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日英シンポジウム2001

資料 北口 末広 資料

目次

資料 「2000 年部落問題実態調査からみた同和地区におけるまちづくりの現状と課題」
資料 「2000 年部落問題実態等調査」からみた現状
 第1章生活実態調査
 第2章同和地区内意識調査
 第3章府民意識調査

資料 「2000 年部落問題実態調査からみた同和地区におけるまちづくりの現状と課題」

  1. 2000年部落問題実態調査からみた部落差別の現実
    (差別撤廃の方針は差別の現実から与えられる)

    a 部落差別事件
    b 部落差別事件の前提である部落差別意識
     A.2000年実態調査(府民意識調査)結果から
     B.差別意識の存続要因
     C.その他
    c 部落差別の継続的状態である部落差別実態
     A.2000年実態調査(生活実態調査)結果から
     B.現代の社会的課題が同和地区に集中的に表出
     C.現在の社会変革が社会的・経済的格差を生む可能性
    d 被差別の側の心理的側面
     A.2000年実態調査(同和地区内意識調査)結果から
     B.具体的事例から見る同和地区内意識
    e 差別を支えている社会システム
     A.社会システム-意識・感覚-基準
  2. まちづくりの課題

資料 「2000 年部落問題実態等調査」からみた現状

第1章生活実態調査
[世帯・世帯員]

  1. 世帯の年齢構成と家族類型
    a 同和地区の年齢別人口構成比は、50 歳未満では大阪府の年齢別構成比より低い。 しかし、60 ~79 歳となると大阪府に比べてその構成比が高くなっている。 同 和地区には15 ~64 歳のいわゆる「働き盛り」が少なく、65 歳を超える高 齢者が多い状況が見受けられる。
  2. 世帯員の流出入
    a 同和地区出身の住民
    「同和地区出身の住民」は55.6 %で、「同和地区出身でない住民」は36.7 %で ある。
    b 原住者・来住者

[教育]

  1. 学歴構成
    a 大阪府民との学歴構成比較
    同 和地区の学歴構成を大阪府のそれと比較するとき、55歳以上は中等教育、高 等教育いずれについても大きな格差がある。とりわけ、60~64歳の中等教育に おいて34.6ポイントの格差があり、55~59歳の高等教育において13.2ポ イントの格差がある。54歳以下については、中等教育の格差が縮小傾向にあり若 年層程改善されている。なお、高等教育については、大きな格差(30~34歳で 16.6ポイント)がみられる。

[情報]

  1. 識字問題
    a 同和地区の非識字実態
    「読む」ことが困難な人が10.3%、「書く」ことが困難な人が14.3%となって いる。年齢別では、高齢になるほど「かななら読める」と「まったく読めない」と いう割合が高くなるが、15~49歳においても3.6%~6.0%の読むことが困 難な人が存在している。同様に、「かななら書ける」と「まったく書けない」とい う割合が高齢になるほど高くなるが、15~49歳においても3.4%~6.6%の 書くことが困難な人が存在している。
  2. パソコンの普及
    a パソコンの普及率
    「消費動向調査(2000年実施調査結果)」によると、全国のパソコンの世帯普 及率が38.6%、近畿地方が38.4%となっている。同和地区の普及率はそれよ りも低く、22.3%となっている。
    b 障害者のパソコンの所有状況
    同和地区における障害者のパソコン所有率は、障害者のいる世帯では13.9%、 障害者のいない世帯では21.0%となっており、7.1ポイントの差がある。
  3. インターネットの利用

    a インターネットの利用率
    同和地区のインターネットの利用率は14.4%となっている。「2000年度版通 信白書」によると、全国のインターネットの個人利用率が28.9%である。同和 地区の利用率はその半分となっている。

    b 不均等なインターネットの利用率
    女性は男性より利用率において4.9ポイント低く、年齢別では、概ね年齢が下が る程利用している割合は高い。とりわけ、20~29歳層が高い。また、中高年層 の利用率は若年層に比べて低い。

[生活福祉]

  • 1.介護
    a 高齢者世帯の状況
    同和地区における調査世帯に占める高齢者世帯の割合は16.1%であり、全国の 13.7%(2000年国民生活基礎調査概況)に比べて高くなっている。 また、同和地区における高齢者世帯の年間収入の分布状況では、全国(2000年 国民生活基礎調査概況)に比べ低い水準となっている。
    同和地区(%)全国(%)
    100万円未満29.812.9
    100~200万円42.330.3
    300万円以上13.737.9


    b 公的年金の受給状況
    国民年金の受給者は54.4%であり、ほか厚生年金49.7%、共済年金9.1%となっている。なお、国民年金の平均受給額は厚生年金の平均受給額の約半分となっ ている。

    • 2.生活保護受給世帯
      a 生活保護受給世帯の状況同和地区の保護世帯率は一般地区と比べて高い
    今回調査
    保護世帯率8.9%
    (一般地区)2.6%


    [就労]

    • 1.同和地区の失業率
      a 同和地区の失業率は、男女とも府平均と比較して高い。
       失業率 (男9.7% 府6.6%)(女8.2% 府5.6%)
      b 家計の維持者である40 歳代男性の失業率が高く、大阪府の約2倍の状況となっている。
       失業率 40 歳~44 歳(10.0% 大阪府4.2%)
       45 歳~49 歳(8.0% 大阪府4.2%)
      c 男女とも専門的・技術的職業従事者と事務従事者の構成比が大阪府に比べて低く、 サービス職業従事者が多い。男性では、運輸・通信従事者と技能工等が多い。
    専門的・技術的職業従事者(男7.1 % 大阪府10.9 %)(女10.6 % 大阪府13.7 %)
    事務従事者(男11.0 % 大阪府13.9 %)(女20.1 % 大阪府34.9 %)
    サービス職業従事者(男7.4 % 大阪府5.8 %)(女23.1 % 大阪府13.6 %)
    運輸・通信従事(男11.2 % 大阪府5.3 %)(女0.6 % 大阪府0.3 %)
    技能工等(男39.3 % 大阪府35.3 %)(女20.8 % 大阪府21.2 %)

    同和地区の失業率
    d 専門的・技術的職業従事者は、短大卒以上の学歴を前提とするような資格を有する ものによって、その多くが占められている。したがって、同和地区に専門的・技術 的職業従事者が男女ともに少ないのは、同和地区における大学進学率の低さのあら われといえる。
    e 若年者の失業率は、大阪府平均に比べて非常に高く、男女ともに若年者の就職希望 者が多い。

    失業率
    15歳~19歳(男31.3 % 大阪府15.6 %)(女20.6 % 大阪府12.1 %)
    20歳~24歳(男15.0 % 大阪府9.9 %)(女16.9 % 大阪府8.9 %)

    第2章同和地区内意識調査

    1. 被差別直接体験
      a 被差別体験の状況
       被差別体験の有無について「体験あり」が28.1 %、「体験なし」が69.1 %となって おり、年齢別では、「体験あり」は30 歳代、40 歳代に多い。
      b 被差別体験の場所について
       「結婚のことで」24.7 %、「職場で」16.5 %、「学校など教育の場で」が16.3 %の順 となっている。
      c 被差別体験の時期について
      「20年以上前」35.3 %、「10 ~20年ほど前」23.2 %、「5 ~10年ほど前」15.1%の順 であり、体験時期が過去10年以内のケースが約39 %を占めており、減少傾向とは 言い難い。
    2. 就職差別の現状認識とその将来展望
      a 就職差別の現状認識について
      「たまに不利になることがある」32.8%、「しばしば不利になることがある」23.2%、 「わからない」26.2%の順となっている。
      年齢別では、「しばしば不利になることがある」は高年齢層に多く、「不利になるこ とはない」は若年齢層に多い。「不利になることがある」と答えた人は、最終学歴 別では大学卒が65.2%、職業別では公務員・教員が79.3%となっており、自分も 配偶者も同和地区内の生まれの場合は73.9%、逆に同和地区以外の生まれの場合 は、42.7%となっている。

      b 「不利になることがある」と回答した人についてみると、「なくすことは難しい」 59.5%、「かなりなくすことができる」36.1%、「完全になくすことができる」3.8% の順となっている。

    3. 結婚差別の現状認識とその将来展望
      a 結婚差別の現状認識について
      「たまに反対されることがある」36.0%、「しばしば反対されることがある」27.7%、 「わからない」22.6%の順となっている。
      「反対されることがある」と答えた人は、最終学歴別では大学卒が78.0%、職業 別では公務員・教員が84.5%となっており、自分も配偶者も同和地区内の生まれ の場合は79.8%、逆に同和地区外の生まれの場合は49.2 %の順となっている。
    4. 差別の現状認識の同和地区内外比較
      a 現状認識について 全体的に同和地区内外でそれほど大きな差はないが、やや地区外の方が厳しい現状 認識を持っている。
      「結婚差別」については、その差は他と比べて大きく、「ある」と回答した人の割 合は、地区外78.1 %に対して、地区内は63.7 %に止まっている。 b 将来展望について それぞれの問題について、同和地区内外で大きな差が見られる。
      「なくすことは難しい」という回答は、地区外では24.0 ~31.3 %に止まるのに対 して、地区内では60 %前後と2 倍以上の開きがある。

    第3章府民意識調査

    1. 人権問題、差別問題についての認識の状況
      a 同和問題の存在認識について
       大多数の人(86.5 %)が「被差別部落」「同和地区」あるいは「部落」を知ってい ると回答している。同和地区出身者の判断基準としては、「本人が現在、同和地区に住んでいる」が最 も多く56.5%で、「本人の本籍地が同和地区にある」47.9%、「本人の出生地が同 和地区にある」44.3 %の順となっている。「結婚のことで」24.7%、「職場で」16.5%、「学校など教育の場で」が16.3 %の順 となっている。
      b 差別の現状認識
       結婚差別について「反対されることがある」と思う人が78.1%、就職差について は「不利になることがある」61.9%、見下し意識が「ある」59.6%、排除行為が「あ る」41.6%となっている。いずれも若年層で認識が厳しい。地区内意識では、結婚差別63.7%、就職差別56.1%、見下し意識53.0%、排除行 為34.0%と府民意識に比べて低い。結婚差別については特にその差が大きく、地 区外のほうが認識が厳しい。
      c 地区内外の理解・協力可能性
      「同和地区の人とそれ以外の人では、お互いに理解し、協力できるはず」が62.8% と多数を占め、「理解・協力できない面が多少でもあるのはやむを得ない」は23.3% となっている。
      d 同和問題の解決に重要なこと
      「地区内外の人々が交流を深め協同してまちづくりを進める」が重要と思う人は 65.0%、次いで「教育・啓発活動を積極的に行う」64.7%、「法律で処罰」52.9%、 「地区住民が差別されないよう努力する」48.6%、「行政が地区住民の自立を支援 する取り組みを充実する」43.0%、「行政が地区の住環境や生活実態を改善する」 41.4%と続く。「そっとしておけば自然になくなる/自然解消論」は37.0%だが、 年齢による違いが大きく、70 歳以上では47.8%と多い。
      e 同和地区に対する忌避的態度
      家を購入したりマンションを借りたりするときに同和地区を「避ける」が38.1% あり、「条件が合えばこだわらない」23.2%と「こだわらない」12.7%を合わせた 数を上回っている。

    「大阪府同和対策審議会」答申から抜粋
    3.基本目標

    1. 被差別直接体験
      部落差別は、差別を温存、助長する因習等をなくし、すべての人の基本的人権を 擁護する取組みとともに、同和地区内外住民の交流、コミュニケーションを図る継 続的な取組みを通じ、相互理解を促進し、地域住民が協力して自らのまちづくりを 進めていくための協働関係を構築し、同和地区とその周辺地域が一体となったコミ ュニティの形成を図ることにより解消し得るものである。 今 後の同和問題解決のための施策の基本目標は、部落差別を解消し、すべての人 の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし周辺地域と一体となったコミュニテ ィの形成を図ること(以下、「コミュニティづくり」という。)である。

      そのためには、
      1)府民の差別意識の解消・人権意識の高揚を図るための諸条件の整備
      2)同和地区出身者の自立と自己実現を達成するための人権相談を含めた諸条件の整備
      3)同和地区内外の住民の交流を促進するための諸条件の整備
      を図ることが必要である。

    2. 基本視点
      これまで同和地区の生活実態は低位な状態に置かれていたことから、府において は、国の特別措置法や数次にわたる府同対審答申に基づき、同和地区の生活環境の 整備や同和地区出身者の自立促進を図るため、同和地区および同和地区出身者に対 象を限定した特別措置としての同和対策事業を集中的に展開してきた。その結果、 かつての同和地区の劣悪な状況は大きく改善された。 しかしながら、平成12(2000 )年度に実施した実態等調査などによると、進学 率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題等が残さ れているとともに、府民の差別意識の解消が十分に進んでおらず、部落差別事象も 跡を絶たない状況である。また、最近においても、調査業者が「大阪府部落差別事 象に係る調査等の規制等に関する条例」に違反する部落差別につながる調査を行い、 同条例に基づいて府が処分するという重大な事件が発生するなど、同和問題が解決 されたとはいえない状況にある。
      また、IT社会の到来など新たな社会情勢の変化が、同和地区内外の情報格差を 生み、それが新たな社会的、経済的な格差につながることが懸念される。 一 方、近年の同和地区における状況は、住民の転出入が多く、特に学歴の高い層 や若年層が同和地区から転出し、低所得層、母子世帯、障害者など、行政上の施策 等による自立支援を必要とする人びとが同和地区に来住している動向がみられる。 こ れまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題としてとらえること が可能であったが、同和地区における人口流動化、とりわけさまざまな課題を有す る人びとの来住の結果、同和地区に現れる課題は、現代社会が抱えるさまざまな課 題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる。 こ のため、同和地区に対する新たな差別意識、社会的排除を再生産させないため にも、現代社会の抱える諸問題に対するより有機的・効果的な施策の取り組みが重 要である。