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講演「障害者差別解消法施行による知識アクセス問題の前進」

河村宏(支援技術開発機構副理事長、日本デイジーコンソーシアム運営委員長)

 皆さん、こんにちは。河村です。マスクしておられる方もおられますし、実は私の所に村田さんからも来たんですけど、他の今日出席予定の方からも、インフルエンザにかかってしまって、行くとみんなにうつしてしまうので、残念だけれども今日は休みますというご連絡がありました。本当に皆さんも気を付けてください。

 今日は、私に与えられましたテーマは、実はこの後村田さんが技術的なことは全部カバーしてくださるということで、インフルエンザを押して、Skypeでご発表くださるんですけれども、私はその周辺といいますか、特に障害者差別解消法がこの4月1日から実施されますので、その施行というものが今までDAISYでみんなで積み上げてきたことと、どうつながっていくのか、そこの点について、最後にできるだけ具体例で、例えば教科書だったらどういうことになるのかという事例を含めてお話をしたいと思います。

 この写真ですね。ちょっとこのときだけ暗くしていただけますか。そうすると、もうちょっとよく見えるんですね。右下に、1999年8月6日と書いてあります。何人かの、ここにいらっしゃる方も写っておられるはずです。これは1999年から、最終的には2000年ぐらいまでかかっておりますけれども、全国にDAISYを点字図書館を中心に導入したときの、非常に多くのボランティアの方々と、それからきょうもいらしていただいておりますシナノケンシ、特に西澤さんが中心になって、すごい、前人未到の、世界で初めてなんですね。全国的にDAISYを導入して、デジタル録音図書に切り替えるという作業をやったわけです。実は、これは非常に重要な研修の後のささやかなパーティーだったと思うんですけども、本当に全く初めてパソコンを扱うような方も含めて、DAISYの製作に取り組んだんです。ですから、今でも私覚えてますけれども、マウスが机の端っこまで来たら身動きならないんだけど、あとどうしたらいいですかっといった質問が、結構しょっちゅうありましたね。いろんな所の講習会に行って、この机の端っこ来ちゃったけどどうしたらいいと聞かれていたのです。今だと笑い話になるんですけど、当時は深刻で、身動きならなくなってる人が何人も出ていたり。そういう状態でした。

 それで、全く前人未到といいますか。プレーヤーもずっと試作品を積み重ねたんですけれども、これは実際に大規模に、当時8500台ぐらい全国で一斉に導入したんですね。当時キャディーといいまして、CD-ROMにCD-ROMのケースを付けて、そのケースに点字を付けて、そのCD-ROMそのものにベタベタ指で触ると寿命短くなっちゃいますから、ケースで点字で読めばその中に何が入ってるかが分かるように作ってあったんですね。私が非常に感激したのは、その頃沖縄の点字図書館で、配ってまだ間もない頃に、2500タイトル全部が、CDですから奥行き狭いんですよね。それがズラーッと棚にもうびっしり並べてあって、それを点字で全部表示してありますので、利用者の方が開架式で選べるように展示してあったと。そしてプレーヤーも同時に貸し出しましたから、沖縄県も相当広いんですよね。利用者の方は、貸し出しをされるときに、そこで使い方の講習を受けて、タイトルを選んで持って帰っておられるということを伺いまして。もう配ったばっかりなのに、すぐ展示して扱っておられるんだっていうんで、感動した覚えがございます。例えば、その図書館、確かそれまでは600タイトルぐらいしか録音図書がなかったっておっしゃってましたね。そこに2500タイトル、全国の点字図書館が協力して作り上げたDAISYが行ったわけですね。ですからもう、本当に読むものが増えたということで、喜んでおられる方々とお会いした記憶がございます。

 これは1999年で、録音図書を普通の本と同じように使えるようにするというデジタル録音図書、それがDAISYの第1目標であったわけです。このとき、目録を作りました。大活字で目録を作りました。今度こういうものがあるよということを全国に知ってほしいということで、小学校、中学校、それから大学図書館まで配ったと思います。小中高の図書室と大学図書館まで配ったと思います。当時、何か押し売りと勘違いした学校があるみたいで、何冊か戻ってきました。うちは買った覚えないっていって。すごい立派な大活字なもんですから、分厚くて大きい立派な本なんですよね。それを、うちは買ってないからっていって返してくる所があったりして、いや、これは差し上げて、こういうものができてるので、視覚障害の人たちが使えますよ、という対応をしたことも記憶しております。

 そのとき同時に、これはシナノケンシさんに大変無理をお願いしまして、カナダにシナノケンシさんと競争する会社が立ち上がろうとしてたんです。そこを、いわば敵に塩を送るっていったらいいんですかね。快く、業界も立ち上げる。国際標準を作る。シナノケンシだけの独占だと見なされると、それは標準といっても、あんまり信用されないということをご理解いただきました。ただし、シナノケンシさんが作ったものは、マジョリティーの最大多数派の、結構高齢の方で、あんまり小さいとちょっと机の上にあってなんか引っ掛けると落っこちてしまって壊れちゃう。少し重みがあった方がいいと。ポケットに入ったりかばんにすぐ入るようなものよりは、ドシッとしてる方がいいという、非常に難しいコンセプトがありました。それで、そういうふうにデザインしていただいたものが、最終製品として大多数が8000台ぐらい入れていただいています。

 あと学生さんたちはちょっと違うニーズがあった。実はそのカナダの会社っていうのは、携帯用の、学生さんたちが使うのに適したような小さいものを作ってたんですね。いろんな意味で、さっきキャディーって言ったんですが、ケースに入れるんではなくて裸でCD-ROMを扱う。そうすると、CD-ROMを安全に扱うスキルを持ってないと、たちまち駄目にしてしまうんです。ですから、ちょっと利用層が違うんですね。そういったものを日本語化して、買ってあげる。その代わり、その会社をちゃんと頑張って立ち上げてくださいということで、世界最初のプレーヤーメーカーはシナノケンシです。世界第2のメーカーをカナダに立ち上げるのにも貢献をしたと。そのとき大変無理をお願いしまして、メンテナンスの要請が来たら、シナノケンシさんで面倒見てあげてほしいとお願いをして、大変快くそれを引き受けていただいたという記憶もございます。それが実は、世界で最初にDAISYが利用者に手が届く規模に立ち上がったときの姿です。スウェーデンはその後、大規模に第2番目に国中で導入した国ですけれども、やはり2年以上後の話です。

 なんでそんな先頭を切って日本が急にガンと前へ出たのか。一番の理由は、景気刺激の補正予算です。突然補正予算で、当時10億円単位ですよね。1本10億円でなんかないかって探してる状態でした。ただし、それは景気対策なんですね。それが終わると、もうあとはそれがないんです。全国の点字図書館で皆さんとご相談しましたよね。ものすごく大変な作業になると。時間も限られてるし。でも、この時期を逃がすと、一斉に入れられるという時期はもう二度と来ないだろうと。どうしましょうか、というご相談をして、皆さんが一緒にやりましょうと。そういうことであれば、私その頃日本障害者リハビリテーション協会におりまして、日本障害者リハビリテーション協会も全力を尽くします。今でも覚えてますが、長崎の全視情協の大会という所で議論をして、随分深刻な議論もいたしましたけれども、やるしかないねいうのは、結論をいただいたかと思います。それで、頑張って始めたと。

 もし、そのときそれが始まってなかったら、正直言って、今DAISYが世界中にあるかどうかは、私はあまり確信がないのです。つまり、いくらシナノケンシさんが、社長さん以下ご理解があるといっても、着手してから4年間、製品なしでずっと開発に付き合っていただいたんです。それが5年、6年となって、まだ製品が一つも出ないとなると、そこに従事している部隊の方たちの、社内での成績はどうなるのかという深刻な問題が予見されました。全然収益がなくて、支出ばっかりですよね。ものすごい長期展望を当然持ってやっておられるわけですけれども、これから先本当にちゃんと立ち上がって回収できるのかということが危うくなると、それはだんだん危なくなってくるということだったんですが、辛うじて間に合ったという、ひやひやの離陸だったと記憶してます。

 その後、実際にユーザーの方が使ってみたら、もう戻れないというユーザーの方がほとんどでしたね。カセットテープは大体30分か45分には裏面にひっくり返さなきゃいけないですよね。それで次々と替えていくと。大体、小説でも1冊6時間から8時間ぐらいなりますから、しょっちゅうひっくり返さないといけないと。DAISYであれば、最後までずっと1枚で聞けてしまうということが一つでした。

 まだ当時、学生さんたちが使えるタイトルを私どもは持ってなかったんですね。ですから、なかなか盲学校で活用されるということは難しかったです。つまり、コンテンツを作らなければいけなかったんですね。コンテンツを作らないと、そのDAISYのよさ、ページジャンプできるとか、先生が、仮に晴眼者と一緒の講義を受けていたとして、何ページ、その次何ページといったときに、カセットテープだともうほとんど飛ぶのは不可能ですよね。でもDAISYだったら、いろんな国で、誰よりも早くそのページ開いてたのは、その視覚障害のDAISYユーザーだったなんていう話も聞けました。つまり、本当に本と同じような、普通の墨字の本と同じような使い勝手で使える、使い勝手がいいんだということが、出だしの頃の圧倒的な支持の理由でした。口コミが口コミを呼んで、確実な進展を遂げていったと思います。

 それが今から考えますと、前世紀末なんですね。この頃に私どもは、DAISYをこれ以上広げるときに、どうしてもやらなきゃいけないことと正面に見据えたのが著作権です。著作権を何とかしないと。これはデジタルだから、インターネットで転送できるように。それが当時は駄目だったんですね。1999年では駄目でした。これをインターネットで使えるようにしないと駄目だということが一つでした。

 もう一つは、視覚障害の一番最初にそれを言ったのはデンマークの盲人協会の会長さんだったと思うんですが、デジタル技術であるならば、音を聞いてそこのつづりを読みたいっていったときに、つづりをちゃんと読めていいはずだとおっしゃったんですね。それは、シンセサイザーを使ってれば確かにそうなんですよね。文字データがそこにあって、シンセサイザーを使って音にしてるんであればそうなんですが、実は私たちが最初に手掛けたのは、人間の肉声で作るDAISYでした。なんでかというと、私どものパートナーは日本とヨーロッパが中心でした。ヨーロッパはいろんな国があります。英語だけのシンセサイザーがあるっていうんだったら、フランス語とドイツ語はどうするんだ、絶対そんなんじゃ駄目だってなるわけですね。シンセサイザーは、そんな簡単に全部の言語ができたりしません。今でも、非常に少数の言語しかシンセサイザーないんですね。私たちは、これは全ての言語を扱えるようにしないと国際標準にならないじゃないか。だから、全ての言語が使える、音のある言語は全部これ使えるっていうものにするから、やっぱり音をベースにするんだということでやったので、実はデジタル化したのはテキストではなくて音だったんです。でも、よく考えてみると、名前とか地名とかは、再現できなかったら、音なんてみんないろんな発音の仕方がありますから、何ってはっきり特定できないですよね。どこの誰さんも、つづりを間違えたら、固有名詞なんか違う人になっちゃうんです。ですからそういう意味で、特に学生さんたちが必要とする、書くにしても、固有名詞を間違えちゃいけない、つづりを間違えちゃいけない、つづりが必要なんだっていうニーズは、これはもう避けて通れないっていうことになりまして、私たちはその両方を一緒に扱う方法っていうのを最初に規格の中に、将来扱えるようにっていうことで含めてスタートしていました。

 でも、それを実際に作れるようになるのは、ちょっと後だったんです。プログラマーなら作れるっていうのは、その規格ができた直後の話なんですね。規格がちゃんとあれば、プログラマーなら何でも作れるんです。でも、それでは、本のようにたくさんのものを出さなきゃいけないんで、ツールを作んなきゃいけない。誰もが作れる、プログラマーでない、音を正確に扱える人、あるいはテキストを正確に扱える人であればそれが作れる、こういうふうにツールを作らなくてはいけない。その時間差がありましたけれども、同時に考え方として、もし音と絵とテキストが同時に提示できる、そういうDAISYだったらどんなにか便利か。どういうことに役に立つか。それを探ろうということで私たちはマルチメディアのDAISYというのを、かなり早い段階からあちこちで、こういうのどうでしょうと見せ始めました。

 その中の一つに、教科書、教材、これがそれであるととても便利だと。いろんな子どもたちが今まで教科書を読めなかったのが読めるようになるんだということが分かってきました。そこから、著作権法がなかなか変わらない。視覚障害は、著作権法でかなり早くから著者の権利を宣言して録音や点字を作れるっていうようになってたんですけれども、その次に寄ってたかって束になって、障害者団体が交渉してやっとこぎ着けたのが、じゃあ、聴覚障害まで認めましょうっていうのが次の段階でした。そのときに、実は、学習障害の子どもたちや、それから本のページがめくれない子どもたちや、あるいは、いろんな手術の後とか抗がん剤を使っていて無菌室で学習しなきゃいけない子どもたちとか、いろんなニーズがある。そういう子どもたちが、いろんな所でいろんなものを使わなきゃいけないときに、しかもこのデジタルのものがこう有効であるというのは、一生懸命著作権交渉のときに伝えたんですけれども、頑としてはねられて、その後、最後に著作権を整備できたのは2010年までかかりました。ただし、2010年のときには、さっき話にありました、マルチメディアが十分に使える環境を整備できて、そのときにはツールもだいぶ整備されました。今3500人ぐらいが使ってると聞いておりますけれども、マルチメディアのDAISY教科書を使う子どもたちが、学習にそのマルチメディアを生かして使っているという状況になっております。

 最初DAISYのバージョンは2から始まってますので、DAISY1というのは国際標準になる前の、ちょっと違う技術だったので、DAISYの標準規格は2から始まっています。DAISYの2と、その次に作った3というのがあります。その次に4というものを、動画も扱えるようにして作ろうと決めていたんですけれども、このDAISY4を作るときに、並行してEPUB、当時EPUB2というのがありまして、EPUB2はかなりDAISYを取り入れてたんですが、そのEPUBで世界中の主要な電子出版業界の企業が新しいバージョンのEPUBを作るという動きがございました。

 ちょうどその頃、会長選挙がありました。デイジーコンソーシアムは、EPUBを開発しているIDPFという団体の一番最初からの構成メンバーです。そのIDPFの中でもアクセシビリティーとなると、DAISYの方がいろんなことをうまくそこに貢献をするということで、結構中心的な存在になってまして、いよいよそのEPUBをさらに改訂するというときの会長選挙では、デイジーコンソーシアムから推薦した視覚障害のデイジーコンソーシアムの事務局長でありますジョージ・カーシャーさんという方が会長に選ばれました。

 そうなってみると、IDPFの会長はDAISYの事務局長さんですね、別々に開発するのは無駄だよねっていう話に、両方からなってきました。それで、じゃあ一緒に次のバージョンは開発をしましょう。特に、最後に利用者が手にするものと、それをどういうふうに作るかという、その中間の基になるものとを分けましょうと。利用者が手にするものというのは、もうEPUBとDAISYと一緒にして、ツールを共通の、次の世代の標準っていうことで開発しましょうということになりました。従って、DAISYにとってはバージョン4は、EPUBの方が人数が多いので、EPUBのほうに譲って、EPUBの3はDAISYではDAISYの4であるとして、デイジーコンソーシアムとしてはEPUBを使う、EPUBの開発をデイジーコンソーシアムも全力を挙げて行う。その代わり、EPUBをアクセシブルなものにしてく。DAISYと同じようにアクセシブル、あるいはそれ以上にアクセシブルなものにしていく。さらに、国際化をしていく。国際的にどの言語でもちゃんとそれがサポートされるようなものにしていくというところに次の目標を設定いたしました。従いまして、DAISY4は皆さん手にすることはないんですが、実はそれはEPUB3という名前で手にしてるんだと思ってください。

 ただし、DAISYの場合であれば、全盲の人も、あるいはディスレクシアの人も、アクセシブルであることは保障されてます。ところがEPUBは、広い出版界全体が使うという前提になってるので、アクセシブルでないものも作ろうと思えば作れてしまいます。ちょうどウェブのHTMLみたいなものです。アクセシビリティーのガイドラインを無視してウェブサイトを作れば、それはアクセシブルでないものになってしまいます。従って、これから私たちがデイジーコンソーシアムとして進めているのは、アクセシブルなEPUBをどのように広げていくのか。同じEPUBという土俵の上で、EPUBをどうせ作るんなら、アクセシブルにしていったほうがいいよと。会社としては、その方が利益も上がるし、利用者としてはその方が無駄な時間を待つ必要がなく、あるいはみんなと同時に読むことができると。そういうものにしていこうということが、現在の私どもの戦略でございます。

 国立国会図書館は、電子納本ということを今進めておりまして、非営利で出版されている電子出版物の電子納本の、今受け入れるカテゴリーというのは、DAISY、EPUB、そしてPDF、この三つになっております。そういう意味では、DAISYとEPUBは国立国会図書館が電子出版物として公式に受け入れる、標準フォーマットの三つの中の、それぞれ二つを占めているということで、公式に認知されているところでございます。

 そして、今日という日は、あと2カ月ほどで4月1日になって、今度の4月1日からは、国と地方公共団体はかなりの新しい義務を負うことになります。どんな義務かということなんですが、新しく付け加わる義務というのは、合理的配慮を提供する義務ということです。

 実は国の義務っていうのはもっとその前にありまして、環境を整備していく。障害のある人たちが差別されないように環境を整備していくというのは、国の責任で進めることです。それの中に、教科書を無償で提供するというのは、国の環境整備をする上での基本的な義務です。拡大教科書、それから点字教科書は、国の責任で現在配られているわけですね。3500人が利用しているDAISY教科書は、どうなのかといいますと、これはボランティアが作るということを前提に、国はボランティアの支援をしていますと国の障害者施策をモニタリングする機関であります、内閣総理大臣に報告を出す障害者政策委員会という委員会に文部科学省は報告をしました。そうしたら委員から、ちょっと待ってくださいと。国の責任は提供することであって、ボランティアがやることを手伝ってますというのは、それは国の責任を果たしたことにならないですよ、という意見が出されています。そういう意味で、国の責任は果たされていない、環境整備の分野において国の責任は果たされていない。その課題が残ってるのは、読める教科書を障害のある子どもたちに提供するという部分ですので、それは合理的配慮以前の問題です。基礎的環境整備というところです。

 その上に合理的配慮といいまして、具体的にどうなるのかというと、例えばディスレクシアの生徒さんが教室でみんなが教科書を使って学習するときに、自分の読める教科書を使って学習したい、ついては、既にボランティアが作ったものが今200タイトルぐらいあるんですね。220ぐらいですか。それを学校側から授業のときにダウンロードで手に入って、ダウンロードして提供してほしい、言われたときに、今の合理的配慮というのは、それはとても難しい、とんでもない負担になる、というときにはやらなくてもいいってことになってます。でも、過度の負担ではないときはやらなければいけないとなってます。すぐ作ってください、作るのに2カ月も3カ月もかかるものを明日までに作ってくださいって言われても、多分誰もがそれは作れないので、それはちょっと待ってください、それは難しいですね、多分合理的配慮を提供しなかったという差別には当たらないと思うんですけれども。でもダウンロードすれば手に入るものを、学校ともあろうものが、ダウンロードしてタブレットかなんかで教室で見れるようにして、読めるようにして提供するということを、過度の負担ですって言えるのかということなんですね。私は、どう考えても、もう既にボランティアが頑張って作ってくれたものを、あとダウンロードして渡すだけなのにできない、それは過度の負担だっていうのは、いくらなんでも恥ずかしくて言えないだろうと思います。

 今小中学校の普通教室で、文部科学省の調査で、学習面だけに困難を抱えてる子どもは4.5パーセントといわれています。他に、学習面および情緒等の面で両方で困難を抱えてる子が1.5パーセントから1.6パーセントですね。合わせて6.1パーセント。普通学級です。普通学級の6.1パーセントの生徒が、何らかの学習上の困難を抱えている子どもたちです。今小中学校、1000万人ちょっと超えてます。その6パーセントです。60万人超えるんですね。ものすごい数です。その子どもたちがどういう状態かというと、他の子どもたちが読めてる教科書で、先生がいろんな質問をして、課題を出して、それでさあ答えてください、という授業に参加できないんですね。読めない子ですから。

 その結果どうなるか。最近の調査で出てきましたよね。新しく毎年、去年の1年間ですか、不登校になった子どもたちが6万5000人だと。新しく不登校ですよね。新しく6万5000人が1年間に不登校となった。そして、その不登校になってブラブラしていれば、やはり犯罪組織等に巻き込まれていくわけですね。少年院のカリキュラムをこれから改定するというのは、今年、去年あたりからずっと報じられています。少年院には、発達障害、知的障害の子どもたちが非常に多くなってます。それも、両方併せると、70パーセント、80パーセントという率になってるというレポートがあったかと思います。つまり、特別支援教育を少年院ではやらなきゃいけないというようになってきています。

 この障害者差別解消法は、あらゆる場面で適用されますので、そういう意味では、これからどんどん活動が必要になってくんだと思います。少なくとも知識をアクセスして学習したり、仕事のための調査研究をしたり、スポーツや文化を楽しんだり、そして読書そのものを楽しみにしていく、というのはとても重要な活動で、不可欠な活動であるわけです。このDAISYとEPUBが連携して実現していく、アクセシブルな電子出版っていうのは、その知識のアクセスを誰もが保障されるという目標を立てた場合に、どうしても欠かすことのできないとても重要なインフラづくりになっていくと考えられるわけです。従いまして、この障害者差別解消法の施行でもって、いよいよ本番が来たと。このアクセシブルな電子出版の果たすべき役割の本番が来たと私は認識をしております。

 日本デイジーコンソーシアムは、国際コンソーシアムの一員として、そこをチャンネルとして国際的に連帯して、この全ての人が等しく知識にアクセスするためには、どうしてもアクセシブルな電子出版の国際標準が必要であるという見地に立って、その国際標準を開発し、普及をしているわけです。そういう中で、例えば2003年から2005年にかけて行われました、国連の世界情報社会サミットというのがございます。これは、皆さん、最近言われないんですけれども、デジタルディバイドって昔言ってましたよね。デジタルディバイドをどうやって解消するのかをテーマにした国連のサミットです。そこにデイジーコンソーシアムは、グローバルな障害者に呼び掛けて、障害者フォーカルポイントという役割を、そういう障害者のニーズをそのサミットの中で集めるという役割を担って参加をいたしました。その翌年に障害者権利条約が制定されてるんですけれども、2003年から2005年にこのサミットやってますので、権利条約の制定過程とちょうど並行してサミットをやっているんですね。ですから、権利条約の情報知識のアクセスに関する部分というのは、非常に精密にできてます。他の所に比べると、非常に精密にできてます。例えば、後でお時間がありましたら、障害者権利条約第2条をご覧いただくと、そこに、もうそのものずばり『アクセシブルなマルチメディア』という言葉が出てまいります。それは、そのとき想定してるのは、マルチメディアDAISYの、具体的にこういうことが可能なんだという、そういうものがあるんだということが前提になって、そこに書き込まれています。外交官たちが「これは何だ」って言ってつつくので、一言一句ものすごくつつかれるんですね。実体のないものはそこには入らないんです。そこにアクセシブルなマルチメディアというのが、点字や手話と並んで入ってるというのは、非常にその当時、やはりこれが今後のアクセシビリティーを保障していく重要な道筋なんだということで、アクセシブルなマルチメディア、今のDAISYとEPUBが受け継いでるものですが、それがきちんと位置付けられているということでございます。

 ちょうど、権利条約、実は米国は権利条約に批准してないんですけれども、ほぼ同等ぐらいの規模の実行をやっておりまして、2006年にこのDAISYを使って、国としての教科書、教材のアクセシブルなデジタルフォーマットの標準というものを作りました。99パーセントDAISYです。さっき申し上げました、ジョージ・カーシャーに言わせると、DAISYからページ情報を取り除くと、このアメリカが言っている標準フォーマット、略称・ナイマスといってます。NIMASですね。ナショナルのNと、インストラクション、教育等のインストラクショナルマテリアルズ、NIM、Mはマテリアルズですね。アクセシビリティースタンダード。5文字でNIMASと略称します。これがアメリカの連邦法で決めた、教科書を紙で出版したときには、教科書会社は必ず国のナショナルデポジットリーというデータベースがありますが、そこに納めなければいけないデジタルデータのフォーマット、そこにDAISYを使っています。このNIMASのフォーマットで収集している教科書のタイトルは、もう上限に達しておりまして、全てのタイトルで今現在2万7000タイトルぐらいですね。大体もう、それ以上増えないです。全部になったんだと思います。2万7000タイトルぐらいのものがDAISYのデジタルフォーマットで収められていて、点字が必要なときはそれから点字に変換する。大活字の教科書が必要なときは、拡大をそれをマスターにして作る。DAISYで提供するときは、それにページ情報を付けて提供する。プレーヤーによっては、NIMASのデータそのまんまでDAISYのを読めるというプレーヤーもあります。そのように、ワンソース、マルチユースの実現を果たしております。

 その結果、アメリカの学校で、これは教育省の日本にもお呼びした方も言ってるんですが、今のアメリカの学校の子たちの成績の下位、大体20パーセントですね、成績があまり良くないという子については、まず先生はその子の環境に何かミスマッチはないか、その子自身がどうこうということとは別に、使ってる教材や教科書とミスマッチはないかというチェックをするようになった。ミスマッチがあれば、違う、もっとマッチしたものを提供するという発想ができるようになったことが、非常に大きな成果であると教育省の高官の方は言っておられました。それは、先生方が生徒を見る目を少し変えているというところに、その成果を見てるんだと思うんですね。その子の中に、環境とミスマッチのところがあったら、環境側をちょっと調整して、その子の能力をもっと伸ばすことができないんだろうか。さきほど、環境整備と言いました。環境側に、そのDAISYのデジタルデータの配慮があるから、じゃあDAISYを提供してみようとか、点字だったらいいのかなとかですね。拡大で提供してみようとかということができるのです。そういうバックボーンになる環境をつくっていないと、それができないんですね。そういう意味で、アメリカの場合には、このNIMASを制定して、全ての教科書、幼稚園から高校までです。全ての教科書をDAISY化したということが、ものすごく大きな教育へのインパクトを与えたと教育省は評価しています。これは客観的に検証する必要がありますけれども、教育省からはそう聞いております。これは非常に重要な成功例です。

 北欧諸国もカナダも、それから最近ではバングラデシュ、それからインドも一部で教科書をどんどん、テキストも含むDAISYにしていく、そういうことが始まっています。

 日本の著作権法も、そういうことが可能なように今改正をされておりますし、著作権法でいいますと、世界中でそういうように著作権を制限して、普通の印刷物では読めない人々、これをプリントディスアビリティーがある人々と定義をして、その人たちのために特別に作ったものを国際的に交換をするネットワーク。それを何と、著作権をこれまで守る守護神だと思われてたWIPO、世界知的所有権機関が推進をする、そういう国際条約をつくりました。マラケシュ条約といいます。これは長年運動してきてやっと成立したんですが、2013年にマラケシュ条約が成立してます。昨日、確か14番目の批准国が出て、20カ国が批准するとこれは発効します。国際条約として発効します。あと6カ国なんですね。大体EUは全部批准する方向で、EUだけでも20以上あるので、間違いなく近々発効します。日本政府も基本的にはこれは賛成をしてますので、日本もこの中に乗っかっていくだろうと思います。

 そして、EPUBはいろんな国際的な貿易とか入札とかのときに、それに沿った国際入札をしなければいけないという規格でありますISOの規格になっております。これは2014年に達成しました。ですから、大きな公共調達で、何か出版物を大きな調達をするときには、だんだんこのISO規格に沿った調達が強いられるという中で、EPUBがより広く広がっていくという国際的な環境も整ってまいりました。

 この標準規格っていうのは、使ってる人にとっては、これがDAISY2なのか3なのかどうでもいいわけですね。便利であればいいわけです。今度新しく出たプレーヤー、Eリーダーというプレーヤーは、例えばDAISY2であっても3であってもEPUB3であっても全部かかりますので、ユーザーから見るとどれでもいいということになるわけですね。つまりそれは、規格を作るほうは、もう汗水たらして改定をしてるんですけども、でもエンドユーザーにとっては一番便利なものが使えればいいと。じゃあ、出版社にとっては、製作者にとってはどうかというと、そのときにやっぱり一番便利でユーザーのニーズに合うもので、コストパフォーマンスのいいものを採用すればいいということになります。私たちはそういう意味で、いろんな新しいニーズを規格に取り入れるということと、それからそれをできるだけ出版社にとって便利に発行できるようにするということを調和させながら、この開発をやってきております。その際に、私どもの立場は、アクセシブルな標準規格がないと、新しくできるものっていうのはアクセシブルでないものが次々出てくるので、これはさっき言った、環境整備からいくと逆行することになります。ですから、新しい技術というのは、必ずアクセシビリティーを担保するということをやってかないと、次々と環境汚染を拡大するようなものだと考えればいいかなと思います。

 障害者差別施行法元年の、今取り組むべき課題というのは本当にたくさんあるんですけれども、初等教育から高等教育までの全ての学生生徒が必要とする教科書や教材を、DAISYあるいはEPUB版を提供するということに、国それから大学等の教育機関、出版界、さらに図書館が協力して責任を担うべき立場にあります。特に図書館は、著作権法で図書館は行う場合は著作権をこのように制限できると明記してあることが多々ございます。それは、取りも直さず、図書館はそれを実施する責任があるということを国が定めた法律の上でもいってるということでして、あとは予算とか人員とか、それを実施するのに足りる環境をどういうふうに整備していくのかということが重要だと思います。

 日本デイジーコンソーシアムは、今年11月、京都に決めておりますが、国際デイジーコンソーシアムの理事会を招致いたしました。みんなに来てもらいます。それに併せて、世界のDAISYとEPUBの開発と普及の現状等を詳しく集約をして、何らかの、みんなが参加できるシンポジウムとかセミナーとかワークショップとか、いろんなことやりたいなと思っております。知識アクセスの面からの差別の解消をそのように進めていくということで、具体的には日本でのDAISY、EPUBの実施を図るということとともに、国際標準規格そのものに日本からのニーズを反映させるということが必要な部分が結構ございます。この後、村田さんが病を押してご発表くださる中にそれも入ってると思いますが、全ルビが欲しいというニーズがありますよね。もともと日本にはルビは付いてる所は付いてるし、付いてない所は付いてないんですね。でも、全部に一回ルビを付けてほしいというニーズがあるので、この本は元どおりのルビのものです。あるいは、この本には全てにルビが付けてあります、いうことを区別して、手に入れる前にそういうものを選ぶということができるように、メタデータ、内容を示すデータのレベルで標準化を図るということをお願いしているところであります。

 最後に、教科書の場合、今図示すると、一番左に原稿の素材、これワープロだったり絵のデータだったりするんですけれども、それが大体どこの出版社もインデザインという、ツールでもってページを作って、そしてPDFにして、そこから紙の教科書印刷したり、拡大教科書にしたり、デジタルデータとしてDAISYの元になったりという現在の流れになっていると思います。これが、こうなったらいいなと思っておりますが、原稿素材をその次にEPUBフォーマットのデジタルマスターというものを作る。ここのところのツールと、それからデジタルマスターの、私どもベースラインと呼んでますが、最低限これだけはアクセシビリティーを満たしましょうという申し合わせのようなガイドラインを作って、ここでもってもう、ある程度そのまんま音声読み上げや点字や拡大には対応し、そのまんまで基本的には対応できるようにする。さらに作り込みが必要なときは、このデジタルマスターから拡大教科書、紙の教科書が必要というときは、普通の紙の教科書はこのデジタルマスターからすぐ出せます。あとPDFフォーマットがいい、あるいは特に作り込んだDAISYフォーマットが必要というときには、このデジタルマスターを使って作っていくようにする。だけど、大部分のニーズはこのEPUBそのもので満たされるというのを、ぜひ実現したいと考えてるところであります。

 以上です。ちょっと時間経過してすいません。質問は後でまとめてお願いします。どうもご清聴ありがとうございました。