音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

視覚障害者図書館および情報サービス事業の資金調達および管理システム:国際事例研究

第一部:概略報告書

政策の立案と管理

政府の責任

本調査では、これらのサービス事業を担当しているのはどの省かを説明することを回答者に求めた。実態は、資金調達とモデルの場合と同様、かなり明確な国もあれば、非常に複雑な国もあった。

一つの当局が担当している国

  • スウェーデン-教育文化省
  • デンマーク-文化省
  • オランダ-教育文化科学省の一部である文化局
  • クロアチア-文化省
  • 韓国-文化部

複数の当局が担当している国

イギリス-文化・メディア・スポーツ省、教育科学省、通商産業省、博物館・図書館・文書館国家評議会、およびウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドにおけるその他の機関

  • 南アフリカ-芸術文化省(国立図書館)、自治省(地域図書館)
  • カナダ-連邦の一つの省が担当するのではなく、カナダ国立図書館・文書館が問題解決への取り組みを調整している。
  • アメリカ合衆国-議会図書館、教育省、州当局
  • オーストラリア-家族・コミュニティサービス省と教育・科学・訓練省が連邦レベルと州レベルの両方で責任を負う。
  • 日本-公共図書館は文部科学省の管轄下にあり、専門図書館は厚生労働省の管轄下にある。

責任の所在と成功の評価

成功は、組織ごとに、その組織自体が選択した基準、あるいは資金提供団体が設定した基準を使用して、評価されることが多い。このような評価基準には、対象人口のうちサービスを提供できた割合、経費、製作された資料の範囲と内容の濃さ、供給速度、および提供されたサービスに関するユーザーの意見などが含まれる。

以下の国々の各機関において、最も総合的な公式の評価基準が、出資者によって設定されていた。

  • オランダ
  • スウェーデン
  • デンマーク

アメリカ合衆国のNLSは、アメリカ図書館協会が設定した、障害者に対する図書館サービスに関する基準を使用して、その地域ネットワーク図書館を定期的に見直している。全国的な機関であるNLSも、定期的に議会図書館による見直しを受けており、その一環として、ユーザーを対象とした調査が実施されている。

ビジョン・オーストラリアは、ベンチマークとサービスの改善に使用される、類似機関との比較に基づいた重要業績評価指標を利用して、業績の評価を行っている。この指標には、ユーザーの満足度、供給速度、職員の専門性、組織の任務や価値観との関連から見たサービスの有効性などが含まれる。オーストラリアの大学図書館も、これらのユーザーグループに対するサービスの成果を評価する試みを、主に調査を通じて実施している。

カナダのCNIBは現在、サービスを提供することができた視覚障害者の割合、利用可能な資料の範囲と内容の濃さ、供給速度、およびサービスに対するユーザーの意見に焦点を当てている。カナダ国立図書館・文書館が全国的な目標を設定することも計画されている。

南アフリカのBlindlibは、国内外の報告に使用している独自の評価基準があると回答した。しかし、公共図書館や全国的なサービスの提供に関する総合的な評価基準は何もない。

日本
日本の回答者は、いくつかの公共図書館で、公式な手段により業績を評価しようとする取り組みが最近見られたが、視覚障害者に対するサービス事業が、その中に特に含まれていることはほとんどなかったと回答した。
イギリス
イギリスでは、専門図書館が独自の目標と評価基準を設定している。たとえばNLBは、資料の範囲と内容の濃さ、供給速度、サービスの対象となるユーザーの割合、経費、ユーザーの満足度について目標を設定している。これらの目標は毎年調整される。カリブレ・オーディオ・ライブラリーは、資料の変換速度とユーザーの満足度について目標を設定している。

イギリスの公共図書館で使用されている評価基準はすべて、公共図書館基準、包括的業績評価制度および影響評価の文化部門の基準を中心としている。これらはすべて一般的な指標であり、必ずしも障害者に対するサービスを特定していない。特別な評価はすべて地域的なものである。視覚障害者に対するサービスに関する特別な質問を、一般図書館で実施される満足度調査に加えることはできるが、しかし、図書館が実際にそうしているかどうかについては何も証拠がない。

このようなサービス事業がどれだけ成功したかを評価する公式な手段は何もないと回答した国もいくつかあった。

  • クロアチア
  • 韓国

視覚障害者の運営への参加とリーダーシップ

専門図書館と公共図書館の両方で、理事会や職員として参加する障害者の姿は常に見られるが、その数が常に十分であるとは限らず、また、参加を増やそうとする明確な傾向も認められないのは確かである。ある事例では、その数は減少しているとの報告があった。別の回答者は、ユーザーの大部分を占める高齢者の参加が少ないという問題点を指摘した。

政策立案

政策は、差別禁止法など、より広範な社会的文化的変化の影響を受けるが、このような変化は、草の根の活動によってもたらされるともいえる。政策はまた、各国の政府機能の組織方法に見られる全体的な傾向、たとえば中央集権化や権力の分化、そしてそれに伴うお金の動きによっても左右される。

政策立案は組織のモデルと密接に関連しているため、一般化することは難しい。国の組織を通じて提供されるサービスの責任を、一つの省だけが負っている場合は(デンマーク、オランダ、スウェーデン)、当然、ユーザーグループを代表する機関など、他の機関も多数関与しているが、誰が政策を作成するかはきわめて簡単に確定できる。他のモデルでは、障害問題に関する政府の一般的な政策以外に、教育や公共図書館を管理する政策があり、それが専門図書館の運営に影響を与える中で、障害者は意見を出したり、正式にパートナーとして参加したりする機会を持つ傾向が多い。著作権に関する政策は、著作権所有者を含む関係者からの意見を取り入れながら、政府が作成しているが、国によっては、著作権所有者たちが大きな影響力を持ち、また違法なコピーに対する権利の保護だけでなく、領有権の問題にも関心を示す傾向がある。著作権は、当然ではあるが、国際協定の対象にもなっている。

カナダとオーストラリアの両国では、全関係者の参加による一貫した政策の策定を試みるための機関が設立された。

カナダにおける第一段階は、印刷字を読めない障害があるカナダ人のための情報へのアクセスに関する調査特別委員会の設置で、これが後に図書館司書、資料製作者、ユーザーおよびサービス提供機関で構成される、印刷字を読めない障害があるカナダ人のための情報へのアクセスに関する協議会へと発展した。この機関が、本報告書に別途記載されている、公平な図書館サービスのネットワークと電子ファイル交換所を新たに提案したのである。

オーストラリアでは、印刷字を読めない障害がある人々のための情報アクセスに関する円卓会議があり、オーストラリア・ニュージーランド全土の教育関係者、政府、企業、代替フォーマット製作者、コミュニティ団体および障害者団体の代表が参加し、「発展しつつある円卓会議の一連の知識を最大限利用することによって、印刷字を読めない障害がある人々のための質の高い代替フォーマットの製作と利用を推進し、これに影響を与える」という任務を遂行している。