音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

会議

全日本特殊教育研究連盟
結成50年記念大会
「50年の回顧・21世紀への展望」

松矢勝宏

 全日本特殊教育研究連盟(全特連)の結成50年記念大会が平成11年11月11日、12日の2日間、東京都港区台場のホテルグランパシフィックを会場に開催され、知的障害教育を中心に養護学校や障害児学級の教師、研究者、PTA関係者等の2,000人を超える参加者があった。なお詳しい大会報告は、全特連機関誌「発達の遅れと教育」2000年2月号(大会報告号)と実行委員会による「大会集録」を参照してほしい(以下の記述では敬称を省略した)。

大会主題は「50年の回顧・21世紀への展望」

 第二次大戦後の荒廃の中で学校教育法が制定され教育の新生が図られたとき、故三木安正(国立教育研修所研究員・文部省視学官を経て東京大学教授、初代全特連理事長)ら先覚者たちは、戦前に実現することができなかった知的障害児の中学校教育を実践するために、後の東京都立青鳥養護学校である品川区立大崎中学校分教場を、文部省や東京都教育委員会に働きかけて開設した。こうして学校教育法の実施と同時に6・3制義務教育として知的障害教育の実践研究が開始され、2年後の1949年には三木らが中心になって研究の組織づくりを意図し、各地の教育実践を編集して特殊教育研究連盟編『精神遅滞児教育の実際』を出版した。全特連の結成はこの出版刊行の時点とし、53年に特殊教育研究連盟を全日本特殊教育研究連盟と改め、文字通り全国組織となった。長年にわたり実践現場と呼応し合い、斯界をリードしてきた機関誌の創刊はその翌年の54年であり、誌名は『児童心理と精神衛生』から『精神薄弱児研究』を経て現在の『発達の遅れと教育』となり、平成11年4月に500号記念を刊行し、今日に至っている。
 これまでの全特連の歩みは戦後の特殊教育、なかんずく知的障害教育の進展過程と一致し、この教育の推進のために果たした役割は極めて大きなものがある。結成50年記念大会は、この教育50年の歴史を振り返り、また21世紀の実践目標を明らかにし、新たな決意で知的障害教育の進展を図ろうとするものであった。

祝典では先輩諸氏を囲み50年の回顧

 11月11日の1日目は、記念式典、記念功労者表彰、記念講演、鼎談「全特連-回顧と展望」、夜の祝賀会と祝典プログラムが催された。記念鼎談は、筆者が進行役を務め、山口薫顧問(前理事長)と小出進理事長による対談形式で進められ、全特連の活動の理念を歴史的に明らかにし、21世紀への活動の展望を示した。
 東京大学大学院医学系研究科の杉下守弘教授による記念講演「脳と心-脳研究の最前線を探る」では、機能的磁気共鳴画像法(機能的MRI)によって、脳の活動を視覚的に観察できる時代に入り、脳の損傷と機能の関係の研究が飛躍的に進んでいる現況が報告されたが、将来の教育研究への応用が期待される内容で、記念大会にふさわしい講演であった。

シンポジウムで探究した21世紀への展望

 50年記念大会では、2日目に8テーマのシンポジウム(午前の部A1~A4、午後の部B1~B4)が開催された。

A1「21世紀の学校教育」

 養護学校教育、障害児学級教育、通級による指導等の通常学級における支援等、教育支援システムのあり方について、21世紀のあるべき学校教育全体を展望しながら検討した。

A2「学校における子どもの主体性」

 子どものニーズや意思、主体的な活動を大切にした学校生活が自己選択・自己決定を可能にし、将来の自立的な生活につながるとすれば、そのような教育はどのように計画され、具体化されるべきかについて検討した。

A3「新しい学習指導要領をめぐって」

 新学習指導要領では「総合的な学習の時間」が新設されるなど、知的障害教育でこれまで大切にしてきた実際的な指導が、一般教育でも重視されるようになったが、新盲・聾・養護学校指導要領についての理解と知的障害児教育における適切な対応をめぐって検討した。

A4「生涯にわたる関連分野との連携・協力」

 障害児・者の社会参加をめざし、ライフステージのすべての段階で自主的・主体的に活動し、力と個性を発揮することができるように、教育、福祉、医療等の関連分野の連携・協力のあり方について検討した。

B1「早期対応-就学相談と理解・啓発」

 障害乳幼児や家族のアセスメントと療育システム、親の参加と指導、関連機関との連携、就学相談の進め方、親や家族の障害の受容・理解の促進、個別指導計画の作成等の適切な早期対応のあり方について検討した。

B2「個に応じた指導をどのように進めるか」

 なぜ個に応じるのか、子どものニーズをどう知るのか、個別の指導計画はどう作り活用すればよいのか、個に応じる授業や個別の指導計画の意義と実際を論じながら、そのあり方について検討した。

B3「授業研究・実践研究を深めるために」

 特色ある学校、魅力のある学校づくりの基本は、児童生徒がそれぞれの力を出しきれる授業にあるが、授業の展開の具体的な事例、実践研究の成果をもとに意見交換を行い、授業研究と実践研究のあり方について検討した。

B4「働く生活への準備と進路支援」

 卒業後に地域でたくましく働き主体的に生活することができるように、高等部時代に生徒の力をいかに育むか、そのための教育課程や進路指導(進路学習・現場実習・進路相談)のあり方、学校から地域社会への移行を支援するための関係機関と職員の協力・連携のあり方について検討した。

(まつやかつひろ 東京学芸大学教授、全特連副理事長)


※大会資料等についての問い合わせは全特連事務局へ。
 TEL 03-5275-7559
 FAX 03-5275-1205