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パネルディスカッション 崔 栄繁(DPI日本会議事務局員)

 みなさん、こんにちは。私は今日、時間があったら後でパワーポイントをお見せしようと思っているですが、基本的には配布資料で、通し番号がないものがあるのですね。「2014年10月14日 JDFジュネーブ報告集会 障害者権利条約に関する韓国の動向」。なぜ通し番号がないかというと、昨日やっとできたからですね。今まで、佐藤と、長瀬さん、野村さんからいろいろご報告がありました。今回、韓国とニュージーランドをメインに傍聴する理由は、ニュージーランドは非常に進んでいる国で、手話も公用語になったりとか、人口も少ないということもあるかもしれませんが、いろいろな面で進んでいると。韓国は、昔からの日本とのつながり、もっといえば、旧植民地であったことで、法制度が基本的に似ているということ、国の構造、文化的にも似ているということで、韓国の取り組みと韓国政府に対するいろんな権利委員会の意見が、日本についてもかなりの部分のところが当てはまるのではないかということで、今回見てまいりました。それで、権利委員会については、先ほど佐藤や長瀬さんからご報告があった通り、かなり盛り上がって、時間があれば今日はNGOの紹介もしたいですが、今日は10月3日に韓国政府に対して、権利委員会から最終見解が出されました。なので、韓国の法律制度と最終見解をご紹介して、私の報告にさせていただきたいと思います。皆さんお持ちだと思うですが、情報保障的には非常に問題がありまして、点字の資料とか作れていませんし、テキストデータ―も送れていないですけれども、ちょっとご覧になっていただければと思います。
 1ページから7ページまでありますが、まずは1ページ目に韓国の障害者の概要。どういった感じかざっくりと申し上げますと、障害者登録制度がございます。日本で言うと、手帳制度と似たようなものです。全人口の約5.5%、日本はこの前の6%ぐらいと障害者白書に出ていました。日本よりちょっと登録している障害者は少ない。だいたい同じくらい。25,000人ぐらいが入所していたり、療養院で生活しています。精神科病院には、約7万人が入院している。そのうち、87%が非自発的入院。非自発的入院の割合が高いですけれども。だいたいこうした形も少し似ているのかと。(1)の②の定義というものも書いてありますし、③には障害者の種別というもあります。障害の種別は日本よりかなり細かくて、15種別ございます。身体障害者、脳病変、視覚・聴覚・言語・知的・自閉症・精神、腎臓・心臓・呼吸器・肝、内蔵障害。特徴的なのが、顔面障害、日本でいうユニークフェイスと自分たちでおっしゃっている方々、やけどとか、顔の細胞の変形をされている方、そういった人達も登録障害者ということで、登録されています。ということで、非常に雑駁ですが、概要になっています。
 そして1ページ目の(2)というところから、障害者に関連する主な法律というものにあてています。これも日本に似ているものがかなり多いなと。見ていただくと分かると思います。まずは障害者福祉法。韓国の場合は、日本で言う3障害、韓国では15障害ですけれども、一緒になって障害者福祉法という法律がございます。これは登録制度ですとか、日本で言う身体障害者福祉法とかいろいろ混じっているのですけれども。あとは障害者基本法的な性格も少し持っています。総合的な障害者の法律の1つです。
 その下には、精神保健法という法律があります。これも日本の精神保健福祉法に類似したものです。若干は違いますけれども。ここにもこれが今回、非常に問題になっているのですけれども。それから3番目に、障害者差別禁止法。これは日本より先にできています。それから、4番目に、障害者雇用促進及び職業リハビリテーション。これは日本の雇用促進法を参考に作られた。
 次のページに行きまして、2ページ目。上から2つの四角のところに、「障害者等に対する特殊教育法」というものがあります。韓国は、先ほどインクルーシブ教育の話が出ましたけれども、一応、インクルーシブ教育の体制をとっております。そういったことで、どういった支援、どういった子どもたちを特殊教育の対象者にするか、どこで学ばせるか、どういった配慮をしないといけないのか、そういった内容が、この特殊教育法で決められます。そして、3番目には、「障害者・高齢者・妊婦等の便宜増進の保障に関する法」。これは日本に言うバリアフリー法。それから下にも「交通弱者の移動便宜増進法」。これもバリアフリー法。これ2つ合わせると日本の新バリアフリー法になるかなという感じです。これも日本の法律を参考にしながら作ったもの。その下がまだないですね。「国家人権委員会法」。これは人権委員会の設置法で、人権委員会の仕事内容です。そういったことが規定されています。人権委員会というのは、この法律によって、(障害者)差別禁止法ではなくても障害を含めたさまざまな分野の差別、権利侵害について救済できるとされています。
 それから、日本にないのが、「社会的企業育成法」。社会的企業、ソーシャルエンタープライズとか言われている。賃金補填をしながら、ある特定の社会的目的のために作られた企業については、国等からの様々な支援や賃金補填が受けられると。韓国の場合、社会的企業の認証において脆弱階層と規定されている特定の集団を一定以上雇用し、その他の様々な条件を満たすと社会的企業の認証を得ることができます。障害者だけではなくて移住外国人労働者やシングルマザーやシングルファザーとか、一般雇用に結びつきづらい人達を脆弱階層として規定します。"社会的雇用"と認証が得られると、3~4年ぐらい、政府から賃金補填やいろんな制度・支援が受けられるという法律です。それから最後になってしまうのが、「重度障害者生産品優先購買特別法」。これは日本で言う優先調達法です。これは日本と同じくらいにできました。
 それから3ページ目に移っていただきまして、1番上の「成年後見制度」です。韓国は2011年に民法を改正しました。それまでは、これも昔の日本のような、禁治産・準禁治産、韓国で言うと限定治産といいますが、そういった制度をずっと取り入れていました。これは日本の民法、旧民法の形をずっと引き継いだわけですけれども、あ韓国は権利条約を参考にというか、権利条約の時代に、これではいかんということで、取り入れたのが、「成年後見制度」という風に説明されています。これもあとでみていただくと、いろんな問題、権利委員会からいろんな問題を抱えていると言われています。この韓国の成年後見制度は、名前とか若干違って、全面的な代理、日本で言うと、後見人類型である「成年後見人」、制限的な代理権、同意権、取消権を持つ「限定後見人」、特定の分野だけ同意するなら「特定後見人」、と整備されています。今、ちらっと早口で言っただけでも、これは似ている、ということがあると思います。日本にまだないものもお分かりになるかと思います。 それから3ページ(4)に施策の推進体制、先ほどの内閣府の方のお話しがありましたけれども、障害者基本計画みたいなものを、韓国も作るんです。これは韓国では「障害者政策総合計画」と言うんですけれども。ここが権利条約のモニタリングの枠になる、というところも枠組としては、日本の障害者基本計画に似ている。結構大切な枠であります。現在は第4次総合計画中ということになっています。
 こんなことばかり言っても実際にイメージが湧かないと思いますので、参考の統計を3つだけですが一応つけてみました。①、②、どういった所得、就業形態ですとか、どんな学校に障害児が行っているのか、ちょっと分かるようなものを出してみました。ちらっと見るだけでも、障害者世帯というのは、障害のない一般の世帯と比較すると半分くらい、いろいろあるのですね。こういった現状があると。法制度がかなり整備されているんですけれども、急速な発展というか、短い間で色々発展してきた国なので、いろいろな矛盾点も出てきているということです。
 権利条約の動きを少し紹介しますと、先ほど佐藤や長瀬さんがおっしゃっていましたが、韓国は、国とかNGOが、官民・民官、障害者権利条約の策定には非常熱心だったと。特に韓国の場合は、第6条の女性条項、第19条の自立生活条項など、様々な条項について、韓国は非常に熱心でした。。特に女性障害者、当事者の活動については、私も見ていてびっくりする位、長瀬さんもいろんな思いもあるでしょうけれども、それ以降の韓国の障害者施策に非常に大きな影響を与えていて、今回の統括所見にも、いろんなことがそれを反映されていると言われています。韓国は2008年に条約に批准した後に、2011年6月に最初の報告書というものを出しました。政府の最初の報告書を出しました。Initial Reportです。今回9月に、提出してから3年後ぐらいなるんですが、ようやく審査の場が訪れたことになります。 細かい紹介を本当はしたかったのですけれども、NGOなり、国際的な団体ですとか、いろんなところからアドバイスを受けながら、非常にレポートの内容につきましても分かりやすく、コンパクトのものを作って、それが効果的にいろんな委員に広がったと。また、いつか紹介はさせてもらいたいと思うですけれども、これから日本のNGOですとかとかいろいろ参考になる動きをされていました。
 パラレルレポートについては、先ほど事前質問事項とかいろんな単語が出てきて、混乱したかもしれませんが、同じ、メインの対話、審査の前にその権利委員会の方から、事前質問事項即ちリストオブイシュー(List of Issues)というものを作ると。そこの作る過程が非常に大切だということを、私たちは学んだわけですね。前審査と本審査の前の取組というのが、非常に大切になると思っています。また今後ちゃんと整理して、NGOでまとめてやりたいと思っています。NGOレポートについてはいろんなNGOが作っています。特に国連障害者権利条約NGO報告書連帯というものがありましたけれども、障害者団体だけではなくて、法律の専門家が集まっている団体ですとか、子どものことをやっているSave the Children といったNGOも交えて、今回NGO報告をつくる上で違う人権条約の経験なんかもうまく取り入れて、だらだらした報告書だったりとか、行ばかりの報告書ではなくて、非常に分かりやすく、事例をうまくまとめながら報告書を作っていますので、非常に参考になると思います。
 それで、5ページ目の3、10月3日に韓国政府に対する権利委員会の総括所見(最終見解)というものが出されました。権利委員会は韓国政府に、「こういうことを勧告しますよ」、「こういうことを要求しますよ」という内容です。今日のために、きちんと全訳して、確認してもらって、出そうかなと意気込んでいたですけれども、さっきの事情で、途中でくじけまして、今日はちょっとサマリーといいますか、まとめたものと、これまた全部じゃないですけれども、ざっと見ただけでもこんだけのものがありまして、(1)、(2)というのが分かれていて、(2)の中の5ページ目ですね、「肯定的側面」ということと、「懸念事項と勧告等」。この「懸念事項と勧告等」のところを、少しご紹介したいと思います。これは次のページと7ページまで。一応、大切かな、訳しやすいなというところを挙げたですけれども。まずは日本に関連して非常に興味深いのが、障害者福祉法の定義。障害の定義についてかなり言っています。社会モデルをきちんと取り入れろといったことを言っています。ここでは人権のアプローチに基づいた定義をしなさいということを言っています。もっと詳しく言いますと、福祉サービスの決定の仕組みですね、障害の重さ・軽さで結構決まるところがあると。韓国の場合は特に、そういうのが顕著で、それは条約の求める人権アプローチ、社会モデルとは相いれないよ、というようなことを言っています。あとは障害種別によって、こっちの障害者には与えないとか、種別によってサービスの量が違うとか、そういったことについても、必要なものを聞いていくなど、工夫しなさいといったところが勧告されています。
 それから差別禁止法についてです。韓国は障害者差別禁止法がありまして、差別を受けたと思ったら、人権委員会というところに、申し立てをする仕組みになっている。そこについても、人権委員会の人間が減らされたとか、財政が苦しいとか。要するに、申し立てをしても人的・物的な資源の制約によって、なかなか解決できない問題がいっぱいあるんだよということをNGOがずっと言っていて、それについてもかなり強い調子で勧告をしているということですね。細かい話しになってしまうのはあれですけれども、人権委員会からは実際に命令権はないです。韓国の人権委員会は勧告しかできない。それにも、もうちょっと強制力をもたせるべきであるとか、様々な事を勧告しています。
 6条関連。5ページの最後の部分。女性障害者のことについては、かなり勧告しています。これはかなりはしょっているですけれども。女性障害者に特化した政策をきちんと作れとか。出産・妊娠といったところの支援を増やせとか、そういったことを第6条関連では勧告しています。
 それから、6ページの12条関連。成年後見制度に対して、懸念を示していて、代理決定に関する問題です。全部を取り消したり、その人が決めたことではなく、代理の人が全部契約とかできるという代理決定の制度から、支援をうけた自己決定という制度に変える転換を求める勧告しています。これは先ほどの12条とか、長瀬さんからご紹介がありました一般的意見第1号に基づいて、医療における治療ですとか、司法へのアクセス、投票、婚姻、仕事、居住地の選択とかそういったことは代理決定をさせるな、させない制度に変えていけということを言っています。これに関してこの支援を受けた自己決定について、障害者団体と協力して、いろんな裁判官ですとか社会福祉関係する人、全ての国民のアクター、という単語を使っていますけれども、そういった人達にきちんと教育・啓発していってください、ということも勧告しています。
 14条、これは日本にとっても重いことですが、、精神・知的を含む障害に基づいて自由を剥奪するすることを許容している現行法規定を撤回してくださいと、といったことを勧告しています。一般的には、強制入院の制度ですとか、医療観察法も含むのかな、そういったことを言っています。
 17条ですと、強制避妊手術の実態。本当はいけないですけれども、どっかで行われている可能性があるからきちんと調べてくださいということを勧告しています。
 19条、地域生活の関係では、地域移行というのが条約の根本であると。インクルージョン・インクルーシブというところで、中期・長期的な脱施設の戦略というものがないということを懸念している。これはいろんな国でも同じことを言っています。必要な支援を増やしていけということと、19条関連では、機能障害の等級でサービス量を決めるなと。社会モデルに基づいて、ニーズとか色んなことを総合的に判断して、決めて下さいと勧告しています。
 日本と関係してくるのかなというのが、基準。福祉サービスの提供をするかしないかにおいて、家族の収入ではなくて、本人の収入を基礎に決めて下さい。ここまでかなり踏み込んで勧告しています。また、先ほど少し出ましたインクル―シブ教育。韓国はインクル―シブ教育制度があるですが、制度を持っていて、それなりにやっているわけですけれども、どうしても高学年になったり、受験戦争のはげしい国ということもありまして、普通学級、普通学校にいた子どもたちが特殊学校に戻るケースもかなりある。そういったことに懸念を示して、現行の教育制度についてきちんと調査をして、できる限り合理的な配慮をきちんとするということと、教員や養成職員、学校の職員を含めた研修をきちんとしろと、かなり強い調子で勧告しています。
 労働にしても、日本と同じようなところがあるんですね。Sheltered workshopって保護雇用と訳していいのか分からないですけれども、一般雇用につながらない人たちが多く、最低賃金を除外されている障害者が多いという懸念を示して、新しいものをきちんと作ってくださいと、ということも勧告しています。
 あとは日本でいうと、31条関連で、データ。細かいフォーマットに基づいてデータを作るようなシステムを作ってくださいと勧告しています。
 33条の履行ですね。人権委員会というのが、独立した機関ということになっているわけですけれども、資源の不足とかを懸念し、資源の投入を増やせということが勧告されている。条約履行に障害者団体、障害者、あるいは障害者を代表する団体を完全参加させてくださいと勧告しています。
 今紹介しただけでも韓国政府の包括所見はなんとなく日本に当てはまることが多いのかなと思います。先ほど、日本の報告を待つまでもなく、少しでも変えられたり、進められたりしたら国連の審査を待つまでもなく、少しずつ、他の国の事例とか参考にしながら進めていかないといけないと思います。長瀬さんが言う猶予ではないですけれども、いつになったら、審査を受けるか分からないですね。2回目、3回目の審査が5年も6年もなってしまう、ということになると、なかなか厳しい状況になるので、そういったこともここから感じ取れることになるかと。あとはNGOとしては、広い枠でコンパクトな報告書をまとめていくと。そのような取組を少しずつ進めていかなければいけないのかなと思います。日弁連さんとも協力していきたいと思います。私の報告は以上です。また、いろんな形で、こういった動きを紹介していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

パネリスト3人の1分ずつのまとめ
(これからの日本の建設的な対話にむけてどういったことが必要か)

 野村先生が非常に格調高く言ってしまったので、やわらかくいこうかと。
 これから政府報告書を準備される、今日内閣府や外務省とかいらっしゃいますけれども、できる限りのことをやっていただきたいなと。それは私たちも協力するところは協力する。それ以外のところできちんと取り組んでいくところは取り組んでいくっていうスタンスなのかなと思います。できれば良い報告書を出していただきたいというのはあります。こういった条約、先ほどもちょっとありましたけれども、条約批准して終わりということではない、ということがまずは今日の目的でしたので。これからも機会を見つけて、こういった集会をして行きたいと思います。12月3日には大きな規模で障害者権利条約推進議員連盟の総会を開いていただけるということもございますので。どんどん盛り上げていきたいと思います。今後とも皆様どうぞよろしくお願いいたします。