地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-移動スーパーによる限界集落のサポート~障がい者が繋ぐ“ほっとかない事業”

「新ノーマライゼーション」2023年8月号

社会福祉法人共生会障がい者就労支援センターかがやき 管理者補佐兼サービス管理責任者
前田裕子(まえだひろこ)

障がい者就労支援センターかがやき(開設当時は身体障害者通所授産施設)は、一般の事業所では働くことが困難な障がいのある方が「皆と同じように働きたい」という思いを大切にした福祉的就労支援のため、平成13年4月1日に開設しました。現在は、就労継続支援B型サービスを提供し、56名の方が利用しています。開所当初より農業、受託軽作業、施設外作業を行い、平成24年より食品製造部門を本格稼働しました。菓子、弁当・惣菜製造に取り組み、自社製品を移動販売や地元主催のバザー等に出店し、デパートやショッピングセンターへと販路を拡大してきました。平成29年4月にオープンしたユニバーサルカフェ「きららカフェ」では、ご利用者の方が自ら運営できる設備を整え、地域住民との交流拠点機能に重点を置き、店舗販売やイートインコーナーを常設し、販促イベントや子ども食堂等を実施しています。

さて、平成26年12月より徳島県が実施している「徳島県障がい者が繋ぐ地域の暮らし“ほっとかない事業”」の募集がありました。参加に至る経緯は、近隣市町村において人口減少や少子高齢化等を背景とした買物支援や見守り支援等の地域福祉の推進への取り組みの一環に、社会福祉法人として地域に貢献したいと考え手を上げました。初期投資として県より移動販売車両の補助を受けました。障がい者と高齢者の生活の質の向上を目的とし、平成27年1月、当該事業を開始しました。当時の活動内容は、職員2名、利用者8名が従事し、近隣2市中心に約15戸への弁当配達や日用品の調達に取り組みました。時の経過とともに高齢者等ご利用者からの依頼やニーズも増え、現在、移動スーパーとして稼働しています。その後、広報等により、2市以外の介護事業所や地域の方からも「買物に不便しているので販売に来てほしい」との依頼が増えてきました。

移動スーパーの事業内容は、次のとおりです。1.商品注文や配達時に、高齢者や在宅障がい者の見守りを行う。2.地域のバザーやイベントに参加して、地域の方々との交流を図る。3.オリジナル商品や日用品等仕入商品を販売し売上向上を目指す。この内容で実施することで、かがやきご利用者と高齢者等ご利用者がコミュニケーションを通し、共生社会の中で障がい者が主役になり、生きがいと絆づくりを目指すことができると考えました。

成果は地域に根ざした取り組みとして評価され、平成28年1月「阿波市高齢者見守り協定」、平成29年3月「徳島県高齢者等の生活状況の見守りに関する協定」を締結しました。

現在も、近隣地域への移動販売は継続しており、高齢者等ご利用者から「電話したら日用品も持ってきてくれるので助かる」「かがやきのパンや惣菜をいつも楽しみにしている」「明るく話してくれることで、コミュニケーションがとれるので寂しさがまぎれる」など好評をいただいております。移動スーパーは、ご利用者が中心となり商品の準備や販売に携わるとともに、緊急時の対応や高齢者等見守りについて積極的に学ぶなど、経験を重ねて得た、作業工程の分担化や高齢者とのコミュニケーション力は強みであり要です。

今後も、「働きたい」と意欲のある障がい者が主役になれる持続可能な事業として展開し、ご利用者の持つ力や事業所の独自性を生かし、ご利用者の生きがいと絆づくり、さらには工賃向上を目指したいと考えています。

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