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沖縄県手話言語条例

(前文)
 手話は、手指の動きや表情などを用いる独自の語彙及び文法体系を有し、ろう者とろう者以外の者が、意思疎通を行うために必要な言語である。
 我が国の手話は、明治時代に始まり、ろう者の間で大切に受け継がれ、発展してきた。しかし、昭和8年にはこれと相反する発音訓練を中心とする口話法の導入により、ろう学校での手話の使用が事実上困難となった。
 沖縄県のろう学校においては、昭和13年頃までは手話が用いられていたが、昭和14年頃からは口話指導が始められた。
 沖縄県におけるろう者を取り巻く環境は、沖縄戦による沖縄県立盲聾唖(ろうあ)学校の焼失や米国統治及び日本復帰など大きく変遷した。
 そうした中、米国で風しんが流行し、半年遅れに当たる昭和39年から40年にかけて沖縄全域で風しんが流行した。琉球政府の要請を受けて昭和44年に行われた日本政府派遣検診班の検診報告書によると、339名の聴覚障害児の出生が明らかになった。
 その後、平成18年に国際連合総会において、言語には手話その他の非音声言語を含むことが明記された障害者の権利に関する条約が採択され、平成26年に我が国も批准した。
 また、平成23年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)では手話が言語であることが規定されたものの、手話に対する歴史的な経緯もあって理解が浸透している状況とは言えない。
 沖縄県では、平成25年に沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例(平成25年沖縄県条例第64号)を制定し、障害のある人もない人も全ての県民が等しく地域社会の一員としてあるゆる分野に参加できる共生社会の実現に取り組んでいる。
 手話は、確保されるべき意思疎通手段の一つとしての言語であるとしっかりと認識し、手話を使い生活を営むろう者とろう者以外の者が互いに理解し合える地域社会を構築するため、この条例を制定する。

(目的)
第1条 この条例は、手話が手指の動きや表情などを用いる独自の語彙及び文法体系を有し、ろう者とろう者以外の者が意思疎通を行うために必要な言語であることに鑑み、手話に対する理解の促進、手話を使用しやすい環境づくり、これらの手話の普及(以下「手話の普及」という。)に関し、基本理念を定め、県の責務及び県民の役割を明らかにするとともに、手話の普及に関する施策の基本となる事項を定めることにより、手話の普及に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

(基本理念)
第2条 ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し、手話が意思疎通を行うために必要な言語であるとの認識の下に、手話の普及を図るものとする。

(県の責務)
第3条 県は、前条に定める基本理念にのっとり、手話ができる者の協力を得て、手話の普及に関する施策の推進に努めるものとする。
2 県は、市町村と連携し、手話を学ぶ機会の提供、手話通訳者の養成その他の手話の普及に関する施策の推進に努めるものとする。
3 県は、学校教育における手話の普及のための取組への支援に努めるものとする。

(県民の役割)
第4条 県民は、手話に対する理解を深めるとともに、手話の普及に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(ろう者等による普及)
第5条 ろう者及び手話の関係団体は、手話の普及に関する施策に協力するとともに、自主的に手話の普及啓発を行うよう努めるものとする。

(学校における取組)
第6条 ろうである幼児、児童及び生徒(以下「ろう児等」という。)が通学する学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校をいい、大学を除く。)の設置者は、ろう児等及びその保護者に対し手話に関する学習の機会を提供するとともに、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(手話推進計画)
第7条 県は、手話の普及に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、計画を策定し、これを実施しなければならない。

(協議会の設置)
第8条 前条に規定する計画の策定又は変更に関する事項について、知事の諮問に応じ調査審議するため、沖縄県手話施策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。
2 協議会は、委員15人以内で組織する。
3 委員は、ろう者、手話に関係する者、学識経験のある者及びその他適当と認められる者のうちから、知事が任命する。
4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は前任者の残期間とする。
5 委員は再任されることができる。
6 前各項で定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(手話推進の日)
第9条 県民の手話に対する関心と理解を深めるため、手話推進の日を定める。
2 手話推進の日は、毎月第3水曜日とする。

(財政上の措置)
第10条 県は、手話の普及に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

附則

 この条例は、平成28年4月1日から施行する。ただし、第8条の規定は、平成28年6月1日から施行する。