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北京宣言およびインチョン戦略の実施を加速するための行動計画
(日本障害フォーラム仮訳)

1. われわれアジア太平洋経済社会委員会加盟国・準加盟国の閣僚および代表者は、2017年11月27日から12月1日まで北京で開催された、アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)中間年評価ハイレベル政府間会合に集い、

2. 持続可能な開発目標を含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題された2015年9月25日の〔国連〕総会決議70/1において、誰も取り残さないと総会が誓ったこと、また、障害者の権利に関する条約および選択議定書に関する2015年12月17日の〔国連〕総会決議70/145において、障害に特化した指標により、既存の社会的、経済的および政治的不平等をより一層特定できると総会が指摘したことを想起し、

3. 同じく、「仙台防災枠組2015-2030」に関する2015年6月3日の〔国連〕総会決議69/283において、災害リスク削減におけるユニバーサルアクセスを可能とする対応・復興再建・復旧アプローチを公的に牽引し、促進するために、障害者に力を与えることと、災害に対して強靭な、災害リスクの予防および削減への官民投資を強化するために、ユニバーサルデザインの原則を適用することの重要性を総会が認めたことを想起し、

4. さらに、障害者のためのインクルーシブかつアクセシブルな国際連合の完全な実現に向けた取り組みに関する2015年12月17日の〔国連〕総会決議70/170において、障害者にとってアクセシブルな環境を作り出すために、国連システム内の設備およびサービスを改善するよう総会が事務総長に要請したことを想起し、

5. 自閉症スペクトラム障害、発達障害および関連する障害により影響を受けている個人、家族および社会の社会経済的ニーズへの対応に関する2012年12月12日の〔国連〕総会決議67/82において、自閉症スペクトラム障害、発達障害および関連する障害のある子どもが、長期的な医療、教育、訓練および介入プログラムを利用することに課題があること、自閉症スペクトラム障害、発達障害および関連する障害のある人が、対等な社会の構成員として社会参加する上で引き続き障壁に直面していることに総会が懸念を表明したことを想起し、

6. 2013年6月27日に採択された「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(注1) において、プリントディスアビリティのある人がアクセシブルな形式の印刷された書籍にアクセスする機会が広げられたことを認識し、

7. 2014年にアジア太平洋経済協力〔APEC〕が、この地域における障害者の利益のためにインクルーシブ開発を導入することを目的とし、彼らの経済的なエンパワーメントを促進する共通の基盤を模索し、経験を共有し、方法を明らかにするために、障害に関する有志グループを組織したこと、2015年5月18日にフィリピンのボラカイで開催されたインターネット経済に関するシンポジウムにおいて、障害に関する有志グループが人材養成作業部会の下部組織としてAPECにより公式に認定されたこと、APEC首脳会議がフィリピンのマニラで開催された2015年、同有志グループの第1回目の会合が9月にセブで開催されたことを歓迎し、

8. 同じく、障害者を含めたインクルーシブ開発に向けて実践的な協力を強化することを目的として、中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)博覧会の枠組に障害分野における協力が盛り込まれ、2015年に第1回中国ASEAN障害フォーラムが開催されたことを歓迎し、

9. 2013年5月1日のESCAP総会決議69/13において、「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」を総会が承認したことと、2014年8月8日の総会決議70/23 (注2)において、アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)前半5年間(2013-2017)のインチョン戦略の実施を支援するために、国、小地域および地域レベルでとるべき行動の概要を記した「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」の「ロードマップ」(注3) を総会が承認したことを想起し、

10. 加盟国・準加盟国によるインチョン戦略実施の進展に加えて、市民社会、とりわけ障害者団体による、障害者を対象とした継続的なアドボカシーと能力構築ならびに支援サービスの実施等によるものを含む貢献を評価し、

11. 同じく、アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)に関するワーキンググループの取り組みを通じて、加盟国と市民社会組織が2013年から2017年まで「十年」の完全かつ効果的な実施を促進するために連携したことを評価し、

12. 障害者が生活のあらゆる次元において、いまだに差別と不当な扱いに直面し続けており、発展の機会が限られていること、障害者の総合的な権利が、いまだに国および地域レベルでの効果的な法律、政策ならびに計画を通じて実現されていないこと、また、ユニバーサルデザインに基づく政策と基準が、国際レベルでは促進されているが、各国・各地域内のさまざまな部門では、いまだに完全には開発・利用されていないことに懸念を持ちつつ注目し、

13. 加盟国が、適切な予算配分に支えられつつ、障害者の権利と障害インクルーシブ開発に関するエビデンスベースの政策を系統的に実施し、評価することの必要性を強調し、

14. この地域での障害インクルーシブ開発の促進における中国政府による積極的な取り組みを評価し、とりわけアジア太平洋障害者の十年(2013-2022)中間年評価ハイレベル政府間会合を重視し、

15. 持続可能な開発のための2030アジェンダのパラグラフ37において、スポーツが寛容性と尊厳の促進により、開発および平和の実現にますます寄与することが認識されていることを想起し、障害者の健康と福祉ならびに社会全体の発展への障害インクルーシブなスポーツの重要な貢献に鑑み、障害インクルーシブなスポーツをあらゆる持続可能な開発計画の策定に組み込むことの重要性を強調し、

16. 本宣言の付録に含まれる「インチョン戦略の実施を加速するための行動計画」に従い、インチョン戦略の実施を加速し、その進捗状況を追跡するための仕組みを強化することを決意し、

17. インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画を、小地域およびその他の世界的な障害関連枠組に加えて、2030アジェンダと持続可能な開発目標および障害者の権利に関する条約の実施も支援する独自の一連の手段として、適宜活用することに取り組み、

18. 同じく、障害インクルーシブ開発に向けて、多省庁、多分野にまたがる収束的なアプローチと、市民社会組織、民間企業および学術機関とのパートナーシップの促進に、障害者を代表する団体の完全かつ効果的な参加を得、政府による政策の実施と進捗状況の追跡を支援しつつ取り組み、

19. さらに、インチョン戦略の実施ならびに持続可能な開発目標の達成に向けたエビデンスベースの政策策定と進捗状況の追跡を支援するために細分類された、信頼性のある比較可能な最新の障害に関するデータの収集および利用の強化に取り組み、

20. 未来を分かち合うアジア太平洋コミュニティを築くにあたって障害者に特に注意を払い、「十年」を相互学習と共同開発のプラットフォームとするために、議論と連携を通じてともに成長を達成するという原則の下、地域および小地域での協力を引き続き強化することに取り組み、

21. 〔ESCAP〕事務局長に以下のことを要請する。
(a)加盟国・準加盟国が、「アジア太平洋地域における持続可能な開発目標のための2030アジェンダ実施に向けた地域ロードマップ(Regional road map for implementing the 2030 Agenda for Sustainable Development in Asia and the Pacific)」(注4) の一環として、特に北京宣言および行動計画を通じてインチョン戦略の実施を加速することを、優先的に支援すること
(b)インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画を、持続可能な開発のための2030アジェンダと障害者の権利に関する条約の実施を支援する効果的な手段として推進すること
(c)加盟国・準加盟国に対し、信頼性のある比較可能な障害統計を取る能力を高めるための技術的な支援を提供すること
(d)アジア太平洋地域調整メカニズムを通じて、北京宣言および行動計画の実施に向けた国連システム全体による支援を奨励すること
(e)国連システム全体による施設、情報およびサービスのアクセシビリティを改善する取り組みを支援し、〔ESCAP〕事務局施設内でも会議および会合のアクセシビリティに関する内部指針の採用等の方策を通じて、これを実施すること
(f)北京宣言および行動計画を第74回〔ESCAP〕総会に提出し、検討と承認を行うこと

(注1)www.wipo.int/wipolex/en/details.jsp?id=13169

(注2)E/ESCAP/70/34を参照

(注3)E/ESCAP/70/17

(注4)E/ESCAP/73/31, annex II

付録

インチョン戦略の実施を加速するための行動計画

Ⅰ.序論

1.第3次アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)前半5年(2013-2017)を実施した経験に基づき、インチョン戦略の実施を加速するための行動計画が、アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)に関するワーキンググループ(以下、「ワーキンググループ」)によって、2014年から2017年に開催された会合で検討・承認され、また専門家の提言と、2017年にESCAPによって実施された「十年」中間年評価アンケートの回答を通じて情報が寄せられた。

Ⅱ.目的

2.本行動計画は、2018年から2022年までの間、世界初の障害に特化した地域レベルの開発アジェンダである「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」の実施を加速するための戦略的な政策を示すものである。これにはインチョン戦略の10の目標の達成に向けた政策行動の提言が含まれる。政策を導入し、効果的な実施へと転換することには、政治的意思、優れたガバナンス、多省庁による協力と、適切な予算配分および技術力を備えた人材が必要で、これらはインチョン戦略実施の成功に欠かせない。

3.本行動計画の主体者は政府である。しかし、インチョン戦略ならびに持続可能な開発のための2030アジェンダに従い、市民社会、民間企業および国際組織とのパートナーシップを含むマルチステークホルダー・アプローチの重要性に注目すべきである。

4.本行動計画では、2030アジェンダにおける、誰も取り残さない、という加盟国の誓約を果たすことが目的とされ、インチョン戦略、北京宣言および行動計画、2030アジェンダ、障害者の権利に関する条約とその他の開発アジェンダの実施による相乗効果が強調されている。

5.このインチョン戦略、北京宣言および行動計画とその他の開発アジェンダの相乗効果を実証するために、推奨される行動と、インチョン戦略、持続可能な開発目標および必要に応じて仙台防災枠組2015-2030との連関が示されている。

Ⅲ.指針

6.北京宣言および行動計画は、インチョン戦略に含まれる重要な原則と政策方針を再確認し、誰も取り残さないという目標に向けてインクルーシブな共同開発を特に重視するものである。

Ⅳ.障害の視点から持続可能な開発のための2030アジェンダの実施を進めること

7.2030アジェンダおよび持続可能な開発目標は、障害インクルーシブである。5つの目標において障害への明確な言及があり、別の6つの目標が障害関連の問題に間接的に関わっている(注1)。必要に応じて障害状況別にデータを細分化することも目標に含まれている。さらに、障害者は2030アジェンダの実施を支援する12のメジャーグループの1つとして国連に認められている(注2)

政府がとるべき行動

8.国内の状況と優先順位に従い、政府は適宜、障害者が直面する課題に取り組む持続可能な開発目標の国内実行計画ならびにこれと関連した監視と指標の枠組を策定し、採用し、実施すべきである。これには、持続可能な開発目標の指標全般について、必要に応じて障害別にデータを細分化することに加えて、インチョン戦略のコア指標用に収集されたデータを活用することも含まれる。さらに、政府は前述のあらゆる段階において、障害者とその代表団体および障害専門家の参加を得るべきである。

ESCAPがとるべき行動

9.ESCAPは以下のことを行うべきである。
(a)適宜に、かつ他の国連機関および開発組織と連携し、持続可能な開発目標の達成に向けた進捗状況を追跡するための障害インクルーシブな統計およびデータの収集・分析における政府の技術力構築を支援すること
(b)ワーキンググループと連携し、2030アジェンダの障害インクルーシブな実施に関するグッドプラクティスを、2030アジェンダの実施、フォローアップおよびレビューを支援する最も総合的な地域政府間フォーラムである、持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム等の地域プラットフォームを通じて共有するための仕組みを開発すること

Ⅴ.インチョン戦略の実施を、特に北京宣言および行動計画を通じて進めること

目標1:貧困を削減し、労働および雇用の見通しを改善すること(持続可能な開発目標ターゲット1.1、1.2、4.4、4.5、8.5、8.6、10.2、障害者の権利に関する条約第27条、第28条を支持)

政府がとるべき行動

10.政府は以下のことを行うべきである。
(a)金融サービスおよび能力構築プログラムへのアクセス強化等、障害者のための総合的な貧困削減策を策定し、実施すること
(b)特にさまざまな障害のある人や障害のある女性のインクルージョンを促進し、合理的配慮の提供に留意することにより、障害者の雇用促進と生計、やりがいのある仕事および起業の機会の増加を可能にするスキームを策定し、実施すること。これには以下の方法が含まれる。
(i)断片化を避けるため、障害者のためのワンストップ型雇用サービス制度を創設する。
(ii)障害者を雇用し、職場にアクセシブルな施設を建設する雇用主に、報奨金もしくはその他のインセンティブを提供する。
(iii)企業の社会的責任からの障害へのアプローチとは異なる新たなビジネスモデルとして、障害インクルーシブなビジネスを促進し、ビジネスサイクルのすべての段階に障害の視点を盛り込む。
(iv)企業間ネットワークの設立を促進し、障害者の就労の機会、職業訓練および技能開発を増進するために、障害者雇用サービス制度全般の調整を進める。
(v)従業員を対象としたジョブコーチング、ジョブマッチング、就労前カウンセリング等の障害者支援サービスの提供と、障害者の就労継続のためのアクセシブルな形式による情報、合理的配慮および支援技術の提供を促進する。

目標2:政治プロセスおよび政策決定への参加を促進すること(持続可能な開発目標ターゲット5.5、10.2、16.7、障害者の権利に関する条約第29条を支持)

政府がとるべき行動

11.政府は以下のことを行うべきである。
(a)障害者の政治参加を確保するための法律と政策を策定し、採択し、実施すること。これには以下の方法が含まれる。
(i)選挙における投票者あるいは候補者としての障害者に対する差別を禁止する。
(ii)有権者登録へのアクセシブルな技術の活用および投票所のアクセシビリティ監査の定期的な実施をはじめとする政策等により、アクセシブルな投票所と投票手続の提供を選挙管理団体に義務付ける。
(b)障害のある女性を国のジェンダー平等推進機構の構成員とし、その有意義な参加に向けて支援サービスの提供を義務付けるなど、政策決定のあらゆる段階への障害者の参加を確保するための法律と政策を策定し、採択し、実施すること

目標3:物理的環境、公共交通機関、知識、情報およびコミュニケーションへのアクセスを高めること(持続可能な開発目標ターゲット9.1、11.1、11.2、11.7、16.10および実施手段4.a、9.c、仙台防災枠組2015-2030パラグラフ7、19、30、32、36、障害者の権利に関する条約第9条、第21条を支持)

政府がとるべき行動

12.政府は以下のことを行うべきである。
(a)政府のあらゆるレベルと民間企業において、構築環境、情報通信技術エコシステム、施設およびサービスのユニバーサルデザインとアクセシビリティを促進するための法律と規則を策定し、採択し、実施すること。これには以下の方法が含まれる。
(i)多省庁によるアクセシビリティの実施を監督し、違反に対する制裁措置を講じる権限を持つ、継続的な予算を伴う執行・調整団体を設立する。
(ii)構築環境の建設と改修のための、かつ、営業許可を与える基準としてのアクセシビリティ要件を設ける。
(b)トイレ、更衣室および交通機関を含む構築環境、情報通信技術エコシステムおよびその他のサービスをアクセシブルにするための、ユニバーサルデザインに基づく、国際基準に即した技術基準を開発し、採用し、実施すること
(c)アクセシビリティに関する技術基準が、目的地間の途切れのない接続性を重視するものであり、身体、精神、知的、感覚およびその他の機能障害のある人の安全を保障するものであること、ならびにある国もしくはある地域における基準が、全省庁およびガバナンスレベルで同一であることを確保すること。これには以下の方法が含まれる。
(i)政府が購入する、障害者にとってアクセシブルなすべての機器、商品、サービスおよびソフトウェアが、アクセシビリティ基準を満たしていることを確保する調達政策を採用し、民間企業でもこの方針の採用を促進する。
(ii)政府のウェブサイトとそのコンテンツを、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムの基準に従ってアクセシブルにする措置をとる。
(iii)学術機関と連携して、政策立案者、建築工事監督官、建築請負業者を対象としたユニバーサルデザインに関する研修プログラムを実施し、ユニバーサルデザインとアクセシビリティを、建築、都市計画、交通機関、土木工学およびその他の関連する学術部門の高等教育課程に組み込む。
(iv)主要な公共建築物および交通拠点、主要な政府庁舎、学校、病院および緊急避難所、ビジネスセンター、礼拝所およびその他のあらゆる公共の場所の定期的なアクセシビリティ監査を、建設前に、また、ひとたび使用を開始した後にも定期的に行うためのシステムを考案し、実施する。
(d)情報アクセシビリティおよびサービスの提供を強化すること。これには以下の方法が含まれる、
(i)すべての出版物、特に公的文書および教科書を、障害者にとってアクセシブルにするためのシステムを設立し、実施する。
(ii)デジタルリテラシーを確保するために、地元の言語による読み上げソフトの開発に民間企業を関与させる。
(iii)専門の手話通訳者の数を増やし、政府が実施する国内外の会議およびプログラムの放送に、リアルタイム字幕、手話通訳、音声解説およびその他のコミュニケーション形式を取り入れる計画を策定し、採用し、実施する。
(e)障害者のニーズに対応した手頃な価格の支援機器を提供するシステムを設立し、実施すること(注3)
(f)盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の批准と実施、ならびにプリントディスアビリティのある人のために出版物を利用しやすい形式へ変換することと、変換された資料を著作権者の許諾を得る必要なく国際的に交換することを許可するための著作権法改正を、積極的に検討すること

目標4:社会的保護を強化すること(持続可能な開発目標ターゲット1.3、3.7、3.8、10.4、障害者の権利に関する条約第19条、第25条、第26条、第28条を支持)

政府がとるべき行動

13.政府は、目に見えない障害がある人を含むあらゆる種類の障害者を網羅する障害インクルーシブな、かつ、障害に特化した社会的保護政策を策定し、採用し、実施すべきである。具体策として以下があげられる。
(a)給付制度、健康保険、検診および早期発見、総合リハビリテーションサービスを提供する。
(b)脱施設化と地域に根ざした生活を促進するために、リハビリテーション、レスパイトケアおよび介護サービスを提供する地域に根ざしたセンターを設立し、維持する。
(c)障害者がその生活において自己決定権を行使できるように、障害関連の追加費用に充当するための直接現金給付を含む社会扶助を検討する。
(d)障害者の地域社会における自立した生活を可能にし、その能力を高めるために、地方政府および当局、市民社会、民間企業との連携により、パーソナルアシスタンスおよびピアカウンセリングシステムを設立し、維持し、支援する。
(e)可能な限り早い段階で障害を発見・特定し、必要なサービスを紹介し、サービスへのアクセスを提供するために、地域社会レベルのサービス提供者および医療提供者、助産師等の能力構築に向けて研修と投資を行う。
(f)障害のある女性や子どもを含む障害者に関わる問題を、健康教育、健康増進および公衆衛生キャンペーンに確実に含める。

目標5:障害のある子どもへの早期関与と早期教育を広めること(持続可能な開発目標ターゲット4.1、4.2、4.5および実施手段4.a、障害者の権利に関する条約第7条、第24条、第30条を支持)

政府がとるべき行動<

14.政府は以下のことを行うべきである。
(a)障害のある子どもの権利や自分の住む地域で組織的なサービスを受けるための手段に加えて、子どもの発達、発達の遅れや障害の早期発見と介入についても、家族、介護者およびサービス提供者の知識と技能を向上させるために、研修を含む国および地域のプログラムを導入し、強化すること
(b)普通教育の政策、制度およびアプローチについて、これらを就学前および初等・中等レベルにおいて障害インクルーシブにするために、また、すべてのレベルにおけるすべての学習者のためのバリアフリーな学習環境と教育的アプローチを促進するために、再検討すること。これには以下の方法が含まれる。
(i)水道・衛生施設、教材および指導方法を含む学校施設のアクセシビリティ監査を実施する。
(ii)すべての教育部門に従事する専門家と職員を対象とした、学習者に優しい環境の実現に向けて多様な学習者のニーズを考慮した教員専門研修を含む、インクルーシブ教育と情報共有に関する就任前および就任後研修プログラムを開発し、実施する。
(iii)教育情報管理システムのデータ(注4)を含むすべての教育に関するデータを、障害のある不就学児に特に留意しつつ、障害インクルーシブなものにする。
(iv)障害のある青年および成人を含む、障害のある移民第一世代の学習者、不就学児および落ちこぼれを対象とした、スクールレディネスプログラムやブリッジコースプログラムを開発し、維持する。
(v)障害者にとって利用が可能かつ容易な奨学金プログラムを開発し、採用し、実施する。
(vi)障害インクルーシブな、かつ、障害に特化したスポーツおよび文化プログラムを、障害のある子どもを地域の活動に統合し、その健康と福祉を増進する方法として促進する。
(vii)障害インクルーシブなスポーツおよび文化プログラムを支援する地域社会の意識向上活動を強化する。

目標6:性(ジェンダー)の平等と女性のエンパワーメントを保障すること(持続可能な開発目標ターゲット3.7、3.8、4.1、4.2、4.3、4.5、4.6、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、16.1、16.2および実施手段5.a、5.b、5.c、障害者の権利に関する条約第6条を支持)

政府がとるべき行動

15.政府は以下のことを行うべきである。
(a)ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントに関する国家行動計画、法律およびプログラムの策定と実施において、特に性と生殖に係る健康、性的搾取と暴力からの保護、雇用と起業の機会、あらゆるレベルの意思決定機関への参加に関して、障害のある女子の視点を取り入れることを優先すること
(b)暴力、虐待および搾取からの障害のある女子の保護に加えて、総合的な性と生殖に係る健康と生殖の権利に関する情報も普及し、知識を増進すること

目標7:障害インクルーシブな災害リスク削減および災害対応を保障すること(持続可能な開発目標ターゲット1.5、9.1、11.2、11.5、11.7、13.1、13.3および実施手段11.b、13.b、仙台防災枠組2015-2030パラグラフ7、19、24、30、32、33、36、障害者の権利に関する条約第11条を支持)

政府がとるべき行動

16.政府は以下のことを行うべきである。 (a)仙台防災枠組2015-2030ならびに人道的行動への障害者のインクルージョン憲章(the Charter on Inclusion of Persons with Disabilities in Humanitarian Action)(注5)に従い、障害者に影響を与える地域・小地域イニシアティブを含む、あらゆるレベルにおける災害リスク削減および人道的な緊急対応の計画、実施および監視への、障害者とその代表団体の積極的な参加を確保するプログラム、計画、システムおよび手続を策定し、採用し、実施すること
(b)早期警報システムおよび情報を含む災害リスクに関するあらゆる情報を、すべての人にとってアクセシブルで明確かつ理解可能なものとすることを確保するために、必要に応じて、政府内の災害リスク削減フォーカルポイントおよび障害フォーカルポイント等の連携システムを設立すること
(c)早期警報システムおよび情報における避難経路と避難所を含む災害リスク関連のすべてのサービスが、すべての人にとってアクセシブルかつ利用可能であり、すべての人の尊厳を尊重するものであることを確保するために、ユニバーサルデザインと障害者に関する知識が豊富な計画者、技術者および設計者の関与を得て、定期的な監査を実施すること
(d)障害インクルーシブな災害リスク削減の実施という観点から、災害リスク削減および人道的緊急事態に関わる分野の実践家に、仙台防災枠組2015-2030に関する研修を受けることを義務付け、既存の学習ツールを利用して、障害者に対する研修を行い、障害者を初期対応チームに含めること
(e)気候変動と災害リスクの関係を認め、災害が障害者に与える特に深刻な影響を考慮し、障害者の権利を支持し、促進するシステムの、気候変動に対するレジリエンスを育む必要性を、国連気候変動枠組条約を考慮しつつ検討すること

目標8:障害に関するデータの信頼性および比較可能性を向上させること(持続可能な開発目標ターゲット17.18および17.19、仙台防災枠組2015-2030パラグラフ19ならびに障害者の権利に関する条約第31条を支持)

政府がとるべき行動

17.政府は障害に関するデータの信頼性と有用性を向上させるため、学歴や雇用状況に加えて、年齢、性別、障害、民族性、居住地が農村部か都市部かによっても細分類されたデータの総合的なデータベースの利用可能性を確保することを含め、全省庁の障害統計の状況を明らかにし、国家行動計画を策定し、実施すべきである。具体策として以下があげられる。
(a)障害統計に関するワシントングループによって開発された障害を評価するためのツールや、ワシントングループと国連児童基金によって開発された子どもの障害を評価するためのツール、世界保健機関のモデル障害調査を含む、障害に関する既存のデータ収集ツールと手段の概念、目的、ターゲットおよび利点を検討すること
(b)障害のある新生児が、その障害が特定可能な場合、登録される住民登録システムと人口動態統計システムを、設立または改善すること
(c)障害に関するデータの実現可能な情報源として全国登録簿を作成し、または充実させること
(d)障害統計担当職員の能力構築のために、持続可能な資源配分を確保し、国の障害に関するデータ処理能力を強化すること
(e)障害に関する定量データを、ベストプラクティスの紹介に加えて、障害者が語る当事者体験等の定性情報でも補充すること
(f)『ESCAPインチョン戦略のための障害指標に関するガイドブック(ESCAP Guide on Disability Indicators for the Incheon Strategy)』(注6)の使用を検討すること
(g)障害者が直面する問題と、サービスに対する障害者のニーズに、文化的に適切な、地域で開発されたものを含む政策やプログラムによってどのように効果的に取り組むことができるかについて、調査研究を促進し、実施すること
(h)インチョン戦略の指標と関連のある障害に関するデータの収集について、加盟国に対するESCAPによる技術的な支援への積極的な参加を検討すること

目標9:「障害者の権利に関する条約」の批准および実施を推進し、各国の法制度を権利条約と整合させること(持続可能な開発目標ターゲット10.3、16.3および実施手段16.b、障害者の権利に関する条約第4条を支持)

政府が取るべき行動

18.政府は、障害者を差別する者に対する何らかの形式の罰則を含む、厳重な仕組みを伴う障害者差別禁止法を策定し、採択し、実施すべきである。

障害者の権利に関する条約の締約国がとるべき行動

19.締約国は、障害者の専門職資格取得を阻む欠格条項等、既存の法律における障害者を差別する欠格条項を無効にすることを含む、国内法制度と障害者の権利に関する条約との整合を追求すべきである。

ESCAPがとるべき行動

20.ESCAPは、情報交換、連携が可能な分野の確認および各機関の強みの活用を目的として、障害者の権利に関する条約についての機関間対話を地域レベルで促進すべきである。

国連機関がとるべき行動

21.国連機関は以下のことを行うべきである。
(a)締約国による障害者権利委員会への報告を、インチョン戦略の実施に関する報告のために作成されたデータと情報の利用を奨励することにより支援すること
(b)障害者の権利に関する条約および選択議定書のさらなる批准を促進すること

目標10:小地域、地域内および地域間の協力を推進すること(持続可能な開発目標ターゲット17.9、17.16、17.19、障害者の権利に関する条約第32条を支持)

政府がとるべき行動

22.政府は、国、小地域および地域フォーラムの開発アジェンダにおける障害の主流化を促進すべきである。

ESCAPがとるべき行動

23.ESCAPは以下のことを行うべきである。
(a)特に北京宣言および行動計画を通じて、小地域政府間組織、他の国連機関およびその他のステークホルダーと連携し、インチョン戦略の実施を加速することを目的として、地域の社会・経済協力を強化するさらなるイニシアティブをとること
(b)小地域政府間組織と連携して、インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施について、地域および小地域における分析を行うこと

アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)に関するワーキンググループがとるべき行動

24.ワーキンググループは、関連するフォーラムにおいて、小地域政府間組織および開発組織を招き、インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施支援に関するグッドプラクティスを共有すべきである。

地域市民社会組織がとるべき行動

25.地域市民社会組織は、障害インクルーシブな開発の促進に向けて一致団結した効果的な行動を加速するために、2030アジェンダ、仙台防災枠組2015-2030、障害者の権利に関する条約およびその他の開発アジェンダの実施に積極的な国際市民社会組織との連携と情報共有等により、インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施に関与すべきである。

Ⅵ.インチョン戦略の効果的実施のための様式(持続可能な開発目標10、16、17、障害者の権利に関する条約第4条、第32条、第33条を支持)

法的および制度的枠組

政府がとるべき行動

26.政府は以下のことを行うべきである。 (a)インチョン戦略のすべての目標を網羅する、障害に特化した、かつ、障害インクルーシブな法律、政策および規則の策定、採択および実施を継続すること
(b)必要に応じて、国内における障害に関する調整のための仕組みを設置し、適切な人材および財源の提供、多様なステークホルダーを受け入れて国家政策の立案および決定プロセスに積極的に関与させること、インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施に関する年次評価の義務付けにより、この仕組みを強化すること
(c)障害者とその家族のニーズと懸念に効果的に取り組むため、中央レベルでの政策の実施との調整を図る、地域レベルでの障害に関する調整のための仕組みを、必要に応じて設置し、維持すること

ESCAPがとるべき行動

27.ESCAPは他の国連機関と連携し、国内における障害に関する調整のための仕組みの強化を支援すべきである。

実施へのマルチステークホルダー・アプローチ

政府がとるべき行動

28.政府は、障害者とその家族および支援者の代表団体を含む市民社会、国際組織および開発機関をインチョン戦略の実施に関与させ、特に技術的な支援とサービスの提供者であると同時に擁護者でもある地域社会レベルの市民社会組織の強みを活用する計画を、適宜策定し、実施すべきである。

ESCAPがとるべき行動

29.ESCAPは、多様なステークホルダーの関与をさらに強化するための地域プラットフォームを提供すべきである。

Ⅶ.行動計画の進捗状況の追跡

30.インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施に関する評価と支援には、ワーキンググループが重要な役割を果たす。ワーキンググループはその手続規則に従い、毎年会合を開催し、第4回会合で決定されたように、インチョン戦略の主要な目標と本行動計画に記された関連行動の実施について、進捗状況を議論する。政策策定と実施をより一層支援するために、2018年から2022年までに開催されるワーキンググループの各会合に関する報告が、検討のためにESCAP総会に提出される。

31.さらにESCAP事務局は、インチョン戦略、ならびに北京宣言および行動計画の実施に関する評価を含む報告を、2020年に開催予定のESCAP社会開発委員会に提出する。また、現在のアジア太平洋障害者の十年が終了する2022年に先立ち、2018年から2022年までの進捗状況を評価するために、インチョン戦略実施に関する最終評価が行われる。最終評価の結果は、2017年に実施されたESCAP中間年評価の際に収集された情報およびデータと比較される。最終評価は、前述のワーキンググループによる報告や、本行動計画の実施を専門的に取り上げる2020年の報告に基づいて行われる。

(注1)5つの持続可能な開発目標の7つのターゲットと実施手段において障害への言及がある(目標4、8、10、11および17、ターゲット4.5、8.5、10.2、11.2、11.7、17.18および実施手段4.a)。別の6つの目標(目標1、3、5、9、13、16)のターゲットは、「包摂」「すべての人々」「アクセス可能」および「普遍的アクセス」等の用語の使用と、最も脆弱な状況にある人々に対する支援への言及を通じて、障害インクルーシブ開発と関連している。詳細は、www.maketherightreal.net/incheon-strategy-strengthening-2030-agendaを参照

(注2)www.sustainabledevelopment.un.org/majorgroups/personswithdisabilitiesを参照

(注3)www.who.int/phi/implementation/assistive_technology/global_survey-apl/en/を参照

(注4)www.unesco.org/new/en/education/themes/planning-and-managing-education/policy-and-planning/emis/を参照

(注5)http://humanitariandisabilitycharter.org/を参照

(注6)ST/ESCAP/2708. http://www.unescap.org/resources/escap-guide-disability-indicators-incheon-strategyより入手可能


原文:
United Nations
Economic and Social Council
E/ESCAP/APDDP(4)/5
Distr.: General
11 December 2017
Original: English
Beijing Declaration, including the Action Plan to Accelerate the Implemention of the Incheon Strategy
Economic and Social Commission for Asia and the Pacific
High-level Intergovernmental Meeting on the Midpoint Review of the Asian and Pacific Decade of Persons with Disabilities, 2013-2022
Beijing, 27 November-1 December 2017
https://www.unescap.org/official-documents/high-level-intergovernmental-meeting-asia-pacific-decade-persons-with-disabilities/session/2

日本障害フォーラム仮訳