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特集/検証・市町村障害者計画

市町村障害者計画の推進のために

―障害者施策推進フォーラムから―

手塚直樹

1 フォーラムの主題

 「第3回障害者施策推進フォーラム」(以下「フォーラム」)が、去る3月19日に戸山サンライズ(東京都新宿区)で、障害者団体のリーダー等全国から約50人の参加者によって開催された。
 フォーラムは、厚生省の助成により、日本障害者リハビリテーション協会が主催し、全国の障害者団体のリーダー等による情報交換、研究協議、施策への提言等を行う継続的な活動で1996年3月に初めて開催された。フォーラムは当面「障害者計画」をテーマとしていくことが実行委員会(委員長 板山賢治)で決定された。
 1996年度の第1回フォーラムは、昨年7月に「障害者プランその後の動き―策定されて7か月余、実行度を高めていくために今なにを」をテーマに開催された。第2回は都市をモデルとした障害者計画の策定を実地に則して協議する「障害者施策推進フォーラムin福岡」が、昨年11月に福岡県春日市で開催された。
 今回のフォーラムの主題は、成果を上げているモデル的地域の状況を把握しながら、全国的に低調な「市町村障害者計画」をいかに策定していくか、そのために障害者団体は「今、なにをすべきか」が主題であった。

2 協議の内容

 フォーラムは、総理府および厚生省から「市町村障害者計画の実施状況と今後の方向」について政府説明があり、続いて、大阪府箕面市、滋賀県、兵庫県養父町、福岡県の事例の報告、そして「市町村障害者計画をいかに推進するか―障害者関係団体の役割(戦略計画)」というテーマで参加者全員による総合討論が行われた。
 政府説明、事例の報告、総合討論と、それぞれに特徴があったが、若干の感想を含めて全体の主要な点をまとめて紹介したいと思う。

 (1) 都道府県と政令指定都市は障害者計画をつくり終えているが、全国の約3250の市町村のうち策定済みは約10パーセントに過ぎない。
 その理由として、①老人保健福祉計画のように義務規定ではなく努力義務規定とされている、②高齢者のゴールドプラン、児童のエンゼルプランと続き、市町村では職員不足および財政負担の増大で、障害者計画策定の体制づくりができない、③障害者計画の内容が広すぎてどこから手をつけていいかわからない、専門家もいない、④小さな市町村では障害者は少ない、いくつかの市町村の協力体制による保健福祉圏の設置が必要だが、調整は簡単ではない、等の点が指摘された。
 しかし、市町村は「障害者計画の策定は最優先の事項としてはっきり決定する」「そのためには障害者団体の積極的な行動と働きかけが必要である」ことが強調された。総合討論の中で「障害者と行政の対話集会が実現した(佐賀県)」「県下32の障害者団体の協力によって市町村の障害者計画策定状況の調査を行い、その結果をもって県・市町村への要請行動を行った(埼玉県)」等の紹介があった。
 
 (2) 4つの地域の事例報告で、大阪府箕面市は従前から障害者の主体的行動、政策決定への参加、地域福祉の積極的な推進の前提のうえに、箕面市のすぐれた障害者計画が実現していること、また滋賀県からの報告で、すでに「新福祉圏構想」ができており、既存の7つの福祉圏のうえに、新たに障害者計画が策定されたという報告等、障害者計画は長年にわたる既存の過程のうえに策定されてこそ、地域に根ざした効果的な障害者計画ができていく大切さを認識させられた。
 また、福岡県は、社協が中心になって障害者計画策定への推進役となり、その過程で関係障害者団体の協議会がつくられ、より強力な運動が進められていることや、「人口9000人の町」の兵庫県養父町の事例では、中心になって進める行政担当者の役割と積極性の必要を知ることができた。
 総合討論の中で、こうした先駆的な役割を果たして成果をあげているところを十分に把握しながらも、全く手をつけようとしない市町村等に対して、障害者計画をつくるための具体的な情報やマニュアルの提供が必要であること、国や県にまかせるだけではなく、障害者関係団体の統一的な行動と、個々の市町村への情報の提供が必要であることが討論された。

3 具体的な要請行動の必要

 政府が策定した「障害者プラン」は、国のレベルにおける目標設定である。具体的に市町村で数値目標を設定した障害者計画の策定と推進の手だてをとらなければ、市町村の格差は拡大するだけである。
 第1に必要なことは、県全体としての数値目標の設定、保健福祉広域圏の設定、市町村間の調整等、県が果たす役割は大きい。しかし作文や抽象的な計画ではなく、数値目標をきちんと設定した具体的な施策推進を図る障害者計画ができているところは少ない。まず都道府県に対する要請行動が必要である。
 第2は、障害者、障害者団体のニーズをまとめ、市町村に対して的確に要請していく。その場合「量・質の大切さ」に加えて「速さ」が必要である。そしてこの過程で多くの市民をまき込んで地域全体の課題としていく、全体的な運動の展開が必要である。

第3回障害者施策推進フォーラムでは、4つの地域での事例報告が行われた

4 今後の方向

 障害者策定推進フォーラムの協議内容は、事例報告を含めて報告書にまとめ、具体的な情報の1つとして市町村に提供していく。さらに統一的な要請行動や「障害者プランの見直し」の検討の開始等のために、1997年度も継続して「市町村障害者計画の策定と実行」をテーマに、障害者施策推進フォーラムを継続して開催していくことが確認された。

(てづかなおき 障害者施策推進フォーラム・プログラム委員長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年6月号(第17巻 通巻191号)8頁~11頁