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門川委員提出資料

『世界』臨時増刊号No.799「大転換 新政権で何が変わるか、何を変えるか」
VII 新政権、私の期待、私の懸念 pp.234-235
岩波書店 2009年12月1日発行

障害者福祉に求められるのは「応要支援」だ

東京大学 福島智(ふくしま・さとし)

 一九六二年、神戸市生まれ。九歳で失明、一八歳で盲ろう者となる。母親の 考案した「指点字」と、それをもとにした「指点字通訳」によってコミュニケ ーション手段を得る。盲ろう者として初めて大学進学を果たす。現在、東京大 学先端科学技術研究センター教授。専攻はバリアフリー学。

 民主党が政権をとり、障害者施策にも大きな転機が訪れた。九月一九日、長 妻昭厚生労働相は障害者自立支援法を廃止する方針を明言した。
自立支援法は身体、知的、精神の三障害者に対するサービスを一本化して障 害者の地域での自立生活を支援するという理念を掲げて〇六年四月に施行され た。しかし、サービス利用量に応じて原則一割を支払う「応益負担」となった ことで障害者や関係者らから反発を招いた。前政権では2度の特別措置で負担軽 減策が講じられたが、今も廃止を求める声は根強い。
 一方、福祉サービスに原則1割の自己負担を求める同法は、憲法が定める「法 の下の平等」などに反するとして全国各地で違憲訴訟が起こされた。この訴訟 についても、国側が係争方針の転換を表明した(広島地裁、9月24日)。
 民主党はマニフェストにおいて、「『障害者自立支援法』は廃止し、『制度 の谷間』がなく、サービスの利用者負担を応能負担とする障がい者総合福祉法  (仮称)を制定する」とした。違憲訴訟における国側の方針転換は民主党のこ のマニフェストの実現の一環であり、そのこと自体は評価できる。しかし、自 立支援法が内在させた「違憲性」についての審理があいまいになりかねないこ とが懸念される。
 また、この問題に関して民主党のマニフェストにも、次の二つの点で課題が あると考える。第1は、「応益負担から応能負担に」というマニフェストで掲げ られた新方針自体が、理念的には理想といえない点だ。障害者の自己負担が軽 減されることはもちろん望ましい。だが、問題は生存と自立に不可欠な支援が 有料だという制度設計の根幹自体にあるのではないか。
 「自宅のトイレにいく際の介助」、「呼吸器で呼吸する際のケア」、「だれ かと会話をする折の通訳」などにそれぞれ料金が伴うことは適切ではない。ト イレにいき、息をして、会話をする、といった人としての最低限の営みのため に不可欠な支援を受けることを、「商品としてのサービス」を受けるかのよう に取り扱うのは不適切だ。求められることは、「応益負担」でもなく、「応能 負担」でもない、必要に応じた支援、つまり「応要支援」ではないか。
 第2は、支援の質と供給量をめぐる問題だ。たとえ障害者の本人負担が一定程 度軽減されたとしても、必要とされる良質な支援の絶対量が十分でなければ意 味がない。
 マニフェストでは自立支援法の抜本的見直しと新たな法制度の構築のために 400億円程度充てるとされているが、障害者が抱える困難や支援の必要性の深刻 さに対してこの額はあまりに少ない。これだと障害保健福祉関連の21年度予算 額の4パーセントにすぎず、自立支援法関連の前政権の特別対策よりもかなり少 ない。抜本的な制度の組み替えをするならば、支援の供給自体の量質両面での 拡充を図るべきで、そのためには相応の予算を組むべきだ。
 もちろん、財源の問題はある。その意味で、歳出の適正化を前提とした増税 も避けられないだろう。私たちは強迫的に経済成長を目指す社会ではなく、障 害者を含めたすべての国民の生活の安定を最優先とした落ちついた社会を望ん でいるのではないだろうか。