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平成19年度パソコンボランティア指導者養成事業

セミナー
障害者IT支援とパソコンボランティアの展望
報告書

パネルディスカッション(後半)

テーマ:「パソコンボランティアのニーズと育成」

パネルディスカッションの様子

石川●

それでは後半、始めたいと思います。さて、どういうふうにして進めていこうかということですが、では私のほうから質問と言いますか、私が皆様のお話を伺っていて、教えていただきたいなと思ったようなことについて、ちょっとランダムに出してみたいと思いますので、そういう形で始めさせていただこうかなと思います。

これは寺島さんの基調講演にもあったと思いますけれども、今、国は市場原理主義に向かっていて、だからこそ、にもかかわらずと言いますか、人々は競争だけやりたいわけではないし、協力ということもしたいし、人を助けたり助けられたりする関係というのを求めている、そういうマインドをみんな持っているので、ボランティア活動というのは二重に、二重にというのは国の政策として市場原理にかなりウェイトを置いているような政策になっているが故にボランティアが必要だということと、それから自発的に、だからこそ、そういう社会的な雰囲気の中でボランティア活動という場所を、自発的にみんなが求めるようになってきているというお話があったかと思うのですね。

同時に、パソコンボランティアというのは技術的なことに関心を持ち、なおかつ人と直接つながることにも関心がある、ケアということにも関心があるという。概して、この二つの集団というのは向かっている方向、関心の方向がかなり違うので、その両方を持っている人たちというのは非常に稀少であるというか、貴重でありかつ稀少であるというお話が比較的複数の方のお話の中にもあったかと思うのですけれども。そうかもしれないのですが、例えば、何ですかね、河村さんがずっとおっしゃっているような、オープンソースだとかフリーウェアだとか、あるいは著作権についてもクリエイティブ・コモンズだとか、協力して何かを生み出していこうとか、そういったことに対して柔軟な発想って、意外と技術系からむしろ出てきているような気がするのですね。ウィキペディアもそうですけれども。伝統的には理系は技術志向、文系の中にはケアとか福祉とかに関心を持つ人たちもかなりいてということだったかもしれないけれども、そのあたりの枠組みが変わり、シフトしてきているのかなという気もしています。だからこそパソコンボランティアという人たちも、社会の中でたくさん出てこられるようになったのではないかなという気もするんですが、そのあたりはどうかなと思ったのが1点あります。

それから企業とNPO、ボランティア、あるいは公共性とか、ありますけれども、企業活動でありつつ、先ほどの三崎さんのお話にあるような、つまり営利的な目的だけを追求するというよりは、ある企業が掲げている社会的な理念みたいなものを追求する「社会企業」というのもありますよね。この分野、支援技術の開発とか、この分野というのは、利益追求だけではどうにもならないほど市場が小さくて、やっていくことが困難な分野であるので、それだったらもう社会企業だという形というか、そういうスタンスをきちんと前面に出して、経営の中身も透明化して、収益を上げると同時に、いろいろなセクターからの支援ですね、そういったものも受けながらやっていくという。ボランティアとも連携を取って、例えばサポートを担ってもらうとか。つまり企業だけで何とかしようと思っても、できることが限られてしまうので、先ほどの話にも、フロアからもありましたけども、十分なサポートが受けられないとか、マニュアルを読んでもなかなかあまりよく分からないというような、つまり提供できる機器の品質であるとか、サポートであるとかも、どうしても限界があるわけですから、であれば社会企業というような形でやっていくというのが、これからの展開かなと考えているんですけれども、そのあたりはどうでしょうかといったようなことを、ちょっと思いました。

それから「ホスピタリティ」とか「福祉の心」というお話があったのですけれども、誠にその通りだと思うのですが、そのときに、私は「アシスト」ということを実は強調していて、専門職もボランティアもそうなのですが、特に専門職について、アシストに徹する専門職というのが大事なんじゃないかと考えています。これは自立生活運動なんかでもそうなのですけれども、自己決定、自分が自分の人生のあり方を決めていくホストであると。なおかつ自分がゲストである。それを支えるアシスト役が専門職であると考えているのです。これは本人がそういうふうなあり方を、人々が望んでいれば、たぶん一番うまくいくのではないかと思うのですけれども、状況によって、あるいは人によって、もっと、より積極的に、転ばぬ先の杖となってほしいといったような、例えば、糖尿病である私が「まんじゅう食いたい」と言ったら止めてほしいとか、その種のケアを望む人もいるだろうと思うのです。日本ではそういうケアをすることが本当のケアだと、たぶん、今まではなってきたと思うので、答えの出ない問題ですけれども。パソコンボランティアだったら、パソコンで人は死なないので、前者でいいのかなと思っているのです。ただそれでも、畠山さんのサポートされてきた方のように筋ジスの方であるとか、あるいはALSの方であるとか、命が関わるような、健康に直接関わるようなところでリハ・エンジニアとしてサポートされてきている場合の、そこから得られた感覚と、視覚障害なんかで、もっと技術に寄ったニーズであり、またサポートもそういった、ボランティアと利用者との間に一定のディスタンスがあって構わない、あるいはあったほうがいいという、そういうものと距離感が違うような気もするので、そのあたりはどうかなという、とりあえず三つ、私の感想及び質問ないしは疑問ということで申し上げたのですけれども。これらについて伺ってみてもよろしいでしょうか? どういう順番でもよろしいのですが、では長くからの先輩なので河村さんに。

河村●

この会場でクリエイティブ・コモンズについて、既に聞いたことがあるという方、ちょっと手を挙げてみていただけます? はい、ありがとうございます。本当に少ないですよね。クリエイティブ・コモンズは、普通「コピーライト」というときに、ローマ字の「C」に丸を付けて「c」という、昔からあるコピーライト表示をするのに対して、「CC」、Cを二つ書いてそれを丸で囲む、クリエイティブの「C」とコモンズの「C」とで「クリエイティブ・コモンズ」という、そういうトレードマークを作りました。ひと言で言うと、内容を改変しない限り自由にこれを複製して配布してもいいですよという著作権に関する宣言をしているグループで、だんだんあちこちに進出をしていると言っていいと思います。

かなりハイテクの分野の人とか、あるいは著名な学者とか、そういった人たちが中心に始めたのですけれども、今だんだんと、実際にみんなで使ってほしいもの、だけど歪められたら困るし勝手に引用されたくもないねというときに使われている、一つの著作権に関する考え方と行動です。私は、これはすごく積極的ないいアイディアだと個人的には評価しているのですけれども、やはり重要なことは、みんなで知識や情報を共有することによって、次の知識や情報が生まれて、そしてよりよい社会になっていく、それを積み重ねていくのだという、そういう今の社会についての姿勢と言いますか。

何か既に発表されているものとか先行した研究の上に、自分の新しい考え、あるいは開発したものを上乗せして、これが自分のものということを最大限大きく自分のテリトリーに組み込んでいくことができると一般に考えられているのが知的所有権と言われている考え方で、これが今まで世界中で知識、特に特許の世界とか商標の世界、著作権の世界で当たり前とされてきたものです。でも著者からあるいは演劇家から言わせると、まだまだ保護が足りないと。みんな出版社や放送局や映画会社に持って行かれてしまっていると著者は憂えていて。それから特に海賊出版などの被害が後を絶たないという事実もあります。

その一方で、一番極端なのは、今、義務教育の教科書として、自分が読めない一般の教科書を配られて泣いている生徒が教室に一人か二人はいるのですよね。読めないのはいろいろな理由があります。ディスレクシアである、あるいはADHDで集中できないとか、それから視覚障害の場合はもちろんですし、あと両手が自由に動かせない場合もそうですね。たくさんの理由で普通の教科書では使えないという生徒が最低5%はいるでしょうと。実はもっと大勢いるのだと思います。

出版社はベストセラーとか、次々に本を出しますけれども、みんなが読んでいるものは、読みたいなと思ったときに読めない人っていうのが、やっぱりいっぱいいるのです。スウェーデンの統計では総人口の20~30%が読めないと言っています。日本はスウェーデンと同等かそれ以上に高齢社会ですから、もっとパーセンテージは多いかもしれません。

そう考えると、元々出版社あるいは放送局が、字幕を付けたり手話を付けたり、あるいは読めるバージョンのものを出版してくれるというのが一番いいことなのですね。そのことによって放送局や出版社が自分のマーケットをちゃんと確保できて売れるわけです。でもそれをやらないときどうするのかという課題があって、先ほど音訳ボランティアの方からご発言がありましたけれども、今の制度では十分に配慮されていない人たちで、読めなかったら社会参加はできないわけですから、そこをボランタリーに支えようという活動が全国にあるわけですよね。

でも、さっき私が冒頭に言いましたように、それをひっくり返すのが今度の権利条約です。権利条約の考え方からいくと、出版社や放送局は、自ら商品としてそのマーケットをアクセスできるフォーマットで出版しない場合には権利を放棄したとみなされてもしょうがない。そのときには対等なアクセスというのがreasonable accommodation、合理的配慮を提供することになって、例えば非営利で、他の人がみんな読めるものを読めるようにするというのは、何の許可もなく、出版社は放棄しているのだから、あるいは著者が放棄しているのだから、アクセスは無条件に保障されるという原則が貫かれるべきだと考えています。つまり今までは「これを音訳していいですか?」「テキストをスキャンしていいですか?」と許可を求めていたものが、その権利者がきちんと保障できないものについては、もう、すぐにでも差別にならないように、そこの権利を保障しなければいけないので、ボランティア等が何か不当に儲けるということがない限り、そこで海賊出版とは区別できる形でアクセスを提供することにいちいち許諾が要るのだろうか。それはもう許諾なしにできるのだというのが、これからの著作権のあり方ではないかと考えるわけです。これは字幕、手話を付けて聞こえない方に提供するということについても同じだと考えます。

そう考えていくと、さっきクリエイティブ・コモンズのように自らそう宣言することは、著作権の変更がなくても今でもできることなので、そういうものを普及していくことが、スムーズに、新しい原則に沿った差別のない社会を作っていく積極的な活動の一つだと理解するとよいと私は思っています。

でもどうしても、コピーライト表示して「絶対に嫌だ、自分の作品は絶対に許可しない」というのに対して、それだと、すごすごと、誰もそれを、例えば今ベッドに寝たきりで本を持って読めないという方に、今の日本の著作権法では強制的に、著者の許可なくそれを録音にして提供するということができない法律になってしまっています。そこが変わらない限りは、著作権法が変わらない限りは、この合理的配慮を実施できないわけです。じゃあ法律に変わってもらいましょうということになる。それが権利条約なのだということだと思うのです。

法律によらなくてもそれを実現していく方法と、それから法律を変えてでも、やはり実施していかなければいけない部分と両方あって、それぞれのところに自発的な活動、ボランティアの活動領域というものが、より活動しやすい形で存在していくのではないかと思っているところです。

石川●

ありがとうございました。ちなみに補足ですけれども、ウィキペディアみたいにどんどん改変してくれると、私はここまで書いたけれど、ここから先分からないので協力してくれとか、あと間違っていることがあったら自由にどんどん改変してみんなで作っていきましょうと、改変自由というやり方をとっているものもあるということを一応補足として申し上げたいと思います。

あと2点ほど、先ほど質問みたいなことを申し上げたのですが、社会企業といったようなことについては、どなたか何か発言していただけるでしょうか? ちょっとこれは後に回して。アシストモデルとホスピタリティということで、畠山さんにちょっと。

畠山●

3番目の石川さんがおっしゃった中で「アシストに徹する」ということがありましたね。確かに私はリハ・エンジニアでずっと仕事をしていて、自分の技術をもってアシストに徹するという仕事をやっていたのですけれども、振り返って気が付くと、実は技術をアシストするというよりも、もっと言えば、その人の動機付けとか意欲付けをアシストしているのだと。たまたまそれが場合によって技術であったかもしれないし、場合によって私がお薦めしたものを選ばずに他の人のアシストを選んだ人もいるのですよね。そのときには非常に、技術でアシストしようとした人間としてはとても悔しいものを感じたことを今でも覚えているのです。若い頃。何で選んでくださらなかったのか。本人は望んでいたのに。ただこれは昔、ボークラッソンという、水力式の義手、サリドマイドのお子さんのために非常に、最初の頃からやっている研究者がこんなことをおっしゃったのですね。たとえ私の技術を選んでくれなくても、その人がより良い解決方法を見つければそれは成功なのだという言葉です。それで私は自分の気持ちが下りたのですね。要するに私の価値観ではなく、相手の価値観の中で捉えていくと、それもアシストなのだと。だからいろんな意味で、私たちはアシストと言ってもいろんなアシストの仕方があって、人につなぐというのもアシストかもしれません。そう考えます。そういう意味でアシストに徹するでよろしいでしょうか。

石川●

ありがとうございます。期待した以上のお答えを頂いてありがたいです。そうしましたら、だんだんフロアからも何かおっしゃりたいということも出てくる時間帯かなという気もしますけれども、何かあれば今このタイミングでお伺いしようかなと思いますが、どうでしょうか。じゃ初めての方。

会場●

石川先生の社会企業という視点と一致するところで、ボランティアの立ち位置についてお伺いしたいと思います。支援しようと考える、ないしはミッションをどのように設定するかにもよるとは思うのですけれど、ボランティアは成立するのが相当難しくなってきていると私は思うのですね。そのボランティアグループなりNPOのライフサイクルを、どのように自分たちが理解するかによっても変わってくると思いますが。やはりそこでお手伝いするのであれば、人間と人間の関係が多い分野では、どうしても一定期間続かないとかえって迷惑をかける。どこかで梯子を外しちゃうようなことにもなりかねない。もちろん代替があれば、それはそれでいいのでしょうけど。ボランティアの立ち位置をもう一度再認識して、地域とうまく関わっていきながら作っていく、地域に積極的に位置、自分の足場をこねながら作っていくぐらいの覚悟をしないと、今先生方からお話のあったようなボランティアには、ステップアップできないのではないか。いろんな意味での何かがないのではないか。それから地位も高めていけないだろうし、あるいは技術も高めていけないのではないかと考えているのですが。ボランティアの下か上か横かはよく分かりませんけれども、やっぱりもう一度、地域・コミュニティという表現とるか、あるいは社会という表現をとるか、自治会という表現をとるか、いろいろな考え方があると思いますし、当然、それがもう概念として決まっているので、そこの再構築ということがおそらくあるのだろうと思うのですけれど。そのようなことを考えながら、今、少し動き始めたのですが。何かそのあたりに視点があるような気がするのですが、いかがでしょうか。

石川●

ありがとうございます。今のお話に対してすぐにどなたかから応答していただくか、他にフロアからあればフロアからかというところで悩むのですが。フロアからもうお一方、伺ってからにしたいと思います。一番後ろの方、すみません。

会場●

香川県から参りました。A型の福祉センターでIT活用支援を担当しております。香川県でIT活用支援を始めて6年ぐらいが経過します。その中で、畠山先生からお話があったのですが、ご相談の中で、IT支援ということで、パソコンの相談も多く頂いておりますが、電話を便利にかけたいですとか、ナースコールをちょっと改造したいとか、パソコン以外の生活を便利にするようなサポートの相談も近年増えてきております。その中で生活支援ボランティア、生活全般を捉えて生活支援ボランティアという視点もあるという貴重なお話ももらえました。障害を持っている方のIT支援と、これからの展望というところで、ボランティアがそこを担うにはどのようなスキルを身につけたらよいのでしょうか。チームアプローチという中では、ボランティアの範疇としたらどういうところが担えるかなど、教えていただけたらと思いました。

石川●

ありがとうございました。もうひと方、先ほどから待っていただいていたのですが、お願いします。

会場●

ボランティアという言葉、私は実はあまり好きではないのですね。正直申し上げると。ただ他に適当な言葉というものがないので、使うのですけれども。ボランティアという幅がちょっと広すぎないかなとちょっと思ったのですね。パソコンを使って仕事もしているのですけれども、正直言ってパワーポイントも読めないソフトだったりしているので、結構そういうところでは、まだまだ視覚障害者の分野というのは情報が少し不足かなと思ったりもしています。例えば就労の部分でのボランティアの導入という話もあったように記憶しているのですけれども、そういうところではどういうふうに活用するのでしょうか。それから企業で仕事をしていると、やはりほとんど知らないのですね。視覚障害者がパソコンを使うということそのもの。だから困っていることを言っても理解してもらえないというのが正直なところです。そのあたりをどう訴えていったらいいのかということを教えていただきたいのですけれども。

石川●

はい、ありがとうございました。他にありますでしょうか? だんだんと時間が少なくなってきましたので、もしあれば今のうちに。ないですか。そうしましたらお三方から質問があったので、これらを中心にと思うのですけれども。では、生活支援ボランティアについての畠山さんへの質問からお願いします。

畠山●

ボランティアに求められる、あるいはどのような視点を入れたらいいかということについては、ごめんなさい、私は何度も申し上げますけれども、ボランティアというのは、あまり意識していませんので、一人の人を中心にして考えた場合に、あるいはその人を支援する場合に他の視点を入れると言うのですか、自分が持っている以外の視点をぜひ取り入れる。例えばリハビリセンターなどで働いている場合には、やっぱり他の専門職との意見交流をいかにしていて、その人の全体像をどこまで捉え切れているかということを、とても大切にしています。やはりエンジニアだけの視点ではなくて、他の視点も必要です。ですから技術ボランティアさんの場合には、技術ボランティアのグループの一つの考え方があると思うのですけれども、そこに先ほどから出ているような、医療との連携とか、あるいは企業さんの視点とか、いろんな他の視点をいかに取り込めるかということをぜひ考えていただきたいなということぐらいしか、今ちょっとお伝えできません。申し訳ありません。

石川●

ありがとうございました。3番目の質問にありました、例えば就労の場におけるパソコン、ITスキルに関わるような支援ですね。例えば具体的にはスクリーンリーダーのトレーニングであるとか、あるいはいろいろ、オフィスで使っている一般のソフトウェアの使い方について教えてほしいのだとか、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)であるとか、就労している人への支援と言ったところまでパソコンボランティアに担ってもらわないと、この社会はダメなのか、それともプロフェッショナルの支援者というのを、やはりそこは養成してやっていくべきなのかといったところの議論としても受け止めたのですけれども、このあたり三崎さんとか、いかがでしょうか。

三崎●

フロアにそういう仕事をされている、職能センターの井上さんがいらっしゃるので、いかがでしょうか。

井上●

視覚障害者就労生涯学習支援センターの井上と申します。今のお話については、まずは職場の場合は、雇用管理サポートとか障害者職業センターの職業カウンセラーというような方とともに企業にお話をするということが大切かと思っております。技術的な面では、実は視覚障害についてはすごくサポート、プロフェッショナルの方が薄いと政府も感じていらっしゃいます。そこでこれからは地域の障害者職業能力開発機構などでも視覚障害の方に対応できるようにというお考えを、今、持ち始められつつあります。そういう方向で徐々に厚みを増していくことと思います。今とりあえずできることは、地域の職能センターやそういう管理サポートという専門家と一緒に、企業に課題を説明されていくことではないかと思います。よろしいでしょうか。

石川●

ありがとうございました。松本さんからありますか。

松本●

知的障害者の場合、ジョブコーチみたいな形で一緒に入っている方もいらっしゃり、それを養成するということもセンター内では行っていたようです。ただ先ほどからもずっと話にあるように、本当に「ボランティアさん」と僕らも呼ぶことも忍びないほど、かなり専門性を出していただいて働いていていただいて。本当にどういう立場で、どういうところでやっていていただくのが一番いいかって、先ほどからずっと考えているのですけれども、何がいいのでしょうね。本当に。難しい問題がいっぱいあります。例えば、ガイドヘルパーさんがいたりホームヘルパーさんがいたり、そういうヘルパーみたいな形がいいのか、ジョブコーチみたいなコーチとして行ったほうがいいのか、養成システムに関わる問題もあったり、資格、あと収益の問題、いろいろなものがあるので、逆に皆さんが、どういう立場のほうが、今後続けていく上ではやりやすいですか? というのを聞きたいなと思いながら話を聞いています。以上です。

石川●

ありがとうございます。あと今のお三方の最初の方ですね、社会企業とか、社会事業とか、ボランティア活動を進めていく上でも、それをオーガナイズしていくための基盤みたいなものというか、あるいは社会的な使命みたいなものとか、あるいはリーダーシップの問題とか、いろいろな諸々の問題があって、それがボトルネックになっているのではないかというふうなご指摘だと私は受け止めたのですけれども、それについてお願いします。

三崎●

お答えになるかどうか分からないのですが、先ほど紹介した八王子の情報ボランティアのグループは、八王子の大学、八王子の盲学校、それから八王子の在住のエンジニアの方なんかが中心になって、地域の人が集まって行っている支援グループです。ですから地域という基盤があって、そこで地域の障害者やパソコンで困っている人と支援しているという、そういうグループで、10年ぐらい続いているのですね。だから地域への縁の持ち方が非常に深いものがあって、継続して支援できるということになっていると思います。

もう一つ、ボランティアグループでも、やはりその中に何人か集まればリーダーというのが出てくると思うのですね。その方はやはりそのグループの継続とか、辞めないでもらうとか、力を付けていくためにはどうしたらいいかとか、そういうことを考える役割になってくると思うのです。先ほど紹介したドラッカーという方は過激なことを言っていて、一般の企業に勤めていても、環境が合わなければ、上司と合わなければ辞めてしまえという言い方をしています。辞めてしまって、自分が辞めて、自分に合ったところを探しなさいと。例えば私、ろう学校にいますが、じゃ学校を辞めるかと言ったら、そう簡単にいかないわけで、現実的ではないけれども、でもボランティア組織というのはそれが可能ですよね。リーダーでなければ自分は辞めるよということを簡単に言えるし、合ったところを探すことができるわけで、生き甲斐を求めて自分に合った組織で自分の力を発揮するということになると思います。そのときにリーダーに当たる方は、そういうことが可能になるように、いろいろ経営について工夫するということになると考えていますので、やはりリーダーの立場の人のやることと、そうではない方のことというのは、やはり違ってくるかなと思っています。

私は実はろう学校の管理職ですが、一つ考えていることは、学校の先生方がボランティアマインドを持ってほしいと思っているのです。ボランティアマインドというのは、勤務時間を超えて際限なく働くとかそういうことではなくて、仕事に生き甲斐を感じてほしいと思っていて、そういうふうに持っていくというふうに考えています。

石川●

ありがとうございます。組織化といいますか、こういったことについては、例えばDAISYコンソーシアムという世界的な非営利団体を組織してこられた河村さんの、日本人離れしたスキルを、いつも敬服しているのですが、このあたりについては何かコメントを頂けますでしょうか。

河村●

いくつか感じている点は、就労とか、地域でも本当に危ういところまでも含めた生活支援とか、あるいは学校での授業についていけない、あるいは授業で読むものが入ってないというお子さんの支援にボランティアとして関わるというのは、ものすごく負担が重い。またそれだけに、やり切れればものすごくやりがいもあるし達成感もあるのだけれども、でも、何かそれをボランティアがやらなければいけないということに、いつも矛盾を感じながら、やっている、担っている方が現実には多くいらっしゃるのだと思うのです。

その一方で、NPO法人にして、少しでもそういう活動を円滑に安定してできないものかという模索をしている場合もあって。特にITボランティアの場合には機材の問題がありますよね。もうVistaしか売ってないですから。今まで自分たちが培ってきたものがWindowsのXPあるいは98の技術で培ってきたものは、Vistaになったら全然通用しなくなってしまう場合があるわけですよね。それで新しくVistaを使ってこれをしたいのだけれどという方が支援を要請してきたときに、どうしてもVistaを使わなければならなくなるわけです。そうすると、これお金が必要ですよね。そういう技術革新にちゃんと対応していくためには、それなりの資金的なバックアップというのが必要になって、そのために助成金を取らないとできないねということになると、どうしても法人格が必要とか、そういうケースが出てきますので、それをやると、「じゃあ誰が経理をやってくれるの?」という話になって、なかなかボランティア活動で経理やりますという人は、そんなにいないわけですよね。経理も含めたコーディネートの負担というのはどんどん大きくなっていって難しくなっていくと。これは私もつぶさに体験しているところでありますけれども。

そのときに、やっぱりどうやって整理をしていくかと考えますと、先程来ありますように、これは企業として製品を売る、サービスを売る、そのことによって継続的な経営が可能になる分野というのは当然あるのだと思います。だからいろんな企業が福祉の分野にも進出していく。これはもう大いにやってほしいと思うのですね。だけど一方でコムスンのようなこともあり、それだけでは歯止めが効かない部分、そこで、本当に今現実に支援を必要とする人と全面的に向かい合って何かをやっていかなければいけないけれども、制度的にはそれが十分できていないところで、一過性と言ったら変ですけど、経過措置的に、当面の間ならこれくらいのことはできるだろうということで関わらざるをえない。そしてそれはできるだけ早く軌道に乗せたい。そのための安定したあり方というのはどんなものかというのを模索しながらやっているというケースもあると思うのですね。

あとは比較的うまくいって、みんなが持っているものを、できる範囲で出し合って、コーディネートがうまくいって、利用者も満足しているし、活動している方も満足しているというものもたくさんあると思うのです。

要はこれは、「これは困ったぞ」というときに、やっぱりお互いに連携し合い、どうやったらうまくいくのか、うまくいったケースについて、できれば相談できるような、そういうつながりを持てるような、やはりある意味で、地域的、全国的なコーディネートというものがどうしても必要なのではないかと思います。それがテーマ別にという形になるかもしれません。

例えばDAISYなどの場合には、今、技術的にこういうことで行き詰まっているのだけど、こういう技術はどうなの、あるいは将来どうなるのかということについては、最終的にはスイスに今籍を置いております非営利国際団体が責任を持って、規格を維持するということを宣言しているわけですね。

やはりそういうネットワークを組むためには、みんなそれぞれ、ある意味ではやれそうなところはボランタリーに、ここについては、自分たちはこういうことを責任持ちますよということを公開していく。それで何かあったらできるだけのことはします、完全に要望に応えるということができるかどうか分からないけれども、こういうことについては、自分たちはこういう貢献をしますよということをアナウンスしていく。それが縦横につながっていくということが非常に重要なのだろうと思うのです。ここでもやっぱり、私たちはITを活用しなければいけないと思うのですね。お互いにつなぎ合うところに、最大限、自らITを活用していくということが、IT支援ボランティア活動の一つの成功の鍵なのかなと。その中でうまくいったケース、うまくいかなかったケース、両方を交流し合って、連携して模索を続けるということ以外、今のところないのかなという感じがします。

そういう意味で、私自身、さっき石川さんがDAISYコンソーシアムという、ボランティア活動をDAISYの部分で行っている、世界中でみんなで集まってやっているような団体ですけれども、今、そこの責任者を引き受けているわけですが。例えば国際的には、アメリカの規格、日本で言うとJISに当たるものですが、ANSI規格というのは、スイスにある非営利団体のボランティアみたいなもの、そこが管理を引き受けています。これは他にあまり例がないです。ボランタリーに作っている非営利団体が、アメリカの情報に関わるある規格、Z39.86-2005という変な名前の規格ですけど、それがDAISYのアメリカでの名前なのですね。それを2年に1回改訂して公表していく、それを引き受けている。それがアメリカの産業のスタンダードの一つになっているという形で、世界中で安定してその規格が使えるようにしていく。この規格を使うのはまったくタダです。タダであるから、みんな使いやすいので、いろんなメーカーも参入してくる。そのことが読みに障害のある世界中の人に利益を及ぼす。それでペイしたということで、毎年300万円の会費を払う団体が、今14団体で、それを構成しているというふうな一つのモデルがあります。それに共感して、例えばマイクロソフトは、これから応援するということを表明していますし、Googleも何らかの形で支援しようと言ってくれています。そういう形で、いろんな支援を受けながら、それが世界中にあまねく広がっていくということを、今、着々と積み重ねることが、皆さんのおかげでできているわけですけれども、そういう一つの成功事例というふうに呼ばれているものもあります。私たちがITボランティアとしてやっていくとしたら、どのように最大限、そのITのノウハウを結集して、お互いに支え合うのかというところに、何か打開策があるような感じがします。

石川●

ありがとうございました。気が付くと残り時間がほぼなくなりました。もし、もうひと言だけ、何か言わせてくれという方がいらっしゃれば、ひと言。はい、どうぞ。

三崎●

先ほど質問について分かりましたのでお答えします。PSPのブラウザはLaruVoice(ラルボイス)というソフトで読み上げることができるそうです。

石川●

もう時間がなくなりましたし、またまとめることも私にはできないのですけれども、ボランティアは自発的な人ということだと思います。つまり、自分から買って出る、引き受けるということです。人から言われてということではなく、「私だったらこれができるので、これやりますよ」と買って出るということなのだと思います。それは個人であれ、企業であれ、NPOであれ、何であれ、いろんな形というのはあるし、それぞれの引き受け方というのはあると思います。そのように買って出ることが報われるような社会を作っていく責任が、少なくとも国やその社会にはあると思うのです。

財政的に逼迫しているので、ここはまあボランティアにやってもらおう、あるいはボランティアでもできるのではないかという話は失礼な話であって、ボランティアというのはあくまで自発的な人たちが、見かねて買って出たり、これは自分がやりたいと思って買って出たりするものであって、それを最初から織り込んだシステムというのは話が違うのではないかと思います。国、公的セクター、市民セクターが協力して共生社会を作っていくことが、やはり大事なのではないかと、今日参加しましてそのように理解しました。これをもって、まとめに代えさせていただきまして、パネルディスカッションを閉じたいと思います。どうも皆様、ご協力ありがとうございました。

司会●

2時間という長い間、ありがとうございました。いろんなディスカッションができたと思いますけれども、なかなかボランティアというのは奥が深く難しいなと思うのですが、やはり、石川先生がまとめていただいたように、自分が自発的にやる、そこに生き甲斐を見い出したり、人と人とのつながりがあるのかなと思いました。

私たち日本障害者リハビリテーション協会においては、来年もパソコンボランティア指導者養成事業を開始させていただきます。来年度のリクエストなどございましたら、ぜひアンケートに書いていただいて、いろいろなことがあるのだなとか、これからはこうやっていこうという、うれしい気持ちで帰っていただけたらということで、閉会のあいさつとさせていただきます。今回の情報保障に関しまして、手話通訳者の方、それから要約筆記者の方、大変ありがとうございました。拍手でお礼を申し上げたいと思います。それでは閉会とさせていただきます。本日は長時間、どうもありがとうございました。