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ほんの森

永井肇監修、蒲澤秀洋・阿部順子編集
脳外傷者の社会生活を支援する
リハビリテーション[実践編]

―事例で学ぶ支援のノウハウ―

評者 奥野英子

 交通事故やスポーツ事故等により脳外傷を受けた場合に、身体機能障害のほかに、記憶障害、認知障害、行動障害等が後遺障害として残され、生活にさまざまな困難が生じます。身体障害については身体障害者福祉法によって対応されますが、認知障害や行動障害などの高次脳機能障害については、障害者福祉制度の谷間に置かれ、十分な支援がありません。
 このような問題意識から、平成13年度に国の事業として「高次脳機能障害支援モデル事業」が開始され、全国にわたる地方拠点病院(12か所)において高次脳機能障害者の社会復帰支援や生活・介護支援が試行的に実践されています。また、中央的な組織である地域拠点病院等連絡協議会には、評価基準作業班、訓練プログラム作業班、社会復帰・生活・介護支援プログラム作業班、合同作業班などが設置され、実践的な検討が行われています。
 このような先駆的な取り組みにおいて常にリーダーシップを発揮してきた名古屋市総合リハビリテーションセンターでは、モデル事業開始より10年前の平成3年度から「脳外傷リハビリテーション研究会」を発足し、医師、臨床心理士、生活指導員、言語聴覚士、作業療法士、職能指導員等の連携により、脳外傷者への一環した支援を実施してきました。
 3年前の平成11年9月には「脳外傷者の社会生活を支援するリハビリテーション」を発行し、先駆的なすばらしい取り組みを全国に知らせました。これは総論にあたるものであり、脳外傷の医学的解説、社会適応に向けた援助の基本、認知障害とその対応、行動障害とその対応、生活支援の実際、就労支援の実際などが非常に分かりやすく、支援を行うための基本的知識・技術としてまとめられていました。
 平成15年1月に発行された「脳外傷者の社会生活を支援するリハビリテーション〔実践編〕~事例で学ぶ支援のノウハウ~」は前編の実践版にあたるものであり、名古屋市総合リハビリテーションセンターにおける診断・評価、訓練、支援の内容を、具体的に38事例を通してさらに分かりやすくまとめられています。
 脳外傷者のリハビリテーションや生活支援に関わりのある者すべてにとって、必読の書であり、このような本をまとめられた名古屋市総合リハビリテーションセンターの職員の皆様に心から敬意を表します。

(おくのえいこ 筑波大学大学院リハビリテーションコース)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2003年5月号(第23巻 通巻262号)