快適生活・暮らしのヒント-私の周りのアイデアマン

「新ノーマライゼーション」2023年8月号

山川ゆう
ハイリハキッズ(高次脳機能障害の子どもを持つ家族の会)

私の子どもは、生後2週目に感染症による急性脳症になりました。後遺症として、てんかん、軽い知的障害、左目の斜視、左手足に軽い麻痺があります。今は小学校3年生で都内の支援学級に通い、学校後は放課後等デイサービスを利用しています。いくつかの病気や障害が重複しているため、子どもに合うちょっとした工夫を積み重ねて毎日を過ごしています。その工夫の多くが、身近な人からのアドバイスやアイデアです。そのうちの2つをご紹介します。

1つ目は、てんかんの「発作記録表」です。保育園の年少さんの頃からてんかん発作が徐々に増えてきました。当初は発作の時間帯が入眠から明け方でしたが、年長さんになってからは日中、保育園にいる間にも発作が起きるようになりました。そこで保育園に「発作記録表」を渡して、発作の様子を記入してもらうようにしました。

発作記録表拡大図・テキスト

この「発作記録表」は、ある先輩ママさんからいただいたものです。初めてこの記録表を見た時はとても感激しました。発作の観察ポイントが一目でわかるようになっているからです。てんかん発作を初めて観察する場合でも、この記録表に沿って〇(マル)を付けたり、数字を記入したりするだけで、発作の様子を親や医師、救急隊員に的確に伝えることができます。この「発作記録表」は先輩ママさんの想いの結晶だと感じました。

その記録表をわが子に合うように、ほんの一部だけアレンジして保育園に渡しました。今は小学校や放課後等デイサービスに渡し、先生などに記入してもらっています。小学校でも頻繁に発作が起きるため、ある意味で大活躍の「発作記録表」です。

2つ目は、ワッペンです。今は洋服を一人で着替える練習中で、本人なりに試行錯誤していますが、洋服の前後や裏表がよくわかっていません。中でも肌着は特に難しいようです。

Tシャツやトレーナーなどは前身頃にイラストがあるもの、ズボンなどはポケットが前後でわかりやすいものをあらかじめ購入しています。そのため、イラストやポケットなどを目印にして着替えることができます。しかし、小学生用の肌着は無地が主流です。困った本人が、「前がわかるように目印がほしい」と言いました。それを聞いた放課後等デイサービスのスタッフさんが、「前にワッペンとか刺繍とかをしたら?」とアドバイスしてくれました。本人がワッペンを希望したため、毎日ワッペンを目印に肌着の着替えをがんばっています(ちなみに夜のパジャマは特に工夫を施していないため、時代の先をいくファッショニスタは、今夜も見事な着こなしで眠りにつきます)。アドバイスやアイデアは、ちょっとした悩みから私たち家族を解放し、穏やかな日常をプレゼントしてくれています。

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