韓国審査傍聴報告
国連 第12回障害者権利委員会 2014年9月17~18日
JDF権利条約小委員会
委員長 佐藤 聡
1.障害者権利委員会 韓国審査の流れ
〇1日目(2014年9月17日)
13:45 サイドイベント(プライベート国別ブリーフィング)
- 韓国NGO報告書連帯から報告。
- 前半は報告、後半は委員からの質疑応答。
- 韓国からの傍聴団は50人以上(権利委員会史上最大)。
14:45 終了
15:00 韓国政府冒頭発言
15:20 担当委員(モンティアン・ブンタン(タイ、視覚障害))報告
15:30 審議1 委員から韓国政府への質疑
- 条約第1条~10条に関しての質問
- 休憩
- 政府からの回答
- 第11条~20条に関しての質問
18:00 終了
〇2日目(9月18日)
10:00 審議2 委員からの質問
- 政府からの回答
- 第21条~33条に関しての質問
- 休憩
- 政府からの回答
13:00 終了
2.パラレルレポート報告(ブリーフィング)
(1)作成までの経過 別紙
- 2012年からNGO報告書連帯を結成し準備。
- 6つのワーキンググループに分かれて検討、報告書作成。
(2)報告の様子
①報告者
- NGO報告書連帯のメンバー10~15人が報告。
②報告状況
- 30分での報告は、訴える内容が絞られて明快であった。報告の手順も非常に機能的。
- 6つのワーキンググループの代表者が現在の問題を明確にアピール。
強制入院・精神科病院の実態、障害女性への複合差別、雇用・生活保護、虐待・強制労働、コミュニケーション・情報アクセス、脱施設、インクルーシブ教育など。
③IDA(国際障害同盟)のサポート
- ニュージーランドのDPOの報告も同じだったが、このサイドイベントはIDAがサポート。
- 事前に韓国の報告書連帯と発言内容やすすめ方についてアドバイス。前日にはリハーサルも行っていた。
- さらに、委員へのアプローチについてもアドバイスをしていた。たとえば、政府にこの質問をして欲しいということがある場合、この課題ならどの委員にアプローチしたら良いかといったことをアドバイスしていた。
(3)傍聴団
- NGO報告書連帯を中心に50人以上。障害当事者、研究者、弁護士、検事など。
3.審議での委員からの主な質疑
精神科病院強制入院、アクセシビリティ、複合差別、障害女性の就学率の低さ、障害を持つ親への支援、障害児童への支援、国家人権委員会の実効性、障害等級(医療モデル)、マラケシュ条約(なぜ批准しないか)、webのアクセシビリティ、脱施設化への取り組み、自立支援、インクルーシブ教育、障害年金、選択議定書の批准計画、25条(e)の留保撤回、災害対策・緊急速報のバリアフリー化、精神保健法改正予定、手話の公用語化への取り組み、障害者団体からの意見参画の状況、司法へのアクセス、参政権、刑法、など。
4.まとめ
(1)韓国のパラレルレポートは高評価
IDAのビクトリア・リーさんによると、韓国のパラレルレポートはこれまでの国の中でも非常に出来が良いと言うことであった。準備も広範囲に組織化し2年かけて作成されており、日本はぜひ韓国の取り組みを参考にしたら良いとアドバイスされた。
(2)日本でのパラレルレポート作成に向けて
今後、日本のパラレルレポート作成の体制づくりに関し、韓国のNGO報告書連帯の取り組みは大変参考になった。特に権利委員会の事前質問事項(List of Issues)作成に大きな影響を及ぼすことができたのは、周到な準備と情報収集がうまくいったためと思われる。日本も韓国NGO報告書連帯の取り組みを学び、準備態勢を検討していくことが必要だと思う。
韓国のNGO報告書連帯が時期やタイミングを外さずに効果的に活動できた背景の一つとして、幹事団体を担った国連人権政策センター(KOCUN)の役割とIDAのサポートが大きかったと思われる。KOCUNとは社会権規約委員会委員のシン・ヘス氏が組織した国連人権条約に関する活動を行うNGOである。IDAと同様、国連での活動経験が障害の分野にも伝授され、効果的な動きが可能になったことがあげられる。