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教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)

特別支援教育コーディネーター用

特殊学級や通級指導教室の担当者がコーディネーターに指名されている場合は,教員用の「6.通級指導教室及び特殊学級の担当者の役割」も参照してください。

1.校内の関係者や関係機関との連絡調整

校内の関係者や医療,福祉等の関係機関との連絡調整,保護者との関係づくりを行います。

(1)校内の関係者との連絡調整

校内委員会の推進役として,校内の教職員の連絡調整役を行います。(詳細はp30,「5.校内委員会での推進役(1)校内委員会での役割」を参照)。

(2)関係機関との連絡調整

  • 関係機関との連絡調整が必要になった場合の窓口となります。
  • 地域の乳幼児検診,発達相談や療育システム,医療機関について情報を収集し整理しておきます。必要に応じて教員や保護者へ情報を伝えます。
  • 校内の児童生徒についての情報を他機関から収集したり,他機関と情報交換をする場合は,保護者へ説明し理解を求めることが望ましいでしょう。
  • 医療機関や相談機関につなぐ場合は,結果のフィードバックやフォローアップ体制について事前に確認しておきます。 ケース会議のための情報収集と準備
  • 保護者の理解のもとに,以前,該当児童生徒にかかわっていた方々からも,情報を収集しておくことが望ましいでしょう。

(3)保護者との関係づくり

通常の学級の中で,特別な教育的支援を必要とする児童生徒に効果的な教育活動を行うためには,障害のある児童生徒の保護者のみならず,障害のない児童生徒の保護者への理解を進めることが大切です。
そのために学校として,自校の教育や対応の方針を具体的に説明し,理解を得ることは欠くことのできないものです。さらに,一人一人に対応した指導や個々のケースに応じた対応への理解を進めることも大切です。
保護者への理解を推進する上では,個人情報の保護の観点から情報の管理を慎重にし,誤解や学校への不信感が生じないよう配慮することが重要です。その上で,学校だよりやPTA活動,教育相談等の機会を活用してわかりやすく説明することが大切です。

2.保護者に対する相談窓口

保護者に対する学校の相談窓口となり,保護者を支援します。

(1)保護者の気持ちの受け止め

  • 保護者の気持ちの受け止めは,受容と共感を大切にしながら信頼関係が築けるように配慮します。
  • 保護者の児童生徒への願いや,課題と思っているところ,学習面,行動面,対人関係を丁寧に聞き取っていきます。
  • 必要に応じて保護者から家庭の様子,生育歴,療育や医療等の経過についての情報を把握します。

(2)保護者とともに考える対応策

  • 話合いの中から,状況を整理し,問題点や改善点について徐々に内容を絞っていき,答えを早急に求めないことが重要です。
  • 家庭,学校,関係者が共通理解をしながら,それぞれの立場でできることを考え,一貫性のある対応策が導き出せるようにしていきます。

(3)保護者への支援体制

  • 担任とコーディネーターが連絡を取り合うことを保護者に説明し,担任とともに組織的・継続的に保護者を支援することへの理解を得ます。
  • 状況によっては,校内委員会や専門家チームでの検討について説明します。
  • 学校体制として,例えば保護者からの相談窓口をコーディネーターだけでなく校内委員会のメンバーも含める等,複数の窓口を用意することも考慮します。

3.担任への支援

担任の教師に対して,相談に応じたり,助言したりするなどの支援を行います。

(1)担任の相談から状況を整理する

  • 担任から相談があった場合,担任の話に耳を傾けます。そして,話の内容や状況から児童生徒の情報を偏りなく多角的に聞き取っていきます。
  • 担任と一緒に,児童生徒を取り巻く状況の整理をしていきます。一緒に整理をするうちに,担任が自分の悩みを解決していく糸口が見つかる場合があります。

(2)担任とともに行う児童生徒理解と支援体制

  • 状況判断をし,担任ができることを見極めながら助言をしていきます。担任の児童生徒への理解を深めるために,総合的な理解を進めたり,今後の対応への見通しを説明したりすることが大切です。
  • 校内における組織的な支援体制や,担任への支援体制の模索を行っていきます。

なお,児童生徒が直接相談に来た場合は,ていねいに事情を聞き,相談内容を把握した上で,担任と連携をとり,児童生徒を取り巻く状況を整理していきます。

4.巡回相談や専門家チームとの連携

校内での適切な教育的支援につながるよう教育委員会に設置されている巡回相談や専門家チームとの連携を図ります。

(1)巡回相談員との連携

  • 校内委員会として,年間を通じて巡回相談員の相談日,相談者の調整を行います。
  • 巡回相談員の校内委員会への参加も含めて校内の相談体制づくりを模索します。
  • 巡回相談員と,ケースについての話合いができることが望ましいでしょう。

(2)専門家チームとの連携

専門家チームへの判断依頼

  • 校内委員会において,専門家チームに依頼する必要についての検討をします。
  • 専門家チームに報告する資料を校内委員会の構成員が分担して作成し提出します。(校内委員会で収集した情報,校内委員会における実態把握・評価と判断,個別の教育支援計画や個別の指導計画,専門家チームに依頼する理由と依頼の内容等)
  • 専門家チームに判断を求める前には,保護者に十分な説明を行い理解を得ることが大切です。

専門家チームからの指導・助言の活用

  • 専門家チームへの連絡調整と専門家チームからの情報を収集します。
  • 専門家チームからの助言を,個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成や改善,校内での支援につなげていきます。

5.校内委員会での推進役

校内委員会の適切で円滑な運営がなされるよう推進役を担います。

(1)校内委員会での役割

  • 特別な教育的支援を必要としている児童生徒のニーズを把握し,校内委員会が運営されるように,長期的,短期的見通しをもちながら会議に臨むことは,推進役として大変重要なことです。その際,保護者と連絡して進めることが大切です。
  • 校内委員会においては,児童生徒についての情報提供や専門家チームへの判断を依頼するための協議を円滑にできるように推進していきます。
  • 個別の指導計画については,校内委員会で話合いをしながら作成し,コーディネーターとして援助できることや校内での支援の役割を明確にすることが重要です。

(2)校内の状況の把握と情報収集の推進

教職員の気付きとニーズの把握

  • 学習面,行動面で気になる児童生徒が学校,学級にいる場合や,児童生徒への指導について悩んでいる教員がいる場合等,コーディネーターや校内委員会が校内の状況を把握できるような校内体制をつくるよう提案していきます。
  • 問題行動などが見られる場合には,早急な対応が可能な機動性のある体制がとれるようにします。

保護者のニーズの把握

  • 日頃から,保護者の学校への要望やニーズを把握しておきます。
  • 保護者が子どもについて気になるとき,学級担任以外にも,コーディネーター等の相談窓口があることを広報しておきます。

校内リソースの把握

(3)ケース会議の開催と校内委員会

ケース会議のための情報収集と進め方

  • ケース会議が必要と考えられる児童生徒については,校内委員会だけでなく,必要に応じて柔軟にかかわりのある人たちで小さなチームをつくってケースを検討する会議を運営します。
  • 保護者の協力のもとに,以前,該当児童生徒にかかわっていた方々から,情報を収集できるよう連絡調整してみることが望ましいでしょう。
  • 会議の進め方として,児童生徒の状況報告,児童生徒の現状と課題の明確化,これからの具体的な取組みや指導方針の確認等が考えられます。

ケース会議の結果と校内委員会

  • ケース会議の結果を記録して,個別の指導計画につなげます。
  • コーディネーターは,小グループでのケース会議の実施状況を把握し,会議の内容を校内委員会で報告し合い,職員間の共通理解を図るとともに,必要に応じて校内委員会で専門家チームに判断等を依頼するかどうか検討します。

(4)個別の教育支援計画の作成に向けて

個別の教育支援計画とは,該当の児童生徒に対して,乳幼児期から就労までの長期的な視点で部局横断的に関係機関(教育,福祉,医療等)が連携して作成するものです。作成に当たっては,例えば「個別の教育支援計画」策定検討委員会を設置して検討を行うことも考えられます。また,作成作業においては保護者の積極的な参画を促し,計画の内容や実施について保護者の意見を十分に聞いて,計画を作成・実施し改善していくことが重要です。個別の教育支援計画については,第1部の「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み」や,第5部の保護者用「3.学校との連携(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画」を参照してください。

個別の教育支援計画については,これまで取組がほとんど行われていないことなどから,児童生徒の状況や学校の実情等に応じて,まずは保護者との連携を図りながら情報を収集して作成にとりかかることとし,作成・実施・評価のプロセスを通して改善を加えていくことが大切です。

  • 個別の教育支援計画の作成に当たり,外部の関係者・関係機関と連携協力する際の重要な役割を果たします。
  • 幼稚園・保育所等から小学校,中学校の関係機関等の間での情報の交換を行うことが大切です。
  • 個別の教育支援計画に記載された内容については,十分に把握していることが大切です。また,収集した情報を整理し,個別の教育支援計画の改善の際に活用しやすいようになっていることも大切です。
  • 個人情報については,適切な取扱いがなされるように留意します。

(5)校内委員会での個別の指導計画の作成への参画

個別の指導計画については,第1部の「3.特別支援教育とは(2)特別支援教育を支える仕組み」,教員用「2.個別の指導計画の活用」や,第5部の保護者用「3.学校との連携(4)個別の教育支援計画と個別の指導計画」を参照してください。

・ 校内委員会で,個別の指導計画に盛り込む基本的な事項(例:児童生徒の状態・状況についての判断,指導・援助についての基本方針等)を検討します。

・ 作成された個別の指導計画を校内での会議等で報告し,教職員間の共通理解を図ります。コーディネーターとしては,共通理解の徹底,個別の指導計画が実施されやすいような支援体制の提案,その他必要な連絡調整を行っていきます。
・ 実施後の評価は,指導に当たる教員とともに,校内委員会において評価を行います。それに基づき,個別の指導計画の必要な改善を行っていきます。なお,学期ごとや学年ごとなど定期的に評価を行うことが望ましいでしょう。

(6)校内研修の企画と実施

研修会の立案

  • 教職員の特別支援教育に関する意識や知識を把握するとともに,研修内容等の要望も聞いて,LD,ADHD,高機能自閉症についての具体的な知識,指導の方法等,研修会で目指すことを明確にします。
  • 年間計画については,教職員の理解が具体的な支援につながる研修内容を企画します。

研修会の実施と評価

  • 外部の講師には,事前に校内の教職員の特別支援教育に関する理解やニーズ,学校の状況についての情報を提供しておきます。
  • 実施後は,実際の学級経営や指導に役立っているか,教職員の意見をていねいに収集しながら,次回の研修会の内容の改善に役立てます。

6.校内での連絡調整の例(様々な対応のヒントとして)

例えば,相談への対応といっても,担任からの場合や保護者からの場合など様々な場合が考えられます。ここでは,いくつかの場合を想定して,対応方法のヒントとなるよう連絡調整の例を紹介します。

担任から児童生徒についての相談を受けた場合

《 ポイント》児童生徒を自分自身で観察すると,相談内容が把握しやすくなります。

担任から相談を受ける → 児童生徒を観察する → 再度担任と相談する → 担任と具体的対応を考える

保護者からの相談に対応する場合

《ポイント》保護者とは,一度で完結させようとしないで,ていねいに連絡を取り合うようにします。

保護者から相談を受ける → 担任と相談内容を検討する → 児童生徒を観察する → 再度保護者と相談する → 支援策について校内委員会で検討する

少人数のチーム体制で弾力的に対応する場合

《 ポイント》コーディネーター,担任,保護者といった少人数のチームをつくり,速やかに弾力的に対応することが考えられます。

保護者から相談を受ける → 少人数のチームをつくる → 少人数のチームで具体的な対応を検討する → 具体的な支援を速やかに開始する → 校内委員会に報告する

巡回相談員へ担任が相談する場合

《 ポイント》時間に制限があるので,効率よく相談できるよう事前に相談内容の整理と情報収集をしておく。

担任からの相談希望を受ける → 巡回相談員,担任と相談時間の設定をする → 少人数のチームで具体的な対応を検討する → 児童生徒を観察する,情報収集,相談内容を整理する → 担任と同席の上,巡回相談員と相談する → 支援策について校内委員会で検討する