快適生活・暮らしのヒント-視覚障害ユーザーの快適操作術

「新ノーマライゼーション」2023年7月号

和田浩一(わだこういち)
公益社団法人NEXT VISION

私の眼の病気が発見されたのは13歳の時で、進行性の眼の難病でした。その後徐々に視力が低下し、30歳ころには文字が読めなくなり、60歳を超えた現在は明暗も判断ができなくなりました。

視覚障害は移動と情報のアクセスに困難がありますが、昨今のAI(人工知能)をはじめとするICT機器の活用で視覚障害者の生活は大変便利になりました。私の生活に無くてはならないアイテムとなっているスマートスピーカーとスマートフォンの活用の工夫をご紹介します。

視覚を使わず声だけで操作できるスマートスピーカーはしゃべることができれば容易に使用できます。手を使う必要がないので、着替えや料理などの作業をしながら使えることが利点です。「今日の天気は」と聞くと、気温や天気を教えてくれます。「おはよう」と言うだけで、あいさつを返し、NHKのラジオニュースが流れます。「6時半に起こして」と言えば、目覚ましのアラームを設定できます。「『月曜日にゴミ出し』と覚えて」と言えば、月曜になると教えてくれます。ラジオの選局も放送局名を言えば流れます。電子書籍の読み上げや宅配の再配達の指示もできます。また、スマートスピーカーで、エアコン、テレビ、照明器具などの操作が声でできます。リモコンを探す手間がなく快適です。

Amazon Echoの定型アクション機能を使って、自分好みに指示する言葉を設定して使用しています。最新のニュースを聞きながらエアロバイクで30分の運動をする際のタイマーを起動させることができます。このような一連の操作を組み合わせて自動化することが便利です。また、人が近づくと感知するセンサーのあるタイプではしゃべらなくて人が近づくだけでアクションを割り当てられます。自動的に照明などのリモコンの操作もできます。

次にスマートフォンの工夫ですが、iPhoneのVoiceOverという画面読み上げ機能を利用しています。操作は読み上げ機能用のタッチジェスチャーを覚えて使いますが、操作の手間が少なくスピーディーに使えるようにショートカット機能を利用しています。特にSiriショートカット機能を使用することで、「これを読んで」と音声で指示をするだけで、OCR機能を読み出して印刷物などの文字の読み上げができます。アプリを探して起動することなく、声だけで必要な機能をスピーディーに読み出して利用できます。

他にも、背面タップに機能を設定しています。ダブルタップでアップスイッチャー、トリプルタップでコントロールセンターを開くように設定しています。短時間でかつ確実に使用頻度の高い機能を呼び出せるように工夫しています。このように操作方法をカスタマイズすることで快適な操作ができるようになりました。

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