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読みやすい図書ネットワーク(Easy-to-Read Network)ニュースレター 2010年10月

ネットワーク会議(オスロにて)

出典:
Easy-to-Read Network Newsletter October 2010-Network-meeting in Oslo
http://www.easytoread-network.org/index.php?option=com_content&view=article& id=118:newletter&catid=35:news&Itemid=37

読みやすい図書ネットワーク(Easy-to-Read Network)会員の皆様へ

長期にわたり、技術的な問題から、読みやすい図書ネットワークのホームページをご利用いただけませんでしたが、現在、再びご利用いただけるようになりました。真のネットワークとして、また新たに皆様と協力していくことができますよう、心から願っております。まずはニュースレターをお届けし、最近の出来事について少しご報告させていただきます。

飛行機の写真
オスロに向かう飛行機
「文学の家」の写真
文学の家

7カ国から7機の飛行機がオスロに着陸した。参加者らは美しい「文学の家」に集まった。

メインニュースは、当然のことながら、読みやすい図書ネットワークが2010年8月9日にオスロで会議を開催したことである。ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、オランダ、オーストリア、スペインおよび日本の7カ国から、約20名の会員が会議に参加した。中には、読みやすい図書ネットワーク会議に先立ち、オスロで開催されたIFLA衛星会議に傍聴人として参加する機会を得た者もあった。以下は、ノルウェーの「すべての人のための図書」財団(Books for Everyone)の事務所が置かれている、オスロの「文学の家(http://www.litteraturhuset.no)」で開催された、読みやすい図書ネットワーク会議の報告である。

アン・マリット・グーダルの写真
アン・マリット・グーダル
(Anne-Marit Godal)
カルメ・マイヨールの写真
カルメ・マイヨール(Carme Mayol)

ノルウェーのアン・マリット・グーダルとティネ・ソルヴァング(Tine Solvang)は、「すべての人のための図書」財団(www. lesersoekerbok.noおよびwww.boksok.no)について語った。

「すべての人のための図書」財団は20の組織からなる連携機関で、ノルウェー文化省がおもに資金を提供している。「すべての人のための図書」財団では、多種多様な図書の改良に取り組んでいるが、その大部分は、いわゆる「すぐに読める図書」で、たとえばディスレクシアの人々や移民にとって読みやすい、短い文章で書かれた図書があげられる。別の改良図書の例としては、知的障害のある人々のために作られた、簡単でわかりやすい言葉と内容の図書がある。

ノルウェーの読みやすい図書は、「すべての人のための図書」財団ではなく、別の出版社が出版しており、「すべての人のための図書」財団は、出版社に財政支援とアドバイスを提供している。

「すべての人のための図書」財団は、ノルウェーの220の図書館と協力し、図書館にアドバイスを提供し、図書を無料で配布している。図書館では、それらの図書をマークの付いた棚に配架し、色つきのステッカーを使い、ターゲットグループ別に表示している。

ノルウェーには(スウェーデンと同様)、自分で読めない人々に読み聞かせをしてく れる「読書コーディネーター」(注)がいる。「すべての人のための図書」財団と協 力関係にある図書館の70%が、読書コーディネーターによる活動を実施している。 コーディネーターを務めているのは、介護スタッフや環境療法士、図書館司書、ボラ ンティアなどで、図書館を通じて採用される。新人コーディネーターは、まずハンド ブックと図書のリストを与えられ、聴衆とその関心・好みについて学ぶ。ときには、 ケアホームと地域の図書館との間で、計画通りに読み聞かせの会を実施することを確 約するために契約が結ばれる。ケアホームでは、その週の読み聞かせの会の日時と場 所を、掲示板で知らせる場合もある。

 

スペインの読みやすい図書協会(www.lecturafacil.net)のカルメ・マイヨールは、カタロニア図書館との活動について説明してくれた。同協会は2003年に設立され、本を読みやすい言葉に改編するため、さまざまな出版社と協力している。現在、改編された読みやすい図書は100を超えている(カタロニア語による図書が70、スペイン語による図書が30)。読みやすい図書協会の目的は、ニーズを明らかにし、図書館に提案を出し、館内に読みやすい図書を扱う部門を創設する支援をし、読みやすい図書に関する会議を企画し、読みやすい資料のための基本的なガイドラインを普及し、読書クラブを組織することである。

読みやすい図書協会は、7つのクリアリングハウスおよび52の読みやすい図書読書クラブと連携している。クリアリングハウスとは、読みやすい図書1タイトルにつき、少なくとも15部の複製を所蔵することを義務付けられている図書館である。これらの複製は、地域図書館に貸し出され、最終的には個人利用者や読みやすい図書読書クラブの会員に貸し出される。読書クラブはさまざまな読みの困難を抱えている人々で構成されており、会員はコーチの指導を受けながら、会を開いて同じ本を読む。2005年に最初のクラブが設立されて以来、52のクラブに1000人以上が参加してきた。

ディートマル・レフラーの写真
ディートマル・レフラー
(Dietmar Löffler)
ビルギット・ペボック
ビルギット・ペボック
(Birgit Peböck)

ディートマル・レフラーは、オーストリアの組織、カピート(Capito)についてさらに詳しく紹介してくれた。(www.capito.eu

カピートチームは、アクセシブルな折り畳み式広告、パンフレット、インターネットサイト等の文書作成、デザイン、プログラミングおよび印刷を支援している。すべてのカピート製品は、リリースの前にテストされ、容易に理解できることが確認される。カピートチームは、わかりにくい情報の改良と、年齢や障害、あるいは母国語が原因で読むことや理解することが難しい人々の支援を専門としている。カピートは図書の制作は行っていないが、公共情報をアクセシブルに、かつ読みやすくすることを目指している。

ディートマル・レフラーは、読みやすいこととわかりやすいことの違いを強調し、さらに紙質やウェブサイトのナビゲーション構造など、使いやすさについても語った。オーストリアでは、ターゲットグループを対象としたテストは数多く行われているが、調査研究は行われておらず、これは残念なことである。

KI-I(www.ki-i.at)のビルギット・ペボックは、オーストリアのオーバーエスターライヒ州におけるシンボルと読みやすい情報について語った。(www.uk-ooe.at)オーバーエスターライヒ州では、拡大・代替コミュニケーションに使用されるシンボルが統一され、読みやすい情報、建物の表示、会合および会議に使用されている。

ブロール・トロンバッケの写真
ブロール・トロンバッケ
(Bror Tronbacke)
リーアラウラ・レスケラの写真
リーアラウラ・レスケラ
(Leealaura Leskelä)

ストックホルムの読みやすい図書センターのブロール・トロンバッケは、最近改訂されたIFLAによる国際的な『読みやすい図書のためのガイドライン』を紹介してくれた。改訂版には、情報技術と新しいメディアに関する内容が追加されている。(http://www.ifla.org/files/hq/publications/professional-report/120.pdf)

リーアラウラ・レスケラは、わかりやすい言葉に関する最近の研究について語った。たとえば:
- 言語学論文2010年:フィンランド通信からの普通の言語によるニュースと、フィンランド語の読みやすい新聞(Selkouutiset)に掲載されている読みやすいニュースの言語の比較(アウリ・クルッキ・ニーミネン(Auli-Kulkki Nieminenn)タンペレ大学 2010年)
- 論文指導(2009年より):知的障害のある人々と彼らとともに活動している専門家との間の話し言葉による意思疎通におけるわかりやすい言語(リーアラウラ・レスケラ ヘルシンキ大学)
- 研究分野:情報デザイン-公共デザインにおけるシンボルとイラストレーションの立案と受容(より大きな研究分野の一端としてのわかりやすい言語)(アールト大学)

リーアラウラは読みやすい図書への科学的アプローチを訴えている。そして今後、読みやすい図書ネットワークのウェブサイトに、調査研究関係のリンク先をまとめ、評価を掲載した特別なサイトを開設することを望んでいる。

さらにリーアラウラ・レスケラは、フィンランドの新たなガイドラインと、さまざまなガイドラインが求められている多種多様なジャンルについても語った。フィンランドのガイドラインは、IFLAのガイドラインと大きな違いはない。

フィンランドでは、読みやすい新聞がフィンランド語(Selkouutiset)とスウェーデン語(LL-Bladet)で発行されている。また、わかりやすい言語によるフィンランド語のラジオニュース番組もある。文献に関しては、科学、小説、詩、伝記、教科書など、かなり多くのものが利用できる。さまざまなテーマに関するパンフレットや、アクセシブルなわかりやすい言語によるウェブサイトもある。

http://www.papunet.net/selkokeskus/in-english.html
http://www.fduv.fi/start/in_english/
http://papunet.net/ll-sidor/
http://papunet.net/english/

野村美佐子の写真
野村美佐子(Misako Nomura)

日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)(www.dinf.ne.jp/doc/english/index_e.html)の野村美佐子は、DAISYについて語った。DAISY(アクセシブルな情報システム)は、アクセシブルなマルチメディアによる資料のプレゼンテーションで、読むことや理解することに問題のある人々に大変有効である。この技術は、デジタル録音図書の国際標準規格として、DAISYコンソーシアム(www.daisy.org)によって開発・維持されている。

DAISYによる資料は、CD/DVDやメモリーカード、またはインターネットを通じて配布・配信される。マルチメディアDAISYによる資料には、DAISY再生ソフトを搭載したコンピューターあるいは携帯電話などでアクセスできる。

DAISYフォーマットでは、フォント、速度、色を変更したり、コントラストを強めたりすることができ、さまざまな読みの障害がある人々にとって役に立つ。たとえばDAISYは、知的障害のある人々のソーシャルスキル向上のために使用することができる。また、緊急時のマニュアルや読みやすい図書、教材などにも利用されてきた。

JSRPDは、2008年に日本の著作権法に基づく許可を得て以来、ボランティア団体の助けを借りて、読むことに問題のある生徒のために、マルチメディアDAISYによる学校教科書を制作、配布している。

音声を肉声にするかTTS(音声合成、つまり人工音声)にするかについては、議論が交わされてきた。後者の方が早く、より簡単かつ安価であるが、必ずしも最善とは言えない。

スウェーデンからは、アンマリー・リンドマン(AnnMarie Lindman)が、読みやすい図書センターとスウェーデン認知症協会による新たなプロジェクトに関する講演を行った。このプロジェクトは「リーディング・パワー」と呼ばれ、認知症の人々に読み聞かせを行う活動である。10年以上前から、いわゆる「朗読代理人」として研修を受けた職員が、非常に大きな成果を上げてきた。これらの職員は、認知症ケアホームだけでなく、知的障害のある人々のためのデイセンターやグループホームでも働いている。「読書指導員」としての責務は、職場で読み聞かせの会を企画することである。

この読み聞かせ活動を他のグループや家族へも拡大したいとの考えから、近親者とボランティアにも読み聞かせに参加してもらう新たなプロジェクトの開始が決定された。これが「リーディング・パワー」である。この新プロジェクトの対象は、認知症の人々に限られる。これは3年間のプロジェクトで、今までのところ、非常に大きな成果を上げている。

このプロジェクトについては、まもなくアップロードされる予定のパンフレットで詳しく読むことができる。 読みやすい図書センターのホームページアドレス:www.lattlast.se

結論

会議の締めくくりとなる討議において、オランダのラルフ・ビークヴェルト(Ralf Beekvelt)が、読みやすい図書ネットワークの小さな事務局を設立するために、EUに資金援助を求めることを提案した。ラルフ、ブロールおよびディートマルがこれに関する討議を続けることになった。

さらに、コミュニケーションを促進するため、ネットワーク会員専用のイントラネットを構築する計画もある。

会議では、今後これまで以上に頻繁に会合を持たなければならないと決定され、年に1回会合を開くという提案がなされた。これを受けて、2011年にオランダで、2012年にオーストリアで会議を開催する予定である。

オスロにおける会議の結論は、実に、我々がお互いから学べることは非常に多いということであった。参加者全員が、読みやすい言語を通じて、すべての人が理解しやすい社会を創造するという重要な課題にすぐに利用できる熱意と新たなアイディアがつまった、大きな小包を抱えて帰国したことだろう。

正しいアドレスを会員の皆様へ!
現在、サイトが利用できなかった間にお送りいただいた新規のアドレスとアドレスの変更を、すべて追加する作業を進めております。間違いにお気づきの際には、またアドレスが抜けている際には、お知らせいただけますよう、皆様のご協力をお願い申し上げます。漸次、正確かつ完全なアドレスリストを作成し、会員の皆様にお届けする予定です。

ストックホルム 読みやすい図書センター
アンマリー・リンドマン

「ネットワーク会議の参加者」写真
ネットワーク会議の参加者

:読書コーディネーター(Reading Representatives) 知的障害者の日常生活における習慣として、読書は日中活動センターで奨励されてお り、スウェーデンでは各施設ごとに、読書コーディネーターが任命され、読書時間、 読書サークルへの参加、図書館訪問などを担当している。 地方の行政機関、図書館、学校、成人教育の団体、及び障害者団体も、それぞれのコ ミュニティや地方で読書コーディネーターを確立しようと連携している。 朗読代理人、朗読指導員と訳される場合もある。