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アジア太平洋障害者の権利を実現するためのインチョン戦略 草案(仮訳)

SDD/RPM/APDDP 2012/1

配付対象:参加者のみ
2012年2月24日

英語のみ〔原文〕

アジア太平洋経済社会委員会
アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する
最終評価のためのハイレベル政府間会合に向けた
地域準備会議

2012年3月14日~16日・バンコク

暫定議題(アジェンダ)第5項目

アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合の成果文書草案に関する考察

注は事務局による。

「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」が、ESCAPの呼びかけにより、2012年10月29日から11月2日まで大韓民国・インチョン(仁川)で開催される。

ハイレベル政府間会合は、大韓民国政府の主催で開催され、「アジア太平洋障害者の権利を実現するためのインチョン戦略」と題する成果文書を採択する予定である。この成果文書は、障害者の権利を促進するための新たな10年(2013-2022)を実施する指針となる地域活動の枠組みとして役割を果たすことになる。

インチョン戦略草案の立案は、2度にわたって実施された「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002および2003-2012)のほか、2006年の国際連合総会で採択された歴史的な「障害者の権利に関する条約」における諸々の経験からもたらされたものである。

インチョン戦略草案は、政府、障害者団体、およびその他の主要なステークホルダーからの意見を取り入れながら起草された。「社会開発に関する委員会」第2セッション(2010年10月19~21日・バンコク)および「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合に向けた地域ステークホルダー・コンサルテーション」(2011年12月14~16日・バンコク)といった地域フォーラムを通じて得られたフィードバックから導かれたものである。アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施を最終的に検証するESCAP地域調査に対して政府および障害者団体その他の関係する市民社会団体が示した回答のおかげで、インチョン戦略を構築するうえで豊富な情報がもたらされた。

インチョン戦略は、「アジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた活動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」「びわこプラスファイブ」および「障害者の権利に関する条約」を繰り返すことを意図したものではない。これらはいずれも、障害分野における地域活動の包括的な政策の枠組みとして、今後も継続的に役割を果たすのである。

インチョン戦略は、ESCAP加盟国政府および準加盟国政府の優先事項を反映しながら、世界人口の約3分の2にあたる人々のために、障害をインクルーシブする開発目標を提供する。

ミレニアム開発目標1と同様に、インチョン目標、ターゲットおよび指標は、新たな10年(2013-2022)の間に優先度の高い目標およびターゲットを達成することに特に焦点を当てることで実施のスピードが速まるように、また、アジア太平洋地域で到達した進捗状況を容易に計測できるように、期間を区切っている。

インチョン戦略の構成案は以下の通りである。

I. 前文
II. 主要な原則および政策方針
III. インチョン目標およびターゲット
IV. 効果的に実施するためのモダリティ(手順)

この戦略のセクションⅢ、とりわけインチョン目標およびターゲット(INGOTS)は、10の目標、23のターゲット、および47の指標からなる戦略の核となる要素である。

本文書に掲げる「アジア太平洋障害者の権利を実現するためのインチョン戦略」草案は、地域準備会議に提出して検討材料とする。インチョン戦略草案は、地域準備会議で合意に達した提言を考慮に入れながら修正を加えることになる。修正した文案はESCAP加盟国政府に提出し、ハイレベル政府間会合の場で最終的に検討される。

INGOTSのねらいは、定められた時間枠(2013-2022)のなかで優先度の高い成果を完全に達成できるように保障することであるから、目標、ターゲット、および指標の数を現実的なレベルに設定することが重要である。

ミレニアム開発目標の場合と同じく、開発のレベルはESCAP加盟国のなかで差があることから、個々の政府はそれぞれに貧困の状況など国内の諸条件に合ったターゲットおよび指標の開発を検討しても差し支えないであろう。

本文書の検討にあたって、ステークホルダーは以下の事項に留意されたい。

  • 「目標」(Goal)とは、望ましい最終結果を示すものであり、それによって私たちが達成しようとするまたは影響を及ぼそうとする状況が著しく改善するような結果のことである。
  • 「ターゲット」(Target)とは、定められた時間枠のなかで私たちが達成することをめざすもののことである。
  • 「指標」(Indicator)とは、私たちがターゲットを達成したことを確認する基準のことである。

指標については、既知の計測方法と出典から得られたデータが基準として利用できるもののみを採用した。

地域準備会議参加者には、草案の内容が障害者のニーズに対して適切かつ対応していること、かつ2013~2022年の時間枠のなかで達成可能であることを保障する観点から、インチョン戦略草案についての意見を寄せていただきたい。

目次

I. 前文
II. 主要な原則および政策方針
III. インチョン目標およびターゲット(INGOTS)
目標 1:貧困を削減し、雇用の機会を高めること。
目標 2:政治プロセスおよび政策決定への参加を促進すること。
目標 3:物理環境、公共交通、知識・情報・コミュニケーションへのアクセスを高めること。
目標 4:社会保護を強化すること。
目標 5:障害のある子どもへの早期介入と早期教育を広めること。
目標 6:性(ジェンダー)の平等と女性のエンパワーメントを保障すること。
目標 7:災害への準備および対応に障害の視点のインクルージョンを保障すること。
目標 8:障害に関するデータの信頼性および比較可能性を向上させること。
目標 9:「障害者の権利に関する条約」の批准および実施を推進し、各国の法制度を権利条約と整合させること。
目標 10:小地域、地域内および地域間の協力を推進すること。
IV. 「10年」を効果的に実施するためのモダリティ:国レベル、小地域レベルおよび地域レベル
A. 国(National)レベル
B. 小地域(Subregional)レベル
C. 地域(Regional)レベル
附属書:取り決め事項:アジア太平洋障害者の権利を実現する10年に関する地域委員会

I. 前文

私たち、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の加盟国政府および準加盟国政府の閣僚および代表は、2012年10月29日から同年11月2日まで大韓民国・インチョンにおいて開催される「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」に集まり、

PP1. 「障害者に関する世界行動計画」を採択した1982年12月3日付け国連総会決議37/52および「障害者の機会均等化に関する基準規則」を採択した1983年12月20日付け国連総会決議48/96において、障害者々が開発のあらゆる側面で開発の主体および受益者として認識されていることを想起し、

PP2. 2008年5月3日に効力を発生した「障害者の権利に関する条約」およびその選択議定書を採択した2006年12月13日付け国連総会決議61/10を想起し、

PP3. 障害者を含む貧困層および困窮した状況下で生活する人たちに政策および活動の重点を置き、その人たちがミレニアム開発目標達成に向けた進展から利益を享受するようにしなければならないことをなかんずく認識するミレニアム開発目標を達成するために一致団結することを継続的に公約する2010年9月22日付け国連総会決議65/1を想起し、

PP4. この種の地域10年計画を世界ではじめて宣言した「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)に関する1992年4月23日付け委員会決議48/3を想起し、

PP5. 「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)をさらに10年(2003-2012)延長することを宣言した、21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会の促進に関する2002年5月22日付け委員会決議58/4を想起し、

PP6. 委員会が加盟国政府および準加盟国政府にびわこミレニアム・フレームワーク実施への支援をなかんずく要請した「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の間に採択された「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の地域的な実施に関する2003年9月4日付け委員会決議59/3を想起し、

PP7. 「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の最終年である2012年に「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」および「びわこプラスファイブ」の実施について検証するハイレベル政府間会合を召集することを命じた「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワークおよびびわこプラスファイブ」の地域的な実施に関する2008年4月30日付け委員会決議64/8を想起し、

PP8. ハイレベル政府間会合につながる準備プロセスにアジア太平洋地域の障害者団体を含むすべての主要なステークホルダーが関与することを奨励した「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」に向けた地域的な準備に関する2010年5月19日付け委員会決議66/11を想起し、

PP9. 「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」(2013-2022)に関する2012年5月23日付け委員会決議68/xx を想起し、

PP10. アジア太平洋地域に推計6億5,000万人の障害者が生活していることに留意し、

PP10. アジア太平洋地域に推計6億5,000万人の障害者が生活していることに留意し、

PP11. 2度にわたる最初の「アジア太平洋の10年」においてESCAP加盟国・準加盟国政府が障害者の権利促進に関して達成した進歩、ならびに経済的および社会的な変化に対応して障害をインクルーシブする開発を推し進めるために発達した見識および良好な実践を歓迎し、

PP12. 障害者の当事者団体および支援団体を含む多様なステークホルダーが障害をインクルーシブする開発の強化に果たしている貢献に感謝し、

PP13. 障害者が教育、雇用、医療、および社会的・法的支援制度に公正なアクセスができることを保障するためにはいまだに数多くの難事に対処しなければならないことを認識し、

PP14. アジア太平洋地域で急速に進行している人口の高齢化の長期的な結果、とりわけ障害との複雑な絡み合いに対処する緊急性を強調し、

PP15. 障害者に対する理解を改善し、ネガティブなステレオタイプや差別的な言動を変えていくために継続的な努力が必要であることに留意し、

PP16. 「障害者の権利に関する条約」を実施するための包括的で分野横断型の貧困削減戦略を提供する、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、国際障害・開発コンソーシアム(IDDC)の共同文書である「コミュニティに根ざしたリハビリテーション(CBR)ガイドライン」を歓迎し、

OP1. 新たな「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」(2013-2022)の間にアジア太平洋地域のすべての障害者の権利を保護、擁護および促進するインクルーシブな社会の地域的なビジョンの達成を加速させる行動を引き起こすために、インチョン目標およびターゲットを含む「アジア太平洋障害者の権利を実現するインチョン戦略」(以下、インチョン戦略と称する)を採択し、

OP2. 2022年までにインチョン目標およびターゲット(INGOTS)に到達するために、インチョン戦略に則った行動を促進することで新たなアジア太平洋10年計画を実施することを誓い、

OP3. すべての加盟国政府および準加盟国政府がインチョン戦略の主要な担い手として積極的に参加するように呼びかけ、

OP4. ESCAP事務局長に対して、インチョン戦略の実施を支援する加盟国政府および準加盟国政府に優先権を与えるように要請し、

OP5. 小地域の政府間団体、開発協力機構、国際的および地域的な金融機関、国際連合システムの加盟国政府および私的組織がインチョン戦略の支援に参加するように呼びかける。

II. 主要な原則および政策の方向性

1. インチョン戦略は、以下に掲げる「障害者の権利に関する条約」の諸原則を認識する。

(a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重
(b) 無差別
(c) 社会への完全かつ効果的な参加及び包容
(d) 差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受入れ
(e) 機会の均等
(f) 施設及びサービス等の利用の容易さ
(g) 男女の平等
(h) 障害のある児童の発達しつつある能力の尊重及び障害のある児童がその同一性を保持する権利の尊重

2. アジア太平洋地域の障害者の権利を実現しそれを保護するために、インチョン戦略は以下に定める政策の方向性を強調する。

3. 以下の各項を保障するように最大限の努力をはかる。

(a) 障害に基づく差別を削減するために、権利を実現する支えとなる司法、行政その他の対策を採択、実施、検証、強化する。

(b) 開発政策およびプログラムは、障害についてインクルーシブであり、ジェンダー〔男女平等〕に配慮したものとし、合理的な範囲において、障害者がその権利を実現できるようにユニバーサルデザインと技術的な進展とを結びつける可能性を引き出すようにする。

(c) 開発政策およびプログラムは、生活に困窮する障害者およびその家族の基本的なニーズ、たとえば安定した食料供給、住宅、衛生、清潔な飲料水、安価な医療、およびその他の社会保障を得る必要性に対処する。

(d) エビデンスに基づく政策立案を行うために、障害に関する男女別データを厳密な形で収集、分析するように追求する。

(e) 開発プログラムとサービス保障において障害者が最大限に関与できるように、国の予算は障害をインクルーシブにする開発に優先して与える。

(f) 「10年」の実施を促進し検証するために、また関連する良好な実践例を共有するために、多分野横断型の協力を強化することで、小地域と地域の結びつきとあわせて、国と地方との連携をさらに強固なものにする。

(g) すべての障害者が、社会的・経済的な地位、宗教、民族および門地に関わりなく、開発イニシアティブ、とりわけ貧困削減プログラムに参画およびその利益を享受できることを保障するために、コミュニティに根ざしたインクルーシブな開発を促進する。

(h) 障害者は、ほかの人と同等の選択権を有し、メインストリーム〔主流〕のコミュニティ生活の一員となる。その選択には、本人が望む場合には自立して生活する選択肢も含まれる。

(i) 障害者は、合理的な配慮を受け、また経済的、地理的、言語的、その他の文化的な多様性に配慮する必要性が考慮されたうえで、物理的環境、公共交通機関、知識および情報コミュニケーションシステムにアクセスできるようになる。これらは一体として障害者の権利を実現するために不可欠な架け橋となる要素である。

(j) 多様な障害者グループがエンパワーされる。それらのグループには以下の障害者が含まれるが、これに限定するものではない。障害のある子ども、障害のある青年、障害のある女性、知的障害者・学習障害者・発達障害者、精神障害者、盲ろう者、重複障害者、全身性障害者、障害のある高齢者、貧民街・過疎地域・遠隔地に暮らす障害者、HIV感染者、および家族支援団体。

(k) 周縁的なグループにまで適切に利益をもたらすことを保障するために、障害者団体、自助グループおよびセルフ・アドボカシー・グループは、障害者の家族から支援を受けながら、政策決定に関与する。

III. インチョン目標およびターゲット(INGOTS)

インチョン目標およびターゲット(INGOTS)

4. インチョン戦略は、相互に関連する10の目標から成り立っている。

5. 目標およびターゲットを達成する時間枠は、2013~2022年の「10年」である。

目標 1:貧困を削減し、雇用の機会を高めること。

新しい10年は、障害者およびその家族の貧困を削減する点において、大きな進歩を遂げなければならない。障害者の大多数は、その障害の度合いに比して困窮し、不利な立場に置かれ、社会から疎外されることも少なくない。正規の職に就き、その職を維持するために必要な教育、訓練、および支援を受けることが、貧困を克服するための最良の手段である。したがって、就労可能であり、かつそれを望む人には、働けるために十分な支援および必要なものを与えなければならない。このためには、労働市場をより柔軟で配慮に富むものとする必要がある。障害者およびその家族を貧困から救い上げることで、インクルーシブな成長と持続可能性のある開発の達成に寄与することになる。

ターゲット 1-1. 1日の収入が1.25米ドル未満である障害者の割合を半減させる。

ターゲット 1-2. 障害者と勤労年齢層人口全体との雇用率の差を半減させる。

ターゲット 1-3. 職業訓練およびその他の雇用支援制度に対する障害者の参加率を増大させる。

目標 1: 進捗を確認するための指標

1.1. 1日1.25米ドル未満で生活する、障害者の割合。

1.2. 公共団体および民間団体における障害のある女性・男性の対人口比雇用率。

1.3. 職業訓練およびその他の雇用支援制度に参加する人のうち、障害のある女性・男性の割合。

1.4. 一般的な貧困削減プログラムの対象となる、困窮した生活を送る障害者の割合。

目標 2:政治プロセスおよび政策決定への参加を促進すること。

障害者の参加は、障害者の権利を実現するための要である。投票権および被選挙権を行使できることは、この目標に欠かせない。2013~2022年の「10年」は、障害のある女性および障害のある青年を含めて、多様な障害者グループがあらゆるレベルで政治プロセスおよび政策決定に参加できるように、大きく広範にわたる進捗が示されなければならない。裁判所、内閣、および国会といった、司法権、行政権、および立法権に関わる地位へのアクセシビリティを保障することを含めて、障害者が社会の完全な一員としてその権利を行使し責任を果たすことができるために、技術の進歩が活用されるべきである。

ターゲット 2-1: 障害のある女性を含めて、障害者が政策決定機関の代表者として参加することを保障する。

ターゲット 2-2: 障害者の政治プロセスに参加しやすくするために合理的配慮を提供する。

目標 2: 進捗を確認するための指標

2.1. 障害のある女性を含めて、障害者が、国および地方レベルで立法府およびその他の公式な政策決定機関の地位に占める割合。

2.2. 障害に関する国のコーディネーション機関に代表者として参加する多様な障害者グループ2 の数。

2.3. 性の平等および女性のエンパワーメントを目的とする国の機構に代表者として参加する、障害のある女性の割合。

2.4. 選挙のさいに障害者の投票が可能となるように、サービスや情報素材などアクセス上の特長を取り入れた、アクセシブルな投票所の割合。

2.5. 選挙人登録を含めて、障害者が候補者および投票者として選挙に参加することを可能にする、障害をインクルーシブにする選挙の手続きおよびプロセスに関する対策。

目標 3:物理環境、公共交通、知識・情報・コミュニケーションへのアクセスを高めること。

物理環境、公共交通、および知識を得るためのコミュニケーションへのアクセスは、インクルーシブな社会において障害者の権利を実現するための前提条件である。ユニバーサルデザインを基盤とする、都市部、地方および遠隔地のアクセシビリティは、障害者はもちろんその他すべての社会の構成員にとって安全性、明確さ、および利便性を向上させるものである。アクセスの監査は、アクセシビリティを保障する大切な手段であり、プランニング、デザイン、建設、維持管理およびモニタリング、ならびに評価プロセスのすべての段階を網羅しなければならない。補助装具および関連する支援サービスへのアクセスもまた、障害者が日常生活の自立度を最大限に高め、尊厳のある生活を送るための前提条件である。限られたリソース環境で生活している障害者が補助装具を利用できることが保障されるように、研究、開発、生産、流通、および維持管理を働きかける必要がある。

ターゲット 3-1: 新築の公共建築物はすべて、この目的のために訓練を受けた障害者によりアクセスの監査を受けることを保障する。

ターゲット 3-2: 公共交通および情報・コミュニケーションサービスのアクセシビリティを高める。

ターゲット 3-3: 適切な補助装具またはその製品を必要としながらそれを持たない障害者の割合を半減させる。

目標 3: 進捗を確認するための指標

3.1. 国の首都における新築の公共建築物のうち、この目的のために訓練を受けた障害者によりアクセスの監査を受けたものの割合。

3.2. 合理的配慮の提供など、アクセシビリティに関わる法令、政策、およびガイドラインの適用度。

3.3. 国際的に認められたアクセシビリティの基準に従って新築・改築された、国の首都における空港、長距離バスターミナル、および鉄道駅、ならびに島間連絡船の埠頭および桟橋の割合。

3.3. 適切な補助装具を必要とし、その必要性が満たされている障害者の割合。

3.4. 公共のテレビニュース番組において、日常的に字幕、手話通訳、および音声解説が付与されている割合。

3.5. 手話通訳サービスが必要であると表明しているろう者1,000 人あたりに対する、有資格の手話通訳者の数。

3.6. 政府のウェブサイトなど、情報、コミュニケーション、および技術に関して国際的に認められたアクセシビリティ基準を満たす政府刊行物および電子政府サービスの割合。

目標 4:社会保護を強化すること。

アジア太平洋の開発途上地域では、社会保障の対象者が公共部門で正規の雇用契約を結んでいる労働者に限定されがちであり、人口の大部分、とりわけ障害者には十分に行き届いていないことが多い。したがって、健康保障および基本収入保障に焦点を当てた社会保障をいっそう推進することが重要である。加えて、障害者は、その障害を理由として〔障害のない人よりも〕高額の保険料を課せられることが少なくない。特に精神障害者、重度障害者または重複障害者、および知的障害者にとっては、コミュニティ環境のなかで生活を営み支援を受けるためのサービス体制へのアクセスについても不備が見られる。

ターゲット 4-1: 保障を受ける対象となるすべての障害者に、完全な医療サポートおよび基本収入支援を提供する。

ターゲット 4-2: 知的障害者、精神障害者、重複障害者、重度障害者、および盲ろう者が地域で自立した生活を送るための支援プログラムを確立する。

目標 4: 進捗を確認するための指標

4.1. 障害手当を受ける対象であり、実際に受給する障害者の割合。

4.2. 1人あたりに支払われる障害手当の年間平均額。

4.3. 安価な医療リハビリテーションおよび地域を基盤とするリハビリテーションサービスにアクセスできる障害者の割合。

4.4. 知的障害者、精神障害者、重複障害者、重度障害者、および盲ろう者をはじめとする障害者が地域で自立した生活を送るための支援プログラムの数。

4.5. 主流の社会保障プログラムにアクセスできる障害者の割合。

目標 5:障害のある子どもへの早期介入と早期教育を広めること。

障害のある、またはそのおそれがある子どもを最適な時期に発見し、速やかに必要な支援を行えば、その子どもの見通しは大きく改善することができると考えられる。必要とする支援が与えられる時期が早ければ早いほど、障害の種別および程度にかかわらず、その発達の可能性を最大限に活かす機会が高まる。したがって、原因の予防、早期発見・早期介入、エンパワーメント、および教育に関して、網羅的で地域を基盤とするサービスをめざして技能を開発することが必要とされる。今日、アジア太平洋の多くの地域で、障害のある子どもの95%が教育制度から排除されていると推計されている。すべての子どもを対象とする教育および一般的なプログラムに障害のある子どもを組み入れるように注意を払い、リソースを与えることで、障害のある子どもによりよい未来を手に入れる機会がもたらすことになる。障害のある子どもにより効率的な支援を提供するパートナーとして、家族の関与を深めることも、これに含まれる。

ターゲット 5-1: 障害のある乳幼児および子どもを特定するために幅広く利用できる体系的な基準を導入し、最適な時期にリハビリテーションおよびその他の支援サービスを提供する。

ターゲット 5-2: 障害のある子どもと障害のない子どもとの初等学校・中等学校入学率の差を半減させる。

目標 5: 進捗を確認するための指標

5.1. 障害者の権利、その子どもの障害の原因の予防と発見、および早期介入に関する情報とサービスを受ける出産前の女性および母親の割合。

5.2. 早期の子どものケアおよび発達サービスにアクセスする、障害のある子どもの割合。

5.3. 障害のある女子および障害のある男子の初等学校入学率。

5.4. 障害のある女子および障害のある男子の中等学校入学率。

5.5. ろうの子どものために手話を使った教育や手話を使う環境を取り入れた教育プログラムの割合。

5.6. 障害のある子供の学習のニーズを満たす訓練を受けた教師の割合。

5.7. 主流の学校教育および特別学校において障害のある子どもおよび青年の教育を支援するために出費する国レベルの予算リソース総額の割合。

目標 6:性(ジェンダー)の平等と女性のエンパワーメントを保障すること。

障害のある少女および女性は、重複した形で不利益に直面している。扶養者への依存によってさらに深まる孤立のせいで、女性たちは多様な形態の搾取、暴力、および虐待にきわめてさらされやすい。さらに、HIVを含む性感染症および意図しない妊娠のリスクがともない、出産時の母子の死亡率は高い。生殖器切除の強要は、深刻で複雑な問題である。障害のある少女および女性は、社会における少女および女性の地位向上をめざす主流のプログラムから見過ごされていることが多い。さらに、生殖保健、一般的な健康福祉、および関連するサービスに関連する知識の情報が、知的障害者や教育を受けていない障害者を含めて容易に理解できる形式および言語で提供されることは稀である。このような状況から、自己評価、知識、および技能を開発する手段を持ち合わせた障害のある少女および女性はほとんどいない。2013~2022年の「10年」の約束は、障害のある少女および女性が主流の開発プログラムにおける積極的な参加者になってはじめて、完全に実現したことになるのである。

ターゲット 6-1: 障害のある少女および女性が主流の開発の機会に平等にアクセスできるように、国の開発計画に合理的配慮およびアファーマティブ・アクション〔積極的行動〕を取り入れる。

ターゲット 6-2: 障害のある少女および女性があまねく生殖保健にアクセスできることを達成する。

ターゲット 6-3: 障害のある少女および女性を搾取、暴力および虐待から守るための法的および規則的な対策の施行を増大させる。

目標 6: 進捗を確認するための指標

6.1. 合理的配慮およびアファーマティブ・アクションを取り入れ、障害のある少女および女性が主流の開発の機会に平等にアクセスできることを明示した国の開発計画。

6.2. 障害のある少女および女性がアクセスできる言語および形式で情報提供される生殖保健サービスの割合。

6.3. HIV に罹患し、HIV 治療、ケアおよび支援を受ける障害のある女性の割合。

6.4. 障害のある少女および女性を搾取、暴力および虐待から守るために介入した事例の数。

目標 7:災害の準備および対応に障害の視点のインクルージョンを保障すること。

アジア太平洋は災害の被害を受けやすい地域である。障害者およびその他の弱者グループは、災害に備えた政策、計画、プログラムから疎外され、その結果として死亡、負傷、および二次障害の被害に遭う危険性が高い。さらに、公共サービスの告知は障害者が理解できない形式や言語で発信されるのが常であり、非常口、避難所および施設はアクセシブルでないことが多い。したがって、災害リスクを軽減および災害に対応するためのプログラムは、障害をインクルーシブにするものでなければならず、あらゆる人のアクセスと安全のためにサービスおよびインフラストラクチャーにユニバーサルデザインの原則を取り入れることが不可欠である。

ターゲット 7-1: 避難から生活再建、さらに被災後のカウンセリングまでの過程全体を網羅し、障害をインクルーシブにする災害準備および対応の計画を設定する。

ターゲット 7-2: 災害準備および対応にあたり、障害者に対して迅速かつ適切な支援を提供するための法制度、政策、計画およびその他の対策を実施すること。

目標 7: 進捗を確認するための指標

7.1. すべての行政レベルにおいて、マニュアルや標準的な運用手順など、障害をインクルーシブする災害準備および対応の計画の割合。

7.2 障害者が参加する、国および地方レベルでの災害リスクの軽減および災害に対応するイニシアティブの策定、実施、および検証する機能を担う国の機関を設立。

7.3 障害者が利用できる、避難所および災害救援所、ならびにカウンセリングなどのサービスの割合。

目標 8:障害に関するデータの信頼性および比較可能性を向上させること。

数に入れられないということは、障害者が目につかない存在となり、疎外されがちになるということである。障害に関するデータを収集するさいに使われる「障害」および「障害者」という語句の定義は、アジア太平洋地域内で大きく異なっている。多くの場合、データ収集の方法も十分でない。障害に関するデータが十分でないことは、障害者の権利を実現する支えとなる政策立案を、エビデンスを基盤として、(継続的に改善するために)エビデンスを積み重ねながら行ううえでの妨げとなっている。これらが相まって、国を越えたデータの比較が信頼性を欠くことがしばしばである。アジア太平洋地域は、多様な障害者およびその社会的・経済的地位に関するより正確な統計を必要としている。2013~2022年の「10年」は、時と国境を越えた比較が可能な障害関連の統計の作成をめざしたデータ収集を強化する機会である。この目標の達成は、INGOTS指標の基準の中心をなすものである。

ターゲット 8-1: 信頼しうる、国際的に比較可能な障害関連の統計を作成し、普及させる。

目標 8: 進捗を確認するための指標

8.1. 国際生活機能分類(ICF)の核となる6つの質問に基づく障害者の比率。

8.2. 年齢、性別、社会的・経済的地位、および地理的場所ごとの障害者の比率。

8.3. 地域ごとに、災害で犠牲になった障害者の男女別比率。

8.4. 調査員養成など、障害者団体が障害に関するデータ収集の助けとなるために政府から提供される支援および訓練。

目標 9:「障害者の権利に関する条約」の批准および実施を推進し、各国の法制度を権利条約と整合させること。

「障害者の権利に関する条約」(権利条約)は、障害者の権利を尊重し、保護し、実現させるための網羅的なアプローチを提供する、障害に特化した初の国際法令文書である。本条約により、障害者は、慈悲の対象として扱われる存在ではなく、権利を持つ主体として明確にエンパワーメントされている。ESCAP地域は、権利条約の草案と条文作成に重要かつ歴史的役割を果たした。世界106ヵ国が条約加盟国、153ヵ国が署名国である。2012年2月24日時点で、アジア太平洋地域で35ヵ国が権利条約に署名し、同地域で23ヵ国が本条約の批准国または加盟国となった。これまでのところ、ESCAP地域は、世界のほかの4地域と比べて、批准率および加盟率がもっとも低い。2013~2022年の「10年」では、現時点の記録を改善していくことが強く望まれる。

ターゲット 9-1: 「10年」の中間年(2017年)までに10ヵ国のアジア太平洋会員諸国が新たに障害者の権利に関する条約を批准し、「10年」の最終時(2022年)までにさらに10ヵ国のアジア太平洋会員諸国が新たに障害者の権利に関する条約を批准する。

ターゲット 9-2: 障害者の権利を支え、保護するために、差別禁止法を各国で制定する。

目標 9: 進捗を確認するための指標

9.1. 2017年までに権利条約を批准した政府の数、および2022年までに権利条約を批准した政府の数。

9.2. 障害者を直接または間接的に差別する国内法の改正または廃止数。

9.3. 合理的配慮の提供を拒むことは障害に基づく差別の一形態であることを明示した、国の差別禁止法。

目標 10:小地域、地域内および地域間の協力を推進すること。

2度にわたる「アジア太平洋障害者の10年」を経て、得られた教訓、好事例および革新的な解決策を共有することなどを通じて円滑な相互支援ができるように、小地域、地域内および地域間の各レベルで協力することの価値が浮き彫りになった。アジア太平洋地域での国際協力を、効果的な実施に向けた取り組みの一環として、ESCAP 地域ロードマップに示された地域レベル進捗状況レビューの時間枠をふまえて促進していく。2011年12月1日に大韓民国・プサン(釜山)で「第4回援助効果に関するハイレベルフォーラム」が採択した「効果的な開発協力のためのプサン・パートナーシップ」では、効率的な開発の協力基盤を形成するために、障害に対する国際的な関わりの重要性が認識されている。さらに、市民社会および民間部門は、INGOTSを実現する革新的なアプローチの媒介となる重要な役割を果たしうる。2013~2022年の「10年」は、効果的な実施を支援するために、多分野の角度から、国際的な協力の機会をもたらすものである。

ターゲット 10-1: インチョン戦略実施のためのアジア太平洋マルチ・ドナー信託基金に出資する。

ターゲット 10-2: アジア太平洋地域の開発協力機構が、その政策およびプログラムに障害をインクルーシブにする度合いを強化する。

ターゲット 10-3: 国際連合の地域委員会が、障害の問題に関わる経験および好事例を地域間で情報交換するように強化する。

目標 10: 進捗を確認するための指標

10.1. 「権利を実現するためのインチョン目標」実施を支援するアジア太平洋信託基金に対して、政府およびその他のドナーが拠出する年間出資額。

10.2. インチョン目標およびターゲット達成を支援するアジア太平洋信託基金に対して出資するドナーの数。

10.3. アジア太平洋地域で活動する開発協力機構のうち、権利条約の批准および実施ならびに関連する検証について支援し、障害をインクルーシブにする開発に関する要請、政策、活動計画およびフォーカルポイント(拠点)を備えるものの割合。

10.4. 障害に関連するイニシアティブを強化する開発協力機関によって割り当てられる財源の割合。

10.5. INGOTSを実現することで「10年」の実施の先鋒となるための地域および小地域のインセンティブ計画の数。

10.6. 国際連合の地域委員会に関わる障害関連の地域間イニシアティブの数。

IV. 「10年」を効果的に実施するためのモダリティ(手順):国レベル、小地域レベルおよび地域レベル

6. 本セクションでは、「10年」の間に障害者の権利の実現を推進するためのデータおよび情報を構築するとともに「10年」の実施を一体となって促進および支援するモダリティを定める。

A. 国(National)レベル

7. インチョン戦略を実施する核となるのは、諸地方との連携とともに、障害に関する国のコーディネーション機関である。

8. これまでの2度にわたる「アジア太平洋障害者の10年」で、そのような機関が数多く設立された。したがって、それらの機関がインチョン戦略の実施にあたって主要な責任を担うのは当然である。このことは、多様な分野にわたる省庁や部門、障害者団体や家族支援グループを含む市民社会、および民間部門からの支援を得て、国の活動計画を開発する、また指標によって進捗状況が追跡可能な基礎データを確立するにはなかんずく不可欠である。

9. 障害に関する国のコーディネーション機関は、「10年」の実施に国の全体が関与するように働きかけるために、インチョン戦略を当該国の言語に翻訳し、その言語で記された戦略をアクセシブルな形式で利用できることを保障することが求められる。

10. 国際連合カントリーチームは、「国際連合カントリーチームと実施パートナーのための国際連合ガイダンスノート」の精神と意図に則り、国レベルの国連プログラムに上記を反映させることにより、インチョン戦略の実施を支援することが奨励される。

B. 小地域(Subregional)レベル

11. 小地域の非政府組織、たとえば東南アジア諸国連合(ASEAN)、経済協力機構(ECO)事務局、太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局および南アジア地域協力連合(SAARC)は、インチョン戦略の実施を支援することが奨励される。

12. 上記の点から、補足となる資料として、以下に掲げる小地域の政策文書が留意される。「障害に関する太平洋地域戦略2010-2015」および「障害者の役割と関与の強化に関するバリ宣言」。ASEAN加盟国政府首脳は、2011年11月17日にインドネシア・バリ島で開催された第19回ASEAN首脳会議において、バリ宣言を通じて2011~20年をASEAN障害者の10年にすると宣言した。

13. 北・中央アジア、東・北東アジア、太平洋、および南・東南アジアにあるESCAP事務局の各小地域支部は、小地域の協力を支援することにより、「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」を促進するものとする。

C. 地域(Regional)レベル

14. 「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年に関する地域委員会」を設立する。同委員会は、「10年」の完全かつ効率的な実施を促進するものとする。その機能は、「10年」の進捗状況を定期的に検証し報告すること、インチョン戦略を推進するための地域協力を促進すること、および適切な方法で各国政府に提言と支援を行うことなどである。同委員会の取り決め事項は附属書として添付する。

15. ESCAP事務局は、地域をまとめ基準を設定する役割、分析作業、および政府への技術的な支援を通じて、「10年」の実施に貢献するものとする。とりわけ、ESCAP事務局は以下の各項を実行することが求められる。(a)「10年」の進捗を確認し、障害に関する統計が改善されるように支援すること。(b)国の経験と良好な実践について情報交換を促進すること。(c)法制度が「障害者の権利に関する条約」と整合するように諸政府を適切な方法で支援すること。(d)障害者の権利を促進する権利実現キャンペーンを支援すること。(e)「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年に関するステークホルダーコンサルテーション」の定期的な召集などを通じて、「10年」の実施が障害者のニーズと呼応するように保障することを市民社会に確約すること。(f)同委員会の記録文書をアクセシブルな形式で利用できるようにすること。

16. 最初の「アジア太平洋障害者の10年」の成果として障害者のエンパワーメントおよびバリアフリーでインクルーシブな社会を促進するために設立された、アジア太平洋障害開発センター(APCD)は、とりわけ障害者の立場に沿った製品、サービス、雇用機会および起業家精神開発を促進するような、障害をインクルーシブにする事業に民間部門が関わるように注意深く働きかけ、継続して障害者の能力を構築し分野横断型の協力関係を築き上げていくことが求められる。

17. 市民社会団体は、「10年」が継続して障害者の願いとニーズに応えることが保障されるように、「10年」の実施に関与することが奨励される。

18. 民間部門団体は、政府、市民社会、およびその他のステークホルダーと協働し、障害をインクルーシブする事業の実践においてアジア太平洋地域のリーダーシップを築き上げることが望まれる。

附属書:

取り決め事項:
アジア太平洋障害者の権利を実現する10年に関する地域委員会

目的

1. アジア太平洋障害者の権利を実現する10年に関する地域委員会(Regional Committee on the Asian and Pacific Make the Right Real Decade of Persons with Disabilities)の目的は、2013-2022の 「10年」の完全かつ効果的な実施を促進することである。

機能

2. 上記第1パラグラフで定めた目的を追求するために、委員会は下記の機能を担うものとする。

(a) 「10年」の進捗状況、とりわけインチョン戦略の実施に向けた進捗について定期的に検証を行うこと。

(b) 「10年」の中間時点および最終時点などに、定期刊行の地域レポートを発行すること。

(c) インチョン戦略の実施を推し進めるために地域協力を促進すること。

(d) インチョン戦略の実施に向けた小地域の活動を強化するために小地域内の諸組織と連携すること。

(e) 適切な方法で、各国政府に提言と支援を行うこと。

委員

3. 委員会は、10のESCAP加盟国および10の市民社会組織で構成するものとする。

4. 委員の任期は5年間とし、再選によりさらに5年間の任期を務めることができる。

5. ESCAP加盟国は、委員に立候補する資格を有するものとする。

6. 下記の基準に合致する市民社会組織は、委員に立候補する資格を有するものとする。(a) アジア太平洋地域において地域および小地域レベルで活動を行っている。(b) 多様な障害者の利益を代表、支援および/または促進している団体である。(c)インチョン戦略を推し進めるために必要な専門技能・知見を有している。

7. 第1回目の選出は、2012年10月29日から同年11月2日まで大韓民国・インチョンで開催される「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合」において行うものとする。第2回目の選出は、その次のハイレベル政府間会合において、「10年」の中間年(2017年)に行うものとする。

8. 上記第7パラグラフで述べた2012年のハイレベル政府間会合に参加するESCAP加盟国は、委員を務める10のESCAP加盟国を選出するものとする。

9. 上記第7パラグラフで述べた2012年のハイレベル政府間会合に参加する10の市民社会組織は、上記第6パラグラフに示した資格基準に合致し委員を務める10の市民社会組織を選出するものとする。

手続規則

10. 委員会は、その手続規則を採択するものとする。

事務局

11. ESCAP事務局は、委員会事務局を担うものとする。


事務局注

✽本文書は正式な編集作業を経ずに発行したものである。

1 ミレニアム開発目標は、8の目標、21のターゲット、および60の指標で成り立っている。

2 多様な障害者グループには以下の障害者が含まれるが、これに限定するものではない。障害のある子ども、障害のある青年、障害のある女性、知的障害者・学習障害者・発達障害者、精神障害者、盲ろう者、重複障害者、全身性障害者、障害のある高齢者、貧民街・過疎地域・遠隔地に暮らす障害者、AIDS感染者、および家族支援団体。


日本語訳:日本障害フォーラム(JDF)