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精神障害者にかかわる取り組み テキスト

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【緊急レポート】精神障害者にかかわる取り組み

浦河べてるの家

2011年7月2日

精神保健福祉士 池松麻穂  

メンバー 吉田めぐみ

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この度の東日本大震災により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます

浦河べてるの家一同

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北海道の地図と浦河町の場所の表示

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浦河町の概要

  • 人口 約14,000人(2011年現在)
  • 町内には約300の牧場(生産・育成)があり、4,000頭以上のサラブレッドが駆け回っている。
  • 良質のダシ昆布「日高昆布」や夏から秋にかけてのスルメイカは特産品で、昆布は北海道の生産量の約20%を占めている。
  • [課題] 過疎化・産業の衰退・歴史的差別(アイヌ民族問題)

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べてるの家の組織

仕事の場

生活の場

ケアの場

 

(有)福祉ショップべてる

福祉機器事業部

ワークサービス事業部

社会福祉法人 浦河べてるの家

就労サポート

  • 就労移行
  • 就労継続B
  • 生活介護

ニューべてる

  • 日高昆布製品製造
  • グッズ製造
  • 通信販売

カフェぶらぶら

  • 喫茶・店頭販売

べてるセミナーハウス

  • 麺製造
  • 清掃・リサイクル

研修・オリエンテーション

生活サポート

グループホーム

ケアホーム4棟

共同住居5棟

NPO セルフサポートセンター浦河

ピアサポーター育成

当事者研究

協同労働

  • むじゅん社
  • けいとくらぶ・・・などなど。

回復者クラブどんぐりの会

交流活動権利擁護活動

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2011年3月11日@浦河

14:46 震度4、約6分間の揺れ

14:49 津波警報発表→浦河町内 避難勧告

14:55 浦河町災害対策本部 設置

15:19 津波第一波(マイナス20センチ)

15:30 大津波警報発表( 北海道及び日高振興局災害対策本部設置 )

15:40 浦河町内 避難指示

16:42 津波第二波(2メートル79センチ)最大波

19:30 浦河港 満潮

・・・その後

3月12日 浦河町内 避難指示解除

3月13日 浦河町災害対策本部 解散

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写真提供:日高報知新聞

浦河港津波時の写真

津波後の様子の写真

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浦河町 被害状況等

避難人数(最大時):497名

被害状況

浦河港 自動車34台、トラック7台冠水、港内転落6台、船2隻沈没、1隻転覆、38隻横転

湊湾内にコンテナ、魚箱7,000函、漁具流出

住宅2棟、倉庫、事務所等床上浸水28棟・・・など。

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それぞれの位置を表した地図

(福)浦河べてるの家

(有)福祉ショップべてる

(NPO)セルポ浦河

共同オフィスいいっ所

元祖べてるの家

日赤病院内介護用品店

福祉ショップべてる院内事業所

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2011年3月11日 @べてる

14:46 震度4、約6分間の揺れ

3つの活動拠点・4つのGHより 随時 避難開始

14:49 津波警報発表→浦河町内避難勧告

15:10頃 それぞれの避難場所に到着

15:19 津波第一波(マイナス20センチ)

15:30 大津波警報発表( 北海道及び日高振興局災害対策本部設置)

15:40 浦河町内 避難指示

16:42 津波第二波(2メートル79センチ)最大波

19:30 浦河港満潮

避難グループ随時解散

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避難の様子の写真

避難所での様子の写真

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べてる被害状況等

避難人数(最大時):約60名

被害状況

物的被害なし

精神科入院4名 

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私たちが津波防災に取り組む理由

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地域で生活する中で当たり前に起こる苦労

浦河は地震の多い地域!

いつ津波が来てもおかしくない!

災害から身を守ることも『自分を助ける』上で重要。

津波

地震

  • 生活のしずらさ
  • 妄想
  • お客さん
  • 幻覚

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防災訓練前の様子

津波役「津波だぞー」

段ボールで作ったパネル

建物役「ゆれている」

幻聴さん役「逃げるなー」

「幻聴さんが逃げるなって言っているから行かない」

「どうしよう。どうしよう。」

「ぼくは先に行く。」

「でもどこに逃げるんだろう?」

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べてるの家の津波防災活動

2003年 十勝沖地震 浦河震度6弱 津波130センチ

500年間隔地震!?

2004年 国リハ等の協力の下、防災プロジェクト開始

2007、2008年 障害者自立支援調査研究プロジェクト

2008、2009、2010年 災害対策における要援護者のニーズ把握とそれに対する合理的配慮の基準設定に関する研究

☆活動のポイント☆

コミュニケーション:3度の飯よりMT・弱さの情報

公開地域防災ノウハウの開発と蓄積:防災活動を共同・還元

防災訓練:練習・研究

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SST(Social Skills Training)

生活や病気の苦労や、その背景にある認知や行動上の苦労を具体的な課題として挙げ、ロールプレイをし、コミュニケーションの練習をする場です。

参加した仲間の正のフィードバックや、スキルのモデリングを大切にしており、認知行動療法のひとつです。

当事者研究

だれしもが持っている生きにくさを仲間とともに共有することにより、研究というアプローチから深めていくものです。

そこで生き方のパターン図や、ユニークな対処方法も生まれます。

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研究例1~幻聴さんとの付き合いの研究

<1>苦労を具体的に挙げる

~幻聴さんにジャックされて行動が制限される(引きこもってしまう・リストカットをしてしまう)

→幻聴さんがきやすいパターンを知る(悩んでいる時・疲れている時・暇な時・さみしい時・おなかが空いている時・お金がない時)

<2>対策を考える

→食べる・仲間のところへ行く・休む・相談する

<3>練習をする・実際にやってみる

→仲間にSOSを出す練習(SST)

→実際に行動する

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研究例2~防災の研究

<1>苦労を具体的に挙げる

~地震・津波でどうしたらよいかわからない

→地震・津波の特徴を知る(浦河の津波は地震発生後4分で10メートルに達する可能性がある)

<2>対策を考える(ミーティング開催)

→具体的な防災対策・避難方法の検討(避難場所の選定)避難マニュアル(DAISY)作成・避難グッズの作成

<3>練習をする

→DAISYマニュアルで『見て』(モデリング)実際に行動する(避難訓練・練習)

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Daisyによるフラワーハイツ防災マニュアルの画面

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町・自治会との協力

避難方法の検討(避難場所の選定)

→町作成のハザードマップで避難に適した場所を探す

自治会の避難訓練前に合同会議を開き、ワークショップ(ワークショップで楽しく!実際に避難可能な場所を確認!手が必要な場合はべてるでも協力体制を組む)

実際に行動する(避難訓練・練習)

→町、自治会、消防署、警察署と協力し避難訓練、炊き出し訓練その後、一緒に振り返り。

一泊避難訓練にも参加

その他、浦河町防災合同会議の開催、地域防災フォーラムの開催など。

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防災訓練の様子<SST>

津波役「津波だぞー」

段ボールで作ったパネル

建物役「ゆれている」

幻聴さん役「逃げるなー」

「幻聴さんが逃げるなって言ってる」

「幻聴さんも一緒に逃げよう!!」

「それー。4分で10mの高さ!!」

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2010年2月28日 チリ津波

胆振・日高管内の沿岸部にある1市9町は、28日午前、計5763世帯1万2632人に避難勧告

浦河では、800世帯1千700人に避難勧告

根室市花崎で100センチ、次いで釧路管内浜中町霧多布港80センチ、浦河で(午後5時9分に)70センチの津波を観測

べてる関係メンバー・スタッフも避難所へ迅速に避難

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2010年10月22・23・24日

日本精神障害者リハビリテーション学会 第18回浦河大会開催

テーマ『精神障害者リハビリテーションと地域再生』

大会シンポジウム<1> 障害者と防災~地域とのつながりを再考する機会として~

座長:後藤 雅博(新潟大学医学部保健学科 教授)

  • 浅野 浩嗣(浦河町役場 企画課長)

シンポジスト:河村 宏(NPO法人支援技術開発機構 )

  • 清水 里香(浦河べてるの家)
  • 米山 豊(浦河町東町第5自治会会長)
  • 田中 知恵子(なだ障害者地域生活支援センター)
  • 伊藤 英助(土佐病院 総務部)

精神保健分野での取り組みの重要性を改めて明確なテーマとして提言

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2011年3月11日  東日本大震災

べてるのメンバーに何がおこっていたか

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サトラレがあって海のそばの住居でねてた

「仕事もいけない」

「人と会いたくない」

月に何回もある

地震

自分にとって最悪のときに地震がおきた

幻聴さんは住居に置いてきた

(良)仲間と誘いあって避難

避難訓練をしていなかったら誘い合わなかったかも・・・

指定避難場所(スポーツセンター)へ逃げる

サトラレさんはついてきた

避難所ではみんなでテレビをみたり・・・

町民の方たちとテレビをみたりしてみんなハイテンションで緊張し

不安で同じ気持ちを共有できた

運命共同体だ!!

サトラレよりテレビや自分たちの現実のボリュームが高くて

サトラレなかった。

だけど時がたつにつれ、じょじょに精神的、体力的に疲れてきた

じわじわ、しみじみサトラレがやってきた

そこで畳の部屋でごろごろすることに・・・。

見た目は大丈夫そうなので周囲は心配をしないしへんだなーと思ってる。

仲間たち

「あれ?なんでスタッフなのにごろごろしちゃってるの?」

(良)精神薬や低血糖になったとき用のあめやぶどう糖は持ってきた。

だけど高血糖対策のインシュリンは忘れた。

でも疲れておにぎり食べた。

「あーっ失敗したっ。」

更に良くするところ

  • 高血糖対策のインシュリンをもってくこと
  • 浦河港が満潮になる前に家にもどってしまったので、たしかめること
  • 避難所でみんなとミーティングをして、不安などその時の気持ちを公開すること

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地震前から妄想があってひきこもっていた

 

妄想くん「Aさんがわるさしてるぞ!」

「Aさんがいるから外に出ないでおこう」

そこへ地震が!

妄想くん「この地震はAさんがおこしたんだぞ!!」

とにかく避難

仲間のりかさんに誘われて避難所へ

妄想くん「ぼくもいく!」

妄想くんもついてきた

りかさん「一緒にい行こう」

(実はりかさんもサトラレがひどく、ひきこもっていた)

<避難所>

「Aさんがきてる!!」

しばらく避難所ですごし、おちつかず、けっきょく家にもどる

妄想くん「この世をほろぼすぞー」

「また地震がきたらどうしよう」

「建物の下敷になったらどうしよう」

妄想くん「もうだめだぞー」

夜中から朝までずっと家を出たり入ったりうろうろしていました

そして朝、病院に行き入院となりました

入院して今までためこんでいた悩みを周りにちゃんと情報公開することができ安心できました

「妄想がひどくて・・・」

「はじめっから心のプレートにひびがはいってたの」

仲間、スタッフ「すでに被災してたんだね」

ゆれている病院は舟。

不安だけど操縦しているのは川村先生なので安心してました

その後すぐに退院となりましたが、家にもどるとまた不安がつのりました。

そしてまた安心をもらいに入院しましたが、すぐ退院できました。

「ふだんからの弱さの情報公開が災害時にも助けになると勉強できました。

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住居にいるときに地震!!

(プライベートビーチか?というほどの海岸沿いに建っている)

いつもの訓練通り、上手に避難できた

<避難所>

上手に逃げられたことだけで花丸だったのに・・・

「しまった・・・薬を忘れた。」

出された夕食を食べても味がしない

「薬がない・・・不安だ」

「あっ俺固まりかけてるぞ」

いつもなら、固まりそうな時には、ラジオの音楽を聞いたら落ち着いてくるのに・・・

  • 津波情報
  • サイレン

「ラジオも恐い。テレビも恐い。だめだー」

他のボリュームが大きくて幻聴さんは静かにしてた

この日、避難所に泊まるもねむれず・・・。

固まりかけてるのでトイレにも行きづらい。

ねむれないけど起きられない。

そして早朝5:00

仲間に誘われて避難所から病院にいきました

仲間「救急外来をうけましょう」

俺「ハイ行きます。」

ズボンもズルズル。固まっててうまくはけない。

病院で薬をもらって帰りましたが・・・

「と・・・とりあえず・・・くすり」

「あーでもだめかもまだ」

そして朝8:00

もう一度病院へ

先生「入院していいよー」

入院するといつもなら1か月くらいかかりますが、

この時は4日で退院できました

「ショックから立ち直りました」

この地震で学んだことは

  • いつも薬をもってること!
  • ふだんから安心できる場所にすむこと

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べてるでの振り返り結果

  • 練習通り避難できた!
  • 現実感があった
  • 避難先でも仲間と一緒にいられたのは少し安心だった
  • 病院のDr.:避難入院OK
  • 普段から弱さの情報公開をしているので、仲間やまちの人、役場の人の力をかりることができた
  • 自分達は“○”だった!

 

苦労した事

  • 薬を忘れてしまった
  • これからどうなるかわからないのが不安だった
  • 一人になるとより強い不安
  • 避難所にいることが苦痛
  • 心も身体も緊張状態
  • その場で自分達のよかったことを評価し合う余裕がなかった

 

結果4人入院

(1名はまだ入院中)

(その他)

浦河町内でも発達障害のお子さんをもつ家族は避難所に行けず高台のホテルに宿泊していた

 

さらに良くする点

  • 避難グッズ見直し(特に薬)
  • 避難後の過ごし方について作戦が必要
  • 避難所でもMTをして、自分達のよかったことを褒め合い、苦労を吐き出す
  • 心と身体のリラックスを学ぶ
  • 日頃からの病気との付き合い、地域との付き合いが大切

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被災地での当事者研究の活用に向けて

仙台等当事者研究をしている地域への応援

福島で「こころのケアチーム」として当事者研究の活用について取り組みをすすめている

(障害者や医療だけではなく、学生等の被災による精神的ストレスを受けた方にも有効なのではないか)

福島(相馬市を含む双葉地区)での精神保健福祉の再建に協力

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べてるの取り組みのまとめ。

精神障害者も事前に取り組むことで迅速な避難が可能

事前の正しい知識・情報の共有・練習が重要

そのためにMTや当事者研究、DAISYが活用できる

防災を通じて、障害者と地域とのつながりを取り戻すことができる

避難先での過ごし方や、自分の助け方にはさらに良くする点を検討する必要がある

避難先でもMTや弱さの情報共有が必要なのではないか

避難先での過ごし方やその後の復興で、「正確な現状の把握」が安心につながる

被災後の自分の助け方として当事者研究が活用できそう

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べてるねっと

http://bethel-net.jp/

べてるの家の情報が満載のホームページ。

べてるの家に興味をもった方は、是非ご覧ください。

ご静聴ありがとうございました。

 

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