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VI. 2012年のハイレベル政府間会合において発表されるアジア太平洋地域の障害者に関する研究の試案の再検討

  1. 事務局は、ハイレベル政府間会合用のデータとして準備する研究の概要を提示し、研究を通じて障害者の声がまとめられ、政策決定と実施のプロセスに盛り込まれると述べた。
  2. 事務局は、さまざまな種類のバリア(物理的アクセシビリティおよび情報アクセシビリティ、社会的制約、輸送・通信・教育および経済面でのバリア)に加え、政策の実施と策定との間に見られる格差を分析する一貫した枠組みを提供するために、障害者の福祉と生活を研究案におけるおもな焦点としたと述べた。
  3. 研究は参加型調査を通じて進められ、障害者が研究の企画と実施をサポートすることになる。障害者には、特に教育、職業訓練および雇用の機会、労働市場、信用取引および財形など、広範囲にわたる開発分野へのアクセスを阻むバリアと、これに対する解決策を特定することが求められる。それはさらに、政策の策定プロセスだけでなく、政策実施の手順や現実との格差を調査するための基礎を築くことになる。研究は、そのようなボトムアップ型のアプローチと参加型調査の利用により、障害者が政策開発と意思決定のプロセスに効果的に参加し、影響を及ぼすことができるようになることを目的としている。
  4. 事務局は、障害者が直面するバリアに関する地域研究に見られる格差を、研究により解消できると強調した。さらに、研究とその成果に関する企画、実施および宣伝に、すべての関係者の参加を得ることの重要性を明らかにした。研究のためのデータおよび情報提供に政府が積極的に参加することの重要性も、改めて強調された。
  5. 専門家会議兼関係者協議会は、事務局のイニシアティブを称賛した。障害者団体代表らは、イニシアティブに対する全面的な支援と研究への参加に関心を示した。この点について障害者団体代表らは、障害者から適切な参加者を選び、聴覚障害者、視覚障害者、盲ろう者、および知的障害者とその家族を含む、すべての障害者にとってアクセシブルな言語およびフォーマットによるアンケートならびにガイドラインの内容の開発を支援するにあたり、重要な役割を果たすことができると述べた。
  6. 多くの専門家が、エビデンスベースの研究案により、国レベルの権利擁護活動が促進されると述べた。さらにエビデンスは、当該地域の国々における政策開発に直接役立てることもできる。研究の結果、世界の他の地域でもモデルとなる優れた実践例を提供することが可能となる。
  7. 専門家の中には、新たな「障害者の十年」の開始に当たり、提案された研究の成果をまずベンチマークとして利用し、その後、障害者権利条約の実施に向けた進展をモニタリングするデータ収集段階へと、さらに進めていくことができると提案する者もあった。
  8. 数名の専門家が事務局に対し、研究の企画・実施とその成果の周知を支援することを申し出た。これには、関連文書および計画の提供も含まれる。専門家らは、さまざまな関係者の特別なニーズを考慮しつつ、研究について効果的に知らせる戦略を開発することの重要性を強調した。また、研究をもとにした提言は、現地レベル、国レベル、地域レベルに合わせて変更されるべきであるとした。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局は、関連ASEAN機関への研究結果の発信を支援すると申し出た。障害者、特に研究に参加してくれた障害者に、結果を知らせる必要があることが明確にされた。さらに、国レベルでの関連研究の経験にもとづき研究を進めることが重要であるとされた。
  9. 多数の機関が、地域研究の準備に貢献し、これを支援する姿勢を示した。以下のような具体的な申し出があった。

(a) ロシア医科学アカデミー労働衛生研究所(Research Institute of Occupational Health, of the Russian Academy of Medical Science)副所長は、ロシア連邦における障害者関連調査から得られた政府のデータを提供することを申し出た。

(b) 韓国保健福祉省障害者権利推進局(Division of Rights Promotion for Persons with Disabilities)局長は、1995年、2000年、2005年および2008年に実施された韓国における障害者関連調査の結果を提供することを申し出た。新たな調査は2011年に実施される予定である。

(c) 日本の内閣府障害者施策担当参事官は、日本で身体障害者・知覚障害者・知的障害者および精神障害者に関する総合調査を実施する予定であり、予備調査を2010年に、本調査を2011年に行い、結果を入手次第、事務局に提供することができると述べた。

(d) フィリピンのキリスト教盲人ミッション(CBM)の、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)コーディネートオフィサーは、組織を上げて積極的に研究を支援し、特に障害者団体などの市民団体と連携していきたいと表明した。

(e) アフガニスタンの公衆衛生省の身体リハビリテーションシニアアドバイザーと南アジアCBRネットワークコーディネーターは、『2008年-20013年障害行動計画:2010年第5回南アジアCBRネットワーク会議報告書(Disability Action Plan 2008-2013; Report of the Fifth South Asia CBR Network Conference 2010)』や『CBR研修ニーズ評価研究2009(the CBR Training Needs Assessment Study 2009)』など、調査研究関連文書を事務局に提供することを申し出た。

(f) 中国障害者連盟(CDPF)は、1987年と2006年に実施された国内サンプル調査の結果2回分を、それぞれ提供することを申し出た。2007年以降毎年実施されているモニタリング調査により得られた情報も、CDPFのウェブサイトから中国語で利用できる。

(g) 障害者インターナショナルアジア太平洋(Disabled People's International Asia-Pacific)は、ネットワークを通じて実地研究を支援し、特に障害者の声を集めるとともに、障害やジェンダーに配慮した視点を盛り込んだアンケートの開発に協力することを申し出た。

(h) 世界ろう連盟(World Federation of the Deaf)は、2007年と2008年に聴覚障害者団体に対して国際調査を行ったと述べた。報告書はオンラインで入手できる。

(i) DAISYコンソーシアムは、数ヶ国における障害者に焦点を絞った災害リスク削減に関する実地研究から得られた経験と研究結果を提供すると申し出た。

(j) DAISYコンソーシアムおよび世界盲人連合(World Blind Union)の会員であるタイ盲人協会(Thailand Association of the Blind)は、ESCAP事務局職員に対し、アクセシブルな電子文書制作に関する研修を実施することを申し出た。

(k) アジア太平洋障害者センター基金(Asia-Pacific Development Center on Disability Foundation)は、数ヶ国における障害者を対象としたリーダーシップ能力開発プログラムから得られたエビデンスベースの研究結果を提供することを申し出た。

(l) インクルージョン・インターナショナル(Inclusion International)は、アジア太平洋数ヶ国における、知的障害者とその家族に関する実地研究を支援することを申し出た。

(m) CBRアジア太平洋ネットワーク(CBR Asia-Pacific Network)は、地域に根ざしたリハビリテーションに関する優れた実践例の研究成果を提供することを申し出た。

(n) アジア太平洋障害フォーラム(Asia Pacific Disability Forum)は、国レベルの加盟機関によって実施された、障害者も含めた災害リスク削減と、障害者の雇用に関する研究の結果を提供することを申し出た。

(o) 太平洋障害フォーラム(Pacific Disability Forum)は、今後2年間にわたって実施される、効果的かつ効率的な障害者団体に関する実地研究計画を提供することを申し出た。

(p) レオナルド・チェシャー・ディスアビリティ(Leonard Cheshire Disability)は、今後3年間にわたって実施される、障害者が直面する課題に関する調査研究計画を提供することを申し出た。

  1. 研究の概念的枠組みと方法に関しては、自閉症、知的障害・精神障害・身体障害および知覚障害など、あらゆる種類の障害を網羅することが強調された。さらに専門家らは、障害のある女性と児童、農村部や遠隔地、島嶼地域に住む障害者も研究対象として含める必要があると強く主張した。またアジア太平洋地域の公用語や現地語、手話などを考慮し、障害者の多様なコミュニケーション上のニーズに合わせて、データ収集を行ったり、関連情報を提供したりすることが、課題の一つとしてあげられると強調した。
  2. 数名の専門家が、研究においては、障害の種類に焦点を絞った医学的アプローチではなく、障害の社会的・機能的モデルを使用するよう推奨した。さらに、ジェンダーに配慮した視点を取り入れた研究を実施するべきであるとした。また、国別比較ができるよう、研究単位となる障害者個人およびグループを特定する取り組みが必要であると指摘した。
  3. 専門家会議兼関係者協議会では、事務局が提案するボトムアップ型アプローチが称賛された。また、データの定性分析・定量分析も評価された。特に基礎レベルのデータ収集を担当するチームなど、国レベルの研究に関与する者の研究能力を育成しなければならないことが強く主張された。総合的な研究のためには、政府および障害者団体など、さまざまな情報源からのデータ収集が重要であることが明らかにされた。
  4. 研究から得られたエビデンスは、新たな「十年」に向けた戦略開発に不可欠であるため、専門家の間から、事務局が提案する2012年6月という期限以前に研究を終了することは適切と言えるのかという質問が出された。事務局は、さまざまな研究過程で得られた結果は、その後も継続的に利用できるとの回答を明確に示した。