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視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達および管理システム:国際事例研究

第一部:概略報告書

エグゼクティブ・サマリー(要旨)

本研究は、視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達および管理システムにおけるさまざまな取り組みの比較と、これらの要素がその成果に及ぼす影響の解明を目的としている。(より詳細な概要報告については、第三部付録Aを参照のこと。)

本研究の方法としては、机上調査と電子メールによるアンケートの併用、アンケートの回答を明確にし、さらに情報収集するための追加質問による補足、そして諮問団の専門 的なガイダンスによる支援が採用された。(アンケートの内容については、第三部付録Bを参照のこと。)

ほとんどの国で、主要機関によるアンケートへの回答が得られたが、当初ターゲットとしていた国の一つ、ベトナムの事例研究を完了することはできなかった。

このサマリーは、第一部の残りの部分、あるいは第二部の詳しい事例研究で述べられているさまざまな内容を総合したものとして使うことはできない。特に、証拠による完全な裏づけに基づく一般化を行うことは難しかった。

具体的には、各国で提供されているサービスについて、事実に即した比較を行うための実績の定量的証拠のようなものが、一人当たりの資金援助、代替フォーマットによる資料の年間製作数、蔵書の規模、アクセシブルなフォーマット、あるいはユーザーが満足のいく方法で利用できる資料の割合などに関して、非常に不足している。

これらの評価基準はどれも非常に有用ではあるが、いずれかのデータがまったく無かったり、対象となるユーザーグループの定義や製作基準(例:注文製作対所蔵のための製作)が異なっていたり、変換される資料の分野の規模が異なっていたりするため、同種の変数間での比較が行われていることが確認できない。したがって、結論の中で、「~と考えられる」という言葉が使われている場合がある。

しかしながら、十分に一貫性のある情報により、われわれは多数の重要な結論に達することができた。

  1. 好ましいモデルについて、注目すべきコンセンサスがあることが明らかになった。いくつかの例外はあるが、ほとんどの回答者が好ましいと回答したのは、
    • 役割と責任を明確に定義し、調整したシステム。これらの役割と責任が、民間機関、ボランティア機関、あるいは公的機関のいずれによって果たされるかは問わない。
    • サービス事業に対する政府の定期的な出資による財政支援。
    • できる限り主流の物理的かつデジタル媒介を通じたサービスの提供。
  2. 対象となるユーザーグループの定義は、従来の印刷物が使用できないということを基本とするインクルーシブな定義から、視力喪失に関する医学的な基準に基づいたエクスクルーシブな定義にいたるまで、さまざまである。多くの機関は、明白な医学的定義よりも、機能的定義を支持している。
  3. サービス提供機関は通常、政府による政策決定と財政支援、およびサービス提供について、役割と責任の両方が明確にされているモデルの中で活動することを好む。
  4. 政府内の複数の部署で全体の責任を分担するモデルでは、提供されるサービスの格差と、連携の欠如が生じる可能性がある。特に、責任分担の結果、教育の場で使用される教材の供給がうまくいかない場合がよく見られる。
  5. 主として、あるいは、完全に、第三セクターの財源に依存する場合、結果的にニーズに合った十分な予算がとれなくなると考えられる。国の相対的な豊かさと、文化的要素(障害に対する態度など)の影響の両方を考慮した場合、最善と考えられる成果は、政府からの定期的な財政支援により達成できる。
  6. 技術革新は変化を推進する重要な鍵である。技術は、読み物がどのように製作され、配布されるかに影響を与える。それはまた、製作とサービス提供のモデルにも変化をもたらし、その結果、サービスポイントとしての各機関の役割も変化する。
  7. 技術は、これまで可能とされてきた以上に根本的な組織モデルの変化(すなわち、さまざまな組織の機能を結合し、資料の製作とサービスの提供を同時に実施できるようにする)を、ある程度まで進められる。たとえば、より早く、より安く、そしてより柔軟に、ユーザーに直接、あるいは地域のサービスポイントに、もしくはその双方に向けて、資料を配布できる。これは、たとえば、もし中央のサービス提供機関と図書館分館との間に見られるサービスへの「段階的」アプローチを変更したほうがよいと考えられるならば、変更できるということを意味する。別の例としては、点訳された資料を注文に応じて印刷する方法を採用することによって、中央の所蔵スペースを確保する必要性が減るということがあげられる。技術が新たな組織モデルをどの程度支援できるかは、数多くの要素に左右されることは明らかであり、その中には、財源やユーザーの収入レベル、インフラストラクチャー(例:電気通信)の質、そしてユーザー人口による新技術の受容性などが含まれる。ここでポイントとなるのは、紙とカセットテープのアナログ時代にはほとんど回避できなかった、サービス提供に関わる問題に ついて、組織的な解決策を越えた思考が、現在では可能であるということである。
  8. 社会における技術の変化は、視覚障害者にとって大変明るい可能性を秘めている。しかしそれには、すべての関係者が電子情報へのアクセシビリティの確保に労力(および資金)を注ぎこまなければならない。さもなければ、ますます多くの情報とサービスがオンラインでやりとりされているので、従来の印刷物を読むことができない人々は、状況が改善されるどころか、むしろさらに悪化し、取り残されてしまうだろう。
  9. 資金水準に加えて、著作権に関する例外を認めない、あるいは例外が少ないなどのさまざまな制限が、回答機関が直面する障壁として、最も多く指摘された。
  10. サービス提供機関は、自国の特定の機関が、製作と配布における特定の役割をどのように果たすことができるかを検討し、(政府を含む)すべての関係者の役割、資源および責任を、しかるべく再配分した全体的な指針を策定することによって、他国のモデルを借用し、改良することができる。
  11. これは当然、一夜にして可能なプロセスではない。特に資源の再配分はきわめて重要であり、各機関は資金が調達できない場合、新たな責任を担うよう求められることはない。
  12. 本報告書は、国家および地方政府、サービス提供機関、IFLA、ユーザーグループを代表する組織、その他の資金提供者、欧州委員会および世界知的所有権機関(WIPO)等、主な関係者に対する提言で締めくくられる。
  13. 第一部では、本調査によって得られた経験的および専門的知識のすべてと、そこから明らかになる将来に向けた示唆に富むアイディアを記載することはできなかった。読者は第二部の国別研究および本概略報告書の残りの部分を読み、詳細を検討するよう勧められる。