音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

2015年3月18日

仙台防災枠組 2015-2030

(日本障害者リハビリテーション協会 仮訳)

目次

Ⅰ. 前文

Ⅱ. 期待される成果と目標

Ⅲ. 指針(Guiding principles)

Ⅳ. 優先行動

優先事項1:災害リスクの理解

優先事項2:災害リスク管理のための災害リスクガバナンスの強化

優先事項3:レジリエンスに向けた防災への投資

優先事項4:効果的な応急対応に向けた災害準備の強化と「より良い復興 (Build Back Better)」

Ⅴ. ステークホルダーの役割

Ⅵ. 国際協力とグローバル・パートナーシップ

Ⅰ.前文

1. 本ポスト2015年防災枠組は、2015年3月14日から18日まで、日本の宮城県仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で採択された。同会議は、各国にとって、以下のことを行う前例のない機会となった。

(a) 簡潔な、焦点を絞った、前向きかつ行動指向の、ポスト2015年防災枠組の採択

(b) 「兵庫行動枠組2005-2015:災害に強い国・コミュニティの構築」1の実施状況の評価と見直しの完了

(c) 兵庫行動枠組の実施の下、地域および国内の戦略/制度と防災計画を通じて得られた経験、提言、関連のある地域協定の検討

(d) ポスト2015年防災枠組の実施に対する決意に基づく協力手法の特定

(e) ポスト2015年防災枠組の実施状況の定期的な見直し手順の決定

2. 世界会議の開催中、各国は、防災に対する決意と、持続可能な開発および貧困撲滅を背景に新たな緊迫感をもって取り組み、必要に応じてあらゆるレベルの政策、計画、プログラムおよび予算に組み込み、関係枠組内で検討すべき、災害へのレジリエンス2の構築に対する決意も、繰り返し述べた。

兵庫行動枠組:教訓、確認されたギャップおよび今後の課題

3. 2005年の兵庫行動枠組の採択以降、その実施状況に関する国および地域の中間報告書ならびにその他の国際的な報告書に記されているように、地方、国、地域および世界レベルで、国およびその他の関係ステークホルダーによる防災への取り組みに進展が見られ、一部のハザード3の事例において死亡率が低下した。防災は、将来の損失を防ぐ、費用対効果の高い投資である。効果的な災害リスク管理は、持続可能な開発に貢献する。各国は、災害リスク管理能力を強化してきた。防災グローバル・プラットフォーム、地域プラットフォーム、その他の関係国際協力フォーラムと地域協力フォーラムなど、防災に関する戦略的アドバイス、協調およびパートナーシップ構築のための国際的なメカニズムが、政策と戦略の策定ならびに知識と相互学習の促進に役立てられてきた。全体として、兵庫行動枠組は、一般の人々と各機関の認識を高め、政治的決意を生み、あらゆるレベルの広範なステークホルダーの行動に焦点を合わせ、これを触媒する重要な手段であった。

4. しかしながら、同じ10年間という枠組の中で、災害は常に重い犠牲を強いてきたため、人、コミュニティおよび国の幸福と安全全般に影響が及んだ。災害のために、70万を超える人が命を落とし、140万を超える人が傷を負い、約2300万の人が家を失った。全体で15億を超える人が、さまざまな形で災害の影響を受けたのである。中でも女性、子ども、そして弱い立場にある人は、過度に影響を受けた。全経済損失額は、1兆3千億ドルを超えた。さらに、2008年から2012年までの間に、1億4400万人が災害によって強制退去させられた。災害は持続可能な開発に向けた前進を著しく妨げ、その多くは気候変動によって悪化し、頻度と強度は増加しつつある。エビデンスによれば、すべての国において、災害に曝されている人と資産の増加が脆弱性4の減少よりも速いために新たなリスクが生まれ、災害による損失は着実に増加し、特に地方およびコミュニティレベルで、経済、社会、健康、文化および環境に、短期的、中期的および長期的な影響を及ぼしている。頻発する小規模災害と遅発性の災害が、特にコミュニティ、家庭および中小企業に影響を与えており、全損失の大きな割合を占めている。すべての国、特に災害による死亡率と経済損失額が過度に高い開発途上国は、潜在的な隠れた費用の増加と、金融債務等の支払いという難題に直面している。

5. 人、コミュニティおよび国と、暮らし、健康、文化遺産、社会経済的資産および生態系を、より効果的に保護することでレジリエンスを強化するには、災害リスクを予測し、これに対する計画を立て、これを削減することが急務であり、極めて重要である。

6. 暴露と脆弱性を軽減する取り組みを強化し、それによって新たな災害リスク生成を予防することと、災害リスク生成に関する説明責任が、あらゆるレベルで必要とされている。さらに的を絞った行動では、貧困と不平等の影響、気候変化と気候変動、無計画かつ急激な都市化、不十分な土地管理などの潜在的な災害リスク促進要因と、人口構造の変化、組織的な取り決めの弱さ、リスク情報を活用しない政策、防災に対する民間投資に関する規制とインセンティブの欠如、複雑なサプライチェーン、技術の利用可能性の制限、持続可能ではない方法による自然資源の利用、生態系の悪化、世界的な流行病と伝染病などの悪化要因への取り組みに、焦点を合わせなければならない。さらに、国、地域および国際レベルでの防災における優れたガバナンスの強化と、災害への応急対応、復旧および再建への備えと国内調整の改善を継続し、国際協力手法の強化によって支えられる「より良い復興」に向けて、災害後の復旧と再建を利用する必要がある。

7. 災害リスクに対する、より幅広い、人間中心の予防的アプローチが必要とされている。防災の実践は、マルチハザード、マルチセクターを基本とし、効率と効果を上げるためにアクセシブルなものにしなければならない。各国政府は、自らの主導的、規制的および調整的役割を認識し、女性、子どもと若者、障害のある人、貧しい人、移民、先住民、ボランティア、実務家コミュニティ、高齢者を含む関係ステークホルダーを、政策、計画および基準の策定と実施に参加させなければならない。官民両セクターと市民社会団体、学術機関および科学研究機関は、緊密に協力し、連携の機会を創出しなければならず、企業は、災害リスクを経営実務に統合しなければならない。

8. 国際協力、地域協力、小地域協力および国境を越えた協力は、各国、国内当局および地方自治体と、地域社会および企業の防災に向けた取り組みを支援するに当たり、引き続き極めて重要である。効果的な支援を提供し、より良い実施を実現するには、既存のメカニズムの強化が必要となる場合もある。開発途上国、特に、固有の課題に直面している、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国およびアフリカ諸国と中所得国は、国際公約に従い、能力構築、財政・技術援助および技術移転における適切で持続可能な、タイミングの良い実施手段を確保するための二国間および多国間ルートを通じて、国の資源と能力(capability)を増強する、特別な配慮と支援を必要としている。

9. 全体として、兵庫行動枠組は、防災への取り組みにおける重要な指針を提供し、ミレニアム開発目標の達成に向けた前進に貢献してきた。しかし、その実施により、潜在的な災害リスク要因への取り組み、目標および優先行動5の策定、あらゆるレベルで災害に対するレジリエンスを培う必要性と適切な実施手段の確保における多数のギャップが明らかになった。これらのギャップは、政府および関係ステークホルダーが、支援的かつ補完的な方法で実施することができ、管理が必要な災害リスクの特定に役立ち、レジリエンス向上のための投資の指針となる、行動指向の枠組の開発が必要であることを示すものである。

10. 兵庫行動枠組から10年が経つが、災害は持続可能な開発の達成に向けた努力を阻害し続けている。

11. ポスト2015年開発アジェンダ、開発資金、気候変動および防災に関する政府間交渉は、政策、制度、目標、指標および実施評価システムのそれぞれの役割を尊重しつつ、その一貫性を強化する、またとない機会を国際社会にもたらす。このようなプロセスを通じて信頼できる関係を適宜確立することは、レジリエンスの構築と、貧困撲滅という世界的な目標の達成に貢献するであろう。

12. 2012年の国連持続可能な開発会議の成果文書『我々の求める未来』は、防災と災害に対するレジリエンスの構築について、持続可能な開発および貧困の撲滅を背景とする喫緊の対処およびあらゆるレベルでの統合を要請するものであったことが想起される。同会議では、環境と開発に関するリオ宣言のすべての原則も再確認された。

13. 災害リスク促進要因の1つとしての気候変動への取り組みは、気候変動に関する国際連合枠組条約6に定められた責務を尊重しつつ、相互に関連した政府間プロセス全体を通じて、有意義な一貫した方法により、災害リスクを削減する機会となる。

14. これを背景とし、また、防災のために、災害リスクの監視、評価および理解に焦点を合わせ、このような情報と災害が発生する仕組みに関する情報を共有し、災害リスクガバナンスと関係各機関およびセクター間の調整ならびに適切な段階での関係ステークホルダーの完全かつ有意義な参加を強化し、人、コミュニティおよび国の経済、社会、健康、文化および教育におけるレジリエンスと環境に、技術および研究等を通じて投資し、マルチハザード早期警戒システム、災害への備え、応急対応、復旧、復興および再建を強化することにより、既存の課題に取り組み、将来の課題に備える必要がある。また、国の活動と能力(capacity)を補完するために、先進国と開発途上国、また、各国と国際機関の間で、国際協力を強化する必要がある。

15. 本枠組は、自然ハザードまたは人為ハザード、関連のある環境ハザード、技術ハザードおよび生物ハザードとリスクによって引き起こされる、小規模災害と大規模災害、頻発する災害と稀な災害、突発型の災害と遅発型の災害のリスクに適用される。そしてあらゆるレベルの開発とすべてのセクター内およびセクター間の開発において、災害リスクのマルチハザードマネジメントの指針となることを目的としている。

Ⅱ. 期待される成果と目標

16. レジリエンスの構築と損失および損害の削減において一定の進展が達成されたが、その一方で、災害リスクの大幅な削減には、人とその健康および暮らしをさらに明確に重視することと、定期的なフォローアップを伴う粘り強い取り組みの継続が必要である。兵庫行動枠組に基づき、本枠組は、以下の成果を今後15年間で達成することを目指している。

人命・暮らし・健康と、個人・企業・コミュニティ・国の経済的、物理的、社会的、文化的、環境的資産に対する災害リスクおよび損失の大幅な削減

この成果の達成には、すべての国のあらゆるレベルにおいて、本枠組の実施とフォローアップ、そして、望ましい結果をもたらし実現を可能にするために必要な環境の創造に向けた、強力な決意と政治的な指導力の関与が必要である。

17. 期待される成果を得るには、以下の目標を追求しなければならない。

ハザードへの暴露および災害に対する脆弱性レジリエンスを予防・削減し、応急対応および復旧への備えを強化し、レジリエンスを強化する、統合されかつ包摂的な、経済、ハードおよびソフト、法律、社会、健康、文化、教育、環境、技術、政治および制度的手段の実施を通じ、新たな災害リスクを予防し、既存の災害リスクを減少させる。

この目標の追求には、開発途上国、特に、固有の課題に直面している、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国およびアフリカ諸国と中所得国の、実行力の強化が必要であり、これには、国の優先課題に応じて実施手段を提供する国際協力による支援の結集が含まれる。

18. 本枠組の成果と目標の達成に関する世界的な進捗状況の評価を支援するために、7つのグローバル・ターゲットについて合意が得られた。これらのターゲットは、世界レベルで評価され、適切な指標を開発する取り組みによって補完される。

国内のターゲットと指標は、本枠組の成果と目標の達成に貢献するであろう。

7つのグローバル・ターゲットは、以下の通りである。

(a) 世界の災害による死亡率を2030年までに大幅に削減する。2005年から2015年までと比較して、2020年から2030年までの全世界の10万人当たり平均死亡者数を引き下げることを目指す。

(b) 世界の被災者数を2030年までに大幅に削減する。2005年から2015年までと比較して、2020年から2030年までの全世界の10万人当たり平均被災者数を引き下げることを目指す。7

(c) 世界の国内総生産(GDP)に関して、災害による直接的な経済損失を2030年までに削減する。

(d) 2030年までに、災害による保健および教育施設などの重要なインフラストラクチャーへの損害および基本的なサービスの中断を、それらのレジリエンスの構築などにより、大幅に削減する。

(e) 2020年までに、国家防災戦略および地方防災戦略を採用している国の数を大幅に増やす。

(f) 2030年までに、本枠組の実施に向けた開発途上国による国家活動を補完する適切かつ持続可能な支援を通じて、開発途上国に対する国際協力を大幅に強化する。

(g) マルチハザード早期警戒システム、災害リスク情報および災害リスク評価の利用可能性とこれらに対するアクセスを、2030年までに大幅に増強する。

Ⅲ. 指針 (Guiding principles)

19. 「より安全な世界に向けての横浜戦略:防災のためのガイドライン-自然災害への予防、備え、軽減-とその行動計画」8および兵庫行動枠組に盛り込まれた原則に則り、本枠組の実施に当たっては、国内事情を考慮し、国内法ならびに国際的な責務および公約との整合性を保ちつつ、以下の原則を指針とする。

(a) 各国は、国際協力、地域協力、小地域協力、国境を越えた協力および二国間協力などを通じた災害リスクの予防と削減に対する第一義的責任を有する。防災はすべての国に共通する懸念であり、開発途上国がそれぞれの事情と能力(capability)に即して、国内の防災政策および措置を効果的に促進し、実施できる範囲は、持続可能な国際協力の提供により、さらに拡充することが可能である。

(b) 防災においては、中央政府および関係国内当局、関係セクターおよびステークホルダーが、国の事情とガバナンスのシステムに従って責任を共有する必要がある。

(c) 災害リスク管理は、開発の権利を含むすべての人権を促進し、保護する一方で、人とその資産、健康、暮らし、生産的資産ならびに文化遺産および環境資産を保護することを目指す。

(d) 防災には社会全体の関与とパートナーシップが必要である。また、エンパワメントと、インクルーシブかつアクセシブルで非差別的な参加も必要であり、災害による影響を過度に受ける人々、特に最も貧しい人々に、特別な注意を払う。すべての政策および実践における、ジェンダー、年齢、障害および文化的視点と、女性と若者のリーダーシップの促進、また、これに関連して、市民による組織的な奉仕活動の改善にも、特別な注意が払われなければならない。

(e) 災害リスクの削減と管理は、セクター内およびセクター間の、あらゆるレベルにおける関係ステークホルダーとの調整メカニズムに左右され、相互支援、連携、役割の補完、説明責任およびフォローアップを確保するために、国および地方レベルの執行と立法にかかわるすべての国家機関の完全参加と、企業と学術機関を含む官民ステークホルダー全体の責任の明確化が必要となる。

(f) 実現を可能にする指導役および調整役としての国家政府および連邦政府の役割は今後も不可欠であるが、地方自治体と地域コミュニティに対し、必要に応じて、資源、インセンティブおよび意思決定の責任を与えることにより、防災に向けたエンパワメントをしていかなければならない。

(g) 防災には、性別、年齢および障害などによって細分類されたデータの開かれた交換および普及と、伝統的知識によって補完される、容易に利用可能な、最新の、理解しやすい、科学的根拠のある、機密ではないリスク情報に基づく、マルチハザードアプローチとインクルーシブな意思決定が必要である。

(h) 関連のある政策、計画、実践およびメカニズムの開発、強化および実施においては、必要に応じて、持続可能な開発と成長、食糧安全保障、健康と安全、気候変化と気候変動、環境管理および防災に関するアジェンダ全体の一貫性を目指さなければならない。防災は持続可能な開発の達成に不可欠である。

(i) 災害リスクの促進要因は、地方、国、地域または世界を対象範囲としていると考えられるが、災害リスクは、災害リスクを削減する手段を決定するために理解しなければならない、地方固有の特徴を持つ。

(j) 災害リスク情報を活用した官民投資を通じた潜在的な災害リスク要因への取り組みは、主として災害後の対応と復旧に依存する場合よりも、費用対効果が高く、持続可能な開発に貢献する。

(k) 災害後の復旧、復興および再建の段階においては、「より良い復興」や、一般の人々に対する啓蒙の増進と災害リスクに関する認識の向上により、災害リスクの生成を予防し、これを削減することが極めて重要である。

(l) 効果的かつ有意義なグローバル・パートナーシップと、先進国による政府開発援助の各公約の実現を含む国際協力のさらなる強化は、効果的な災害リスク管理に不可欠である。

(m) 開発途上国、特に、固有の災害リスク課題に直面している、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国およびアフリカ諸国と中所得国およびその他の国々は、自らが特定するニーズと優先課題に応じた、先進国およびパートナーによる財政支援、技術移転および能力構築などを含む、適切で持続可能な、タイミングの良い支援を必要としている。

Ⅳ. 優先行動

20. 兵庫行動枠組の実施から得られた経験を考慮し、期待される成果と目標を追求するに当たり、各国は、地方、国、地域および世界レベルで、以下の4つの優先分野における、セクター内およびセクター間の活動に焦点を合わせる必要がある。

1. 災害リスクの理解

2. 災害リスク管理のための災害リスクガバナンスの強化

3. レジリエンスに向けた防災への投資

4. 効果的な応急対応に向けた災害への準備の強化と「より良い復興(Build Back Better)」

21. 防災へのアプローチにおいて、国、地域機関および国際機関と、その他の関係ステークホルダーは、これら4つの優先事項のそれぞれの下にリストアップされた重要な活動を考慮し、必要に応じて、それぞれの能力(capacity and capability)を踏まえ、国内の法律および規則に従い、これらの活動を実施しなければならない。

22. 世界的な相互依存性の高まりを背景として、一致団結した国際協力、実現を可能にする国際的な環境と実施手段が、特に開発途上国における、あらゆるレベルでの防災に関する知識と能力(capacity)の開発および動機付けを刺激し、これに貢献するものとして、必要とされている。

優先事項1. 災害リスクの理解

23. 災害リスク管理の政策と実践は、災害リスクに対する脆弱性、能力(capacity)、人と資産の暴露、ハザードの特徴および環境というあらゆる側面の理解に基づいたものでなければならない。このような知識は、災害前のリスク評価という目的、予防と軽減、災害に対する適切な準備と効果的な応急対応の実施に活用できる。

国および地方レベル

24. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) 関連データと実用情報の収集、分析、管理および活用を促進する。必要に応じて、さまざまなカテゴリーの利用者のニーズを考慮し、これらのデータを確実に普及する。

(b) ベースラインの利用と強化を促進し、災害リスク、脆弱性、能力(capacity)、暴露、ハザードの特徴と、それらが関連のある社会的および空間的スケールにおいて生態系に与える可能性がある連続的影響を、国内事情を踏まえて定期的に評価する。

(c) 意思決定者、災害に遭う危険のある一般の人々およびコミュニティのために、適用可能であれば地理空間情報技術を活用して適切な形式にした、リスクマップなどのロケーションベースの災害リスク情報を、必要に応じて開発し、定期的に更新し、普及する。

(d) 災害による損失を組織的に評価し、記録し、共有し、公の場で説明するとともに、必要に応じて、事象特有のハザードへの暴露と脆弱性に関する情報に照らし、経済、社会、健康、教育、環境および文化遺産への影響を理解する。

(e) ハザードへの暴露、脆弱性、リスク、災害および損失に関する、細分類された非機密情報を、必要に応じて、無料で利用できるようにし、かつ、アクセシブルにする。

(f) 信頼のおけるデータへのリアルタイムアクセスを促進し、地理情報システム(GIS)などの空間位置情報を活用し、計測ツールとデータの収集、分析、普及を強化するために、情報通信技術の革新を利用する。

(g) 防災に関する経験、教訓、グッドプラクティスの共有、既存の訓練および教育のメカニズムとピア・ラーニングを含む訓練および教育を通じて、あらゆるレベルの政府官僚、市民社会、コミュニティおよびボランティアならびに民間セクターの知識を構築する。

(h) 災害リスク管理における効果的な意思決定に向けて、科学と政策のインターフェースを促進するために、科学界と技術界およびその他の関係ステークホルダーならびに政策立案者の対話と協力を促進し、改善する。

(i) 災害リスク評価と、地方の局所性および状況に合わせて策定されなければならない政策、戦略、特定のセクターの計画およびプログラムの開発と実施において、科学的な知識を補完するために、分野横断的アプローチを採用し、必要に応じて、伝統的知識、先住民の知識および地方の知識と実践の利用を確保する。

(j) 既存の知識を活用し、統合するために、また、災害リスク、脆弱性およびすべてのハザードへの暴露を評価する方法とモデルを開発し、適用するために、技術力と科学力を強化する。

(k) ギャップ、障壁、相互依存および社会、経済、教育ならびに環境に関する課題と災害リスクに取り組むために、災害リスク管理に関する長期的なマルチハザード・解決策指向型研究における技術革新と技術開発への投資を促進する。

(l) 公式および非公式な教育とあらゆるレベルの市民教育、専門的な教育と訓練に、災害の予防、軽減、準備、応急対応、災害からの復旧と復興を含む災害リスクに関する知識を組み込むことを促進する。

(m) キャンペーン、ソーシャルメディアおよび地域結集を通じて、特定の視聴者とそのニーズを考慮し、災害リスク関連の情報と知識を含む、防災に関する一般の人々の啓蒙と意識向上を強化する国家戦略を促進する。

(n) 防災政策を策定、実施するために、脆弱性、能力(capacity)、人、コミュニティ、国および資産の暴露ならびにハザードの特徴というあらゆる側面に、リスク情報を適用する。

(o) 地域社会に根ざした機関と非政府機関の関与を通じて災害リスク情報を普及するために、地方レベルで人々の連携を強化する。

世界および地域レベル

25. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) 災害による損失と細分類された関連データおよび統計を記録し、共有するとともに、災害リスクのモデル、評価、マッピング、監視およびマルチハザード早期警戒システムを増強するために、科学的根拠のある方法とツールの開発および普及を強化する。

(b) マルチハザードな災害リスクに関する総合調査の実施と、気候変動のシナリオを含めた、地域における災害リスク評価および災害リスクマップの開発を促進する。

(c) 非機密データおよび情報、また、必要に応じて、通信技術、地理空間技術および宇宙技術ならびに関連サービスへのアクセスと、これらの共有および利用を、技術移転などの国際協力を通じて促進し、強化する。地上および衛星からの地球観測と気象観測を継続し、強化する。災害リスクコミュニケーションの成功に向けて国が講じる措置を支援するために、必要に応じて、また、国内法に従い、ソーシャルメディア、従来のメディア、ビッグデータおよび携帯電話ネットワークなどのメディアの利用を強化する。

(d) グッドプラクティスを国際的に確立し、普及し、共有するために、科学技術界、学術界、民間セクターと連携し、共通の取り組みを促進する。

(e) グッドプラクティス、費用対効果が高く使いやすい防災技術、政策、計画および防災対策に関する教訓の情報交換のための、地方、国、地域および世界の利用者に優しいシステムとサービスの開発を支援する。

(f) 防災の文化、レジリエンスと、責任ある社会参加を促進し、災害リスクへの理解を生み出し、相互学習を支援し、経験を共有するために、一般の人々の意識向上と啓蒙の手段として、効果的なグローバル・キャンペーンと地域キャンペーンを、既存のキャンペーン(「100万の安全な学校と病院」イニシアティブ、「災害に強い都市の構築」キャンペーン、国連笹川防災賞および毎年の国連国際防災の日など)を基に開発する。官民ステークホルダーに、このようなイニシアティブに積極的に参加し、地方、国、地域および世界レベルで新たなイニシアティブを開発するよう促す。

(g) 本枠組の実施を支援するに当たって、エビデンスベースを強化し、災害リスクのパターン、原因および影響に関する科学研究を促進し、地理空間情報技術を最大限活用してリスク情報を普及し、リスク評価と災害リスクモデルおよびデータ使用の方法と基準に関する指針を提供し、研究と技術のギャップを特定し、防災研究の優先分野について提言し、意思決定への科学技術の利用可能性と適用を促進および支援し、『国連国際防災戦略(ISDR)防災用語集(2009 年版)』の更新に貢献し、災害後の再検討を学びと公共政策強化の機会として利用し、研究を広めるために、UNISDR科学技術諮問グループの支援の下、既存のネットワークとあらゆるレベルおよびあらゆる地域の科学研究機関の協調により、防災に関する科学技術研究とその結集を強化する。

(h) 著作権で保護されている資料と特許を取得した資料の利用可能性を促進する。必要に応じて、交渉により譲歩を得る。

(i) 災害リスク管理における技術革新および技術、長期的なマルチハザード・解決策指向型研究開発へのアクセスと支援を強化する。

優先事項2.災害リスク管理のための災害リスクガバナンスの強化

26. 国、地域および世界レベルでの災害リスクガバナンスは、効果的かつ効率的な災害リスク管理に極めて重要である。明確なビジョン、計画、能力(competence)、指針と、セクター内およびセクター間の調整、関係ステークホルダーの参加が求められる。それゆえ、予防、軽減、準備、応急対応、復旧と復興にかかわる災害リスクガバナンスの強化が必要であり、これにより、防災と持続可能な開発に関する手段の実施に向けて、各メカニズムおよび機関の協力とパートナーシップが促進される。

国および地方レベル

27. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) すべてのセクター内およびセクター間で防災を主流化し、統合する。必要に応じて、国および地方の法律、規則および公共政策の枠組の一貫性を再検討し、促進するとともに、開発をさらに進める。このようにして役割と責任を定義することにより、(i)公的に所有され、管理され、規制されるサービスおよびインフラストラクチャーにおいて災害リスクに取り組み、(ii)個人、家庭、コミュニティおよび企業による活動に対し、適切であれば、インセンティブを促進および提供し、(iii)災害リスクの透明性にかかわるメカニズムとイニシアティブ(これには、報奨金、一般の人々の意識向上と訓練のイニシアティブ、報告の義務、法的措置および行政措置が含まれる)を強化し、(iv)調整と組織体制の導入に向けて、官民両セクターを導く。

(b) さまざまなタイムスケールの、ターゲットと指標および時間枠を伴う、リスク生成を予防し、既存のリスクの削減と経済、社会、健康および環境のレジリエンスの強化を目的とした、国家防災戦略計画および地方防災戦略計画を採択し、実施する。

(c) 地方および国レベルで特定されたリスクに対処する、技術的、経済的および行政的災害リスク管理能力の評価を実行する。

(d) 土地利用と都市化計画、建築基準法、環境および資源管理と、健康および安全基準への取り組みを含む、既存のセクター別の法律および規則の安全強化規定との高水準のコンプライアンスを確保するために必要なメカニズムおよびインセンティブの確立を促し、災害リスク管理への十分な注目を確保するために、必要に応じてそれらを更新する。

(e) フォローアップと定期的な評価および国家計画と地方計画の進捗状況に関する、公的な場での報告のメカニズムを、必要に応じて開発し、強化する。公開審査を促進し、地方防災計画と国家防災計画の中間報告に関する、国会議員およびその他の関係官僚等による組織的な議論を奨励する。

(f) コミュニティ代表に対して、必要に応じて、災害リスク管理機関およびそのプロセスと関係法的枠組を通じた意思決定における明確な役割と任務を割り当てる。これらの実施を支援する法律と規則を策定する際には、一般の人々およびコミュニティとの包括的な協議を行う。

(g) 国および地方の防災プラットフォームや、ポスト2015年枠組の実施のために指定された国内フォーカルポイントなど、国および地方レベルの関係ステークホルダーから成る政府調整フォーラムを設立し、強化する。このようなメカニズムには、特にセクター別およびマルチセクターの災害リスクを特定し、機密ではない災害リスク情報とデータの共有および普及により災害リスクの認識と知識を築き、地方および国の災害リスクに関する報告に貢献し、これを調整し、一般の人々の災害リスクに関する意識向上キャンペーンを調整し、地方のマルチセクター(地方自治体間など)による協力を促進および支援し、国および地方の災害リスク管理計画と、災害リスク管理にかかわるすべての政策に関する決定と報告に貢献する、明確に割り当てられた責任と権限を伴う、国家制度の枠組内での強固な基盤が必要である。これらの責任は、法律、規則、基準および手続を通じて定められなければならない。

(h) 市民社会、コミュニティ、先住民および移民と協力し、調整を図るための規制措置ならびに財政措置を通じて、必要に応じて、地方自治体に地方レベルでの災害リスク管理の権限を与える。

(i) 国会議員に、関連法の新たな策定や改正、予算の割り当てにより、防災の実施を支援するよう促す。

(j) 災害リスク管理に関する認定証や賞などの質基準の開発を促進する。民間セクター、市民社会、業界団体、科学機関および国際連合もこれに参加する。

(k) 予防に関する問題への取り組みと、災害リスク地域における人間の居住地の移動が可能な場合はこれに関する問題への取り組みを目的とした公共政策を、適用可能な場合、国内の法律および法制度に従い策定する。

世界および地域レベル

28. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) より効率的な計画立案を促進し、共通の情報システムを創造し、協力と能力開発のためのグッドプラクティスとプログラムを交換し、特に、国境を越えた共通の災害リスクに取り組むために、必要に応じて本枠組を考慮し、防災を目的とする、合意を得た地域・小地域戦略および協力のメカニズムを通じて、地域レベルでの活動を導く。

(b) 世界および地域のすべてのメカニズムおよび機関の協力と、防災に関連のある、気候変動、生物多様性、持続可能な開発、貧困撲滅、環境、農業、健康、食糧と栄養などにかかわる手段およびツールの一貫性を、必要に応じて促進する。

(c) パートナーシップを築くために、防災グローバル・プラットフォーム、地域および小地域の防災プラットフォームおよびテーマ別プラットフォームに積極的に参加し、定期的に進捗状況を評価し、必要に応じて、開発および気候問題などに関する災害リスク情報を活用した政策、プログラムおよび投資の実践と知識を共有し、他の関係セクターへの災害リスク管理の統合を促進する。地域の政府間機関は、地域の防災プラットフォームにおいて重要な役割を果たさなければならない

(d) 河川流域および沿岸部などの共有資源に関して、生態系ベースのアプローチの実施に向けた政策と計画立案を可能にし、レジリエンスを構築し、伝染病および強制退去のリスクを含む災害リスクを削減するための、国境を越えた協力を促進する。

(e) 相互学習とグッドプラクティスおよび情報の交換を、特に関係各国間での自発的かつ自己主導的ピアレビューを通じて促進する。

(f) 兵庫行動枠組モニターの経験を活かし、必要に応じて、関連データおよび情報を含む災害リスクの監視と評価のための自発的な国際メカニズムの強化を促進する。このメカニズムを通じて、持続可能な社会・経済開発のために、中央政府の関係機関およびステークホルダーと、機密ではない災害リスク情報の交換を促進することができる。

優先事項3.レジリエンスに向けた防災への投資

29. ハード・ソフト対策を通じた、災害リスクの予防と削減への官民投資は、人、コミュニティ、国およびその資産と環境の、経済、社会、健康および文化のレジリエンスの強化に不可欠である。これは技術革新、成長および雇用創出の促進要因となりうる。このような方策は、費用対効果が高く、命を救い、損失を予防および削減し、効果的な復旧と復興を確保することに役立つ。

国および地方レベル

30. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) すべての関係セクターにおける防災戦略、政策、計画、法律および規則の策定および実施に向けて、あらゆるレベルの行政当局に対し、必要に応じて、資金および物流など必要な資源を割り当てる。

(b) 官民投資について、政府および都市と農村部の社会に対する災害の経済的影響を削減するために、必要に応じて、災害リスクの移転と保険、リスクの分担と自己保有および財政保護のメカニズムを促進する。

(c) 特に、学校、病院および物理的インフラストラクチャーなどの重要施設におけるハード・ソフト対策と機能的な災害リスク予防・削減策、ユニバーサルデザインの原則の採用と建築材料の規格化を含む適切な設計と施工による、ハザードに耐える最初の段階からのより良い建築、補強改修および再建、メンテナンス文化の育成、経済、社会、構造物、技術および環境への影響の評価を考慮することを通じて、災害に対してレジリエントな官民投資を、必要に応じて強化する。

(d) 文化・収集施設およびその他の歴史・文化遺産と宗教関連施設を保護し、または、これらの保護を支持する。

(e) ハード・ソフト対策を通じて、災害リスクに対する職場のレジリエンスを促進する。

(f) 都市化計画、土地劣化の評価および非公式な仮設住宅の供給を含む土地利用政策の策定と実施における災害リスク評価の主流化と、予測される人口構造および環境の変化に関する情報に基づいたガイドラインとフォローアップツールの使用を促進する。

(g) 農村部開発計画と、特に、山、川、沿岸部の氾濫原地域、乾燥地、湿地およびその他の干ばつと洪水の起こりやすいすべての地域の管理における、災害リスクの評価、マッピングおよび管理の主流化を、人間の居住地として安全な地域を特定し、同時に、リスク削減に役立つ生態系機能を維持することにより、促進する。

(h) 建築基準法、基準、国または地方レベルでの復興と再建の実践について、特に不法占拠集落や限界集落などの地方の状況によりうまく適用できるように、必要に応じて、既にあるものを改正し、または、新たなものを開発するよう促すとともに、災害に対してレジリエントな構造物の建築を促進するために、適切なアプローチを通じて、このような規定を導入し、調査し、施行する能力(capacity)を強化する。

(i) 特に地方レベルにおける一次医療、二次医療および三次医療への災害リスク管理の統合、医療従事者が災害リスクを理解し、医療活動において防災アプローチを適用し実施する能力(capacity)の開発、災害医療分野における研修能力の向上と強化、コミュニティの健康推進団体に対して、医療事業において防災アプローチをとるよう支援し、これに関する研修を行うことなどを通じて、他のセクターと協力し、また、世界保健機関の国際保健規則(2005年)を実施し、国民保健制度のレジリエンスを強化する。

(j) 貧困撲滅に向けて、また、災害後の段階における持続的な解決策を見出し、災害の影響を過度に受ける人々を力づけ、援助するために、コミュニティの参加を得るなどして、生活向上プログラムと一体化したインクルーシブな政策と社会的セーフティーネットのメカニズムの策定および実施と、母性保健、新生児・小児保健を含む基本的な医療サービス、性と生殖に関する健康、食糧安全保障と栄養、住宅と教育などのへのアクセスを強化する。

(k) 命を脅かす慢性疾病に罹患している人々は、その特別なニーズから、救命サービスへのアクセスを持つことを含む、災害前、災害時および災害後のリスク管理のために、政策と計画の立案に参加しなければならない。

(l) 被災者と受け入れ先コミュニティのレジリエンスを強化するために、国内の法律と状況に応じた、災害によって引き起こされる人の移動に取り組む政策とプログラムの採用を促す。

(m) 金融・財政手段への、防災に対する配慮および措置の統合を、必要に応じて促進する。

(n) 生態系の持続可能な利用と管理を強化し、防災を盛り込んだ統合的な環境・自然資源管理型アプローチを実行する。

(o) 企業のレジリエンスと生計およびサプライチェーン全体にわたる生産的資産の保護を増進する。サービスの継続を確保し、災害リスク管理をビジネスモデルと実務に統合する。

(p) 生計および家畜、使役動物、道具および種子などの生産的資産の保護を強化する。

(q) 重要な経済促進要因としての観光への多大な依存がしばしば見られることを考慮し、観光業界全体で、災害リスク管理型アプローチを促進し、統合する。

世界および地域レベル

31. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) 持続可能な開発と防災に関連のあるすべてのシステム、セクターおよび機関の、政策、計画、プログラムおよびプロセスにおける一貫性を促進する。

(b) 国際社会におけるパートナー、企業、国際金融機関およびその他の関係ステークホルダーとの緊密な協力により、災害リスクの移転と共有のメカニズムおよび手段の開発と強化を促進する。

(c) 特に開発途上国とその固有な課題への取り組みを支援する、防災に役立つ新たな製品とサービスを開発するために、学術機関、科学研究機関およびこれらのネットワークならびに民間セクターとの協力を促進する。

(d) 災害が経済および社会に与える潜在的な影響を評価し、予測するために、世界および地域の金融機関の協調を促す。

(e) 国の健康にかかわる災害リスク管理能力、国際保健規則(2005年)の実施およびレジリエントな保健システムの構築を強化するために、保健当局およびその他の関係ステークホルダーによる協力を促進する。

(f) 家畜、使役動物、道具および種子などの生産的資産を保護するための協力と能力構築を強化し、促進する。

(g) 家庭およびコミュニティレベルでのショックに対するレジリエンスを確保するために、生活向上プログラムと関連のある、これに統合された防災対策として、社会的セーフティーネットの開発を促進し、支援する。

(h) 防災を通じて、飢餓と貧困の撲滅を目指す国際的な取り組みを強化し、拡大する。

(i) 災害に対する企業のレジリエンスを強化するために、関係官民ステークホルダーによる協力を促進し、支援する。

優先事項4.効果的な応急対応に向けた災害準備の強化と「より良い復興 (Build Back Better)」

32. 人と資産の暴露の増加を含む災害リスクの着実な増加は、過去の災害から学んだ教訓と併せて、応急対応に向けた防災のさらなる強化、事象を予測した行動を取ること、応急対応への準備に防災を統合することと、あらゆるレベルにおいて効果的な応急対応と復旧のための能力(capacity)を確保することの必要性を示すものである。公の場で、男女平等の、すべての人にとってアクセシブルな応急対応、復旧、復興および再建のアプローチをとり、これを促進するには、女性と障害のある人のエンパワメントが重要である。災害は、復旧、復興および再建という段階が、災害に先立つ準備を必要とするものであり、開発手段への防災の統合、国家とコミュニティを災害に対してレジリエントなものとすることなどを通じて、より良い復興を達成する極めて重要な機会であることを実証してきた。

国および地方レベル

33. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) 気候変動のシナリオとそれが災害リスクに与える影響を考慮し、必要に応じて、すべてのセクターと関係ステークホルダーの参加を促進し、関係各機関の参加を得て、災害への備えと非常時の対応策、計画およびプログラムを準備または再検討し、定期的に更新する。

(b) 人間中心の、マルチセクターによるマルチハザード予知および早期警戒システム、災害リスク時および緊急時の通信メカニズム、ソーシャルテクノロジーおよびハザード監視通信システムに投資し、これらを開発、維持および強化する。このようなシステムは、参加型プロセスを通じて開発する。また、これらを社会的および文化的要件を含む利用者のニーズ、特にジェンダーに適合させる。シンプルかつ低コストの早期警戒装置および施設の適用を促進し、自然災害早期警戒情報のリリースチャンネルを拡大する。

(c) 水道、輸送機関および電気通信インフラストラクチャー、教育施設、病院およびその他の保健施設を含む新旧の重要なインフラストラクチャーが、災害時および災害後も、命を救う不可欠なサービスの提供に向けて、常に安全かつ有効であり、機能し続けることを確保するために、これらのレジリエンスを促進する。

(d) 一般の人々の意識向上と、救助および救援活動の実施に必要な物資の備蓄のために、コミュニティセンターを設立する。

(e) 調整と資金調達のメカニズムおよび救援手続を確立または強化し、災害後の復旧および再建の計画と準備に携わる公務員を支援する公共政策および公的活動を採用する。

(f) 災害応急対応に携わる既存の労働者とボランティア活動者の研修を行い、緊急時のより良い応急対応を確保するために、技術力および物流力を強化する。

(g) 社会的および経済的復旧を含む事業および計画立案と、災害後の段階における基本的なサービスの継続を確保する。

(h) 地方のニーズに応じた、安全な避難場所、食糧および食糧以外の不可欠な援助物資へのアクセスを含む、迅速かつ効果的な災害応急対応と災害に関連した強制退去の確実な実施を目的とした、避難訓練、研修、地域ベースの支援システムの確立を含む、定期的な防災、応急対応および復旧訓練を促進する。

(i) 災害後の再建の複雑性と費用の高額さを考慮し、国内当局の調整の下、被災したコミュニティおよび企業を含む、あらゆるレベルの多様な機関、複数の当局および関係ステークホルダーの協力を促進する。

(j) 災害後の復旧および復興のプロセスに、災害リスク管理を組み込むことを促進し、救援、復興および開発の結びつきを強める。土地利用計画などの方策の開発、構造物の基準改善および専門技術、知識、災害後の再検討と教訓の共有などを通じて、復旧段階における短期・中期および長期的な防災能力開発の機会を利用する。これは、災害によって強制退去させられた人々の一時的な居住地にも適用されなければならない。

(k) 兵庫行動枠組の採択以来、10年以上にわたる復旧および再建の事業から学んだこと、経験、知識および教訓の交換などを通じて、土地利用計画および構造物の基準改善等に関する、災害後の再建に向けた準備の指針を開発する。

(l) 災害後の再建のプロセスにおいて、関係者と適宜協議の上、リスク地域外への公共施設およびインフラストラクチャーの移転を、可能な限り検討する。

(m) 災害の多い地域に住んでいる人々を避難させるために、地方自治体の能力(capacity)を強化する。

(n) 疾病への罹患および死亡の予防を促進するために、症例登録制度と災害による死亡率に関するデータベースを確立する。

(o) 心理社会的支援とメンタルヘルスサービスを必要とするすべての人にこれらを提供するために、復旧のスキームを強化する。

(p) 国際的な災害救援および初期復興支援の国内における円滑化および規制のためのガイドラインに基づき、必要に応じて、国際協力に関する国内の法律と手続を再検討し、強化する。

世界および地域レベル

34. これを達成するためには、以下のことが重要である。

(a) 国の対処能力を超えた状況の下での迅速かつ効果的な災害対応に備え、また、これを確保するために、必要に応じて、調和のとれた地域的アプローチと運営機構を開発し、強化する。

(b) 防災および災害対応における協調行動を支援し、政策の実践と災害後の再建事業に関する教訓およびベストプラクティスの情報共有を促進するために、基準、規約、運営指針およびその他の指針書などの法律文書のさらなる開発と普及を促進する。

(c) 効果的な、国内で通用する、地域マルチハザード早期警戒メカニズムのさらなる開発とこれに対する投資を、気候サービスのための世界的枠組に関連のある場合はこれに従い促進するとともに、すべての国における情報の共有と交換を円滑に進める。

(d) 国およびすべての関係ステークホルダー間で経験と学びを共有するために、国際復興支援プラットフォームなどの国際的なメカニズムを強化する。

(e) 水関連の災害リスクとそれが社会に及ぼす影響に関する認識を高め、理解を促すために、必要に応じて、関係国連機関による水文気象学的問題に関するグローバル・メカニズムの強化と実施を支援し、各国の要求に応じて防災戦略を進める。

(f) 共同演習および訓練などを通じて、防災に取り組むための地域協力を支援する。

(g) 災害時および災害後の共同対応および資源の共有を円滑に進めるために、地域プロトコルを促進する。

(h) 既存の労働者とボランティアに対する災害対応研修を行う。

Ⅴ. ステークホルダーの役割

35. 国は防災に対し全般的な責任を有するが、防災は、政府および関係ステークホルダーの共同責任である。特に非国家ステークホルダーは、地方、国、地域および世界レベルでの枠組の実施において、国の政策、法律および規則に従い、国への支援を実現する者として重要な役割を果たす。彼らの深い関与、善意、知識、経験および資源が必要となる。

36. ステークホルダーの具体的な役割と責任を決定するために、また同時に、既存の関連国際法律文書に基づいてこれを行うために、各国はすべての官民ステークホルダーに対し、以下の活動を促さなければならない。

(a) 市民社会、ボランティア、組織的なボランティア活動団体および地域に根差した団体に対しては、必要に応じて、特に防災に向けた規範的枠組み、基準および計画の開発と実施に関して、特別な知識と実践的な指針を提供するために、公共機関とともに参加すること、地方、国、地域および世界の計画と戦略の実施に関与すること、一般の人々の意識向上、予防の文化、災害リスクに関する教育に貢献し、これらを支援すること、集団間の相乗効果を強化する、レジリエントなコミュニティとインクルーシブで社会全体を対象とした災害リスク管理を支持すること。この点に関して、以下のことに留意しなければならない。

(i) 女性とその参加は、効果的な災害リスク管理と、ジェンダーに配慮した防災政策、計画およびプログラムの策定、資金提供および実施に極めて重要であり、災害後の別の生計手段の準備とこれに向けた能力構築のために、女性のエンパワメントを行う適切な能力構築策が取られなければならない。

(ii) 子どもと若者は変化をもたらす主体であり、法律、国内の慣例および教育カリキュラムに従い、防災に貢献する余地と手法を与えられなければならない。

(iii) 特にユニバーサルデザインの原則を考慮した場合、障害のある人とその組織は、災害リスクの評価と、個別の必要性に応じた計画の策定および実施に極めて重要である。

(iv) 高齢者は長年の知識、スキルおよび知恵を持ち、それらは防災のための貴重な資産であることから、政策、計画および早期警戒などのメカニズムの策定には、その参加を得なければならない。

(v) 先住民は、その経験と伝統的知見を通じて、計画および早期警戒などのメカニズムの開発と実施に重要な貢献を果たす。

(vi) 移民は、コミュニティと社会のレジリエンスに貢献し、その知識、スキルおよび能力(capacity)は、防災の計画と実施に役立てられる。

(b) 学術機関、科学研究機関とそのネットワークに対しては、新たな災害リスクを含む、中・長期的な災害リスク要因とシナリオを重視すること、地域、国および地方で適用できる研究を増やすこと、地域社会および地方自治体による活動を支援すること、政策と意思決定科学の間のインターフェースを支援すること。

(c) 企業、業界団体ならびに金融規制機関および会計関係団体などの民間セクターの金融機関と慈善基金に対しては、事業の継続などの災害リスク管理を、特に中・小・極小企業への災害リスク情報を活用した投資を通じて、ビジネスモデルと実務に統合すること、従業員と顧客を対象とした意識向上研修に参加すること、災害リスク管理に関する研究と技術革新および技術開発に参加し、これを支援すること、知識、実践および非機密データを共有および普及し、必要に応じて、公共セクターの指導の下、災害リスク管理を組み込んだ規範的枠組および技術的基準の開発に積極的に参加すること。

(d) メディアに対しては、地方、国、地域および世界レベルにおいて、一般の人々の意識と理解の向上に貢献する積極的かつインクルーシブな役割を果たすこと、小規模災害を含む、災害リスク、ハザードおよび災害に関する正確な非機密情報を、シンプルで透明性のある、理解しやすい、アクセシブルな方法で、国内当局との緊密な協力により普及すること、特別な防災通信政策を採用すること、必要に応じて、早期警戒システムおよび救命保護措置を支援すること、国の慣例に従い、予防の文化と持続的な一般向けの啓蒙キャンペーンおよび社会のあらゆるレベルにおける公の協議へのコミュニティの強力な関与を奨励すること。

37. 2013年12月20日の総会決議68/211に関して、関係ステークホルダーによる公約は、協力手法を明らかにし、本枠組を実施する上で重要である。地方、国、地域および世界レベルでのパートナーシップの構築と、地方および国の防災戦略および計画の実施を支援するために、これらの公約は、具体的な、かつ、期限を定めたものでなければならない。すべてのステークホルダーには、本枠組または国および地方の災害リスク管理計画の実施を支持する自らの公約とその実現について、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)のウェブサイトを通じて公表することが勧められる。

Ⅵ. 国際協力とグローバル・パートナーシップ

一般的考慮事項

38. 開発途上国は、その多様な能力(capacity)、提供される支援のレベルと本枠組を実施できる範囲との関係を考慮し、防災の取り組みを強化するために、国際協力と開発のためのグローバル・パートナーシップおよび継続的な国際支援を通じた、適切で持続可能な、タイミングの良い資源の提供などの実施手段の強化を必要としている。

39. 防災に向けた国際協力にはさまざまな資金源があり、開発途上国による防災の取り組みを支援する上で、これは極めて重要な要素である。

40. 各国の経済格差および技術革新力と研究力の格差への取り組みにおいては、本枠組を実施する中での、先進国から開発途上国へのスキル、知識、アイディア、ノウハウおよび技術の流れを可能にし、促進するプロセスを含む、技術移転の強化が極めて重要である。

41. 災害の多い開発途上国、特に、固有の課題に直面している、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国およびアフリカ諸国と中所得国には、その高度な脆弱性と、多くの場合、自国の災害対応および復旧の能力(capacity)を大幅に超えるリスクレベルを考慮し、特別な注意が必要である。開発途上国による国内の優先課題とニーズに基づく本枠組の実施を支援するために、このような脆弱性には、国際協力の緊急の強化と、地域および国際レベルでの真の永続的なパートナーシップの確保が必要となる。同様な注意と適切な支援は、群島国や広範囲に及ぶ海岸線を持つ国など、固有の特徴を持つ、災害の多いその他の国々にも拡大されなければならない。

42. 災害は、小島嶼開発途上国に過度に影響を与える可能性があるが、これは、これらの国に固有の特別な脆弱性が原因である。災害の影響は、気候変動によって一部激しさを増し、悪化してきたが、これらの国における持続可能な開発に向けた前進を妨げている。小島嶼開発途上国の特別な事例を考慮し、防災分野における「小島嶼開発途上国行動モダリティ推進の道(SAMOA)」9の実施を通じて、レジリエンスを構築し、特別な支援を提供することが大いに必要とされている。

43. アフリカ諸国は、災害関連の課題と増加しつつあるリスクに直面し続けており、これには、インフラストラクチャー、健康および暮らしのレジリエンスの強化に関連のある課題とリスクも含まれる。本枠組の実施を可能にするために、アフリカ諸国に対する国際協力の増進と適切な支援の提供が、これらの課題で必要とされている。

44. 南南協力と三角協力によって補完される南北協力が防災の鍵であると証明されたことから、両地域の協力をさらに強化する必要がある。パートナーシップは、各国の全潜在能力を活用するとともに、災害リスクを管理し、個人、コミュニティおよび国の社会、保健および経済の福祉を向上させる各国の能力(capacity)を支援することにより、さらに重要な役割を果たす。

45. 開発途上国による南南協力および三角協力の取り組みは、南北協力を補完するものであり、先進国による南北協力を削減するものであってはならない。

46. さまざまな国際的な資金源からの資金提供と、相互の合意に基づく、緩和された、かつ、特恵的な条件の下での、信頼のおける、手頃な価格の、適切かつ現代的な、環境に優しい技術の官民間の移転、開発途上国に対する能力構築支援、あらゆるレベルにおける制度的環境および政策環境の実現は、極めて重要な防災手段である。

実施手段

47. これを達成するためには、以下のことが必要である。

(a) 開発途上国、特に、固有の課題に直面している、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、内陸開発途上国およびアフリカ諸国と中所得国には、防災に向けて、二国間および多国間ルートによる、調和のとれた、持続可能かつ適切な国際支援の強化が必要であると再確認すること。このような支援は、これらの国の能力(capacity)を開発し、強化するための、技術的および経済的支援の増進と、相互の合意に基づく、緩和された、かつ、特恵的な条件の下での技術移転などを通じて行われる。

(b) 各国、特に開発途上国による、資金、環境に優しい技術、科学およびインクルーシブな技術革新へのアクセスと、既存のメカニズム、すなわち、国際連合およびその他の関係各機関を含む、二国間、地域間および多国間の協力体制を通じた、知識および情報の共有を増進すること。

(c) ノウハウ、技術革新および研究を共有し、防災に関する技術と情報へのアクセスを確保するために、グローバル・テクノロジー・プールおよびグローバル・システムなどの、テーマ別協力基盤の利用と拡大を促進すること。

(d) すべてのセクター内およびセクター間の、貧困削減、持続可能な開発、自然資源管理、環境、都市開発および気候変動への適応に関する多国間および二国間開発援助計画に、必要に応じて防災対策を組み込むこと。

国際機関からの支援

48. 本枠組の実施を支援するためには、以下のことが必要である。

(a) 国際連合およびその他の防災に関与している国際機関および地域機関、国際金融機関および地域金融機関とドナー機関には、必要に応じて、本件に関連のある戦略の調整を強化することが求められる。

(b) 国際連合システムの、基金、プログラムおよび専門機関を含む各機関には、『レジリエンスに向けた国連防災行動計画(United Nations Plan of Action on Disaster Risk Reduction for Resilience)』、国連開発援助枠組およびカントリープログラムを通じて、資源の最大限の活用を促進することと、開発途上国の要求に応じた、国際保健規則(2005年)などの他の関係枠組との協力による能力(capacity)の開発および強化と、バランスの良い、十分に調整された、持続可能な方法により、各機関の権限の範囲内で各国の優先事項を支援する、明確な、かつ、焦点を絞ったプログラムなどを通じて、本枠組の実施を支援すること。

(c) 特に、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)には、国際連合におけるフォローアッププロセスと適宜タイミングを合わせ、特にグローバル・プラットフォームの進捗状況に関する定期的なレビューを作成し、持続可能な開発および気候変動に関する他の関係メカニズムと適宜協力し、世界および地域での一貫性のあるフォローアップと指標の開発を支援し、現在のウェブベースの兵庫行動枠組モニターを適切に更新すること、持続可能な開発指標に関する機関間・専門家グループ (the Inter-Agency and Expert Group on Sustainable Development Indicators) の活動に積極的に参加すること、各国との緊密な連携と専門家の動員による、実施に関するエビデンスベースの実践的な指針を策定すること、専門家および技術機関による基準開発に対する支援と権利擁護活動、災害リスク情報、政策および慣例の普及、付属機関による防災教育と研修を通じて、関係ステークホルダー間で予防の文化を強化すること、国内のプラットフォームあるいはこれに相当する手段等を通じて、各国による国家計画策定と災害リスク、損失および影響の傾向とパターンの監視を支援すること、防災グローバル・プラットフォームを開催し、地域機関との協力による地域の防災プラットフォームの組織化を支援すること、『レジリエンスに向けた国連防災行動計画』の改正を主導すること、防災に関する科学技術研究の結集において、UNISDRの科学技術諮問グループの強化を促進し、同グループへの情報提供を継続すること、各国との緊密な協力の下、各国の合意が得られた用語について『国連国際防災戦略(ISDR)防災用語集(2009 年版)』の更新を主導すること、ステークホルダーの公約登録簿の維持を通じて、本枠組の実施、フォローアップおよび見直しを支援すること。

(d) 世界銀行および地域開発銀行などの国際金融機関には、開発途上国に対して、統合的な防災に向けた財政支援と融資を実施するために、本枠組の優先事項を検討すること。

(e) 国連気候変動枠組条約締約国会議、世界および地域レベルの国際金融機関、国際赤十字および赤新月社運動などの、その他の国際機関および条約体には、開発途上国の要求に応じて、他の関係枠組との協力の下、開発途上国による本枠組の実施を支援すること。

(f) 民間セクターおよび企業とのかかわりに関する主要な国際連合イニシアティブである国連グローバル・コンパクトには、持続可能な開発とレジリエンスに向けた防災への関与を深め、その決定的な重要性を促進すること。

(g). 開発途上国の防災を支援する国連システムの全般的な能力(capacity)は、国連防災信託基金への、タイミングの良い、安定した、予測可能な拠出金の増加や、本枠組実施に関連して同基金の役割を高めることなど、さまざまな資金提供のメカニズムを通じて適切な資源を提供することにより、強化されなければならない。

(h) 列国議会同盟およびその他の議員を対象とした関係地域団体および機構には、必要に応じて、防災と、国内の法的枠組みの強化に向けて、支援と主張を継続すること。

(i) 都市・自治体連合およびその他の地方自治体関係団体には、防災と本枠組の実施に関して、地方自治体間の協力および相互学習に対する支援を継続すること。

フォローアップ行動

49. 本会議は、総会に対し、第70会期において、本防災枠組の実施に関する世界的な進捗状況のレビューを、必要に応じて、防災グローバル・プラットフォーム、地域の防災プラットフォームおよび兵庫行動枠組モニターの成果を考慮し、経済社会理事会、持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラムおよび4年毎の総合方針見直しと足並みを揃え、国連会議および首脳会議の統合的かつ協調的なフォローアッププロセスの一部として含める可能性を検討することを要請する。

50. 本会議は、総会に対し、第69会期において、加盟国によって推薦され、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)によって支持された専門家から成り、関係ステークホルダーの参加を得た、持続可能な開発指標に関する機関間・専門家グループの取り組みと連動した、本枠組実施に関する世界的な進捗状況を評価できる一連の指標を開発する、オープンエンドな政府間作業部会を設立することを提言する。また、本会議は、2016年12月までに『国連国際防災戦略(ISDR)防災用語集(2009 年版)』を更新するという科学技術諮問グループの勧告について同作業部会で検討することと、その取り組みの成果を、検討と採択のために総会に提出することを提言する。


1 A/CONF.206/6 and Corr.1, chap. I, resolution 2.

2 レジリエンスとは、「ハザードに曝されたシステム、コミュニティあるいは社会が、基本的な機構及び機能を保持・回復することなどを通じて、ハザードからの悪影響に対し、適切なタイミングで、効果的な方法で抵抗し、それを吸収・受容し、またそこから復興する能力」と定義される。United Nations Office for Disaster Risk Reduction (UNISDR), "2009 UNISDR Terminology on Disaster Risk Reduction", Geneva, May 2009
(http://www.unisdr.org/we/inform/terminology).
(国連国際防災戦略事務局、『国連国際防災戦略(ISDR)防災用語集(2009 年版)』)

3 兵庫行動枠組では、ハザードとは、「人命の損失、負傷、財産への損害、社会的・経済的崩壊、もしくは環境破壊を引き起こす可能性のある、潜在的に有害な自然事象・現象、人間活動」のこと。ハザードには、将来的に脅威となる可能性のあるものを示す可能性のある潜在的な状況や、自然的(地質学的、水文気象学的、生物学的)あるいは人為的行為(環境破壊・技術ハザード)により引き起こされる潜在的な状況がある。」と定義されている。

4 兵庫行動枠組では、脆弱性とは、「ハザードの影響に対するコミュニティの感受性を増加させる、物質的、社会的、経済的、環境的要因、もしくはそれらのプロセスにより決定づけられる状況」と定義されている。

5 兵庫行動枠組優先行動2005-2015は、以下の通り。(1)災害リスクの軽減は、実施へ向けた強力な組織的基盤を備えた国家・地方における優先事項であることを保証する。(2)リスクの特定、評価、監視と早期警戒を強化する。(3)全レベルにおいて安全の文化と災害に対する抵抗力を培うために、知識、技術革新、教育を利用する。(4)潜在的なリスク要素を軽減する。(5)全てのレベルにおける効果的な対応のための災害への備えを強化する。

6 本枠組で言及されている気候変動の問題は、気候変動に関する国際連合枠組条約締約国の管轄下においては、常に同条約に定められた責務の範囲内にとどまるものとする。

7 被災者のカテゴリーは、本会議で決定されたポスト仙台活動に向けたプロセスにおいて、詳細に定められる。

8 A/CONF.172/9, chap. I, resolution 1, annex I

9 総会決議69/15付録


original PDF:
UN World Conference on Disaster Risk Reduction 2015 Sendai Japan. "Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030". UN World Conference on Disaster Risk Reduction 2015 Sendai Japan. 2015-03-18
http://www.wcdrr.org/uploads/Sendai_Framework_for_Disaster_Risk_Reduction_2015-2030.pdf,
(cited 2015-03-23)