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アイスランドのディスクレシアの人々は録音図書に辿りついた。

Dyslektiker på Island hittar till talböckerna (2010年第3号,p.8-10)
文と写真:レーナ・ブークヴィスト

パンフレットにニコちゃんマークを付け、フェイスブックの頁を持ち、蔵書を充実させることで、結果を出した。アイスランドの録音点字図書館に当たるアイスランド視覚障害者図書館は3年間で貸出利用者が2倍以上に増え、その利用者の半数はディスレクシアである。

 「私達は録音図書の面白さを広めようとしています。その録音図書は視覚障害者よりももっと多くの人々を対象にしています」。
 2007年より BBI、アイスランド視覚障害者図書館館長を務めるトーラ・インゴールフスドッティルは語る。
 「私達は人々にBBIについて良いイメージを持ってほしいと願っています」。

高校生がダウンロード

 BBIは1982年に設立された国営の機関だ。この図書館はレイキャビクの郊外に比較的現代風の建物の中にある。DAISY録音図書とカセットが各書棚に所狭しと並べられており、この図書館は利用者に開放されている。国民図書館や大学図書館を通して貸出を行うスウェーデン録音点字図書館(TPB)とはそこが違う。だがほとんどの利用者は録音図書を電話で予約し、家へ送付してもらう。
 「多くの高校生は録音図書を自分でダウンロードします。2009年に私達は彼らや視覚障害者の人々に図書をダウンロードする許可を与えました。それは大変うまく機能しています。この図書館の4000人の利用者のうち約1000人がこのサービスを利用しています」。トゥーラは言った。
 高校生にサービスの重点を置いたことが、録音図書を借りるディスレクシアの利用者増加の一因となりました。今日は貸出サービス利用者の50%がディスレクシアです。3年前はこの数字が20%に留まっていました。

教師と親達が壁になります

 この利用者グループと接点を持つにはどのようにしたら良いだろうか?
 「このアイスランドでは、読書困難を持つ生徒達が高校に入学する時、生徒達は私達が吹きこみを行なった録音教科書を受け取る権利を持っています。ですからこの生徒達と現実に連絡を取れることが、私達にとって重要なのです。私達は養護教諭や教師達、それに親達に私達の味方になってくれるように頼みます。時々、彼らが壁になるように感じることがあるからです」とトゥーラは語る。「若者は、例えばコンピュータや技術的な事柄の方が得意です」。
 BBIはどのような権利を彼らが持っているかを示すパンフレットを発行し、彼らにダウンロードをする許可を与えてきた。広報資料は生徒達に直接送られる。パンフレットには彼らにとって親しみやすいように、大きなニコちゃんマークが用いられている。

フェイスブックとテレビ

 テレビ、ラジオ、新聞、セミナー等による録音図書のマーケティングを彼らは同時に手がけ、それによって明らかな成果を得た。2007年には1600人だった貸出サービスの利用者が2009年末には4000人に増加していた。
 今年度は彼らはフェイスブックで独自の頁を持ち、それに重点を置いて定期的に更新した。
 「私はフェイスブックに参加したことは大きな意味があると思います。フェイスブック以外では情報を受け取ることはなかったであろう500人の私達のファンがいて、情報を受け取ったのですから」。
 「私達は自分達のウェブサイトをディスレクシアや若者達向けに作りました。今この頁にはたくさんの絵が載っていて、少しばかり軽いタッチに見えます」。

成人のディスレクシア―証明書はいりません

 「子ども達が私達の図書館や図書について聞いて、それを自分の友人達に広めていくという考えは・・・それは良いと思います」とトゥーラは語る。「録音図書を借りるには生徒達は養護教諭による証明書が必要ですから」。
 成人のディスレクシアの人々は証明書は必要ありません。彼らは私達の所に来てなぜ録音図書を読みたいのか理由を話すだけで充分です。だれかが嘘を付くために来るとは思いません。はじめはこのサービスは視覚障害者にしか与えられませんでした。しかし10年ほど前から対象グループが広げられ、ディスレクシアやその他の読書困難を持つ人々をも含むようになったのです」。

抵抗がある人々もいます

 近年になって規則を和らげても、中にはBBIに足を向けることに強い抵抗を感じるディスレクシアの人々もいる。51歳の工芸作家、フィンヌルもその一人だ。
 「BBIと連絡を取るのは私にとっては面倒なことだ。彼らが方針を変えたのは知っているし、あそこから本を借りればいいと思うんだけどね。アトリエで仕事をしている間に本を読みたいと思うからね。私は市民図書館にある大部分の音声図書は読んでしまった」とフィンヌルは言った。
 レイキャビクの市民図書館には3×3メートルの書棚があって、アイスランド語の音声図書が置いてある。ほとんどはカセットだが、CDもある。図書館の別の場所にはアイスランド語以外の言語の音声図書や、児童向けの音声図書がある。

BBIに紹介する図書館

 レイキャビクの市立図書館には、ディスレクシアや視覚障害者に対する特別なサービスはない。録音された文学を彼らに提供し、貸出す責任を一番に負っているのはBBIなのである。BBIは法律により図書を図書館に販売することはできない。そのため、国民図書館は書店で買える商業ベースの音声図書を購入して貸し出すことができるのみなのだ。
 「私達はもっとディスレクシアの人々を助けたいと思うのですが、実際にはどのようにしたらいいかが分からないのです」と主任司書のエーラ・クリスティンが言った。「彼らは恐らくここへ来て音声図書や音楽を借りていっているのでしょう。でも彼らは外見からは分からないのです。もし誰かが彼らにはディスレクシアがあると教えてくれたら、彼らにBBIを紹介するでしょう。でも私達はBBIとは直接的な協力関係は結んでいません」。

書架にはヴァンパイアの本が

 BBIの図書館には約6000冊の録音図書がある。BBIは若者達に重点を置くと決めた時、蔵書を見直し、充実させた。
 「私達は若い人々に合うような図書をあまり持っていないことに気が付きました。そして若者が喜ぶような、ヴァイパイアの本や、ブリジット・ジョーンズや、その他の図書を作成することから始めました」。
 38歳のアスゲイル・クリシャンソンはある大きなホテルのコックとして働いているが、あるバンドの中で歌をうたっている。彼にはディスレクシアがあり、BBIの利用者の一人だ。「私達はBBIから大変よいサービスを受けています。私は月に5冊、図書を集めておいてくれるように頼んでいます。ほとんどはアリステア・マックリーンのようなアクションストーリーか、または旅行の本です。自叙伝は好きではありません。BBIは私がもう読んでしまった図書のリストを持っていて、私が好みそうな図書を紹介してくれるのです。彼らがどんな図書を紹介してくれるのか、見るのはわくわくします」。

北欧から借ります

 BBIは図書を自分達の職場で吹き込んでいる。彼らは素敵な録音スタジオを2つ持っているのだ。その外側にはコンピュータがあり、吹きこみを支援できるようになっている。技術者が吹き込み作業を見守り、聴いていて、必要に応じてすぐに訂正ができるのだ。
 「私達は本当に多くの録音図書を隣国の北欧諸国から借りています。特に大学で使う英語の文学です。そのほとんどはスウェーデンのTPBから借りています。それらの図書は大変良くできています」とトゥーラは言った。


*掲載者注:

BBIのウェブサイトとフェイスブックのリンク

Icelandic Library for the Blind (Blindrabokasafn Islands : BBI) (アイスランド語)
http://www.bbi.is/

Blindrabókasafn Íslands (facebook) (アイスランド語)
http://www.facebook.com/pages/Blindrab%C3%B3kasafn-%C3%8Dslands/112218518412?sk=wall

BBIのパンフレット(アイスランド語)
BBI_einblodungur_Final_Conv.pdf
example.pdf
「ニコちゃんマーク」の中にある「Allir geta lesið!」は、英語の「Everybody can read!」にあたる。

原本書誌情報

Bibliotek för alla
http://www.tpb.se/om_tpb/trycksaker/tidskrifter/#bfa

Bibliotek för alla. 2010, No.3, 16p.
http://www.tpb.se/filer/trycksaker/pdf/bfa32010.pdf

原本(スウェーデン語)は、TPBのサイトに掲載されています。写真はDINFには掲載しておりませんので、原本をご覧ください。