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高度情報化社会にむけて

私の在宅勤務

吉村隆樹

 私は、現在、長崎県の佐世保市にある株式会社微生物研究所という会社に勤務しています。会社の業務は主に血液検査や尿検査などの臨床検査です。
 私は障害者手帳1種1級の脳性マヒで、上肢と下肢、それに言語にも比較的重度の障害があります。自宅では何とか自分のことはできますが、それ以外では移動や食事などで他人の介助が必要です。普通ならこういう状態の私が就職なんて考えられなかったのですが、パソコンのおかげでそれが可能になりました。
 今、私は勤務時間の大半を自宅で過ごしています。俗に言う在宅勤務というものです。こういう形態の勤務のおかげで私が就労できていると言ってもいいと思います。自宅で勤務ができるということは、私たちにとって想像以上のメリットがあります。通勤の心配もなく、自分に一番合った環境がそこにはあり、安心して自分のペースで仕事ができます。現在では開発部の人間が私一人ということもあり、ソフトウエアの仕様決定からプログラミング、運用指導までの一連のことをすべて任せられています。
 作っているソフトウエアは臨床検査の報告に関するものや、検査機器とのデータのやりとりをするものです。主に社内の業務が多いのですが、営業所も2つあり、結構頻繁に、そこにも出張しています。また、外注の仕事も時々あり、その時は、相手先の会社にも出ていきます。最初はみんな私の車いす姿をみて不安そうな顔をされるのですが、一緒に仕事をしていくうちに私のことも分かっていただけて、いつも気持ちよく仕事をさせてもらっています。
 私の仕事の時間のほとんどがプログラミングのため、在宅で一人で仕事ができるということは、業務に集中できて助かっています。でも、その一方で在宅勤務の場合、どうしても会社の人たちとのコミュニケーションが粗になりがちです。週に1度のペースで会社に出勤したり、飲み会などの行事にもなるべく顔を出すように心がけています。
 最後に、今、私が考えていることは、果たしていつまでこの仕事が続けられるかということです。私の技術力が、果たしていつまで必要とされるかということもありますが、それよりも自立という問題です。現在、会社への出勤や出張などの時はすべて母の力を借りてやっています。でも、そんなにいつまでも、母に頼れる訳ではありません。親に頼れない、その時が来たら果たしてどうなるのか。そのことを、もっと真剣に考えてこれからはやっていかなければいけないと思っています。

(よしむらたかき ㈱微生物研究所)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年6月号(第17巻 通巻191号)49頁