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不平等への取り組みに関する世界テーマ別コンサルテーション(Global Thematic Consultation on Addressing Inequalities)

訳:日本障害者フォーラム

障害のある人々
オンラインディスカッション概要
司会:国連児童基金(UNICEF)及び国際障害同盟(International Disability Alliance)

「…不平等は、建物や施設、社会制度へのアクセスの不平等という問題にとどまらない。それはまた、その集団に対するこれまでの扱いと深くかかわっている。」 シュアン・トゥイ・グエン(Xuan thuy Nguyen)

概要

MDGsで障害のある人々の権利に取り組んでこなかったために、貧困が深刻化し、開発における不平等が拡大し、困難な問題が増加した。不平等はすべての国に、また、富める者にも貧しい者にも影響を与える。国際機関、ドナー、各国政府、その他の開発関係者と一般社会は、全体として、障害や障害のある人々の権利、分野横断的な枠組みにおける障害のある人々とその代表団体の参加を、いまだに十分に認めていない。それどころか、これらの問題は、国内及び地域内の開発に関する議論において、最も優先順位が低いとされてきた。

障害のある人々は世界人口の15%を占めている。彼らが直面する不平等は、物理的及び組織的なコミュニケーション上の障壁と、態度という障壁、そしてスティグマなど、多数の障壁が原因となっており、これらの障壁のために、障害のある人々は無視され、社会、特に意思決定のプロセスには参加できないと見なされることが多い。

これらの広く蔓延している根の深い不平等に取り組むために、また、障害のある人々の完全なインクルージョンを確保するために、オンラインディスカッションでまとめられたMGD以降の枠組みに関する7つの提言では、障害を分野横断的なテーマとして確立し、2015年以降の枠組みは人権に基づくアプローチを基本とすることを確保し、2015年以降の課題の開発と実施への障害のある人々の参加を促進し、新たな開発の枠組みにおいて障害のある人々の権利を無視できないようにすることに焦点が絞られた。

コラム1:2015年以降の開発の枠組みに関する重要な提言

  1. 新たな枠組みは、障害のある人の権利に関する条約(CRPD)に従った、人権に基づくアプローチを基本としたものにしなければならない。
  2. 障害のある人々を含めるため、平等と、差別との闘いに焦点を絞った明確な目標に合意する。
  3. 障害のある人々の平等と非差別を、枠組み全体にわたる分野横断的な問題として含める。
  4. あらゆる分野において障害のある人々に関するターゲットと指標を確立し、報告活動及び監視活動に障害のある人々の参加を得るためには、障害別のデータが必要である。
  5. 新たな枠組みを開発するためのあらゆる意思決定プロセスにおける、障害のある人々の団体を含む、障害のある人々の参加
  6. 国際協力は、障害のある人々にとってインクルーシブでなければならない。障害に特化したプロジェクトを実施するとともに、すべてのプロジェクトを、障害のある人々にとってインクルーシブなものとすることを確保する。
  7. 障害のある人々は、新たな枠組みの下でのすべての国際的な連携の中心とならなければならない。これを確保するために、障害に的を絞ったマルチステークホルダーによる連携を確立する。

序論

不平等への取り組みに関する世界テーマ別コンサテーション(Global Thematic Consultation on Addressing Inequalities)の一環として、国連女性機関(UN Women)及び国連児童基金(UNICEF)は、2015年以降の開発課題において障害のある人々が直面する不平等への取り組み方に関する国際オンライン会議を、国際障害同盟(the International Disability Alliance)と共同で開催した。1,700名近くの人々が会議に参加し、全世界から数百名が積極的に発言した。

全体としてオンライン会議では、あらゆる生活分野において、障害のある人々はライフサイクル全体を通じて不平等に直面していること、そして、これらの不平等は、障害のある人々の疎外と差別をもたらすだけでなく、一般に社会的保護施策が欠けていることと相まって、障害のある人々(とその家族)を、貧困や極度の貧困の状態に陥れてしまうことがほとんど避けられず、生命まで脅かす可能性もあることが明らかになった。

障害のある人々は、障害特有の障壁にたびたび遭遇し、特に複数の差別にさらされるとともに、紛争、自然災害及びその他の人道的危機、環境の悪化、多国間機関及びその他のマクロ経済政策によって課せられる金融引き締め政策、南北間の富の不平等な分配などの状況下で、一般の人々に比べてますます弱い立場におかれている。

障害のある女性と少女は、特に性的暴力などの暴力の犠牲者となる危険があるが、現在の暴力防止のメカニズムでは、これらの女性と少女は、通常、考慮されていない。

オンライン会議において、不平等が特に気がかりであるとして、最も頻繁に言及された分野は、教育(「万人のための教育」は、障害のある子供達については実現しておらず、これらの子供達は、就学していない子供のかなりの割合を占めている)、雇用及び生計手段へのアクセス、水と公衆衛生へのアクセス、性と生殖に関する保健サービスを含む保健医療サービスへのアクセス(障害のある人々は性とは無関係であると見なす偏見とスティグマが原因)、参加と地域社会における生活からの疎外、スティグマと差別であった。

障害のある人々が直面している不平等

「障害のある人々は、完全な市民として平等な権利を得る資格がある。日々の生活の中で、障害のある人々は、疎外や社会への完全参加に対する制約と闘い続け、差別や虐待、権利の否定と貧困に直面している。」(アサベ・シェフ・ヤラドゥア財団(Asabe Shehu Yar'Adua Foundation))

障害に関しては、障害は分野横断的な問題であるため、社会的疎外、無力化、人間性の喪失、そして障害のある人々の権利の組織的な否定などをもたらす要素が組み合わさっていることが多いと、参加者らは強調した。ほとんどの参加者は、この問題が、広く蔓延している世界的な根の深い問題であることに同意した。その上、障害がジェンダーや地理的配置、年齢あるいは民族性と交錯するとき、障害のある人々が直面する不平等は増大する。最後に、多くの開発途上国では、25歳未満の人々が人口の半数以上を占めているにもかかわらず、障害のある若者の意見が、彼らの生活に影響を与える法律/開発の枠組みを策定するプロセスにおいて、聞き入れられないことがあまりにも多い。

参加と地域社会における生活からの疎外

参加者らは、障害のある人々にとって最大の障壁の一つは、社会に参加し、十分な情報を得た上で意思決定を行う平等な機会の欠如であるという意見を示した。これは、アクセシブルでない一般のサービスが原因であると言えるが、この結果、多くの場合、障害のある人々は隔離された施設に閉じ込められ、子供は家族から引き離されることになる。

「障害のある人々の参加と完全なインクルージョンは、どちらも障害のある人の権利に関する条約(CRPD)の一般原則で、あらゆる問題にまたがっており、同条約第4条第3項に明記されている締約国の明確な義務である。締約国はまた、国内レベルの条約実施の監視に、障害のある人々とその代表団体が完全に関与し、参加することを確保しなければならない。」(クリスタ・オラマ(Krista Orama))

障害のある人々には、政治的、法的及び経済的影響力が欠けていることが多い。障害のある人々の団体を通じて、一丸となって力を強めていく必要性が増している。

スティグマと差別

社会、家族及び個人による偏見は、障害のある人々が社会への完全参加の権利を行使する上で障壁となる可能性がある。ある参加者は、文化的な偏見から、障害のある人々は社会の平等な参加者ではなく、無力で貢献できないと考えられていると主張した。障害のある人々、特に女性と少女は、暴力の対象とされ、優生学の歴史もある。別の参加者によれば、これは障害の社会モデルに対する理解不足から来ているとのことである。

支援サービス及びリソースへのアクセス

質の高い教育へのアクセス

「障害のある子供は、教育へのアクセスを否定されることが多く、多くの国で優勢な選択肢とされていることが多い特殊教育制度の下で教育を受けるか、あるいは、アクセシビリティの欠如や研修を十分に受けていない教師、さらには親と学校職員の認識不足が原因で、早い時期に学校を辞めなければならない。」(ウラジミール・コック(Vladimir Cuk))

ほとんどの参加者は、教育はインクルーシブな社会の構築に重要であるということに同意した。識字に関する不平等は、MDGsのすべての教育目標の中で、引き続き最もなおざりにされている。国連教育科学文化機関(UNESCO)とヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)は、就学していない6700万人の子供のうち、3分の1が障害のある子供であることを確認している。インクルーシブな教育は、態度と文化を変容し、インクルーシブな社会に生きる恩恵について心を開く、素晴らしい機会をもたらす。

雇用及び生計手段へのアクセス

障害のある人々の大多数は、障害のない人々と比較して、雇用への不平等なアクセスという点で不平等に直面してきた。『障害に関する世界報告書(the World Report on Disability)』によれば、障害のある人々の失業率は、先進国においては障害のない人々の2倍である一方で、開発途上国においては、障害のある人々の80%以上が、失業中あるいは不完全雇用であると推定されるとのことである。さらに同報告書では、障害のある人々の失業率は、ジェンダー、民族性、年齢、障害種、地理的配置及び文化の影響も受けると述べている。参加者らは、そのおもな要因として、無知と、仕事に不可欠な機能を果たせるようにする合理的配慮が、これを受ける資格のある人に提供されないことがあげられるということで、意見の一致を見た。さらに障害のある人々は、固定概念、社会的疎外、そして、しばしば管理職や同僚及び雇用主からの恩着せがましい対応にも直面する。職場における無知のレベルも、現行法の順守に関する監視がないことに起因すると言える。その一方で、障害のある人々は、小規模事業開発の機会を得られれば、また、雇用されれば、多くの場合、成功を収め、定着率も高く、欠勤率も低いことが多い。

水と公衆衛生へのアクセス

「障害のある人々は、水と公衆衛生サービスに関する意思決定において、しばしば見落とされ、水利用者の委員会やWASHフォーラムあるいは政策決定に、代表が参加していない。その結果、サービスの計画と支給が、すべての人にとってアクセシブルなものではなくなり、物理的な障壁(段差や幅が狭い扉など)が生じ、尊厳の喪失につながる可能性がある。」(ルイザ・ゴスリング(Louisa Gosling))

安全で清浄な水と公衆衛生施設へのアクセスは、障害のある人々を含むすべての人の基本的な権利であり、その否定は、これらの人々の福利に深刻な影響を与える可能性がある。例えば、アクセシブルでないトイレと水施設は、障害のある子供、特に少女が、学校から落ちこぼれるおもな原因となっている。また、清浄な水と基本的な公衆衛生へのアクセスは、障害のある人の権利に関する条約(CRPD)の下で保証されている権利である。CRPD第28条は、障害のある人々の「自己及びその家族の適切な生活水準」に対する権利に焦点を絞っており、「これには、清浄な水を提供するサービスへの平等なアクセスの確保という締約国の義務が含まれる。」

性と生殖に関する保健サービスを含む、保健医療サービスへのアクセス

「障害のある女性と少女は、性的暴力に対して特に弱い立場にあり、学習の困難を抱えている人々と施設に収容されている人々は、特にリスクが高い。」匿名

障害のある人々は、障害のない人々と比較して、健康に関するニーズが満たされない度合が高い。参加者らは、障害があることで、日常生活における出費が多くなるという点に同意した。このような出費には、国や社会一般の援助はほとんど得られない。資金不足のために、障害のある人々は、しばしば人間の基本的なニーズを満たせなくなる。多くの場合、障害のある人々の生活水準が、保健及びその他のサービスへのアクセスを決定する。障害のある子供と大人は、家族から引き離され、施設で生活することを強制されることが頻繁にある。施設では一般のサービスを受けることができず、放置される場合もあり、そのことが今度は、完全参加と地域生活への貢献の能力に影響を与える。さらに、農村部に住んでいるか、あるいは都市部に住んでいるかによって、障害のある人々の間でも不平等が存在する。農村部で暮らしている人々は、サービスと支援へのアクセスが少ない。

2015年以降の開発の枠組みに関する重要な提言

「ジェンダー、教育、雇用、健康など、いかなるテーマに関する、いかなる開発の枠組みにおいても、障害を疎外できないように、障害を分野横断的なテーマとしてしっかりと確立することが、今後進むべき道である。」(ジェイヴド・アビディ(Javed Abidi))

これらの広く蔓延している根の深い不平等に取り組むために、また、障害のある人々の完全なインクルージョンを確保するために、MDG以降の枠組みに関する7つの提言を以下にあげる。

1.人権に基づく2015年以降の枠組み

新たな枠組みを人権に基づくアプローチを基本としたものにする必要性は、障害のある人々にとっては、新たな枠組みが、障害のある人の権利に関する条約(CRPD)と、障害のある人々にも適用されるその他すべての人権条約に従ったものとなることを意味する。国際労働機関(ILO)によって採用された「社会的保護の床(the Social Protection Floor)」イニシアティブもまた、社会の最貧層の多くを占めている障害のある人々に特に関連している。

2.独自の平等目標

特に障害のある人々を含めた平等に焦点を絞り、差別と闘うという明確な目標を持つ必要性

3.全分野にわたる問題としての障害

障害のある人々の平等と非差別は、また、2015年以降の枠組み全体にわたる分野横断的な問題として、障害に特化したターゲットと指標を掲げ、主流化されなければならない。障害の相互関連性も、不平等に取り組むプログラムや政策を一層成功させるために、強調されなければならない。

「例えば、政府の建物をアクセシブルにしても、サービスを利用する/サービスから恩恵を受ける障害のある人々の数の増加には必ずしもつながらない。これは、水や公衆衛生、公共交通機関、適切な支援機器へのアクセスを阻む障壁や、態度という障壁が、存在し続けるからである。」(マヘシュ・チャンドラセカール(Mahesh Chandrasekar))

4.障害別のデータ、ターゲット及び指標

この分野横断的アプローチを支持するために、あらゆる分野において障害のある人々に関するターゲットと指標を確立し、すべての報告活動及び監視活動に障害のある人々の参加を得るには、障害別のデータが必要である。国勢調査及びその他の一般統計手法に障害のある人々を含めること、定期的に国内障害調査を実施することによる、新たなデータセットの作成に特に努力しなければならない。

5.国際的な政策決定への参加

新たな枠組みの交渉段階に始まる、あらゆる意思決定プロセスへの障害のある人々の参加もまた、すべての分野において障害のある人々の完全なインクルージョンを確保するための重要な課題と考えられる。障害のある人々の代表団体(DPOs)の役割が、ここで特に問題となる。DPOsが効果的なパートナーとなるためには、的を絞った能力構築活動がしばしば必要となる。DPOsにはまた、知的障害のある人々の家族の団体も含まれる。

6.障害のある人々にとって完全にインクルーシブな国際協力

障害のある人の権利に関する条約(CRPD)第32条で義務付けられているように、国際協力は障害のある人々にとってインクルーシブでなければならない。脱施設化のイニシアティブなど、障害に特化したプロジェクトを含む二本立てのアプローチを採用し、公的調達の分野においても保護策及びその他の同様な政策を適切に設けることで、二国間機関及び多国間機関の資金提供を受けたすべてのプロジェクトを、障害のある人々にとってインクルーシブなものとすることを確保する。国連機関及び世界銀行は、これに関するグッドプラクティスの事例を提供しなければならない。同様に重要なのは、連携国、及びドナー国でも連携国でもある国が、南南協力を含むあらゆる協力の取り組みにおける障害のある人々の完全なインクルージョンを約束することである。

7.2015年以降の枠組みにおける障害のある人々のインクルージョンを促進する、障害に的を絞った連携

障害のある人々は、MDG以降の枠組みの下で確立されるすべての国際的な連携の中心となり、障害に的を絞ったマルチステークホルダーによる連携を、新たな枠組みのあらゆる側面における障害のある人々のインクルージョンを促進するものとし、これらすべてのプロセスへの障害のある人々の代表団体による効果的な参加を確保しなければならない。

このディスカッションについて

このディスカッションは、UNICEFのリーヴ・サッベ(Lieve Sabbe)と国際障害同盟のウラジミール・コックの司会により進められた。

本記事作成の時点で、「不平等への取り組み(Addressing Inequalities)」のサイトには4,500名が登録しており、障害のある人々に関するディスカッションには111件のコメントが投稿された。

注:括弧は、引用の際に変更や挿入がなされたことを示す。

免責条項:このディスカッション要約に記されている所見、解釈及び結論は、ディスカッション参加者のものであり、必ずしもUNICEF、国連女性機関、国連もしくは参加者の所属団体の方針や見解を示すものではない。


原文は、Final Discussion Summary - Persons with Disabilities (http://www.worldwewant2015.org/node/304822) に「Final Summary of the Online Discussion on Persons with Disabilities and Inequalities in the Post-2015 Development Agenda.」として、ワードで掲載されています。

関連情報:
Online consultation for a disability inclusive development agenda towards 2015 and beyond
http://www.worldwewant2015.org/enable