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発表会 「精神障害の正しい理解と偏見の是正」

平成16年度厚生労働科学研究 障害保健福祉総合研究成果発表会

<シンポジウム>当事者の立場から

小規模作業所コラボ・ソキウス
 当事者スタッフ

浅野 このシンポジウムの前半、医療の専門家と福祉の専門家からお話をいただきましたけれど、今度は少し方向を変えて、当事者の方、あるいはそういう患者さん、障害者をおもちのご家族の方からご発言をいただきたいと思います。最初は当事者の立場で、コラボ・ソキウス非常勤当事者スタッフのキドシロウさんにご発言をいただきます。パンフレットにコラボ・ソキウスと書いてありますが、ご存じでない方もおありかもしれませんので、多分、その辺のご紹介を含めて、あるいはご自分の体験を含めてお話があると思いますので、お聞きいただければ幸いです。キドさん、よろしくお願いいたします。

キド よろしくお願いします。精神障害者小規模作業所のコラボ・ソキウスで非常勤当事者スタッフをしておりますキドと申します。こんなに大勢の前で話すのは生まれて初めてなものですから、今ちょっと緊張しております。今日のテーマである偏見ということなんですけれども、ちょっと思い返して、思い当たることがあったものですから、ちょっとそれについて話してみたいと思います。3年ほど前になるんですけれども、ちょうど池田小学校のあの痛ましい殺傷事件が起きたときなんですが、タイミングが悪かったということもあるんですけれども、そのときの10月に、当時まだ私自身が小規模作業所に通所している身分でありまして、そこで10月に心の健康と題して、桜ヶ丘の地区ですか、そこの人たちに講演を頼まれたことがあるんです。そのときに女性の方とか、男性の方とかいろいろ来ていたんですけれども、話があって、ボランティアか何かを募集しているということだったのですけれども、当時、私の病名はうつ病だったのですが、いま17年目で統合失調症ということになりまして、その当時はうつ病だったのですけれども、いま違うと思うんですけど、当時の桜ヶ丘地区の町内会の連合会長さんが「うつ病は治るんだよ。」とか言って、実際に講演が終わったあとで、「近くに小学校があるから危険だ」と言うんですよ。「危ない」。えーっと思いまして、何で危ないんだろう。服薬して作業所へ行っている人はご存じだと思うんですけど、そういう危険な状態にない人が妄想とか、幻聴なんかに悩まされている人は居るかもしれませんけれども、極力もう社会生活を送るに至って影響のない人が通所しているわけですから、本当に重い人は入院していますので、それはちょっとおかしいんじゃないのかなと思ってびっくりしましたね。それとあと一番びっくりしたのは、社会福祉協議会の人が「言っちゃ悪いが、きちがいだ」とかいうことを言うわけですよ。そんなことを社会福祉協議会の人が言っていいのかなと思ったんですけど、それもびっくりしました。とどめが、知的障害者の小規模作業所か、授産施設か、どっちかちょっと忘れたんですけど、施設長をやっている方が精神障害者は差別されて当然なんだということを言うわけですよ。それを聞いていて、すごく腹が立ってきて、逆に唯一救いになったのは、それを聞いていた民政委員の方とか、近所の女性の方たち、お母様連中だと思うんですけど、お母様方が「かわいそうじゃないですか」と言ってくれたのがすごく唯一救いになりました。そういったことで、悔しかったものですから、私はまず町内会の連合会長に向かって、連合会長が「一体親は何をしているんだ、危ないじゃないか」と言うから、「親は何をしているんだと言ったって、日本には恥の文化というものがあるから仕方がないじゃないか。」と言ってやったんですよ。あと、きちがいと言った社会福祉協議会の人には「社協の人がそんなことを言っていいんですか。」と言ったら、あとで謝りました。それからあと知的障害の施設長の方には何も言えませんでしたけど、そういったことがあったわけです。前に東京に住んでいたころは病気を隠してアルバイトとかしていたのですけれども、こっちに来て仕事がないもので、しょうがないから作業所から始めて、今はスタッフという形でコラボのほうでやっていますけど、時代が変わっても、まだこんなことを言う人がいるんだなというか、すごく理不尽というか、全然病気のことを知らないんじゃないかなと思って、たいてい陽性症状というか、そういう幻覚とか、妄想とかというのは抗精神病薬で押さえられて、その薬が合えば陰性症状が残るだけなんですよね。僕もこっちの仙台に来てから、半年ぐらい怖くて、陽性症状で再発して引きこもったことがあるんですけれども、むしろ怖いんですよ。回りが怖くて引きこもっているというほうなんですよ。それが高じて、怖くてしょうがなくて、どうしようもなくて、それでわーっと周りに出ることがあるかもしれないけれども、大抵の人は怖くて引きこもっちゃうんですよ。そこのところが分かっていないのかなというか、やっぱり周りの人たちが統合失調症というものに対して認識がまだまだ普及していない、まあ、仕方がないと思うんですけど、普及していないんだなということを感じました。短いようですけど、これで終わらせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。

浅野 ありがとうございました。まだまだ地域の方々に統合失調症についてご理解をいただけていないという厳しい現実を報告していただきました。どうしましょう、ご質問を受けてもいいですか。それではちょっと時間が押しているので、お1人だけ、どなたかご質問ございますか。真ん中辺で手が挙がっていますが。

質問者 こんにちは。はじめまして。私は東北福祉大学社会福祉学科3年の鈴木アスカと申します。今日は何も知らず、ここにお話を聞きに来たのですが、皆さんのお話を伺っていて、つい最近なんですが、大学のある先生の講義を受けて、大変自分の心に染みる言葉がありまして、その言葉と今の皆さんのお話とか、先生方のお話を聞いてかみ合うということがあったので、ちょっと一言感想を述べさせていただきます。差別とか偏見が悪いというのは当たり前で、それが自分の心の中にあったりとか、それを自分の中にあるということを感じて、それを自分はどういうふうにとらえるのかということを、その先生がおっしゃっていて、とても私はその言葉が心に染みまして、こういうことを考えていくことがすごく大切だなと思いました。すいません。以上です。

浅野 はい、ありがとうございました。今日のお話、あるいはキドさんのお話を聞いての感想をちょうだいいたしました。キドさん、コメントありますか。

キド 皆様がこういろいろ集まってくださって、心の健康に対して関心を持ってくださる方が増えているということは、すごく当事者として喜ばしくて、これから徐々にですが、そういった偏見とか、そういったものもバリアフリー化というか、段々なくなっていくのではないかなという感想をもちました。どうもありがとうございました。

浅野 はい、ありがとうございました。