するものとし、それを準用する。]
 「合理的配慮」とは、特定の場合において必要とされる、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、不釣合いな負担を課さないものをいう。
 「ユニバーサルデザイン」及び「インクルーシブデザイン」とは、改造又は特別な設計を必要とすることなしに、可能な最大限の範囲内で、すべての人が使用することができる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。「ユニバーサルデザイン」及び「インクルーシブデザイン」は、障害のある人の特定集団のための支援機器が必要な場合には、これを排除してはならない。

第3条 一般的原則

この条約の原則は、次のものとする。

  1. 固有の尊厳、個人の自律(自己の選択を行う自由を含む。)及び人の自立の尊重
  2. 非差別
  3. 社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン
  4. 差異の尊重と、人間の多様性及び人間性の一部としての障害の受容
  5. 機会の平等
  6. アクセシビリティ
  7. 男女の平等
  8. 障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重と、障害のある子どもがそのアイデンティティを保持する権利の尊重

第4条 一般的義務

  1. 締約国は、障害に基づくいかなる種類の差別もない、障害のあるすべての人のためのすべての人権及び基本的自由の完全な実現を確保し及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
    1. この条約において認められる権利を実施するためにすべての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。
    2. 障害のある人に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
    3. すべての政策及び計画において障害のある人の人権の保護及び促進を考慮すること。
    4. この条約に合致しないいかなる活動又は行為も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従い行動することを確保すること。
    5. あらゆる人、機関又は民間企業による障害に基づく差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
    6. 次のものについての研究、開発、利用可能性及び使用を約束し又は促進すること。
      1. 障害のある個人に特有なニーズを満たすために並びに基準及び指針の開発に当たりユニバーサルデザインを促進するために万人向けに設計された商品、サービス、備品及び設備であって可能な限り最低限の調整及び最小限の費用を要すべきもの
      2. 障害のある人に適した新たな技術(情報通信技術、移動補助具、機器、支援技術を含む。)であって入手可能な費用の技術を優先させたもの
    7. 移動補助具、機器及び支援技術(新たな技術を含む。)に関する並びに他の形態の援助、支援サービス及び設備に関するアクセシブルな情報を障害のある人に提供すること。
    8. 障害のある人と共に働いている専門家及び職員に対する、この条約において認められる権利についての訓練を、これらの権利により保障される支援及びサービスの提供を向上させるために促進すること。
  2. 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、国際人権法から生ずる即時的に適用可能な義務に違反しない限り、それらの権利の完全な実現を漸進的に達成するという観点から、自国における利用可能な資源の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で措置をとる。
  3. 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策を発展させ及び実施する場合において並びに障害のある人と関連する事項に係る他の意思決定過程において、障害のある人(障害のある子どもを含む。)を代表する団体を通じて障害のある人と緊密に協議し並びにこれらを積極的に関与させる。
  4. この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害のある人の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する基本的人権については、この条約がそれらの権利を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利を制限し又は逸脱してはならない。
  5. この条約は、いかなる制限又は例外もなしに連邦国家のすべての地域について適用する。

第5条 平等及び非差別

  1. 締約国は、すべての人が法律の前及び下において平等であり、かつ、いかなる差別もなしに法律の平等な保護及び利益を受ける権利を有することを認める。
  2. 締約国は、障害に基づくすべての差別を禁止するものとし、また、障害のある人に対してすべての理由による差別に対する平等のかつ効果的な保護を保障する。
  3. 締約国は、平等を促進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な行動をとる。
  4. 障害のある人の事実上の平等を促進し又は達成するために必要な特定の措置は、この条約に規定する障害に基づく差別と解してはならない。

第6条 障害のある女性

  1. 締約国は、障害のある女性及び少女が複合的な差別を受けていること並びに障害のある女性及び少女によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を確保するための重点的なエンパワーメント措置及びジェンダーに敏感な措置が必要であることを認める。
  2. 締約国は、この条約に定める人権及び基本的自由の行使及び享有を女性に保障することを目的として、女性の完全な発展及び向上を確保するためのすべての適当な措置をとる。

第7条 障害のある子ども

  1. 締約国は、障害のある子どもによるすべての人権及び基本的自由の完全な享有を確保するためのすべての必要な措置をとるものとし、また、この条約に定めるすべての権利の享有についての障害のある子どもの平等な権利を確保する。
  2. 障害のある子どもに関するすべての行動をとるに当たっては、子どもの最善の利益が主として考慮されるものとする。
  3. 締約国は、障害のある子どもが他の子どもとの平等を基礎としてその子どもに影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにその権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。

第8条 啓発

  1.   締約国は、次のための即時的、効果的かつ適当な措置をとることを約束する。
    1. 障害のある人に関する社会全体の意識の向上と、障害のある人の権利及び尊厳の尊重の育成
    2. あらゆる生活領域における障害のある人に関する固定観念、偏見及び有害慣行(ジェンダー及び年齢に基づくものを含む。)との闘い
    3. 障害のある人の能力及び貢献に関する意識の促進
  2. このため、措置には次のことを含む。
    1. 次のことのために立案された効果的な公衆向けの啓発キャンペーンを開始し及び維持すること。
      1. 障害のある人の権利に対する理解を促進すること。
      2. 障害のある人に対する肯定的認識及び一層大きな社会的意識を促進すること。
      3. 職場及び労働市場における障害のある人の技術、功績、能力及び貢献についての認識を促進すること。
    2. 教育制度のあらゆる段階(幼年期からのすべての子どもの教育制度を含む。)において、障害のある人の権利を尊重する態度を促進すること。
    3. すべてのメディア機関が、この条約の目的に合致するように障害のある人を描写することを奨励すること。
    4. 障害のある人及びその権利に関する啓発のための訓練計画を促進すること。

第9条 アクセシビリティ

  1. 締約国は、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人に対し、他の者との平等を基礎として、都市及び農村双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信(情報通信技術及び情報通信システムを含む。)並びに公衆に開かれた又は提供される他の設備及びサービスへのアクセスを確保するための適当な措置をとる。このような措置は、アクセシビリティにおける妨害物及び障壁を明らかにし及び撤廃することを含むものとし、特に次のことに対して適用する。
    1. 建物、道路、輸送機関その他の屋内外の設備(学校、住居、医療設備及び職場を含む。)
    2. 情報、通信その他のサービス(電子サービス及び救急サービスを含む。)
  2. また、締約国は、次のことのための適当な措置をとる。
    1. 公衆に開かれた又は提供される設備及びサービスのアクセシビリティに関する最低限度の基準及び指針の実施を発展させ、公表し及び監視すること。
    2. 公衆に開かれた又は提供される設備及びサービスを提供する民間主体が、障害のある人に係るアクセシビリティのあらゆる側面を考慮することを確保すること。
    3. 障害のある人が直面するアクセシビリティに係る事項についての訓練をすべての利害関係者に提供すること。
    4. 公衆に開かれた建物その他の設備において、点字表示及び読みやすく理解しやすい形式の表示を提供すること。
    5. 公衆に開かれた建物その他の設備のアクセシビリティを容易にするためのライブ支援及び仲介者(案内者、朗読者及び専門職の手話通訳者を含む。)を提供すること。
    6. 情報への障害のある人のアクセスを確保するため、障害のある人に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること。
    7. 障害のある人が新たな情報通信技術及び情報通信システム(インターネットを含む。)にアクセスすることを促進すること。
    8. 情報通信技術及び情報通信システムが最小限の費用でアクセシブルになるために、早期の段階で、アクセシブルな情報通信技術及び情報通信システムの設計、開発、生産及び分配を促進すること。

第10条 生命に対する権利

 締約国は、すべての人間が生命に対する固有の権利を有することを改めて確認し、また、障害のある人が他の者との平等を基礎として当該権利を効果的に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。

第11条 危険のある状況

 締約国は、公衆が危険のある状況([……の状況を含む。])に置かれる場合には障害のある人が特に被害を受けやすい境遇に置かれる集団であることを認め、また、障害のある人を保護するためのすべての実行可能な措置をとる。

第12条 法律の前における平等の承認

  1.   締約国は、障害のある人が、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有することを改めて確認する。
  2.  締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての分野において[法的能力](原注1:A/AC.265/2005/2の第20パラグラフを見よ。)を有することを認めるものとし、また、[その能力]を行使するための支援が必要な場合には、次のことを確保する。
    1. 提供される支援が、必要とされる支援の程度に比例し、かつ、その者の状況に適合したものであること、並びにその支援が、その者の法的権利を害さず、その者の意思及び選好を尊重し、かつ、利益相反及び不当な影響を生じさせないこと。その支援が、定期的なかつ独立の審査に従うこと。
    2.   締約国が最後の解決手段として法律で定めるものとする人格代理人の手続を定める場合には、その法律が適当な保護(人格代理人の任命及び人格代理人による決定についての、権限のある公平なかつ独立の審判所による定期的な審査を含む。)を提供すること。人格代理人の任命及び行為が、この条約及び国際人権法と両立する原則に基づくこと。]
「代替案」
[2 締約国は、障害のある人が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力(原注1:A/AC.265/2005/2の第20パラグラフを見よ。)を享有することを認める。
2 bis. 締約国は、障害のある人がその法的能力を行使する場合に必要とする支援への障害のある人のアクセスを提供するための適当な立法措置その他の措置をとる。
2 ter. 締約国は、国際人権法に従い、法的能力の行使に関連するすべての立法措置その他の措置が濫用を防止するための適当かつ効果的な保護を定めることを確保する。その保護は、法的能力の行使に関連する措置がその者の権利、意思及び選好を尊重し、利益相反及び不当な影響を生じさせず、その者の状況に比例し及び適合し、可能な限り最も短い期間適用し、並びに定期的で、公平な、かつ、独立の司法審査に従うことを確保しなければならない。この保護は、そのような措置がその者の権利及び利益に影響を及ぼす程度に比例したものでなければならない。]
  1. 締約国は、財産の所有又は相続についての、自己の財務管理についての並びに銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信用への平等なアクセスについての障害のある人の平等な権利を確保するためのすべての適当かつ効果的な措置をとる。また、締約国は、障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。

第13条 司法へのアクセス

  1. 締約国は、障害のある人がすべての法的手続(調査段階その他の予備段階を含む。)において直接及び間接の参加者(証人を含む。)として効果的な役割を果たすことを容易にするため、障害のある人のための他の者との平等を基礎とした司法への効果的なアクセス(手続上の及び年齢に適した配慮の提供によるものを含む。)を確保する。
  2. 障害のある人のための司法への効果的なアクセスの確保を助長するため、司法運営の分野に携わる者(刑務官及び警察官を含む。)に対する適当な訓練を促進する。

第14条 身体の自由及び安全

  1. 締約国は、次のことを確保する。
    1. 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
    2. 障害のある人が他の者との平等を基礎として自由を不法に又は恣意的に奪われないこと、いかなる自由も法律で定めることなしに奪われないこと、並びにいかなる場合においても障害の存在により自由の剥奪が正当化されないこと。
  2. 締約国は、障害のある人が、いかなる手続を通じても自由を奪われた場合には、他の者との平等を基礎として国際人権法による保障を受ける権利を有すること並びにこの条約の趣旨及び原則に従い取り扱われること(合理的配慮の提供によるものを含む。)を確保する。

第15条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由

  1. 障害のあるいかなる人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、締約国は、障害のある人が十分な説明に基づくその自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けることを禁止するものとし、また、当該実験から障害のある人を保護する。
  2. 締約国は、障害のある人が拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる。

第16条 搾取、暴力及び虐待からの自由

  1. 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待(それらのジェンダーに基づく側面を含む。)から家庭の内外で障害のある人を保護するためのすべての適当な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。
  2. また、締約国は、特に、障害のある人及びその家族並びにケアの提供者に対する適当な形態のジェンダー及び年齢に敏感な援助及び支援を確保すること(暴力及び虐待の事件を防止し、認識し及び報告する方法に関する情報及び教育を提供することを含む。)により、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待を防止するためのすべての適当な措置をとる。締約国は、保護サービスが年齢、ジェンダー及び障害に敏感であることを確保する。
  3. あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待の発生を防止するため、締約国は、障害のある人のために設けられたすべての設備及び計画が独立の当局により効果的に監視されることを確保する。
  4. 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力又は虐待による被害者である障害のある人の身体的、認知的及び心理的な回復、リハビリテーション及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる(保護サービスの提供を含む。)。このような回復及び復帰は、障害のある人の健康、福祉、自尊心、尊厳及び自律を育成する環境において行われなければならず、また、ジェンダー及び年齢に特有なニーズを考慮に入れる。
  5. 締約国は、障害のある人に対する搾取、暴力及び虐待の事件が発見され、調査され、かつ、適当な場合には訴追されることを確保するための効果的な法令及び政策(ジェンダー及び子どもに特有な法令及び政策を含む。)を定める。

第17条 個人のインテグリティの保護

  1. 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の個人のインテグリティを保護する。
  2. 締約国は、いかなる現実の又は認識された機能障害であっても、それを矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的介入又は強制的施設収容から障害のある人を保護する。
  3. 非自発的介入を必要とする緊急医療の場合又は公衆の健康上の危険が生じる事柄の場合には、障害のある人は他の者との平等を基礎として取り扱われるものとする。
  4.  [締約国は、次のことを確保する。
    1. 代替策を積極的に促進することにより、障害のある人への非自発的治療を最小限にすること。
    2.   
    3. 法律で定める手続に従い、かつ、適当な法的保護を適用して、例外的な環境においてのみ障害のある人への非自発的治療を行うこと。
    4. できる限り最も制約の少ない環境において障害のある人への非自発的治療を行うこと、及びその者の最善の利益を十分に考慮すること。
    5. 障害のある人への非自発的治療が、その者にとって適当であり、また、その治療を受ける個人又はその家族に対して費用の負担なしに提供されること。]

第18条 移動の自由及び国籍

  1. 締約国は、次のことその他を確保することにより、他の者との平等を基礎として、移動の自由、居所を選択する自由及び国籍についての障害のある人の権利を認める。
    1. 障害のある人が、国籍を取得し及び変更する権利を有し、かつ、その国籍を恣意的に又は障害を根拠として奪われないこと。
    2. 障害のある人が、国籍に係る文書若しくは他の身元に係る文書を入手し、所有し及び利用する能力又は移動の自由についての権利の行使を容易にするために必要とされることのある関連手続(例えば出入国手続等)を行う能力を、障害を根拠として奪われないこと。
    3. 障害のある人が、いずれの国(自国を含む。)からも離れる自由を有すること。
    4. 障害のある人が、自国に入国する権利を恣意的に又は障害を根拠として奪われないこと。
  2. 障害のある子どもは、出生の後直ちに登録される。障害のある子どもは、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその親を知る権利及びその親によって養育される権利を有する。

第19条 自立した生活及び地域社会へのインクルージョン

この条約の締約国は、障害のあるすべての人が他の者と平等な選択を有して地域社会で生活する平等な権利を認め、また、次のことその他を確保することにより、障害のある人によるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の完全なインクルージョン及び参加を容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。

  1. 障害のある人が、他の者との平等を基礎として居所並びにどこで誰と住むかを選択する機会を有し、かつ、特定の生活様式で生活することを義務づけられないこと。
  2. 障害のある人が、地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援を含む。)を利用することができること。
  3. 地域社会における公衆向けのサービス及び設備が、障害のある人にとって平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害のある人のニーズに応ずること。

第20条 個人の移動性

締約国は、次のことその他により、障害のある人の最大限可能な自立を伴った個人の移動性を確保するための効果的な措置をとる。

  1. 障害のある人が選択する方法で及び時に、かつ、入手可能な費用で、障害のある人の個人の移動性を容易にすること。
  2. 障害のある人が質の高い、移動補助具、機器、支援技術、ライブ支援及び仲介者を利用することを容易にすること(これらを入手可能な費用で利用可能なものにすることを含む。)。
  3. 障害のある人に対し及び障害のある人と共に働いている専門職員に対し、移動技術の訓練を提供すること。
  4. 移動補助具、機器及び支援技術を生産する主体が障害のある人の移動性のあらゆる側面を考慮することを奨励すること。

第21条 表現及び意見の自由と、情報へのアクセス

締約国は、次のことその他により、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、手話、点字、補助代替コミュニケーション並びに自ら選択する他のすべてのアクセシブルなコミュニケーションの手段、様式及び形態(原注2:特別委員会は、定義に関する条文を討議した後、このリストを再考することを望むかもしれない。その条文におけるコミュニケーションの定義に諸代表が満足するのであれば、特別委員会は、その完全なリストを具体的に記すよりも、ここではコミュニケーションという言葉を用いることを望むかもしれない。)を通じて、表現及び意見の自由(情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

  1. 障害のある人に対し、様々な種類の障害に適したアクセシブルな様式及び形態で、適時にかつ追加の費用を伴わず、公衆向けの情報を提供すること。
  2. 公の対話において、手話、点字、補助代替コミュニケーション並びに障害のある人が自ら選択する他のすべてのアクセシブルなコミュニケーションの手段、様式及び形態を用いることを承諾し及び容易にすること。
  3. 公衆にサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間主体が、情報及びサービスをアクセシブルかつ使用可能な形態で障害のある人に提供するよう勧奨すること。
  4. マスメディア(インターネットにより情報を提供する者を含む。)が、そのサービスを障害のある人にとってアクセシブルにするよう奨励すること。
  5.  手話の使用を承認し及び促進すること。

第22条 プライバシーの尊重

  1. 障害のあるいかなる人も、居所又は生活様式とのかかわりなく、そのプライバシー、家族、家庭、通信その他の形態のコミュニケーションに対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。障害のある人は、こうした干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
  2. 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の個人情報、健康情報及びリハビリテーション情報に係るプライバシーを保護する。

第23条 家庭及び家族の尊重

  1. 締約国は、婚姻、家族及び対人関係に係るすべての事項に関し障害のある人に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとるものとし、また、次のことのために婚姻、家族及び対人関係に係る国内法、慣習及び伝統が障害を根拠として差別しないことを確保する(原注3:特別委員会は、この条文が婚姻、家族及び対人関係に係る自国の政策及び法令を決定する締約国の権限に影響を及ぼすことを意図するものではないことに留意した。むしろ、この条文の趣旨は、それらの問題に関する自由又は制限が存在する場合には、それらが障害に基づく差別なしに適用されることを確保する義務を締約国に負わせることにある)。
    1. 障害のある人が、[そのセクシャリティを経験し、]性的関係その他の親密な関係を持ち、かつ、親たることを経験する平等の機会を有すること。
    2. 婚姻をすることができる年齢の障害のあるすべての人が、両当事者の自由のかつ完全な合意に基づいて婚姻をし及び家族を形成する権利を認めること。
    3. 障害のある人が子どもの数及び出産間隔について自由にかつ責任をもって決定する権利、並びに年齢に適した情報にアクセスする権利、性と生殖及び家族計画に係る教育にアクセスする権利、これらの権利の行使を可能とするために必要な手段にアクセスする権利、並びに生殖能力を保持する平等の機会にアクセスする権利
  2. 締約国は、子どもの後見、監督、管財、養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度についての障害のある人の権利及び責任を確保する。あらゆる場合において、子どもの利益は至上である。締約国は、障害のある人が子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、その者に対し適当な援助を与える。
  3. 締約国は、障害のある子どもが家族生活に関して平等の権利を有することを確保する。この権利を実現するため並びに障害のある子どもの隠匿、遺棄、放置及び隔離を防止するため、締約国は、障害のある子ども及びその家族に対して早期の及び包括的な情報、サービス及び支援を提供することを約束する。
  4. 締約国は、子どもがその親の意思に反してその親から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が、司法の審査に従うことを条件として、適用可能な法律及び手続に従い、その分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合であっても、子どもは、その子どもの障害又は一方若しくは両方の親の障害を根拠として親から分離されない。
  5. 締約国は、直近の家族が障害のある子どもを監護することができない場合には、一層大きな範囲の家族のなかで、かつ、それがないときは家庭的な環境の地域社会のなかで代替的なケアを提供するためのすべての努力を行うことを約束する。

第24条 教育

  1. 締約国は、教育についての障害のある人の権利を認める。この権利を差別なしにかつ機会の平等を基礎として実現するため、締約国は、次のことを指向する、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育及び、インクルーシブな生涯学習を確保する。
    1. 人間の潜在能力並びに尊厳及び自己価値に対する意識を十分に育成すること、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
    2. 障害のある人が、その人格、才能及び創造力並びに、精神的及び身体的な能力を最大限度まで発達させること。
    3. 障害のある人が、自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。
  2. この権利を実現するため、締約国は次のことを確保する。
    1. 障害のある人が障害を根拠として一般教育制度から排除されないこと、並びに障害のある子どもが障害を根拠として無償のかつ義務的な初等教育及び中等教育から排除されないこと。
    2. 障害のある人が、自己の住む地域社会において、他の者との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができること。
    3. 個人が必要とするものに対する合理的配慮
    4. 障害のある人が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般教育制度内で受けること。障害のある人の個別的な支援ニーズを[十分に満たすため][一般教育制度が十分に満たすことができない環境においては]、締約国は、完全なインクルージョンという目標に即して、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境において、効果的で個別化された支援措置が提供されることを確保する。
  3. 締約国は、障害のある人が地域社会の構成員として教育に完全かつ平等に参加することを容易にするための生活技能及び社会性の発達技能を習得することを可能としなければならない。このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとる。
    1. 点字、代替スクリプト、コミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態、並びに歩行技能の習得を容易にすること、また、ピアサポート及びピアメンタリングを容易にすること。
    2. 手話の習得及びろう社会の言語的なアイデンティティの促進を容易にすること。
    3. 盲、ろう及び盲ろうの人(特に子ども)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びにコミュニケーションの様式及び手段で、かつ、学業面の発達及び社会性の発達を最大にする環境で行われることを確保すること。
  4. この権利の実現を確保することを助長するため、締約国は、手話又は点字に通じた教員(障害のある教員を含む。)を雇用するための並びに教育のすべての段階における教育に従事する専門家及び職員に対する訓練を行うための適当な措置をとる。その訓練には、障害への認識を組み入れ、かつ、適当なコミュニケーションの補助的及び代替的な様式、手段及び形態の使用並びに障害のある人を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れなければならない。
  5. 締約国は、障害のある人が、差別なしにかつ他の者との平等を基礎として、一般の高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習にアクセスすることができることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害のある人に提供されることを確保する。

第25条 健康

締約国は、障害のある人が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有することを認める。締約国は、障害のある人がジェンダーに敏感な保健サービス(保健関連のリハビリテーションを含む。)を利用することを確保するためのすべての適当な措置をとる。特に、締約国は、

  1. 障害のある人に対して他の者に提供されるものと同一の範囲、質及び水準の無償の又は入手可能な保健サービス([性と生殖に関する保健サービス](原注4:特別委員会は、「性と生殖に関する保健サービス」という句の使用が新たな国際法上の義務又は人権を認めたものではないことに留意する。特別委員会は、このパラグラフ(a)が、社会権規約12条又は子どもの権利条約24条に定める健康についての権利に追加しない又は当該権利を変更しない非差別の規定であることを了解する。むしろ、パラグラフ(a)の趣旨は、締約国に対し、保健サービスが提供される場合にはそれが障害に基づく差別なしに提供されることを確保することを要求することにあろう。)及び住民公衆衛生計画を含む。)を提供する。
  2. 障害のある人が特にその障害を理由として必要とする保健サービス(適当な場合には早期発見及び早期治療を含む。)並びに更なる障害(特に子ども及び高齢者の障害を含む。)を最小化し及び予防するためのサービスを提供する。
  3. これらの保健サービスを、障害のある人自身が属する地域社会(農村を含む。)に可能なかぎり近くで提供する。
  4. 保健の専門家に対し、特に、訓練を通じて並びに公的な及び民間の保健ケアに関する倫理基準の公表を通じて障害のある人の人権、尊厳、自律及びニーズに関する意識を高めることにより、他の者と同一の質のケア(十分な説明に基づく自由な同意を基礎としたものであることを含む。)を障害のある人に提供することを要請する。
  5. 公正かつ合理的な方法で提供されなければならない健康保険及び、生命保険を国内法が認めるときは、生命保険が提供される場合において、障害のある人に対する差別を禁止する。

第26条 ハビリテーション及びリハビリテーション

  1. 締約国は、障害のある人が、その最大限の自立と、十分な身体的、精神的、社会的及び職業的な能力と、生活のあらゆる側面への完全なインクルージョン及び参加とを達成しかつ維持することを可能とするための効果的かつ適当な措置(ピアサポートを通じたものを含む。)をとる。このため、締約国は、特に保健、雇用、教育及び社会サービスの分野において、次のような方法で、包括的なハビリテーション及びリハビリテーションのサービスを組織し、強化し及び拡張する。
    1. ハビリテーション及びリハビリテーションのサービス及び計画が、可能な限り最も早い段階で開始され、かつ、個人のニーズ及び長所に関する学際的な評価に基づくこと。
    2. ハビリテーション及びリハビリテーションのサービス及び計画が、地域社会及び社会のあらゆる側面への参加及びインクルージョンを支援し、自発的なものであり、かつ、障害のある人自身の属する地域社会(農村を含む。)に可能なかぎり近くで障害のある人に利用可能であること。
  2. 締約国は、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事する専門家及び職員に対する初期訓練及び継続訓練を充実させることを促進する(原注5:特別委員会の構成員は、草案第4条の訓練に関する一般的義務を討議した後に、この第2パラグラフを削除するか否かを検討することを望むかもしれない。)

第27条 労働及び雇用

  1. 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の労働の権利を認める。この権利には、障害のある人にとって開かれたインクルーシブでアクセシブルな労働市場及び労働環境において、障害のある人が自由に選択し又は引き受けた労働を通じて生計を立てる機会についての権利を含む。締約国は、特に次のことのための適当な行動(立法を通じたものを含む。)をとることにより、雇用の過程で障害を持った者を含む障害のある人のために労働の権利の実現を保障し及び促進する。
    1. 雇用に係るすべての事項(募集、採用及び雇用の条件、職務継続、昇進並びに労働条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。
    2. 他の者との平等を基礎として、公正かつ良好な労働条件(平等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬、ハラスメントからの保護を含む安全かつ健康的な作業条件並びに苦情処理を含む。)についての障害のある人の権利を保護すること。
    3. [他の者との平等を基礎として、かつ、一般に適用のある国内法に従い、]障害のある人が労働の権利及び労働組合の権利を行使することができることを確保すること。
    4. 障害のある人が、一般の技術指導計画、職業指導計画、職業斡旋サービス、職業訓練及び継続訓練を効果的に利用することを可能とすること。
    5. 労働市場において障害のある人の雇用機会及び昇進を促進するための措置、並びに職業を求め、それに就き、それを継続し及びそれに復帰する際の支援を促進すること。
    6. 自営の機会、起業の機会及び自己の事業を起こす機会を促進すること。
    7. 公的部門において障害のある人を雇用すること。
    8. 積極的差別是正措置、奨励制度その他の措置を含むことのある適当な政策及び措置を通じて、民間部門における障害のある人の雇用を促進すること。
    9. 職場において合理的配慮が障害にある人に提供されることを確保すること。
    10. 障害のある人が開かれた労働市場において労働経験を習得することを促進すること。
    11. 障害のある人の職業的及び専門的リハビリテーション、職業維持並びに職場復帰を促進すること。
  2. 締約国は、障害のある人が奴隷状態又は隷属状態に置かれず、かつ、強制的又は義務的労働から他の者との平等を基礎として保護されることを確保する。

第28条 十分な生活水準及び社会[保護](原注6:特別委員会は、社会開発委員会第39会期への事務総長報告(E/CN.5/2001/2)に含まれているように、社会保護が広範な解釈を有するという理解に基づいて、この言葉を用いた。)

  1. 締約国は、自己及びその家族の十分な生活水準(十分な食料、衣類及び住居を含む。)についての並びに生活条件の不断の改善(清浄な水の入手を含む。)についての障害のある人の権利を認め、また、この権利を障害に基づく差別なしに実現することを保障し及び促進するための適当な行動をとる。
  2. 締約国は、社会[保護]についての障害のある人の権利及びこの権利を障害に基づく差別なしに享有することについての障害のある人の権利を認め、また、その権利の実現を保障し及び促進するための適当な行動をとる。これには次の措置を含む。
    1. 障害と関連のあるニーズに係る適当かつ入手可能なサービス、機器その他の支援への障害のある人のアクセスを確保するための措置
    2. 社会[保護]計画及び貧困削減戦略への障害のある人[特に障害のある女性及び少女並びに障害のある高齢者]のアクセスを確保するための措置
    3. 障害と関連のある費用を伴った国の援助(十分な訓練、カウンセリング、財政援助及びレスパイトケアを含む。)への貧困の状況下で生活している障害のある人及びその家族のアクセスを確保するための措置 公共の住宅供給計画への障害のある人のアクセスを確保するための措置
    4. [退職に関する給付及び計画への障害のある人の平等なアクセスを確保すること。]

第29条 政治的及び公的活動への参加

締約国は、障害のある人に対して政治的権利及びこの権利を他の者との平等を基礎として享有する機会を保障するものとし、また、次のことを約束する。

  1. 特に次のことにより、障害のある人が、直接に又は自由に選んだ代表を通じて、[一般に適用のある国内法に従い、他の者との平等を基礎として]、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができること(障害のある人が投票し及び選挙される権利及び機会を含む。)を確保すること。
    1. 投票の手続、設備及び器具が、適当であり、アクセシブルであり、かつ、理解し及び利用しやすいことを確保すること。
    2. 障害のある人が選挙及び国民投票において脅迫を受けずに秘密投票を通じて投票する権利、選挙において立候補する権利並びに政府のすべての段階において効果的に公職に就き及びすべての公務を遂行する権利を保護し、適当な場合には支援技術及び新技術の使用を容易にすること。
    3. 選挙人としての障害のある人の意思の自由な表明を保障すること、及びこのため必要な場合には、障害のある人の要求に応じて、自ら選択する個人が投票する際の援助を与えること。
  2. 障害のある人が、差別なしにかつ他の者との平等を基礎として、政治に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進し、また、政治への障害のある人の参加を奨励すること。これには次のことを含む。
    1. 国の公的又は政治的活動に関係のある非政府機関及び非政府団体に参加し並びに政党の活動及び運営に参加すること。
    2. 国際、国内、地域及び地方の場において障害のある人を代表するための、障害のある人の団体を結成し及びこれに加入すること。

第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加

  1. 締約国は、障害のある人が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認め、また、次のことを確保するためのすべての適当な措置をとる。
    1. 障害のある人が、アクセシブルな形態を通じて、文化的作品へのアクセスを享受すること。
    2. 障害のある人が、アクセシブルな形態を通じて、テレビ番組、映画、演劇その他の文化的な活動へのアクセスを享受すること。
    3. 障害のある人が、文化的な公演又はサービスがなされる場所(例えば、劇場、博物館、映画館、図書館、観光サービス等)へのアクセスを享受し、また、可能な限度において国の文化的に重要な記念碑及び遺跡へのアクセスを享受すること。
  2. 締約国は、障害のある人が、自己の利益のためばかりではなく社会を豊かにするために、創造的、芸術的及び知的な潜在能力を育成し及び活用する機会を有することを可能とするための適当な措置をとる。
  3. 締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法令が文化的作品への障害のある人のアクセスを妨げる不合理な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な行動をとる。
  4. 障害のある人は、他の者との平等を基礎として、その独自の文化的及び言語的なアイデンティティ(手話及びろう文化を含む。)の承認及び支持を受ける権利を有する。
  5. 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動に参加することを可能とするため、締約国は次のことのための適当な措置をとる。
    1. 障害のある人が、あらゆる段階における主流のスポーツ活動に可能な最大限の範囲内で参加することを奨励し及び促進すること。
    2. 障害のある人が障害独自のスポーツ活動及びレクリエーション活動を組織し、発展させ及びそれに参加する機会を有することを確保すること、並びにこのため適当な指導、訓練及び資源が他の者との平等を基礎として提供されることを奨励すること。
    3. 障害のある人が、スポーツ、レクリエーション及び観光の場所にアクセスすることができることを確保すること。
    4. 障害のある子どもが、遊び、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動(学校制度におけるこれらの活動を含む。)への参加に平等にアクセスすることができることを確保すること。
    5. 障害のある人が、レクリエーション、観光、余暇及びスポーツ活動の組織に携わる者によるサービスにアクセスすることができることを確保すること。

第31条 統計及びデータ収集

  1. 締約国は、この条約を実現するための政策を形成し及び実施することを可能とするための適当な情報(統計及び研究データを含む。)を収集することを約束する。この情報を収集し及び保存する過程は、
    1. 障害のある人のプライバシーの秘密及び尊重を確保するために法的に確立された保護(データ保護に関する法令を含む。)を遵守しなければならず、
    2. 人権及び基本的自由を保護する国際的に受け入れられた規範並びに統計に関する倫理原則を遵守しなければならない。
  2. この条の規定に従い収集された情報は、適当な場合には分類されなければならず、また、この条約に基づく締約国の実施の評価を助長するために並びに障害のある人がその権利を行使する際に直面する障壁を明らかにし及び当該障壁に取り組むために用いられなければならない。
  3. 締約国は、この統計の普及の責任を引き受け、かつ、障害のある人及び他の者に対してそのアクセシビリティを確保する。

[第32条 国際協力]

  1. 締約国は、この条約の目的及び趣旨を実現するための国内的努力を支援するものとして国際協力及びその促進が重要であることを認め、また、これに関しては、国家相互間において並びに、適当な場合には関連のある国際的及び地域的機構並びに市民社会特に障害のある人の団体と共同して、適当かつ効果的な措置をとる。その措置には、特に次のことを含むことができるであろう。
    1. 国際開発計画を含む国際協力が障害のある人にとってインクルーシブかつアクセシブルであることを確保すること。
    2. 情報、経験、訓練計画及び最良の実践の交換及び共有その他を通じて能力構築を容易にしかつ支援すること。
    3. 研究における並びに科学的及び技術的知識へのアクセスにおける協力を容易にすること。
    4. 適当な場合には、技術援助及び経済援助(アクセシブルな支援技術へのアクセス及びその共有を容易にすることによる援助並びに技術移転を通じた援助を含む。)を提供すること。
[2 さらに、締約国は、国際協力が補足的かつ支援的な役割を果たしているとしても各締約国がこの条約に基づく義務を充足することを約束していることを認める。]
[2 各締約国は、国際協力のいかんを問わず、この条約に基づく義務を充足することを約束する。]

第33条 国内実施及び国内モニタリング

  1. 締約国は、この条約の実施に関連する事項を取り扱う一つ又は二つ以上の中心的機関を政府内に指定するものとし、また、多様な部門及び多様な段階における関連のある活動を容易にするための調整機関の設置又は指定を正当に考慮する。
  2. 締約国は、必要な場合にはジェンダー及び年齢に特有な問題を考慮に入れて、その法的及び行政的な制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し及び監視するための独立した仕組みを国内で維持し、強化し、指定し及び設ける。その仕組みを指定し又は設ける場合には、締約国は、人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び機能に関する原則を考慮に入れる。
  3. 市民社会、特に、障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、モニタリングの過程に関与し、かつ、完全に参加する。
原文:U.N. Doc. A/AC.265/2006/2, 13 February 2006 (Report of the Ad Hoc Committee on a Comprehensive and Integral International Convention on the Protection and Promotion of the Rights and Dignity of Persons with Disabilities on its seventh session), Annex II (International Convention on the Rights of Persons with Disabilities: Working Text)