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障がい者制度改革推進会議

DINFのお知らせ

シンポジウム 「もっと知ろう、デイジー教科書を!」
日時:2013年02月03日(10:30~16:00)
場所:戸山サンライズ 大研修室
 

Enjoy Daisy 読めるって楽しい!

公益財団法人日本リハビリテーション協会は国際シンボルマークの取扱いを行なっています。

障害者福祉の総合月刊情報誌『ノーマライゼーション』発売中

マルチメディアDAISYのCD-ROM付き絵本『赤いハイヒール』発売中

障がい者制度改革推進会議 第7回(H22.4.12) 竹下委員提出資料

私たちももっと本を読みたい!
~障害者・高齢者の読書バリアフリーを目指して~

2010年国民読書年に障害者・高齢者の読書バリアフリーを実現する会

〒169-0051東京都新宿区西早稲田2-18-2日本盲人福祉センター2F日本盲人福祉委員会内
電話 03-5291-7885 ファックス 03-5988-9161
メールアドレス 2010@dokusho.org ホームページ http://yomitai.exblog.jp/

2006年12月、「障害者の権利条約」が国連で採択されました。

わが国もすでに2007年9月、この条約に署名しており、現在批准に向け国内法の整備が進められているところです。

本条約の目的では「障害者すべての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障すること」謳われています。

具体的には、第二十一条で「締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意志疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者と平等に情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。」と規定されています。

第二条で「意志疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)と定義されています。

また、第三十条では「締約国は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利も認めるものとし、障害者が利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受することを確保するためのすべての適当な措置をとる。」とも定められています。

そして、2008年6月には、国会で2010年を国民読書年とすることが全会一致で決議されました。

このような情勢の中、障害者や高齢者にとってアクセスできる情報の普及や読書の環境を整備することは、「国連障害者の権利条約」に批准するための国内法整備や、日本国憲法が定める法の下の平等という観点だけでなく、障害者や高齢者の自立と社会参加を促進することにもつながります。さらに知的財産のユニバーサルデザイン化は、わが国の知的で活力ある文化の形成や力強い経済活動に貢献するための基礎的な環境整備ともいえます。

そこで、私たちももっと多くの本が読めるように、次の3つの事項を要望します。

1.出版社による活字図書のアクセシビリティ保障

著者によって書かれた文学作品は通常、出版社によって発行され、書店などで販売されています。

しかし、視力の弱い弱視者や高齢者には、通常の活字の大きさでは読めないこともあります。また、目の見えない全盲者にとっては、活字を点字や音声に変換する必要があります。

多くの学習障害者にとっては、通常の活字を読書することに何らかの困難があるといわれていますが、その読書困難を取り除くためには、書体を変更したり、音声は併用することなどが有効とされています。

そこで、ほとんどの活字図書を発行している出版社の社会貢献責務として、出版社自らが拡大図書や音声図書、点字図書を発行することが望まれます。

しかし、実際、小さな出版社や発行部数の少ない書籍の場合、このようなさまざまなニーズに応じたバリアフリー媒体の発行は現実的とは言えません。

そこで、当分の間その橋渡しとなるのが、電子データということになります。すでにいくつかの出版社が電子書籍の販売をおこなっていますが、使い勝手のよいデータであれば、拡大や点字、音声への変換も比較的容易に進められます。

ユニバーサルな社会を実現するうえでも、出版社には本の発行過程で作られる電子データを販売していただき、障害者や高齢者でも健常者と同じように発売初日に本が読めるような「買う自由」を与えていただきたいのです。

【法的根拠】

■障害者基本法 第三条(基本的理念)

2 すべての障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。

第六条(国民の責務)

国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。

2 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができる社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

■文字・活字文化振興法 第三条

文字・活字文化の振興に関する施策の推進は、すべての国民が、その自主性を尊重されつつ、生涯にわたり、地域、学校、家庭その他様々な場において、居住する地域、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを旨として、行わなければならない。

2.図書館内のバリアフリー媒体の充実

これまで視覚障害者のための点字図書や音訳図書の提供は、おもに点字図書館などの視覚障害者情報提供施設が担ってきました。

一方、全国に約3100ある地域の公共図書館のうち、障害者・高齢者サービスをおこなっているのは約600に過ぎません。しかし、65歳以上の人が2800万人という超高齢化社会を迎えた今日、身近な地域の公共図書館にも障害や身体的条件に応じた図書を所蔵していただき、すべての国民に開かれた図書館サービスの展開が望まれます。

また、地域の学校には、特別支援学校よりもはるかに多い弱視や読み書きに困難のある学習障害児童・生徒が在籍しています。

そこで、地域の学校図書館にも拡大図書や音訳図書などの蔵書を増やし、それぞれの状況に応じた図書環境を充実することが必要です。

【法的根拠】

■国連障害者の権利に関する条約 第九条 施設及びサービスの利用可能性

1.締約国は、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、障害者が、他の者と平等に、都市及び農村の双方において、自然環境、輸送機関、情報通信(情報通信技術及び情報通信システムを含む。)並びに公衆に開放され、又は提供される他の施設及びサービスを利用することができることを確保するための適当な措置をとる。この措置は、施設及びサービスの利用可能性における障害及び障壁を特定し、及び撤廃することを含むものとし、特に次の事項について適用する。

2.情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に係るサービスを含む。)

2.締約国は、また、次のことのため適当な措置をとる。

1.公衆に開放され、又は提供される施設及びサービスの利用可能性に関する最低基準及び指針の実施を発展させ、公表し、及び監視すること。

2.公衆に開放され、又は提供される施設及びサービスを提供する民間の団体が、障害者にとっての施設及びサービスの利用可能性のあらゆる側面を考慮することを確保すること。

6.障害者による情報の利用を確保するため、障害者に対する他の適当な形態の援助及び支援を促進すること。

7.障害者による新たな情報通信技術及び情報通信システム(インターネットを含む。)の利用を促進すること。

8.情報通信技術及び情報通信システムを最小限の費用で利用可能とするため、早い段階で、利用可能な情報通信技術及び情報通信システムの設計、開発、生産及び分配を促進すること。

■教育基本法 第四条(教育の機会均等)

すべての国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2.国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

■子どもの読書活動の推進に関する法律 第二条

子ども(おおむね十八歳以下の者をいう。以下同じ。)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かのものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。

3.国立国会図書館の電子図書館アーカイブのアクセシビリティ確保

現在、国立国会図書館が展開している近代デジタルライブラリーや電子図書館アーカイブは、本のページを画像のようにPDFで表示しているため、視覚障害者などが使う音声読み上げソフトには対応していません。文字の書体を変更し、太く大きく表示することもできません。

そこで、これらの電子図書館のデータ形式を変更し、拡大文字で表示したり、スクリーンリーダーでも読み上げが可能となるようなホームページにしていただきたいのです。

現在、国会図書館を中心に検討されている「電子出版物流センター」構想の中でも、インターネット上の電子図書の利点は「いつでも、どこでも、だれでも」利用できることにあるといわれています。その「だれでも」という意味は、障害の有無や身体的条件に関わらず、すべての国民が平等に利用できることにもあると考えます。電子データの利点が最大限生かされるようなユニバーサルデザイン的な制度設計を要望します。

【法的根拠】

■日本国憲法 第十四条

すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

■国立国会図書館法 第二条

国立国会図書館は、図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供することを目的とする。


障害者及び高齢者の読書環境の改善に関する法律(読書バリアフリー法)(案)
~提案の背景~

1.国際条約と国内法

2006年12月、「障害者の権利条約」が国連で採択されました。我が国も既に2007年9月、この条約に署名しており、現在批准に向け国内法の整備が進められているところです。本条約の目的では、「障害者がすべての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障すること」とうたわれています。具体的には第二十一条で「締約国は、障害者が、第二条に定めるあらゆる形態の意思疎通であって自ら選択するものにより、表現及び意見の自由(他の者と平等に情報及び考えを求め、受け、及び伝える自由を含む)。についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。」と規定されています。第二条で「意思疎通」とは、言語、文字表記、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用可能なマルチメディア並びに筆記、聴覚、平易な言葉及び朗読者による意思疎通の形態、手段及び様式並びに補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用可能な情報通信技術を含む。)と定義されています。また、第三十条では「締約国は、障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、障害者が次のことを行うことを確保するためのすべての適当な措置をとる。(1)利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受すること。」とも定められています。

国内でも障害者の生活を改善するための法整備が進められています。障害者基本法では、第三条の基本的理念として「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。」と規定されています。2006年には従来の交通バリアフリー法とハートビル法を改め、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が制定され、公共交通機関や建築物などのアクセシビリティはバリアフリー化やユニバーサルデザイン化に向け、大きく進展しています。

また、2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定されましたが、その第二条に「子ども(おおむね十八歳以下の者をいう。以下同じ。)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊なものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。」とあります。2005年7月に成立「文字・活字文化振興法」の第三条には、「文字・活字文化の振興に関する施策の推進は、すべての国民が、その自主性を尊重されつつ、生涯にわたり、地域、学校、家庭その他の様々な場において、居住する地域、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを旨として、行わなければならない。」と定められています。

2008年6月には、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」いわゆる「教科書バリアフリー法」が成立し、検定教科書の電子データの提供を教科書出版社に義務付けるとともに、提供された電子データは文部科学大臣から拡大教科書や点字教科書等の作成者に提供されることや教科書出版社による拡大教科書の発行の努力義務などが規定されました。

また、2009年6月には、著作権法も改正され、第37条3項は「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であって、視覚によりその表現が認識される方式により公衆に提供され、又は提示されているもの(該当著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によっては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信を行うことができる。」と改められました。

2.今日の障害者・高齢者を取り巻く読書環境の現状

弱視児の学習を例に考えても教科書バリアフリー法は成立しましたが、教科書以外の教材や一般図書の拡大文字版をどのように供給していくかなどの問題は残されております。視覚障害に限らず上肢障害や発達障害のある障害者にとっても読書を楽しむためには様々なバリアが残されているというのが現状です。

また2015年には、日本国民の25%が65歳以上となることが想定されていますが、高齢者には、視力、聴力、認知力の衰え、手足の不自由などの特別なニーズが少なからず生じます。また障害者・高齢者にとってアクセスできる情報入手や読書の環境を整えることは「国連障害者の権利条約」に批准するための国内法整備や日本国憲法が定める基本的人権の尊重という観点だけでなく、障害者の自立と社会参加を促進し、高齢者の文化的生活を保障することでもあります。更には、我が国の知的で活力ある文化の形成や力強い経済活動に貢献する基礎的な環境整備にもつながります。

(1) 点字

著作物を点訳することは著作権法第三十七条において「公表された著作物は、点字により複製することができる。」と規定されておりましたので、点字出版所や点字図書館、点訳ボランティアにより今日まで数十万タイトルの点字図書が製作されてきました。それらは視覚障害者を対象にインターネットでもダウンロードできるようになっています。このように点字図書の普及には、日本点字図書館をはじめ、全国の視覚障害者情報提供施設が大きな役割を果たしています。

ただ、新刊図書については点訳作業に時間がかかるため、発売日に読みたいというニーズがあるにも関わらずどうしても時差が生じています。

(2) 音声

著作物を音訳した音声図書もカセットテープやDAISYにより、視覚障害者情報提供施設で貸し出されています。ただ、点字と異なり、著作権法では複製する場所や目的が制限されておりましたので、点字図書館に関わらないボランティアが音訳作業を行う際には著作権者に許諾を得なければならないという状態が続いておりましたが、2009年の著作権法の改正により、公共図書館や学校図書館などについては善処されることになりました。

音訳も点訳と同様に作業時間が必要なため、新刊図書を発売と同時に障害者に手渡すということはできません。

出版社からオーディオブックという形で録音図書が発売されているケースもありますが、その数はまだそれほど多くありません。

(3) 拡大文字

これまで著作権法では拡大教科書についてのみ著作権の制限が規定されておりましたので、拡大写本ボランティアが副教材が参考書、一般図書の拡大版を製作しようとする時は著作権者に許諾を得なければならないという状態が続いてきました。これも2009年の著作権改正により、図書館の下であれば、著作権者に許諾を得なくても作成できるようになります。しかしながら音訳の場合も同じですが、図書館に関わらない地域の拡大写本ボランティアなどが不特定多数の障害児に音訳図書や拡大写本を提供しようとする時は著作権者の許諾を得なければならないという状態は続きます。現在は、拡大写本ボランティアのエネルギーもほとんどが拡大教科書製作に注がれていますので、一般図書の拡大版は全国的にもかなり数は少ないと言えます。今後、拡大教科書が教科書出版社によって製作されるようになれば、拡大写本ボランティアも教科書以外の図書の拡大文字化に取り組めるようになりますが、現状は福祉ベースとしても点字や音声に比べ、かなり立ち遅れている実情があります。

3.諸外国の状況

欧米諸国では、長距離をドライブする時に長編小説を聞きながらドライブを楽しむという文化も定着しており、オーディオブックの販売が広がっています。イギリスのグロスター公共図書館では16ポイントと25ポイントの2種類の拡大図書の提供も行われています。また、米国には障害を持つアメリカ人法(ADA:Americans with disability act)があるため、障害者に対する差別が法的に禁止されており、「合理的配慮」という理念の下に障害者のニーズに応じた情報が保障されています。「合理的配慮」とは、国連障害者の権利条約では、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものと定義されています。また、公正な目的であれば著作権者の許諾を得なくても複製できるというFair Use規定も整えられているため、障害者の情報格差の一因となり得る著作権許諾という足かせは米国にはありません。

4.求められる共通理念「One Source, Multi Use」

障害者や高齢者の読書環境整備として理想的なのは、通常の活字図書の他に拡大図書、点字図書、音声図書、電子図書などが選択肢として揃うことです。そこで、具体的にどのような制度を設計するかが課題になります。最終的な目標は障害者や高齢者のためにも健常者と同様にそれぞれの媒体について「買う」という自由と「借りる」という権利を選択肢の両輪として確立することにあります。つまり、障害者や高齢者の読書を保障する鍵を握るのが出版社と図書館ということになります。ここで大切な理念は「One Source,Multi Use」ということです。この理念は、障害のある人が自分の読みやすいスタイルで読めるように、元の著作物データ(One Source)を効率よく変換して、いくつかの媒体で利用(Multi Use)することです。このような理念を実現するためのユニバーサルデザインとなるOne Sourceが「電子データ」です。電子データが加工しやすく、かつ障害者や高齢者がアクセスできる状態になっていれば、出版社もしくはボランティアが、それぞれのニーズに応じて媒体を変換することはそれほど大きな負担ではありません。国連障害者の権利条約では、「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計と定義されています。もっとも障害者や高齢者がパソコン上で電子データを利用し、文字を大きくしたり、合成音声で聞いたり、点字ディスプレイで読むことなどができますので、時差なく且つ自力で情報にアクセスすることも可能になります。実際に講談社などの数社ではありますが、ドットブック(.book)という形式で電子図書の販売を始めている出版社もありますし、障害者にテキストファイルを頒布しているところもあります。また、既にデジタル化が進んでいる電子辞書は多くの視覚障害者に活用されています。

5.「読書バリアフリー」を目指した施策

まず「文字・活字文化振興」という社会的な役割を考えると、出版社には拡大図書、点字図書、音声図書などのバリアフリー媒体の発行に取り組んでいただきたいところです。ただ、すべての図書のバリアフリー出版を今すぐ求めてもやや非現実的と言えます。よって当分の間、漫画や写真集などの書籍は対象から除き、文庫本などのように活字を中心に編集される書籍に絞り、電子データの発売を求めるのが現実的な出発点と考えます。これは出版社にとても潜在的なマーケットの拡大につながるわけですが、同時にこのような事業に積極的に取り組む出版社の税制を優遇するなどのインセンティブの付与も求められるところです。

公共図書館や学校図書館には拡大図書や音声図書などのバリアフリー媒体の蔵書の充実に努めることが期待されます。既に6800名強の視覚障害児童・生徒が小・中・高等学校等に在籍していますし、学習障害者の多くにも文字の読み書きに何らかの困難があるとも言われています。しかしながら、全国に3100箇所ある公共図書館の内、障害者サービスを展開しているのは600程度に過ぎませんし、学校図書館においても拡大図書や音声図書はほとんど所蔵されておりません。

国立国会図書館の電子図書館には、視覚障害者でもアクセスできるようスクリーンリーダーによる読み上げや拡大表示にも対応するような情報提供が求められます。また国立国会図書館法では、日本国民に対する図書館奉仕も設置目的の一つに規定されています。著作権法でも国会図書館だけには著作権者に許諾を得なくても蔵書のデジタル化が認められることになり、その作業にも国民の税金である予算が投入されております。この著作権法が改正された参議院文教科学委員会の付帯決議でも「国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設として図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること。」という事項が決議されています。しかしながら現在国会図書館が提供している近代デジタルライブラリーなどはバリアフリーにはなっておりません。唯一の国立の図書館にこそ障害者や高齢者がかかえる情報格差を解消する一助を担ってもらいたいと考えます。

更に法制度にはなじみませんが、老人ホームや病院の眼科病棟、福祉施設などにもバリアフリー図書の普及に尽力いただければ、当事者の受益だけでなく国民の多様性への理解と寛容も深まっていくことでしょう。もし読書から縁遠くなってしまった人が再び本に親しめるようになれば、国民全体の総読書量を増やすことにもなり、結果的に出版産業の振興や図書館の更なる活性化も展望されます。

著作権法については、著作権者の許諾を得なくてもバリアフリー媒体の作成に取り組める者を政令で点字図書館や公共図書館などに限定するのではなく、非営利で障害者や高齢者の情報を保障しようとするすべてのボランティアや支援者に対象を広げるような日本版Fair Use規定の導入が求められます。

このような施策を推進していくためには、障害者や高齢者の読書環境を改善していくための具体的な法制度と出版社などの民間活力、著作権者の理解、ボランティア団体との連携などの総合的な体制の整備が必要です。そして、2010年の「国民読書年」を契機に障害の有無や年齢、身体的条件に関わらずすべての日本国民が知的で文化的な読書活動に親しめるような環境の整備が望まれます。

読書バリアフリー法 賛同団体一覧

日本盲人福祉委員会
全日本視覚障害者協議会
全国音訳ボランティアネットワーク
出版UD研究会
バリアフリー資料リソースセンター
弱視者問題研究会
企業組合カトレア・サービス
あいち学齢児童デイ連絡会
伊勢湾台風物語バリアフリー上映実行委員会
岡山拡大写本の会
スピリチュアリズム点字文庫
拡大写本こくぶんじ
東京音訳グループ連絡会
L.V.P.(Low Vision Partners)親子の会
拡大写本グループ eye・キャン
国立がんセンター小児科親の会 COSMOS会
東京女子大学カウンセリング研究会
NPO法人 ウィスタリアブック
坂戸拡大写本の会
視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)
公共図書館で働く視覚障害者職員の会(なごや会)
神奈川視覚障害者の生活と権利を守る会
JRPS神奈川支部
大阪ADHDを考える会「のびのびキッズ」
視覚障害者のバリアフリーをめざす会
網膜芽細胞腫の子どもをもつ家族の会「すくすく」
インテグラル(理数点訳グループ)
東京女子大学同窓会横浜支部
鎌倉点訳奉仕団夜間グループ
横浜市社会福祉協議会(英点)
VOICE神奈川
オカト・ファミリエ
やしの実
藤沢 理数点訳グループ
藤沢 指で読む絵本部
すぎな点字の会
保土ヶ谷点訳サークル「虹」
あじさいの会
拡大写本「花みずき」
鎌倉点訳赤十字奉仕団(木曜)
保土ヶ谷録音グループ「はし」
浦和・歴史に学ぶ会
ばねの会
聖書キリスト教会「のぞみ教会」
点訳ねっとわーく麦 点訳班
点訳ねっとわーく麦 拡大図書班
点訳ねっとわーく麦 点図版
港北録音グループ 駒井 朱美
朗読の会「うぐいす」
麦の会(図書館ボランティア)
スヌーピー(図書館ボランティア)
白幡こぶしの会
オリーブの会(図書館ボランティア)
はすの実(図書館ボランティア)
らびっと
デイジー横浜
株式会社ユーディット


新聞記事 論点 読書をバリアフリー化

論点 読書をバリアフリー化

障害者・高齢者に情報格差

宇野和博(うの・かずひろ)

筑波大付属視覚特別支援学校教諭。著書に「拡大教科書がわかる本」など。39歳。

2010年は国民読書年である。本は私たちの文化的な生活を支え心を豊かにしてくれるだけでなく、過去からの英知を受け継ぎ、未来へと引き継ぐべき崇高な知的財産と言える。だが、日本には通常の活字図書をそのままでは読むことができない視覚障害者や、読み書きに困難のある学習障害者、低視力の高齢者が数百万人いると推計されている。これは、読みたくても読めないという由々しき情報格差だ。そこで求められるのが「読書バリアフリー」である。

1990年代から主に建物や交通機関を中心に「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」という考え方も普及し始めたが、この理念は知的財産や情報にも当てはめるべきだろう。拡大文字や点字、音声といったニーズに応じた読書媒体を選択肢として保障し、障害者や高齢者にも多くの本を「買う」自由と「借りる」という権利を選択肢の両輪として確立することが求められる。

その鍵を握るのが出版社と図書館だ。今日の読書は従来のように「本屋で本を買って読む」「図書館で借りて読む」といった方法以外にも「電子書籍をインターネットからダウンロードして携帯電話やパソコンで読む」など様々な形態も見られるようになってきた。この電子データが読書困難者を救う試金石となり得るのである。

電子データが加工しやすく、かつ障害者や高齢者がアクセスできる状態になっていれば、図書館やボランティアがそれぞれのニーズに合わせて読みやすい媒体に変換することはそれほど大きな負担ではない。もっとも障害者や高齢者がパソコン上で自ら電子データを利用し、文字を大きくしたり、合成音声で聞いたり、点字ディスプレーで読むこともできるため、情報に時差なく自力でアクセスすることも可能になる。

しかし、現在の国立国会図書館の電子図書館はバリアフリーになっていない。また、全国に約3100ある公共図書館で障害者サービスを行っているのは600程度に過ぎない。知の宝庫とも言える図書館には地域の読書困難者にも利用できるような拡大図書や音訳図書などのバリアフリー媒体を所蔵し、いつでもどこでもだれでも利用できる図書館を目指してほしい。

我が国も批准を目指している国連障害者権利条約には「障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受するためのすべての適当な措置をとる」と定められている。読書のバリアフリー化は、憲法が定める基本的人権の尊重や障害者権利条約批准のための国内法整備という観点だけでなく、真に障害者の自立と社会参加を促進し、高齢者の文化的生活を保障することでもある。

さらに、我が国の知的で活力ある文化の形成や力強い経済活動に貢献することにもつながる。このような施策の推進には、障害者や高齢者の読書環境を改善するための具体的な法制度、出版社などの民間活力、著作権者の理解、ボランティア団体との連携などの総合的な体制の整備が必要である。

そして、国民読書年を契機に、障害の有無や年齢、身体的条件にかかわらず、すべての日本国民が知的で文化的な読書活動に親しめるような政官民一体となった取り組みが望まれる。


平成22年3月24日

関係各位

筋萎縮性側索硬化症患者
土居賢真

ALS患者等読書が困難な者に対する支援についての要望

私の病気は、『筋萎縮性側索硬化症(略称:ALS)』です。クイズダービーの篠沢教授やイギリスの宇宙物理学者ホーキング博士が、この病気になっていて有名です。

この病気は、難病の中の難病と言われています。運動神経の細胞が原因不明のまま少しずつ死んでしまい、筋肉が痩せて手足が動かなくなり、食べ物が飲み込めなくなり、5年以内に呼吸筋が衰えて呼吸障害で死亡します。しかし、感覚神経や知能は全く障害を受けず正常なままです。これが、ALS患者の過酷な生、と言われる所以です。

国内の患者数は約8千人ですが、ALS患者の80%は、診断後わずか3~5年しか生存できません。私のまわりでも、ここ3年で4人の知り合いが死にました。

呼吸障害に対しては、人工呼吸器の装着によってカバーすることが可能ですが、介護者の負担は軽いものではなく、実にALS患者の3分の2以上が、家族を慮り、あるいは諦めと絶望に押しつぶされながら、呼吸器を装着せずに従容として死を迎えています。

残念ながらこの病気は原因不明で、治療法も見つかっていません。しかしながら医療や介護技術や機械の進歩により、呼吸筋の麻痺を人工呼吸器の装着によってカバーし、十分な社会資源があれば、家族の苦労を軽減しながら、寿命一杯生きていくことも可能になってきております。

そのためには、社会という「大きな枝」が、ALS患者を護り、生きがいを与え、生きる世界にいざなう必要があります。残念ながら、ALS患者のための「大きな枝」は、折れています。そして今もなお折れ続けています。3分の2以上が、呼吸器を装着しない、いや、できないという冷酷な現実がそれを示しています。

しかし、今からでも枝を直すことはできるはずです。私たちALS患者に、生きる力、そして生きがいを。生きがいは、さまざまですが、本を読むという単純な、しかしALS患者には困難な行為がその重要な部分を占めていると、私は固く信じております。そのために、以下の要望に対して善処下さいますようお願いいたします。

1.自動ページめくり機を福祉用具として介護保険適用にしてください。
2.電子書籍を安価なものとし、障害者には消費税分を割引いてください。
3.障害者用意思伝達衣置「伝の心」のPDF対応のための助城金をだしてください。

最後に付け加えさせていただきます。世の中にはさまざまな方がおられます。

ここにおられる皆さんのように崇高な善意から障害者のために力を尽くしている方々。

また、福祉社会実現のために血を吐くような努力をされてきた先人とそれを支えておられる支援者の方々。

その一方で、浅はかな善意から、「尊厳死というマスクをかぶった安楽死」の刃を、クー・ド・グラース、即ち慈悲の一撃として、私たちに振り下ろそうとしている方々もいます。

しかしながら、私たちに必要なのは刃ではなく、松明なのです。松明の形を整え、布を巻き、脂を染み込ませ、英知の火を点さなければいけません。人々の絶え間ない努力によって、点し続けなければいけません。それは、刃で心臓を止めるのに比べ、なんたる困難でありましょう。

だがしかし、困難であることは、善きことをやめる理由にはならないのであります。そして、松明の明かりは、繰り返してきた悲しみや過ちに理性の光を向け、闇を払い、社会を少しでも明るく照らし出す。私は、そう信じております。

発言の機会を与えていただいた武藤様をはじめ皆様に感謝いたします。

どうぞ宜しくお願いいたします。

以上