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VII. 勧告「2012年以降に向けて」

  1. 専門家会議兼関係者協議会では、『2012年以降に向けての提言(Proposals on the way forward after 2012)』という事務局による文書を検討した。同文書では、2010年6月1日現在、アジア太平洋地域の30ヶ国の政府が障害者権利条約に署名し、18ヶ国が批准、承認、あるいは加盟したと述べている。
  2. 障害者インターナショナルアジア太平洋会長は、2010年6月21日から22日までバンコクで開催された、アジア太平洋障害者団体の連携:「アジア太平洋障害者権利条約の効果的な実施十年」の設定に向けて、という会議の成果を発表した。『バンコク勧告(Bangkok Recommendation)』と題された成果文書(付録II)では、障害者権利条約の批准と実施を促進する新たな「十年」の設定を求めており、特に、地域、準地域、および国レベルにおける同条約の実施をサポートする障害者団体のリーダーシップを強調している。障害者インターナショナルアジア太平洋も、『仁川(インチョン)戦略(Incheon Strategy)』と題した草案を回覧し、専門家会議兼関係者協議会による検討を求めた。
  3. 専門家会議兼関係者協議会では、将来に向けてグループディスカッションが行われた。2010年10月19日から21日まで、バンコクで開催される第2回社会開発委員会に対して、以下の勧告が提出された。

A. 新たな「十年」

  1. 障害者の権利の促進に大きな進展がみられた一方で、さまざまな障害のある人々の完全参加を達成するためには、さらなる行動が必要であることが確認された。このため専門家会議兼関係者協議会では、ESCAPによるアジア太平洋地域における新たな「十年」の宣言を強く支持することを表明した。
  2. 新たな「十年」のテーマとして、障害者権利条約と障害を含めた開発に焦点を絞ったさまざまな選択肢が検討された。
  3. 新たな「十年」の目的とおもな焦点は以下の通りである。

(a) 障害者の権利とニーズに関わる優れた実践例について、地域協力および国際協力を促進すること
(b) アジア太平洋地域において、障害者権利条約の批准、調整および実施を迅速に進めること
(c) アジア太平洋のすべての準地域において、障害者権利条約の実施を促進すること
(d) 国内において、障害者の参加を開発の優先課題として重視し続けること
(e) さまざまな障害のある人々による、意思決定、自己決定、および人間中心の開発への参加促進を阻む態度、物理的、組織的および政策関連の障壁を撤廃すること
(f) 障害を含めた開発への複数のセクターの参加と、そのための資源配分の持続可能性を強化すること
(g) 測定可能かつ達成可能な指標を用いて、現地、国および準地域における「十年」の進捗状況を追跡すること
(h) さまざまな障害者グループを対象とした、地域に根ざしたサービスを改善すること

B. 新たな「十年」のための戦略

  1. 専門家会議兼関係者協議会では、新たな「十年」のための戦略として以下の要素を検討した。

(a) エビデンスベースの研究結果を反映すること

(b) 障害者権利条約の精神と目的を盛り込むこと

(c) 「十年」の活動において、ジェンダーの平等、これまで主流の政策およびプログラムから排除されてきた、聴覚障害者、盲ろう者、重複障害者、知的障害者、精神障害者、高次脳機能障害者、難治性・慢性疾患患者、自閉症者、および障害のある女性と児童など、すべての障害者とその家族の参加を重視すること

(d) 目に見える結果をもたらす、具体的かつ実践的な活動を支援すること

(e) 障害者の権利を守る非差別法の発布、実施および見直しを促進すること

(f) 障害を含めた開発への変革を促すため、複数のセクター、広範な関係者および市民団体の参加を促進すること

(g) 障害に配慮した予算編成、企業の社会責任の行使、およびソーシャル・エンタープライズのようなビジネスモデルの採用などを通じて、さらに多くの資源を配分し、その持続可能性を強化すること

(h) 障害に関わりのある企業間のネットワーク構築と連携を促進すること

(i) 新たな「十年」に関わるすべてのプロセスにおける障害者団体の役割を強化すること

(j) 新たな「十年」に関わるプロセスにおける障害者の親と家族の団体の役割を明らかにすること

(k) 一層効果的な権利擁護活動のための、障害者の能力開発を確実に進めること

(l) 一層効果的な権利擁護活動および支援活動のための、障害者の家族および支援者の能力開発を確実に進めること

(m) 障害者のエンパワメントと障害者権利条約の実施促進のため、地域に根ざしたリハビリテーションおよび自立生活など、さまざまなアプローチを利用すること

(n) より強力かつインクルーシブな、地域に根ざした開発およびリハビリテーションのニーズに対応すること

(o) 消費者中心の地域に根ざしたサービスの提供と自立生活の社会的モデルへのパラダイムシフトを強化すること

(p) アクセシブルな情報通信技術(ICT)を社会変革の手段として利用すること

(q) すべての政策領域、プログラムおよびサービスにおける、障害者の視点の主流化を促進すること

(r) 「十年」の実施に向けて、ESCAP準地域事務所をはじめとする準地域的メカニズムを活用すること

C. 2012年「2003年―2012年アジア太平洋障害者の十年」実施最終評価ハイレベル政府間会合成果文書

  1. 専門家会議兼関係者協議会は、成果文書によって以下のニーズに関わる問題を解決することができるとの見解を示した。

(a) 障害者権利条約の批准、加盟の促進
(b) 「十年」の戦略で確認された課題を解決するための十分なリソースの確保
(c) あらゆるレベルにおける「十年」の行動のための、明確で達成可能かつ測定可能な目標と計画の設定
(d) 聴覚障害者、知的障害者とその家族、精神障害者、障害のある女性と児童、盲ろう者、自閉症者、重複障害者など、排除されている者の声なき声の結集
(e) 障害を含めた開発、障害の主流化、アクセシビリティと完全参加のためのミッシングリンクの「末端接続」

  1.  早期発見および早期介入
  2.  教育および研修
  3.  障害者のエンパワメント
  4.  ICTおよび支援技術、手話通訳や字幕の開発と識字能力の向上
  5.  雇用および起業の推進
  6.  HIVその他の感染症の予防
  7.  サイレントパンデミックを含む災害リスクの削減と管理
  8.  環境および公共輸送機関の整備
  9.  統計および調査研究
  10.  地域開発・国際開発の課題とプログラム

(f) 以下の手段による、新たな「十年」の実施を支援するためのESCAPの能力とリソースの強化

  1.  聴覚障害者、視覚障害者および知的障害者のための、アクセシブルなフォーマットによる、わかりやすい言語での情報の提供(聴覚障害者との会議における手話通訳および字幕など)
  2.  ESCAPがアジア太平洋地域における国連システムのモデルとなるよう、ESCAP施設のアクセシビリティの向上
  3.  ESCAP本部および準地域事務所における障害者の雇用

D. 成果文書と他の文書との関連

  1. 専門家会議兼関係者協議会は、付録IIIにあげる他の地域文書や国際文書、政策・プログラムの実施を強化する方策を、成果文書と関連づけるべきであるとの勧告を提出した。