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発表会:「言語的コミュニケーションが困難な重度障害児・者の自己決定・自己管理を支える技法」

講演3「コミュニケーションに困ったら」(マニュアルの使い方と支援のポイント)

講師 中野泰志・坂井 聡

○中野
 それでは時間になりましたので、マニュアルの話に入りたいと思うんですけれども、 先ほどの事例の件で少し補足をさせていただきたいのですが、先ほど、京都市の呉竹養護学校、 それから東京都の大泉養護学校から、それぞれ実践を紹介していただいたのですが、 これはいずれも進行中の実践ということで、特に呉竹養護学校は総合制養護学校ということもあって、 かなりいろいろなところから注目されているようで、いろいろな方が見学に来られるようなんですけど、 その辺でちょっと一言補足があるそうですのでお聞きください。

○中東
 今回、ATACで、いろいろなところで呉竹養護学校の名前が出まして、どんな素晴らしい養護学校だろうと、 すごいイメージばかりが膨らんでいるんですが、創立45周年を迎える歴史も古いし校舎も古い。 先生も150人ぐらいいますので、全員が全員すべてこういうことをやっているというわけではありません。 でも、こういう視点に立って、毎日、子供と接している中で、何か糸口はないかという中で試行錯誤をしながら、 いま始めている、そういう輪がどんどん広がっています。先ほど、12年にとった実態調査のパーセントが出ていましたが、 ここ2年で本校の支援部という先生、十数人、養護教員の先生も含めて18人ほどいるのですが、その先生を 中心に校内研修も随分進めていただきました。その中で、見えているはず、聞こえているはずと思っていた子供を、 ひょっとしたら見えにくいのかもしれない、聞こえにくいのかもしれない、本当にこちらが伝えようとしていることが、 子供にとって分かりやすいものになっているだろうかという視点をもって、子供を見直すことで、 若干2年後に同じ質問内容でとった調査の項目のパーセントが変わっています。

というのは、特に障害の重い子が増えてきたというよりも、ひょっとしたら、この子も何か手掛かりが必要なのかもしれない。 何か手掛かりはないのだろうかという指導者側の目が変わってきていると思います。 そういうわけで、プリカンファレンスのあとも、呉竹養護学校の学校見学ができますかという お尋ねがたくさんあったそうです。すごい理想郷のように思って来ていただくと、 あれという部分もあるかもしれませんが、一緒に見ていただいて、きっといろいろな取り組み されている学校がまだまだあると思いますので、一緒にいろいろ考えていけたらいいなと思っています。 これから、このあとに続くマニュアルも含めて、一緒に皆さんで考えていけたらと思います。 学校見学については可能な限り受けさせていただきますのでご連絡ください。

○中野
 という補足をしていただきました。今の話を受けて、実際に学校等の中で、 より多くの人たちにこういった考え方を共有していくためにはどうすればいいかということで、 このマニュアルを我々が作って提供するということを考えた、 そのコンセプトについて中邑さんのほうから紹介をしていただきたいと思います。

○中邑
 別に私でなくても、中野のほうからも話ができると思うのですが、 ちょっとこのコンセプトについて座って話をさせていただきたいと思います。 マニュアルと名前が付きますと、こういうことで困っていたら、じゃあ、こうして、 こうしてこうしなさいと。一つの流れがあって、何か結果が出るというふうなものを 考えられる方も多いだろうと思うんですね。我々もマニュアルというふうなテーマで 研究をスタートしたのが、果たして良かったのかどうなのかというのをやり始めて疑問に 思うようになったんですね。実は一つの方法で解決できるということは、 ほとんどあり得ないんじゃないだろうかと。先ほど、私が最初の時間に申し上げたように、 いろいろな道筋があるんだろうと。そこで考えたのが、困っていることをスタートにする ということは良しとしようと。困っているという場合に、一体どういう背景で困っているんだろうか、 そのさまざまな考えられる背景というものをリストアップしようと考えたわけです。 ですから、我々のマニュアルと呼んでいるものの中では、困ったこと、 いま中野さんがスクロールしてくれていますが、いろいろな困ったことが挙がっているわけです。

例えば、発信が分かりにくいからコミュニケーションの糸口がつかみにくいとか。 2番目は、発信はあるけど、意味が分からないとか。3番目はコミュニケーションができるが、 自分では決められない。つまり、自己決定ができないとか。あるいは指示が通らない、 コミュニケーションできないとか。このできないことということを中心に、たくさん項目が 挙げられているわけです。今度、その下には、なぜなのかという、その考えられる原因が挙がってくるわけです。 例えば、「4、指示が通らない」ということになりますと、この4-1、4-2、4-3というのは 考えられる原因なんですね。 こういう原因が考えられるだろうと。それぞれの原因に対して、どういったことを対処として やってみるべきかという項目ですね。要するに、試してみるべきことというのをできるだけ たくさん網羅してみよう。その中で皆さんがこの実体を把握する中で、これを試してみれば、 どう変わるだろうかというふうなことが分かりやすく表示してある。 これが我々が呼んでいるマニュアルというものです。ですから、こうすれば絶対コミュニケーションが とれるというようなことは期待しないでください。逆に、こういうふうな視点を皆さんに持っていただきたいと思います。 視点を持っていただくことによって、いわゆる対象の方との関わり方が変わってくる。 これはそれを繰り返していく中で、誰に対しても同じような見方ができるようになるだろうという。 そういうふうな道筋を示すものだというふうに考えていただければいいかと思います。 以上が今回、我々が作り上げた我々のマニュアルの概要です。あと詳細については実際に具体的に これを示しながら、中野のほうから、よろしくお願いいたします。

○中野
 はい。坂井さん、いいですか。また、中野、坂井の2人で、このマニュアルが どうなっているか。それから、いま限定付きというふうに中邑さんのほうからお話があったのですが、 このマニュアルを当然我々は作りながら限界を多く感じておりますので、その限界を含めて、 これから紹介をしたいと思います。現時点では、まだ冊子として皆さんのお手元に届く形にはなっていないのですけれども、 我々が現時点で作ったものに関しては、今HTML化をしてあります。暫定版については、 今後、近々紹介をする予定なんですけれども、それをきょうはお示ししながら、私たちがどのような 構成で、このマニュアルを考えてきたかということについて紹介したいと思います。 紹介するに当たっては、第1章が何でというやり方をしても、これはおもしろくありませんので、 実際に具体的な問題を取り上げてもらって、それをこのマニュアルを使いながら、どのぐらいヒントが 得られるかという実践を、この場でやりながら紹介をしていきたいと思います。 答えてくれるのは坂井さん。

○坂井
 いやいや、マニュアルが答えてくれるんです。

○中野
 そうですね。それで、実はこのマニュアルの話をしたら、私の同僚が、 昔、知的障害の施設で働いていて、その施設にいたときに困ったことというのはいっぱい あったんだと。その困ったことというのが、果たしてこのマニュアルで。

○坂井
 解決できるかどうか。

○中野
 そうそう。ぜひそれを試させてほしいと、天野さんという私の同僚が来ていますので、 ちょっと天野さんに出てきていただいて、天野さんから坂井さんに質問をしていただいて、 マニュアルを使いながら問題解決のヒントを見つけていきたいと思います。 じゃあ、天野さん、いいですか。

○坂井
 また、難しい事例じゃないでしょうね。

○中野
 きっと難しいですよ。

○坂井
 簡単に。

○天野
 どうも。東京大学先端科学技術センタースタッフの天野と申します。 中野先生のご紹介のとおり、1年ぐらい前まで、重度の知的障害者の入所施設のほうで働いておりました。 そのところから、いろいろ質問できたらいいかなと思います。よろしくお願いいたします。

○坂井
 では、困ったという例を皆さんに紹介をしていただきたいと思います。どういう状況で、 どんなふうに困ったのかということですね。お願いします。

○天野
 そうですね。私が勤めていた施設で、実際にもっていたケースなんですけれども、 脱衣、いわゆる全裸の状態で日中ほぼ1日過ごされる利用者さんがいました。 服を職員のほうで着せると、それには応じていただけるのですが、ものの5分もしないうちに 脱いでしまわれて、それが日中繰り返されるという状況の利用者の方がいらっしゃいます。 それについて質問をしたいんですけど。

○坂井
 裸になられるということですね。

○天野
 そうです。

○坂井
 施設の中でだいたい裸で歩いていらっしゃる。

○天野
 基本的にはお部屋の中で脱ぐのは仕方がないというふうに、職員のほうでは あきらめ半分というところであるのですが、それ以外では、なるべく着ていただくように 援助はしていたつもりです。

○坂井
 分かりました。今のような事例が挙がってきたときに、じゃあ、どういうふうに マニュアルを使うかということなんですけど、まず、裸になっちゃうということで、 いつ裸になっていいのかとか、今は裸になっていけないのではないかとか、いま服を着ている 場合なんだと、裸になっている場合じゃないんだというようなことが、分からないために裸に なっているのではないかなというふうになると、裸になっていいときと、悪いときのことが うまく分かっていないのかもしれない。そういうことで困っているので、分からないから裸に なっているのかもしれないとなると、この中のずっと下のほうへ、もうちょっと下のほうへいって、 ありました。「勝手に行動する(自己管理できない)」という中の「予定がたたない (何をしていいのか分からない)」というところに、ひょっとしたら問題があるのではないか ということで、これをクリックして、そうすると「予定(見通し)がたたない (何をしていいのか分からない)」、ここに解説が書いてあります。「知的障害をもつ人や自閉症をもつ人の中には、 パニックなどに代表される困った行動をしてしまう」。

例えば、服を脱いでしまうという困った行動をしてしまう人がいる。「この原因の一つに見通しを もつことができないということが考えられる」。というのは、裸になっていい場所と、 裸になって悪い場所であるとか、裸になっていい時間帯と、裸になったら困る時間帯が分からない ということですね。なぜかというと、お風呂に入るときには裸になれといって、なぜ、 部屋にいるときには裸になったらいけないのかということが分からないということです。 そこで、誰もがやっぱり俺は裸になりたいんだというようなこと。「多くの場合、それは自由な 時間ではなく、誰かに何かを期待されている場合だからである。だから、 何をしてよいのかが分からないことで不安になる」。つまり、今は服を着てほしいということを 期待されている時間帯なので、それが問題となるのではないかということです。じゃあ、 ここでC-2で「情報を構造化する」というものがあるわけです。ポイント集のC-2、 「情報を構造化する-情報を構造化することは、分かりやすく伝えるためにはとても大切なことである。 構造化は、情報を整理してその人に分かりやすく伝えるということである。構造化には、 物理的な構造化、スケジュールの構造化、課題の明確さ、ルーティン、視覚的な明瞭さがある。 空間、時間などを分かりやすく伝えることで、何をするのか、どこでするのか、どのようにするのか、 終わったら次は何かをその人に分かりやすく伝えるということである」ということです。 さっき、養護学校の先生が、事例の中で見通しをもたせるために、いろいろご飯を食べるときに、 あらかじめ分かるように伝えるということがありましたけれども、分からないと不安になる。 そして分からないと何をしていいのか本当に分からないわけですから、困った行動をしても平気である ということになるわけです。例えば、この中に「構造化には、物理的な構造化、スケジュールの構造化、 課題の明確さ、ルーティン、視覚的な明瞭さ」と書いてありますけれども、物理的な構造化ということでいえば、 いまの文でいけば、裸になっていい場所と裸になっては困る場所を、明確に場所によって分けるということです。 例えば、お風呂の脱衣所に行けば、そこで服を脱いでいいわけですけれども、出るときには裸になってもらっては 困りますという、場所によって明確に分けてみませんか。それから、スケジュール。今は裸になってもいい時間帯ですよ。 お風呂に入るから裸になってもいい時間帯。他のときは、裸になっては困る時間帯ですよということを 伝えるということになります。ちょっと戻っていただいて、では、その中で、「写真とシンボルの利用により 1日のスケジュールを分かりやすく伝える」ということで、事例の中のT-28を。そうすると、写真やシンボルの利用により 1日のスケジュールを分かりやすく伝えて見てはどうだろうかというアイデアが提案されている。 この中にはその中の代表的な事例。いま、裸になって困るんですという方の事例が載っているわけではありませんが、 このように「養護学校の高等部に在籍する自閉症をもつY君」の事例ということで、 皆さんがどこででも思い浮ぶような、目にしたことがあるような、代表的な事例が書いてあります。 「次の活動に移る場合には、必ず誰かの指示が必要であった。その指示の出し方が、教師によって まちまちな場合、どの指示に従ってよいのか分からなくなり、混乱してしまう」。 そういうことから、スケジュールを確認することができるようになったら、 「落ち着いて活動に取り組むことができるようになり、今まで活動のたびに出されていた指示はなくなり ました」というようなことになっているわけです。 じゃあ、お風呂というのを入れて、その横に裸になってもいいよという何かシンボルをつけて、 あとは服を着ている写真をずっと並べておいたら、ひょっとしたら、この方の場合、 この時間帯は裸にはなるけれども、この時間帯は服を着ているということで過ごすことができるかもしれない というようなアイデアが一つ出てくるということになるわけです。もう一回元に戻って、 だけどひょっとしたらスケジュールじゃないのかもしれない。そのときには4-4です。

つまり、服を着てくださいという指示が理解できないのかもしれないということになるわけです。 服を着てくださいという指示が理解できなくて、裸になっている場合がある。指示が理解できない。 「コミュニケーションの障害をもっている人たちの場合、伝えられていることが理解できないために、 指示が通じないことがある」。要するに、服を着てくださいということは、このときも服を着てください というのが伝わっていない。「このような場合、その人に分かるように伝えるための工夫を しなければならない。音声でうまく伝えることができないときは、別のモダリティー、 つまり視覚に訴えて伝える工夫をすれば」どうだろうか。それから聴覚に訴える、 もっと優しい言葉で訴えるということも含まれるのでしょうけれども、この中では 写真やシンボルを使って伝えるようにするという工夫が一つ書いてあります。 ポイント集のC-1、「情報を分かりやすくする」ということで、「言葉を聞いて分からなくても 絵にすると分かる人がいる」ということですね。「視覚情報の音声化、聴覚情報の視覚化など、 モードを変換することによって情報理解を促進することはとても重要である」。 それから、「一度に多くの情報を利用することができなくても1つ1つの情報なら理解できる人がいる」 というようなことで、こういうような情報を分かりやすくするための工夫をしてみてはどうですか。 じゃあ、どういう事例があるのかということで、適切な提示による事例がここにいくつかあります。 「適切な提示により本人が選択肢を理解する」であったり、「同時に見せることにより本人が選択肢を理解する」、 「写真の利用により本人が指示を理解する」。じゃあ、T-22にいってみましょう。「T-22、写真の利用により本人が 指示を理解する」、対象児は自閉症と知的障害をもつ5歳の男の子。次の活動を用意することが分からなかったのだけれども、 「次の活動を示すホットケーキの写真を用意し、ホワイトボードをJ児の前にもってきて、 『片づけるよ』と言って写真を貼り、『片づけたら、次はホットケーキだよ』と言って」伝えましたという例が書いてある。 なら、今の場合でいえば、ひょっとしたら服を着ている写真を撮っておいて、手に持っておいてもらったりすれば、 ひょっとしたら、「ああ、俺はいま服を着てこなあかんねんや。」というようなことが分かって、 うまく伝えられるかもしれないというふうに、このマニュアルを使っていくわけです。どうでしょうか、天野さん。 そういうようなアイデアというのは、このマニュアルでちょっと試してみられそうな感じはしませんか。

○天野
 そうですね。一つの行動に対して、複数の方法がこれを引くことによって分かるということは、 その中で本人にあった援助がもしかしたら見つかるかもしれないということはよく分かりました。

○坂井
 そうですか。ということで、中野さん、どうしましょう。

○中野
 天野さん、本当にそれでいいの?ちょっと緊張しているからといって遠慮しなくていいんだよ。 この間、飲み屋で一緒にこの話をしていたときに、もっとすごい突っ込みをいろいろしていたじゃないですか。

○天野
 素晴らしいマニュアルですね。ぜひ、購入したいと思います。

○中野
 例えばね、天野さんが言っていたように、裸になりたいんだったら、 裸にするというのが自己決定じゃないのとかって話をしていたじゃないですか。

○天野
 すいません。普段、心臓に毛が生えていると言われているんですけどね。 ノミの心臓なもので、ノミの心臓に毛が生えていても、ちょっとあれなので。皆さんの反応として、 これぐらいがちょうどいいですね。まあ、いいでしょう。すいません、脱線しました。 じゃあ、実際にどのように。

○中野
 今の質問にちょっと答えてもらえますか。裸でいたい人、裸でいるのは自己決定。

○坂井
 これは自己決定や自己選択を支援するセミナーなので、僕は裸になりたいんです ということで、裸になるという自己選択や自己決定があっても、それはそれでいいので、 逆に裸になるというカードを選択することができるような環境をつくってあげて、 裸で僕は歩きたいということができたほうがいいのではないかという案もあるかもしれないということですね。

○中野
 そうですね。

○坂井
 これはですね、実はヌーディストビーチなんかに行くと、それはきっとオーケーなんでしょう。 それから、服を着るという習慣をもたない民族、文化のところへ行った場合には、 それはきっといいんだろうと思うんですけれども、日本の社会で、この町の真ん中で天野さんが 裸で歩いたら、それは皆さん、すぐあの人を排除してくださいということになるわけですね。 場所によって、それは違うと思うんですね。自己選択や自己決定ができるんだけれども、 お互いに自己選択、自己決定をしながら歩み寄らないといけないものというのは文化の中に必ずあるわけで、 それをやっぱり理解していただくために、いろいろな方略を考えたり、方略の振る舞い方を私たちのほうが提案したり、 提供したりするということはとても大切なことだと思うので、ここでいう、裸でいるという自己選択をどこででも、 どの場所ででも認めるということについては、ちょっと私は抵抗があります。

○中野
 天野さん、どうですかね。

○天野
 そうですね。やっぱり現場にいた人間としては、正直に言って半分半分なんですよね。 これのマニュアルが当てはまるだろうというのもありますでしょうし、当てはまらない事例もあるだろうというのは、 ずっとこういうのを示されても、実際は改善されるケースはもちろんあるのでしょうけれども、 でも、うちのケースは違うのではないかというふうに懐疑的にみる職員も、他の職員からもそういった意見が出てきて、 実際はなかなか職員一致して援助に当たるというのが難しくて、少しずつやっていって、事例を見せていく、 それを積み重ねていくということしか、本人を変えるにも、周りの介助者ですかね、援助をする人も納得しながら 進めていくにはそれしかないのかなと。非常に複雑な思いをしながら、実は聞いていたところです。

○坂井
 じゃあ、今のような場合というのがあると思うんですね。いろいろな人によって、 例えば、坂井はこんなふうに思ったけれども、私は実はこうじゃないかと思うんだと。実はこれもこれでできるんですね。 最初のところに、先生、ずっと上のほうに上がってもらえますか。はい、ストップです。実はこの中に、ずっと見ていきますと、 「選択肢を知らない」というようなのが出てきます。ひょっとしたら、その方は、実は着たい服があるのかもしれないけれども、 自分で服を選べないので、いつも出されてしまった服を着ているから困って、この服は着たくないと思って脱いでいるのかもしれない というふうに考える人は、中にはいるかもしれませんね。じゃあ、選択肢が理解できていないのかもしれない。 「知らないものは誰もがなかなか選べないものである。例えば、レストランのメニューに知らない料理があったときに、 何か分からないまま注文する人はいないはずだ」。その人は実は服を選択したり、パンツを選択したりするような経験を しているだろうかということを考えてみると、どうもその選択肢、だから、「違ったパターンが苦手な人にはあまり 新しい選択肢を提示しないほうが混乱しなくていいという人もいるが、選択肢を増やしてみると新しいパターンが生まれる 可能性もある」。「どっちの服をきょう来ますか?」というようなことをちょっと提示したら、自分で選んだ服だったら着れるかもしれない。 そうしたら、選択の練習をしたらどうだろうかということになって、ポイント集のA-5-4、「選択の機会を増やすには」、 選択の機会を増やすには「少しずつ新しい選択肢を導入していく。新しい選択肢は経験したものでなければ分からないため、 試して選ぶという順序が大切である」というように、選択をするということの方法が書いてあります。 これを服に置き換えて、選択するような機会をその方に持ってもらうことができれば、ひょっとしたら自分で服を着る。 その服は大好きなので、ずっと着ているという可能性もあるのだろうと思います。ここに書かれているもの、 また事例に戻ります。この中に「体験により新しい選択肢を教える」、「デジタルカメラの利用により本人の 語彙を増やす」、こっちへ行きましょうか。はい、デジタルカメラ。そうすると、「デジタルカメラの利用により 本人の語彙を増やす」というのが出てきて、中学部の子供さんの事例、「写真やシンボルを使ったコミュニケーション用の ボードを使った指導を行い、必要時にボードから要求などを表すシンボルカードを取って、母親や父親のところに見せにくる ようになっていた」。その方の事例が書いてある。その方はずっと遊びに行っていたわけですけれども、いつもの S店の写真カードを持ってきたので、お母さんが連れて行ったら、そのときは駐車場で大きなパニックを起こした。 お母さんのほうは、車から降りない、パニックになってしまったので、「何で、あんたが選んだカードのお店に連れていったのに、 こんなことになったのよ」ということになったわけで、分かっていなかったのかもしれないと思ったわけです。でも実は、 そこの「家から行くことができる他のS店の写真も用意するようにした。その結果、自分が行きたいS店の写真を選択して母親の ところにもってくるようになり、それまでのパニックがなくなった。つまり、S店といっても、R男には行きたいS店があったということであり、 語彙が乏しかったために、行きたいお店を表現することができなかった」。つまり、この方の場合には、そのS店を選んだんだけれども、 俺の行きたいS店はあそこだよと。結構、重度の方なんですね。そういうふうに思っていらっしゃった方がいる。 じゃあ、ちょっと写真カードで服を選択肢の中に入れて試してみたらどうだろうかと。それぞれ何かを試してみるような アイデアのもとみたいなものが、ここに入っているということですね。だから、いろいろな方が、私も実はこのマニュアルの中だったら こう思うんだけどとか、こうだと思うんだけどと、誰が決まった人がこれを使うわけではなくて、その人の視点で使っていただいて 理解していただくというふうにすれば、その人なりの試し方があって、僕はいいんじゃないかなと思っています。

○中野
 天野さん、どう?きっと、これを問題をすぐに解決してくれるドラえもんのポケット みたいに考えてしまうと、ちょっと不満足かもしれないんですが、今のようないろいろな可能性 というのは、施設におられるときに考えられたことがありますか。

○天野
 そうですね。考えたいとは思うんですが、やっぱり、施設というのは日課がありまして、 朝が来たら起きてもらう。起きたら、ご飯を食べてもらう。ご飯を食べたら、午前中の活動へ行く。 それが終わったら、また食事、お風呂、今度は寝る準備ということで日課が詰まっていますし、 そういうのをしないと、また周りの職員が勝手なことをしてというような、ちょっと愚痴が半分なんですけど。

○中野
 半分じゃなくて、それは愚痴。

○天野
 やっぱりそういうのがありまして、なかなか他のことをやる余裕というか、 そういうところまで行き着かないで、問題行動だけに、それをどう問題がないようにするか というところだけに視点がいってしまいがちだったなというのは、仕事を辞めてから分かるように なったというのが私の感想です。

○中野
 はい、ありがとうございます。坂井さん、どうしよう。また、別の人に聞いてみる?

○坂井
 すいません、時間何分まで。まだ、大丈夫ですか、分かりました。じゃあ、会場から、 こんな事例だったら、どうするのというのをマニュアルでアイデアを出してみたいと思いますが、 どなたか来ていただけませんか。いらっしゃいませんか。

○中野
 別にここで漫談をしろとは言いませんので、天野さんのようにですね。

○坂井
 来ました。こちらに上がってもらったほうがいいですか。

○中野
 そうですね。前のほうに、よろしくお願いします。

○坂井
 よろしくお願いいたします。

○田中
 別にたいしたあれではないんですけど。

○坂井
 自己紹介をちょっとしていただいて。

○田中
 姫路から来ました田中と言います。書写養護学校です。きょう来た目的は、 一人の子供なんですが、声は出ないんですね。何かしてほしいときにピンピンとやったり、 ピンピンとやるわけです。もう一つはキュッとこうやるわけです。

○坂井
 今の気持ち良かったですね。

○田中
 それが嬉しいときもやるわけなんです。自分が何かしてほしいときもやるわけです。 今、その子供に絵カードか、何かのコミュニケーションをさせたいなと思っているんですが、 何をどう取っ掛かったらいいんだろうというので困っているんです。

○坂井
 今のでいえば、発信するための手段が分かりにくい方だと、この辺にいきましょうか。 発信行動は実は未熟なのではないかというふうに考えるわけです。「障害のある人の発信行動が はっきりしない場合、それを引き出すように訓練を行うか、あるいは、その機能を代替する道具を 用いる。さらには、その人の発信レベルでコミュニケーションできるように周囲が合わせるといった 方法が考えられる。ここでは、主として代替アプローチを紹介するが、訓練か代替アプローチかという 二者択一ではなく、二つを併せながらその人の意思を最大限に引き出す努力が必要である」 ということで、じゃあ、この場合、ポイントのB-2をちょっと見てみようか。B-2は「言葉で指示しても 理解できない人は大勢いる。そんな人たちに対しても多くの人は言葉で訴えようとしている。 残念ながら、知らない外国語を何度聞いてもなかなか理解できるものではない」。 ここまで読んだら、ひょっとしたら、これはちょっと違うんじゃないかなって。 この事例ではないかもしれないというふうにして戻るわけです。違う、違う、これはちゃうかったわ。 じゃあ、今度はこっちの事例にはないだろうか。事例集のT-1。 「ノンテクコミュニケーションの技法を利用する」。ノンテクコミュニケーションの技法。

例えば、「補助手段(指差し、身振り等)を教える」とか、「視線でコミュニケーション」を 教えるとか、「Yes/No」でサインを教えるとか、「補助手段を教える-音声等、 他人に理解できる形での発信手段を持たない場合は、直接行動で訴えることがある。例えば、 空腹なため他人の食べ物を勝手に奪い取る人もいる。そのことが誤解やトラブルを生む一因となる。 もし、身振りや指差しで訴えることができたら、周囲の人は理解してくれるだろう」。こうやって、 髪の毛を引っ張るというような行動が、実は勝手に取っているというような行動と同じだと考えると、 それが先生に対して、何でおまえは髪の毛を引っ張るんだとか、お友達のを引っ張るんだという ことになるから、じゃあ、身振りや指差しなんかも教えてみたらどうだろうか。戻ってみて、 じゃあ、その中の補助的代替手段のここですね。機能的に使える身振りを教えたらどうだろうか。 これは聴覚障害の人の事例が書いてあります。自閉症の女の子ですね。「地元の幼稚園に通いながら、 幾つかの相談機関に通っている。捕聴はされていて、声に振り返ることはできるが、 話し言葉の理解は難しい。理解と表出の代替手段として、身振りと写真・シンボルを用いていた」 ということですね。

つまり、伝えるときにはそれらを併用して伝えたり、それから表現手段、 この人の「表現手段はクレーンと物を渡しての要求であり、身振りは絵カードを見ると自発的に できる50個を超えていたにも関わらず、コミュニケーション手段としては使えていなかった」。 髪の毛を引っ張るその方が、絵カードやシンボルは理解できているんだろうか。じゃあ、 それが理解できているとしたら、それを表出にうまく使うことができないだろうかということで、 「ある日、いつものようにお気に入りの『ガイコツ』の玩具を持って、ZちゃんはSTの所に訓練に来た。 STは試しに、その『ガイコツ』を取り上げてみた。始めのうちは力尽くで取り返そうとしていたが、 STはなかなか返してくれそうにないのでZちゃんは泣きそうになった。STはこのことをよく見ていたので、 『ガイコツ、ちょうだい』の身振りを促してみると、Zちゃんは模倣した。そこで、玩具をZちゃんに返した。 しばらくして、また『玩具を取り上げる』→『身振りを模倣させる』→『返す』を何度か繰り返した。 始めは嫌がっていたZちゃんもやり取りそのものが楽しくなり、身振りの意味も理解できるようになったようだ」 ということですね。だから、何か好きなことみたいなことを介して、髪の毛を引っ張りそうになったときに、 いやいや実はそうではなくて、このシンボルを渡してくれたら、これをもらえるんだよというようなところを、 繰り返し行うということを取り組んでみたらどうだろうかということになります。そこで中邑さん、 補足を。

○中邑
 関係のないところから、主任研究者として補足しますと、実はここで挙がっている 事例というのは、ごく特殊な限られた事例で、本当は世の中に何百、何千とそういう事例が あるんだろうと思うんです。ここで恥ずかしながら作り上げたマニュアルというのは、我々が この2年間で、何人かで作り上げたもので、収集できる事例にも限りがありまして、 まだまだ当てはまらないものがたくさんあるんですね。ですから、いま紹介していただいたような 事例も、実はこの中に取り入れながら、今度新しいものを作っていかなければいけない。 ここではいま身振り、手振りといったような身体表現によっての代替というのを述べられていますが、 実はこの代替機能の中には音声出力装置、VOCAと呼ばれるものを使うとか、あるいは絵カードを 使うという、こういう方法も実はあり得るわけです。そういうこともここの中に入るべきなんですが、 あまりにも多すぎて書ききれていないという部分も実はあるのが、このマニュアルのまだ不完全な 部分であるわけです。

先ほどの事例でいいますと、こうやってピンピンとこうやって、 ある人を呼び出すという。実は音声がなければ、みんなこうやってたたくとか、何かするしかない わけですね。こういう人にとってみて、カードを示して何かをというのは非常に難しい。 ジェスチャーで人を呼ぶというのは難しい。なぜかというと、うしろを向いて気付いてくれないからですね。 こういう人にとって有効なのは、VOCAと呼ばれる装置ですね。隣にも展示してありましたが。 ポンと押したら誰かが振り向いてくれる。こういうものを遊びを介しながら、この機器を使う意味を 教えていくということが実は重要な方法になるわけです。例えば、ある装置をポンと押したら、 その装置が「おーい、みんな」というと、みんなが手をあーと振るという。この中でこの装置を 押せば人が振り向くんだという関係性というものを理解できれば、実はこの機械は便利なものとして 使われていくだろうということになるのですが、実はそこの部分の詳しい機器の使い方そのもの については、このマニュアルの中には、まだ十分入っていないんですね。音声出力装置を使い ましょうとか、何かしましょうというレベルで、今後、その事例の中でそういうことを紹介する というものを加えていかなきゃいけないかなと思っております。それが以上、補足なんですが。

○坂井
 実は、この中の下のほうに参考文献が載せられていて、こういうようなことについては、 こういう本を見ればあるんだなということが、本の紹介もあって、その下にはローテクの コミュニケーションエイドだとか、ハイテクのコミュニケーションエイドなんかの使い方についても、 少しこれには触れられています。いかがなものでしょうか。まだまだですね、やっぱりね。

○田中
 はい、やっぱりね。だいたい、いま言われたことは、今後やってみようと実は職場で 話していたところなんです。

○坂井
 ああ、そうですか。

○田中
 だから、もうちょっとというところを突っ込んでいただければありがたいなと。

○坂井
 じゃあ、また、そこで書写養護の先生の事例をホームページにでも書き込んでいただいて、 こうしたらうまくいきましたというのが出たら、これは失敗だったというのもありましたら、 お知らせいただければと思います。ありがとうございました。すいません。こういうふうにして マニュアルを使うわけですけど、中邑先生、ずるいですよね。

○中野
 ずるいよね。

○坂井
 坂井はマニュアルでしゃべれと言っておいて、自分はマニュアルにないことをぺらぺらと、 とうとうとしゃべってですね。お前はマニュアルから逸脱したらいかんぞと言われたから、 僕はまじめにマニュアルに沿ってやっていたわけですけど。そういうことで。

○中野
 じゃあ、主任研究者の中邑さん、このマニュアルはどうやって使えばいいんですか。 どういうふうに使うんですかね。こんなもの役に立たない。

○中邑
 いま先生がおっしゃったんですが、先生はこの五つのポイントをつかんでいる というふうにおっしゃってくださったわけですね。これは本当にすごいことだろうと思うんです。 いま先生がおっしゃったように、これらの試してみるべきポイントというか、その方向性を 皆さんが今の話を聞いて、これとこれとこれがありそうだなと思ったかというと、 実はそうじゃないんだろうと思うんですよ。それを気付くための素材だと思っていただきたいと思います。 これから、このあとお話をするのですが、皆さんと共に、この中に、いわゆる具体的な事例を詰め込んでいこうという 作業が実は残っているわけです。私としては実はそういう認識でこのマニュアルを使っていきたいと 今の段階では思っております。

○中野
 そういう話ですよね。

○中邑
 非常に優等生的な。ですから、きょうは格好が違うじゃないですか。

○中野
 何をおっしゃいますか。

○坂井
 もうだいたい時間になっちゃったんですか。あと一方。はい、どうぞ。怖いわー。 だんだん怖くなってきた、俺。このマニュアルの不備がだんだんあらわにされていく。 大丈夫かなー。

○古野
 富山から来ました高志養護の古野といいます。最近、付き合いだしたお子さんで、 全盲のお子さんで、どういうふうにタイムスケジュールを伝えてあげればいいのか分からなくて、 4人いるんですけど、他の3人は絵カードとか、写真カードとかを使って伝えていて、 一斉に行うものですから、彼はそれを黙って聞いているうちに、だんだんこうやっていっちゃう という感じで、いまビックマックを使って、ビックマックはどういうものなんだというのを おもちゃにつないだり、声を出したりして、次は何々をしますというのは、鳴らすんだけど 連続して鳴らして、何か分かっているのか分からないのか、ちょっと分からない様子です。

○坂井
 はい。要するに視覚障害をもっていらっしゃる方に、どのようにして次の活動を 知らせますかということですね。これは「指示が通らない」、うまく指示が通らない。 その方は見えていないわけですよね。じゃあ、見えていない人に対してどうするか。 「私たちは視覚によってさまざまな情報を瞬時に得ている。例えば、ここはどこなのか。 そこにいるのは誰でどんな表情をしているのか。その人は何を持っていてどこに行こうとしているのか。 視覚に障害があるとこれらの情報を得ることが難しくなる。指差しや相手が差し出した物を見る。 表情やしぐさ、身振りを確認する。人のコミュニケーションは、言葉以外の視覚的な情報に支えられていることも多い。 視覚的な情報が十分に入っていない場合、コミュニケーションにも大きな影響を与える」ということですね。 実際に見えていらっしゃらないということは分かっているんですよね。

○古野
 光覚程度というのを書いてはあるんですけど、真っ暗にして光遊びなんかをするんだけど、 全然、反応が見られないので、私のほうとしては見えていないのではないかなと思います。

○坂井
 分かりました。ここまで来たら、マニュアルの操作の仕方を専門家の中野さんのほうに。 視覚ですよ。

○中野
 それはマニュアルに書いてないわ。残念ながら。実はここの中にあるのは、 見えているかどうか分からないというケースに関して、見えているかどうかというのを チェックして見る方法というのを書いてあります。実際、見えていないというふうに診断されている 方の中にも、ある程度視覚を使える人たちというのがいて、もし、色の区別がつけば、VOCA等でも使えるように なっていくんですけど、それがさらに難しいという場合にどうすればいいかという話については、 残念ながら、まだこのマニュアルの中には十分に盛り込めておりません。またぼろが出ましたね。

○坂井
 今から、このマニュアルに書き加えることを私が訴えさせて、いやいや、解決して 帰りましょう。例えば、視覚で物を見ることが難しい場合には、時間割の場合にするべきことの 内容を具体物を貼り付けたもので、その実物を触って、例えば、次は体育館に行くよというと、 体育の帽子を必ず見せる、触らせるとか、水泳に行くときには、必ず浮き輪を触ってから行くとか、 給食のときにはスプーンとお箸を触るとか、ガチャガチャという音を聞くとかですね。 食器の音を鳴らすとか、そういうふうな伝え方をしていくことで、やっぱり他の方には視覚的な シンボルで情報を伝えているんだけれども、その方には具体的なものや音、音も必ず体育へ行くときには、 体育館の中の足踏みをしている音を聞かせてから行くとか、水泳のときには水でバチャバチャしている 音を聞かせてから行くとか、給食のときにはさっきの食器の音ですよね。さっき中邑さんと話をしていたのは、 においなんかも、ひょっとしたら使えるかもしれないよねって。保健室へ行くときにはちょっとオキシドールの においをさせて、ちょっとここへ行くよと言って連れて行くとか。注射と勘違いされたら困るわけですけど。 最近はいろいろなにおいですよ。給食の時間にはちょっと給食のにおいを嗅げるようにするとか、 そういうふうに視覚以外の情報を前もって予告して伝えていかないといけないと思うんですけど。 どんなですか、中野さん。

○中野
 今の反則ですね。マニュアルに書いていないことを言うんだったら、俺だって言えるけど。 それはひどい話ですね。実はマニュアルに盛り込めていないことがたくさんあるのは私たち自身も よく分かっておりまして、事例のところでお話ししましたけれども、誰がその方に関わりに来たかということを まず分かるところからという出発点というのが重要だという話を事例でさせていただきました。 事例のときにちょっと時間がなくて紹介しなかったのですが、 例えば、これは呉竹養護さんで使っておられる、ある人を示すときのサインにしているんですね。 こういうリングをしていると、それを触って何とか先生、中野先生が来たなとかというのが 分かるように。そこから組み立てていかなければならないことというのはございまして、 その部分については、残念ながらまだマニュアルの中には盛り込めきれていない。 こういったものをぜひ蓄積していこうという話になるわけですね。 じゃあ、どうもありがとうございました。結局、坂井さん、マニュアルはこのままじゃだめだね。

○坂井
 だめですね。きょうは3戦全敗でしたね。どうしましょう。頑張って蓄積しましょう。

○中邑
 全敗ということはないと思うんですよ。主任研究者の言い訳ですけど、全敗とは 言えないと思うんですね。実はこのマニュアル、HTMLというか、そういう言語で書きました、 ホームページ上で公開していこう。つまり、その中にどんどん蓄積できるタイプにしていこうというふうに 思っていますので、これから完璧なものに近付けていく可能性というのは実はあるということで、 言い訳になるかもしれませんが、これをどんどん充実させていくのが、ここまで仕上げた我々の 責任だろうと私は思っておりますから。

○中野
 はい、はい、私も大賛成です。結局、これは誰かが解決策をつくるというよりも、 みんなでノウハウを蓄積していって、同じことを何回もどこかで繰り返すのではなくて、 ノウハウが蓄積されていけば、どんどん解決が早くなっていくというふうに考えればいいんですよね。 じゃあ、最後、締めていただけますか。

○中邑
 いえ、まだ最後ではありません。このあと10分ほど休憩をはさみまして、15時30分より 最後のセッションに移っていきたいと思います。あと十数分、休憩をお取りいただきたいと思います。 どうもお疲れ様でした。

○中野
 どうもありがとうございました。

参考資料:

http://www.bfp.rcast.u-tokyo.ac.jp/nakanoy/article/self_determination2/index.html