ひと~マイライフ-車椅子パラグライダーへの挑戦~自分の人生は自分で決める!~

「新ノーマライゼーション」2023年6月号

鳥越勝(とりごえまさる)

1988年生まれ。筋ジス活動家。ベッカー型筋ジストロフィー。車椅子ユーザー。企業に勤めながら、YouTube『とりすま』にて難病・障害に関する情報発信、難病当事者とご家族のためのオンライン座談会(延べ130回以上)の企画運営、その他さまざまなチャレンジを通じて、主に難病・障害のある方々をエンパワメントする活動を行う。

初めまして。筋ジス活動家のとりちゃんです。突然ですが、みなさんは『車椅子パラグライダー』をご存知ですか。僕は5年前に初めて体験し、自身の変化の大きなきっかけとなりました。そして、昨年10月に2度目の車椅子パラグライダーでのフライトを体験し、YouTubeで発信することができました。そんなチャレンジに至るまでのこれまでの僕のこと、これからの僕のことについて寄稿させていただきます。

もともと僕は病気を受け容れポジティブであったかというと全くそうではありません。僕は徐々に筋力が低下していくベッカー型筋ジストロフィー(以下、BMD)であると12歳の頃に診断されました。それから約20年間、そのことを周囲に打ち明けられず隠しながら生活してきました。そのため心理的に孤独や葛藤も感じたり、どこか自信を持てずに過ごし続けました。今思えば、「病気だから〇〇をしなければならない」「病気だから〇〇はできない」と『病気』に決められた範囲の選択をさせられ、さまざまなことを病気のせいにして諦めたり逃げたりしてきたなと思います。そのため、それなりに充実していましたが、どこか“幸せ”と言い切れないような日々を過ごしていました。

そして5年ほど前から自身が筋ジストロフィーであることを周囲に打ち明けることができるようになってきました。きっかけはBMDを隠し肩肘を張って生きてきた自分に対し「自分の人生このままでいいんだっけ?」と疑問を持ったことでした。そこで「これからどう生きていきたいか?」を突き詰めて考えていました。そんな中、難病や障害をもちながらも人一倍“輝いてる人”たちにも出会うことができ、次第に「自分にも何かできるのではないか?」「自分が筋ジストロフィーで生まれたことに何か意味があるのでは?」と考えるようになりました。その時に初めて車椅子パラグライダーにも挑戦し、具体的なアクションの実感と成功体験を得たことも大きな経験となり、それから少しずつ他の誰のモノでもない『自分の今を生きる!』ことがようやくできるようになっていきました。

その後、YouTubeチャンネル『とりすま』にて難病や障害に関する情報発信をするようになり、難病当事者のコミュニティや座談会の企画運営などもするようになりました。その他、さまざまなお声がけもいただくようになり、活動が広がってきました。東京2020パラリンピックに聖火ランナーとして出場したり、何度かテレビなどのメディアにも出させていただけるようにもなりました。当初は同じ難病や障害の仲間のために、彼らをエンパワメントするためにという使命感で頑張っていた活動が、いつしか自分の生きがい・ライフワークとなり、充実した毎日を過ごすことができています。

そして気づいたことは、やはり「『空』が好きだ」ということです。それは「自由」の象徴、「挑戦」の対象、はたまた「生きる」を感じる場なのかもしれません。しかしそれ以上に大事なのは、自分の内から湧き出る「やりたい」という衝動です。ぼくは「車椅子パラグライダー」のソロフライトに挑戦します。そのためには山形への移住も辞さない覚悟です。

「自分の人生は自分で決める!」これを大事にこれからも誰も生きたことのない人生を生きていきたいと思います。


【参考】とりすま~障がいや難病のある方のための情報発信チャンネル~
https://www.youtube.com/@torisuma25

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