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発表会 「精神障害の正しい理解と偏見の是正」

平成16年度厚生労働科学研究 障害保健福祉総合研究成果発表会

開会挨拶

荻野 浩基
東北福祉大学 学長

浅野 ただ今から、午後の第2部を始めさせていただきます。午前の部が少し延びましたので、15分ほど遅れてのスタートとなりました。午後の部を司会いたします東北福祉大学の浅野と申します。よろしくお願いいたします。それでは第2部の開会に先立ちまして、東北福祉大学荻野浩基学長より挨拶を申し上げます。学長、よろしくお願いいたします。

荻野 今日は午前中の講義をお聞きいただきまして、続いて午後ということで、こんなにもたくさん東北福祉大学にお越しいただいて、本当にありがとうございます。ご紹介賜りました学長の萩野でございます。こんなに素晴らしいパンフレットを作っていただきましたが、今日の午前中の松岡先生の基調講演に始まり、続いて、午後は「精神障害の正しい理解と偏見の是正」という公開フォーラムがこれから開かれます。この問題は、国会のほうでは八代英太先生と一緒に私自身も取り組んでいる問題でございますが、こうした問題は本大学でフォーラムを開いていただき、しかもこんなにもたくさんの方にお寒い中をお越しいただいたことに、まずもって御礼申し上げます。ありがとうございます。午前中のフォーラムは、大学院のドクターコースと修士課程の集中講義を私はやっておりましたのでお聞きできなかったので、私はあとでビデオで見させていただきます。

 ところで、いま心の問題というのが非常に大きな問題になっております。心とは何かと、このパンフレットにも平仮名で「こころ」と書いてあって、漢字の「心」を書かないというのは、それなりにいろいろな深い意味があるのではないかと思います。今日、私は大学院でも講義をしたところでございますが、大学院の学生に、心というのは一体どこにあるのかと言ったら、脳にありますとか、体全体にありますというのもいましたし、やっぱり、心というのは手を胸にあてるじゃないですかというのもいました。確かに心は心臓にあると言ったのは、実はアリストテレスなんですがね。だけど、これが現代の医学からみて本当に真実かどうか、まあこの問題はさておきまして、いずれにしても心ということは非常に重大になってきただろうと思います。さっきも学生から言われたのですが、「じゃあ、萩野先生、心というのは一体何ですか」と。私も一応博士号はもっておりますけれども、ぼんと言われても私も答えを出せないのが、私のいまの正直なところであります。しかし、私自身が思いますのは、確かに今いろいろと脳細胞のそれぞれの働きとか、そういうものは非常に明確になってきましたけれども、今日、私がみんなに話したのですが、自動車がここにある。自動車があるけれども、その自動車はそれぞれエンジンもしっかりしている。ガソリンも入っている。タイヤも大丈夫だ。全部大丈夫であっても、その自動車が動かなければ自動車ではないですね。飛行機が全部整備されていても、飛行機が飛んで、初めて飛行機であると。そういう具合に、人間の脳のいろいろなことがいくら解明されても、それは本当に飛行機が飛ぶように、人間が生き生きと生きていける、そのコントローラー、またコマンダー、私はそういうようなものが心ではないかと。これは私の勝手論で、否定されるかも分かりませんが、とっさに学生たちにそのように答えたのが数時間前でございます。いずれにしましても、科学技術の進歩によりまして、特にこの医学の分野では、今までもこの世界に触れることができないのではないかという未知の世界でありました。特にこの脳の形態とか、それから、それぞれの機能、そういうものがディスプレイの世界で、こういう具合にはっきりといろいろな世界が目に見えるものになってきたということは、これは実に素晴らしいことだと思います。ただ、これからの課題は、それを人の幸せに、そして世の幸せに結び付けることだと思います。そういう意味で、これからいろいろな面でお話をお聞きになるかと思いますが、特に心を悩むクライアントに対しまして心理社会的なファクターというようなものが、これからどんどん取り入れられるだろう、そして多次元的な診断ということがこれからなされていくだろうと、また、いくべきだろうと思っております。国の施策としましても、ご案内のとおり、今日のこのパンフレットに書いていただいています「こころのバリアフリー宣言」というものを宣言いたしまして、我々もこの問題に真剣に取り組んでいき、そして1人でも多くの人が少しでも早く社会参加できるような、そういう環境づくりのために皆さんと一緒に考えていきたいと思います。今日このあと基調講演いただきますけど、本大学では佐藤先生を迎えております。一生懸命、佐藤先生を中心に、そしてまた午前中お話いただきました東北大学の中心とした先生方と一緒になりながら、目指しております精神障害者に対する正しい理解と、そしてその偏見をなくし、社会参加が一日も早くできるように少しでもお力になれれば、この会がそのようになれば私はこの上ない喜びでございます。今日は本当にお寒い中をこうしてお越しいただきました。また、午後の2部もどうぞ有意義なものに皆さんと一緒にしていきたいと思います。どうもありがとうございました。

浅野 ありがとうございました。本日の公開フォーラムは1部と2部に分かれてございますが、午前の部では、現在の研究の最先端、特に基礎的な面について詳しくお話をいただきましたが、一番最初の松岡先生の総論の中にもありましたが、統合失調症をはじめ、心の病は脳の機能の異常だけではなくて、対人関係ですとか、社会的に置かれた状況ですとか、そういうことに影響されて病が出てまいりますし、病がどういう経過をたどるかということについても、社会的な、あるいは心理的な要因が深くかかわっているというお話がありました。後半の第2部は、そういう心理的な、あるいは社会的な観点から、この病の問題に迫っていこうという趣旨でございます。1部と2部とトータルでご理解いただければ幸いだというふうに思います。