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持続可能な開発目標(SDGs)実施指針

1 序文

(1)2030アジェンダの採択の背景と我が国にとっての意味

 地球規模で人やモノ、資本が移動するグローバル経済の下では、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や社会問題にも波及して深刻な影響を及ぼす時代になってきている。このような状況を踏まえ、2015年9月に国連で採択された持続可能な開発のための2030アジェンダ(「2030アジェンダ」)は、開発途上国の開発に関する課題にとどまらず、世界全体の経済、社会及び環境の三側面を、不可分のものとして調和させる統合的取組として作成された。このような性質上、2030アジェンダは、先進国と開発途上国が共に取り組むべき国際社会全体の普遍的な目標として採択され、その中に持続可能な開発目標(SDGs)として17のゴール(目標)と169のターゲットが掲げられた。
 したがって、2030アジェンダを実現するための各国の取組は、開発途上国の開発に協力する姿勢で取り組むだけでは不十分である。2030アジェンダの副題は、「我々の世界を変革する」であり、その前文において、「我々は、世界を持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることを決意している」と述べられている。我々は、これまでと異なる決意を持って、国際協調主義の下、国際協力への取組を一層加速していくことに加え、国内における経済、社会、環境の分野での課題にも、またこれらの分野を横断する課題にも、国内問題として取組を強化するのみならず、国際社会全体の課題としても取り組む必要がある。

(2)持続可能な開発目標(SDGs)推進本部の設置と本実施指針の意義

 このような認識の下、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、SDGsの実施を総合的かつ効果的に推進するため、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部が、2016年5月20日に内閣に設置された。同日開催された推進本部第一回会合において、SDGsの実施のために我が国としての指針を策定していくことが決定された。これを受け、広く国民等からの意見を踏まえ、広範な関係者とも意見交換を行ってきた。
 本実施指針は、日本が2030アジェンダの実施にかかる重要な挑戦に取り組むための国家戦略である。具体的には、政府が、関係府省庁一体となって、あらゆる分野のステークホルダーと連携しつつ、広範な施策や資源を効果的かつ一貫した形で動員していくことを可能にするため、現状の分析を踏まえ、ビジョン、優先課題、実施原則、推進体制、フォローアップ及びレビューのあり方を定めた上で、優先課題の下での個別施策を定めるものである。

2 現状の分析

(1)これまでの取組

 日本は、第二次世界大戦後、着実な経済成長を遂げ、高度に発展した社会を築き上げてきた。国内においては、1992年の「環境と開発に関する国連会議」の成果も踏まえ、環境基本法及び環境基本計画を制定し、環境・経済・社会の統合的向上による持続可能な社会の構築に向けた取組を進めてきた。また、大規模自然災害等への備えとして、国土強靱化基本法の下で、強靱な国づくりを推進している。更には、男女共同参画社会基本法や女性活躍推進法、障害者基本法等を策定し、一人ひとりが参加し、活躍できる包摂的な社会づくりやそのための制度改革に取り組んできた。
 国際協力の面では、我が国は戦後間もない1954年に政府開発援助(ODA)を開始して以来、35年間で世界最大の援助国となり、国際社会全体の平和と安定及び繁栄に積極的に貢献してきた。2000年からは人間の安全保障を外交・開発協力の基本理念に据え、取り残された人々や、紛争を受けて難民・避難民となった人々一人ひとりに焦点を当てた新たな視点からの支援に取り組むとともに、保健、防災、女性といったSDGsにおける中心的テーマを国際協力の軸に据えてきた。このような経験の蓄積に基づいて、我が国は2030アジェンダの基本方針やSDGsの個別目標・ターゲットの策定において主導的な役割を果たしてきた。2015年2月には、2030アジェンダの採択に先立ち、その実施の基本方針とすることを意図しつつ、我が国の開発協力の理念や原則を定める新たな開発協力大綱を策定した。

(2)現状の評価

 これまでの取組の結果、日本は、極めて高い水準の発展を持続的に達成してきた。その一方で、SDGs達成に向けて、日本として更に取組を強化すべき分野についても指摘されている。一例を挙げれば、ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)が共同で発表した2016年の報告書においては、日本は、SDG1(貧困)、SDG5(ジェンダー)、SDG7(エネルギー)、SDG13(気候変動)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、SDG17(実施手段)の7つのゴールについては達成の度合いが低いと評価される指標が含まれている。
 これらの課題の中には、既に日本が自らの重要な政策課題として掲げ、挑戦している課題も多数含まれているが、更なる取組が必要な分野もある。改めて、SDGsに照らした課題を洗い出し、既に我が国が国内外で進めてきた経験の蓄積を生かして、日本自身と国際社会の持続可能な未来を切り拓いていく必要がある。
 例えば「誰一人取り残さない」とのキーワードは2030アジェンダ全体の根底に流れる基本方針となっているが、これは、我が国が国際社会で主導してきた「人間の安全保障」の理念が国際社会全体の目標の中に結実したものである。これは、我が国国内においては、一億総活躍プランの、誰もが活躍できる全員参加型社会の構築の方針を推進していることと軌を一にしている。さらに、「一億総活躍社会」の実現に向けた取組は、経済政策を一層強化し、それによって得られる成長の果実により子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが更に経済を強くするという成長と分配の好循環を創り上げることを目指しているものであるが、世界で多くの国が今後高齢化社会という現実に直面する中、いわば他の先進国に先駆けて持続可能な経済、社会づくりに向けて日本が示す新たな「日本型モデル」と呼ぶべきメカニズムである。
 環境分野では、日本政府は、環境基本計画において、環境・経済・社会の統合的向上という方向性を打ち出した。また、2015年12月の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議において合意されたパリ協定やいわゆる「日本の約束草案」等を踏まえて策定された地球温暖化対策計画においても、環境、経済、社会の統合的な向上に資するような施策の推進を図ることとしている。更には、循環型社会形成推進基本計画や生物多様性国家戦略2012-2020も策定し各種施策を実施している。こうした日本の取組は、2030アジェンダに沿った取組と言える。
 更に、例えば、国際保健の分野におけるUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)については、1961年に日本が達成した国民皆保険の過去50年以上の経験に基づく実績を踏まえ、日本の主張に基づいてSDGsの一項目として取り入れられたものであり、この分野での日本のリーダーシップは、「人間の安全保障」に基づく国際協力の実践として、今後も期待されているところである。

3 ビジョンと優先課題

(1)ビジョン

 2030アジェンダは、取り組むべき課題として以下のように記している。「我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。国内的・国際的な不平等と戦うこと。平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。人権を保護しジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントを進めること。地球と天然資源の永続的な保護を確保すること。そしてまた、我々は、持続可能で、包摂的で持続的な経済成長、共有された繁栄及び働きがいのある人間らしい仕事のための条件を、(中略)作り出すことを決意する。」
 我が国は、このような持続可能な経済・社会づくりに向けた先駆者、いわば課題解決先進国として、SDGsの実施に向けた模範を国際社会に示すような実績を積み重ねてきている。今後のSDGs実施の段階においても、世界のロールモデルとなることを目指し、国内実施、国際協力の両面において、世界を、誰一人取り残されることのない持続可能なものに変革するための取組を進めていくことを目指す。
 以上を踏まえ、「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、 環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことを、本実施指針 のビジョンとする。

(2)優先課題

 かかるビジョンの達成に向けた取組の柱として、次の8つの優先課題を掲げることとする。SDGsの17のゴールと169のターゲットの中には、日本国内においては既に達成されているものも多いが、そのようなターゲットの中にも、世界全体における達成に向け、日本として国際協力面で取り組むべき課題も多く含まれている。ここに掲げる優先課題は、SDGsのゴールとターゲットのうち、日本として特に注力すべきものを示すべく、日本の文脈に即して再構成したものであり、すべての優先課題について国内実施と国際協力の両面が含まれる。また、これらの優先課題はそれぞれ、2030アジェンダに掲げられている5つのP(People(人間)、 Planet(地球)、 Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、 Partnership(パートナーシップ))に対応する分類となっている。SDGsにおけるすべてのゴールとターゲットが不可分であり統合された形で取り組むことが求められているのと同様、これらの8つの優先課題も密接に関わる不可分の課題であり、どれ一つが欠けてもビジョンは達成されないという認識の下、その全てに統合的な形で取り組む。それぞれの優先課題について推進される具体的な施策等は、付表に記載される。

(People 人間)

1 あらゆる人々の活躍の推進

2 健康・長寿の達成

(Prosperity 繁栄)

3 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション

4 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備

(Planet 地球)

5 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会

6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全

(Peace 平和)

7 平和と安全・安心社会の実現

(Partnership パートナーシップ)

8 SDGs実施推進の体制と手段

4 実施のための主要原則

 これらの優先課題に取り組むに当たっては、以下の原則を重視することとする。これらの原則は、2030アジェンダに示されているか、その理念から当然に導き出されるものである。これらはSDGsの実施に取り組むに当たって、優先課題や分野を問わず適用されるべき原則である。8つの優先課題及びその下に位置づけられる施策において、これらの主要原則が実現されているかどうかを点検するとともに、新たな施策や施策の修正の必要性を検討するに当たっても、これらの主要原則を考慮する。

(1)普遍性

 2030アジェンダの実施においては、国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む。国内における取組も国際目標達成に向けた努力としての側面があることや、逆に国際協力にも我が国自身の繁栄の基盤を支える意義があることを意識し、また、個別のテーマにおいても国内実施と国際協力を連携して取り組むことが有意義であることを認識しつつ取組を進めていく必要がある。

(2)包摂性

 「誰一人取り残さない」とのキーワードは、2030アジェンダの根底に流れる基本的理念を示しており、2030アジェンダは、子供、若者、障害者、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を求めている。我が国は、国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、これらの脆弱な立場におかれた人々にも焦点を当て、また、人間の安全保障については、SDGsの実施においても一貫して開発協力の指導理念として位置づける。
 さらに、国際社会における普遍的価値としての人権の尊重と、ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化は、分野横断的な価値としてSDGsの全てのゴールの実現に不可欠なものであり、あらゆる取組において常にそれらの視点を確保し施策に反映することが必要である。また、ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化のためには、ジェンダー統計の充実が極めて重要であり、SDGsの実施において可能な限り男女別データを把握するよう努める。

(3)参画型

 脆弱な立場におかれた人々を含む一人ひとりが、施策の対象として取り残されないことを確保するのみならず、自らが当事者として主体的に参加し、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、あらゆるステークホルダーや当事者の参画を重視し、全員参加型で取り組む。

(4)統合性

 SDGsのゴールとターゲットは統合され不可分のものであり、統合的解決が必要であることが2030アジェンダにおいて強調されている。経済・社会・環境の三分野の全てにおける関連課題との相互関連性・相乗効果を重視しつつ、統合的解決の視点を持って取り組む。このため、施策の実施においては、当該施策に直接関連する優先課題以外のいずれの課題との統合的実施が重要であるかを念頭に置きつつ、異なる優先課題を有機的に連動させて実施していく。

(5)透明性と説明責任

 全員参加型の取組であることを確保する上でも、透明性と説明責任は重要である。政府の取組の実施の状況について高い透明性を確保して定期的に評価、公表し、説明責任を果たす。また、新たな施策の立案や施策の修正に当たっては公表された評価の結果を踏まえて行う。

5 推進に向けた体制

(1)政府の体制

 内閣に設置されたSDGs推進本部が、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、関係する施策を総合的かつ効果的に推進するための司令塔の役割を果たす。SDGs推進本部は、関係府省庁が個別に行う取組と緊密に連携しつつ、特に以下の事項に重点的に取り組む。

  • 本実施指針の取組状況の確認(モニタリング)、及びこれに基づく指標の策定・修正を含む実施指針の見直し(フォローアップとレビュー)
  • ステークホルダーとの意見交換や協働・連携の推進
  • 2030アジェンダや本実施指針の実施に関する広報・普及啓発活動

(2)SDGsの主流化

 2030アジェンダにおいては、「各々の政府は、これら高い目標を掲げるグローバルなターゲットを具体的な国家計画プロセスや政策、戦略に反映していくことが想定されている」と記されている。政府全体及び関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たっては、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、その要素を最大限反映する。同時に、SDGs実施のための府省庁ごと又は各府省庁横断的な取組を推進していくための政策誘導として、必要に応じた関係制度改革の検討や、適切な財源確保に努める。

(3)ステークホルダーとの連携

 2030アジェンダには、以下のように記されている。
「今日2030年への道を歩き出すのはこの『われら人民』である。我々の旅路は、政府、国会、国連システム、国際機関、地方政府、先住民、市民社会、ビジネス・民間セクター、科学者・学会、そしてすべての人々を取り込んでいくものである。」
 上記のとおり、日本においても2030アジェンダの実施、モニタリング、フォローアップ・レビューに当たっては、省庁間や国と自治体の壁を越え、公共セクターと民間セクターの垣根も越えた形で、NPO・NGO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体、地方自治体、議員、科学者コミュニティ、協同組合等、広範なステークホルダーとの連携を推進していくことが必要である。このため、特にアジェンダの推進・実施全体に係る事項については、関係府省庁とステークホルダーの代表から構成されるSDGs推進円卓会議を設置し、これを活用して緊密な連携を図る。
 府省庁ごとの事項や府省庁横断的な分野別の事項についても、SDGs推進円卓会議とも関連させつつ、事項に応じて関係するステークホルダーとの意見交換や連携のための場の設置等を検討する。既に環境省が実施しているステークホルダーズ・ミーティングや、文部科学省と環境省が事務局を務める持続可能な開発のための教育(ESD)のための円卓会議はそのような取組の先例である。
 また、広範なステークホルダーによる社会貢献活動やその他のSDGs達成に向けた様々な活動とも緊密な連携を図る。

(NPO・NGO)

 NPO・NGOは、2030アジェンダの策定過程においても、様々な社会集団から構成される多様な人々の視点を反映させる重要な役割を担ってきた。今後、同アジェンダの実施においても、「誰一人取り残さない」未来を目指すビジョンの実現を目指す上で、脆弱な立場にある人々との協働、国際的・地域的ネットワークを活かした問題提起や政策提言等において、NPO・NGOが果たす役割は極めて大きい。政府として、NPO・NGOや更には幅広い地域住民、民間組織や地縁型コミュニティ組織もSDGs実施の重要なパートナーと位置づけ、効果的な連携を一層推進していく。

(民間企業)

 SDGsの達成のためには、公的セクターのみならず、民間セクターが公的課題の解決に貢献することが決定的に重要であり、民間企業(個人事業者も含む)が有する資金や技術を社会課題の解決に効果的に役立てていくことはSDGsの達成に向けた鍵でもある。既に一部の民間企業がSDGsに社会貢献活動の一環として取り組むのみならず、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じて社会的課題の解決に貢献することに取り組んでおり、政府としてこうした動きを歓迎する。また、今後の2030アジェンダの実施に際して、先進的な取組を行っている民間企業等のグッド・プラクティスの共有や表彰等による奨励策の検討を進め、民間企業との更なる連携の強化を図り、さらに、民間企業がイノベーションを生み出すための支援や環境整備に取り組む。
 中でも、ビジネスと人権の観点に基づく取組やESG投資、社会貢献債等の民間セクターにおける持続可能性に配慮した取組は、環境、社会、ガバナンス、人権といった分野での公的課題の解決に民間セクターが積極的に関与する上で重要であるのみならず、こうした分野での取組を重視しつつあるグローバルな投資家の評価基準に対し、日本企業が遅れをとらずに国際的な市場における地位を維持するためにも極めて重要である。このための環境づくりに向けた政府の施策を進めるとともに、民間企業の取組を後押しする。

(消費者)

 生産と消費は密接不可分であり、持続可能な生産と消費を共に推進していく必要があるとの認識の下で、消費活動において大きな役割を担う消費者や市民の主体的取組を推進していく。

(地方自治体)

 SDGsを全国的に実施するためには、広く全国の地方自治体及びその地域で活動するステークホルダーによる積極的な取組を推進することが不可欠である。この観点から、各地方自治体に、各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たってはSDGsの要素を最大限反映することを奨励しつつ、関係府省庁の施策等も通じ、関係するステークホルダーとの連携の強化等、SDGs達成に向けた取組を促進する。

(科学者コミュニティ)

 科学技術イノベーションは、それ自体、優先課題のひとつであるとともに、多様な分野において課題の達成に不可欠な横断的要素である。国際協力を含む各種取組の実施や新たに生じる事象への迅速・柔軟な対応にあたり我が国の優れた科学技術イノベーションの活用を図るとともに、SDGs達成のための適切な指標の設定及びモニタリング、各施策同士の相乗効果・相殺効果の分析、フォローアップ・レビュー等においては科学的な分析や根拠に基づく取組を進めることが不可欠である。この観点から、フューチャー・アース等国際的取組や国内の科学者コミュニティとも体系的に連携・協働していく。

(労働組合)

 労働組合は、社会対話の担い手として、集団的労使関係を通じた適正な労働条件の確保をはじめ、労働者の権利確立・人権・環境・安全・平和などを求める国内外の取組を通じ、ディーセント・ワークの実現や持続可能な経済社会の構築に重要な貢献を果たすことが期待される。政府・地方自治体におけるSDGsの関連施策の立案・実施に際し、労働組合の参加と対話を引き続き推進していく。

(4)広報・啓発

 SDGsの実施に国民的な運動として取り組むべく、推進本部の下、あらゆるステークホルダーと連携して、SDGsの国内的な認知度向上や啓発、普及のための広報・啓発活動を積極的に検討し、実施していく。また、様々な国際会議等の機会を活用し、国際機関をはじめ様々なステークホルダーと連携して、我が国の取組を国際的に発信するための広報活動にも努める。
 このため、前述の、SDGs達成に向けた、民間企業を始めとする実施団体のグッド・プラクティスの共有や表彰、SDGsに関するロゴマーク等の使用を奨励するための施策を進めていく。
 また、2030年とその先の世界を担う子供たちに、持続可能な社会や世界の創り手となるために必要な資質・能力が育成されるよう、ESD(持続可能な開発のための教育)を更に推進するとともに、学校教育をはじめ、家庭、職場、地域等のあらゆる場におけるSDGsに関する学習等を奨励していく。

6 フォローアップ・レビュー

 我が国におけるSDGsの推進状況を的確に把握するために、今後、2030年までの間、統計データや地球観測データを積極的に活用する。また、KPI(重要業績指標)となる具体的な指標を可能な限り導入する。指標の導入に当たっては、グローバル指標の活用が適切である場合には積極的にグローバル指標を活用する。これらの指標に基づいて、本実施指針の取組状況の確認や指針の見直し(フォローアップ・レビュー)を実施し、その結果について適切な形で公表する。また、グローバル指標又は我が国が独自に定めた指標に基づいた国連への取組状況の報告も、適切に行う。さらに、フォローアップ・レビューにおいては、優先課題の下での個別の施策が、本指針において定められた実施の主要原則に沿って実施されているかどうかを確認する。
 指針の見直しにおいては、今後の既存の施策の実施の進展に応じ、SDGsとの関連で適切と考えられる施策を新たに優先課題の下に積極的に位置づけていくこととする。
 国連持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)を通じた2030アジェンダのグローバルなフォローアップ・レビューに積極的に参加・貢献する。具体的には、HLPFの自発的レビューに2017年に参加するとともに、その後も、本実施指針の取組状況の確認や指針の見直しを行った後等の適切なタイミングを捉えて、積極的に参加することを検討していく。最初の取組状況の確認及び見直しは、2019年に開催される次回の首脳級のHLPFを見据え、2019年までを目処に実施し、また、その後も首脳級のHLPFのサイクルに合わせ、少なくとも4年ごとに取組状況の確認及び見直し を実施することを検討する。
 これらのフォローアップ・レビューに際しても、本実施指針の策定と同様に、広範なステークホルダーの参画の下に行う。

(了)


転載元:
内閣官房副長官補室.持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(平成28年12月22日SDGs推進本部決定).持続可能な開発目標(SDGs)実施指針(本文).
持続可能な開発目標(SDGs)推進本部.
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/
(参照 2016-12-26).