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話題提供2

井上剛伸
国立障害者リハビリテーションセンター 福祉機器開発部 部長

スピーチをする井上剛伸氏の写真

国立障害者リハビリテーションセンターの研究所で福祉機器開発部というところで仕事をしております井上と申します。

スライド

 私は、22年目に入りましたけれども、福祉機器の研究一本でずっとやってきています。
今日のイ先生のお話の中にもありましたけれども、こういう福祉機器、アシスティブテクノロジーが生活の中でしっかり使われることによって、生活の向上ですとかいろんなことができてくるというのを本当に目の当たりにしながら、日々、ユーザーの方々、利用者の方々からいろいろなものを学んで仕事ができているなと思っております。
もとは機械工学が専攻ですけれども、福祉機器の研究というのはエンジニアリングだけではダメでありまして、気がつくと心理学をかじってたりとか、経済の諸君の力を借りてなんですけれども、経済学の研究もちょっとかじっいったり、社会学系のこともやったり、当然、医学とかそういうところの知識も入れながらやっております。何か、自分の専門は何と聞かれたら結局、最終的には「福祉機器です」という、そういうことを最近やってきているというのが私の自己紹介です。

 国立障害者リハビリテーションセンターの福祉機器開発部でどんなことをやっているかというのを少しお話しさせていただきます。
ここに書きましたけれども、オーファン・プロダクツというのが一つのキーワードです。
これはユニバーサルデザインと対抗して作った言葉ですけれども、利用者の数が少ない、市場が少ないという、いわゆる狭い意味での福祉機器の非常に大きい問題なので、そこについて、社会全体で考える問題だろうという意識の中で、こういうオーファン・プロダクツに関する研究開発をやろうと。それによって障害のある方、高齢者の方の尊厳の意義とか、自立と社会参加の促進とか、QOLの向上というものをいわゆるミッションとして挙げております。

 ここに三つキーワードを挙げております。「人」と「生活」と「もの」、この三つがキーワードです。先ほども話しましたように福祉機器という非常に狭いものを研究対象にしていますが、そこを考えるにやはりどういう人が使っているのかということと、その方が生活している環境も含めて、どんな生活をしているのか、社会制度なども入ってくると思います。
そういった広い知識の中から福祉機器、使えるものを一生懸命考えようというのが我々の方針であります。

 ここに柱が4つ立っています。柱といたしましては義肢・装具、移動支援機器、情報支援機器、あと最近やり始めておりますが認知症のある方の支援機器という4つの柱からなっています。
それを開発と評価という、これが研究の手法ですが、横串でグサッと差すと、しっかりとした土台ができる。その上に、障害のある方、高齢者の方の活動と参加を支えようということをやっています。 もう一つは、研究の中に当事者の方をどんどん取り込んでいこうと。ですから障害のある方々と一緒になって研究開発を進めていきましょうなんていうのも、大きな一つの方針でございます。
もう一つは、私どもまだ厚生労働省に直でついているセンターでありまして、そういう意味では少し、日本全体の行政を引っ張っていこうという取り組みもやっておりますし、もう一つは、こういう狭い範囲の技術開発、福祉機器というものですが、先ほどのイ先生の発表には大企業がいっぱいついてきているというお話もございましたけれども、そういうメインストリームの技術開発もうまくリンクしながら、トータルでそういった技術を考えていこうというところもあっています。

 今、我々が一生懸命見ているのは、今までの福祉機器では対応できないような重度の障害のある方向けの福祉機器というのを積極的に考えていこうという方向性です。
研究のアウトプットといたしましては、論文を書くというのが一つありますが、それだけではダメでありまして、こういうちゃんとした機器の開発をするですとか、こういったものをISOとかJISという規格への出力ですとか、あとは厚生労働省で独自に安全性の基準を作っていたりしますので、そういうものへの貢献、それともう一つは適合ですね。先ほど、イ先生の中ではランチョ・ロス・アミーゴスという病院が出てまいりましたけれども、ああいったようなところでやっている一人ひとりの方へ福祉機器を合わせて適合して提供していくという、そういうところも含め、病院もございますので、病院との連携の中でそういうこともやっております。

こんなことでやっていますよというのを見ていただくのに、一本だけビデオをご覧ください。

(ビデオ再生)

 これは先ほども出ていましたが音声認識の技術というのは、いろんなところでできていますけれども、なかなか我々使わないですよね。カーナビについていたってほとんど使っていないし、電話についていてもあまり使っていない。ただこういうアテトーゼ型の脳性マヒで、かろうじてお話ができるような方、そういう方の音声をちゃんととらえてくれれば、いろんなことができるんじゃないかと産業技術総合研究所といういわゆる最先端の研究をしているところとコラボレーションをして、3年間で技術開発をやって、そういう不明瞭な音声をしっかりと認識をして、電動車いすを動かす。これは地域の運動会に出ているところです。80m走ですね。ご自身も1年間、うちのグラウンドで音声認識の車いすを動かす練習をしていただきました。我々は技術開発を一生懸命やって、どうにか最後のゴールにまでたどり着きました。この最後に「やったな」と声が出たということを少しご紹介しました。以上です。