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特集/検証・市町村障害者計画

自治体の声

長崎県 県北福祉事務所

圏域での策定―郡部独自の実態調査への動き―

来海礼規

 地域福祉の業務を通じて、重度の障害をもちながら仕事にボランティアに精力的に活動している青年Y君と知りあった。あきらめかけていた就職を実現したのが今から6年前、高校を卒業して7年目のこと。趣味で始めたパソコンが人生を広げたと彼は言う。
 今では、地域のボランティア団体のスタッフとしても活動している。地元町や社協の行事で講演を依頼されることもあるとか。言葉が不自由なため、おしゃべりはパソコンの音声変換装置を使っている。昨年は「ボランティア福祉講座」で講演をしている。この中で彼は、仕事に就けたことの喜び、地域の人々と交流できる楽しさを実に生き生きと述べている。
 我々がこれから推進しようとしている「障害者プラン」が目指すところは、まさにY君が体現しているところの姿である。つまり障害者が、あるがままに、思いのままに行動できる社会をつくり上げることである。
 今回、長崎県では県下を8か所の圏域に分けて「プラン」を作成した。我が県北圏域は3市10町1村約36万人、県下で2番目の規模である。圏域内の社会的資源は人口約25万の佐世保市に集中している。郡部の福祉事務担当者が悩むところである。
 圏域作業部会では結果的に県が示した数値目標を追認する形となったが、今後につながる議論ができたものと確信している。平成7年度に詳細な障害者実態調査をした佐世保市からは、障害者のとらえ方やマンパワーを含めた社会的資源の現状分析等いくつかの貴重な提言をいただいた。郡部の福祉事務担当者でつくる連絡協議会では、2回にわたって学習会を開催している。郡部独自の実態調査をしようという機運も広がりつつある。佐世保市の実態調査を参考に調査項目の策定作業が現在進行中である。
 圏域作業部会で議論の的となったのが、ホームヘルパーの増員。現在7名のところを177名上乗せするという県の提案に対しては議論が続出した。果たしてそれだけの需要があるのかという懸念である。ニード調査をしないままに、そして障害者代表の意見を聞くことなく圏域の数値目標が設定されたことに一抹の不安が残った。しかし、数値目標が設定されたことの意味は大きい。市町村障害者計画の策定状況が芳しくない実態があり、老人保健福祉計画と同様に法律で義務づけては、という意見もある中で、福祉・保健に限定された目標ではあるが、もはやこれで行政の怠慢は許されない。
 初めに紹介したY君は、この「障害者プラン」については何も言わなかったが、彼にしても「あるがままに、思いのままに」行動するにはさまざまな制約があるのも事実。ひそかに熱い期待を抱いているはずである。期待という名の重圧を私は今、ひしひしと感じている。


(きまちれいき 長崎県県北福祉事務所地域福祉課)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年6月号(第17巻 通巻191号)18頁・19頁