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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

新法児童福祉法の解説

厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課

本稿では、難病の患者に対する医療等に関する法律とともに、今年1月1日に施行された児童福祉法の一部を改正する法律(平成26年法律第47号)の概要について説明していく。

児童福祉法の一部を改正する法律による改正前の児童福祉法(以下「旧法」という)では、小児慢性特定疾患治療研究事業の根拠規定は、第21条の5だけであった。同条では、「都道府県は、厚生労働大臣が定める慢性疾患にかかつていることにより長期にわたり療養を必要とする児童又は児童以外の満20歳に満たない者(政令で定めるものに限る。)であつて、当該疾患の状態が当該疾患ごとに厚生労働大臣が定める程度であるものの健全な育成を図るため、当該疾患の治療方法に関する研究その他必要な研究に資する医療の給付その他の政令で定める事業を行うことができる。」と規定しており、その実施を義務付ける規定とはなっていなかった。また、その内容は、事業規定のみであり、医療費助成の仕組みについて法定されていなかった。

このため、児童福祉法の一部を改正する法律による改正後の児童福祉法(以下「新法」という)では、小児慢性特定疾病医療費の支給に関する目、指定小児慢性特定疾病医療機関に関する目、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業に関する目を新たに設け、それぞれの目のなかで、必要な規定を設けている。

以下、新たに設けられる主要な条文に沿って、その内容について具体的に説明していく。

(1)小児慢性特定疾病及び疾病の状態の程度(新法第6条の2の2)

新法第6条の2の2第1項では「小児慢性特定疾病」を「当該疾病にかかつていることにより、長期にわたり療養を必要とし、及びその生命に危険が及ぶおそれがあるものであつて、療養のために多額の費用を要するものとして厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いて定める疾病」と定義している。

さらに、同条第2項において、「小児慢性特定疾病医療支援とは、(中略)当該疾病の状態が当該小児慢性特定疾病ごとに厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いて定める程度であるものに対し行われる医療」としている。

旧法の小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾病及び疾病の状態の程度については、厚生労働大臣告示において定められていた。新法に基づく小児慢性特定疾病医療費の支給認定の対象となる小児慢性特定疾病及び疾病の状態の程度についても、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いた上で厚生労働大臣が定めることとされており、1.慢性に経過する疾病であること、2.生命を長期にわたって脅かす疾病であること、3.症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること、4.長期にわたって高額な医療の負担が続く疾病であること、という4つの考え方を元に、「児童福祉法第6条の二第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める小児慢性特定疾病及び同条第2項の規定に基づき当該小児慢性特定疾病ごとに厚生労働大臣が定める疾病の状態の程度」(平成26年厚生労働省告示第475号)において704疾病(14疾患群)を定めている(図表1)。

図表1 小児慢性特定疾病の医療費助成の概要
図表1 小児慢性特定疾病の医療費助成の概要拡大図・テキスト

(2)小児慢性特定疾病医療費の支給(新法第19条の2)

新法では、都道府県(指定都市および中核市を含む。以下同じ)は、医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童等が、指定小児慢性特定疾病医療機関から当該医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病医療支援を受けたときは、当該小児慢性特定疾病児童等に係る医療費支給認定を受けた保護者(以下「医療費支給認定保護者」という)に対し、小児慢性特定疾病医療支援に要した費用について、小児慢性特定疾病医療費を支給することとしている。これにより、医療費助成の手続が法定化され、医療費助成の支給が義務となった(同条第1項)。

また、小児慢性特定疾病医療費の額は一月(ひとつき)につき、1.同一の月に受けた指定小児慢性特定疾病医療支援(食事療養を除く)について、健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額から、医療費支給認定保護者の家計の負担能力、当該医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童等の治療の状況又は身体の状態等その他の事情をしん酌して定める額(その額が算定した額の2割に相当する額を超えるときは、2割。これを「自己負担限度額」という)を控除して得た額(同条第2項第1号)と、2.同一の月に受けた指定小児慢性特定疾病医療支援(食事療養に限る)について、健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額から、食事療養標準負担額、医療費支給認定保護者の所得の状況その他の事情を勘案して定める額を控除した額を合算した額(同条第2項第2号)が支払われることになる。

旧法の小児慢性特定疾患治療研究事業による医療費助成対象者の自己負担割合の上限は、3割(就学前が2割)であり、自己負担限度額は、所得に応じて8段階に分かれており、外来と入院を区別し、入院については月額0円~11,500円、外来については、月額0円~5,750円となっていた。なお、重症者と認定された場合は、所得段階に関係なく0円であった。

一方、今回の改正では、医療費助成対象者は、自己負担割合が2割に軽減される。自己負担限度額は、医療保険における世帯の所得に応じて5段階に分け、外来と入院を区別せずに、受診した医療機関等の自己負担分すべてを合算した上で適用される。一般患者は月額1,250円~15,000円、重症患者は月額1,250円~10,000円となる。人工呼吸器等装着者については、所得に関係なく、月額500円が上限となる。また入院中の食費については、いずれも2分の1を負担することとなる。なお、現在、小児慢性特定疾患治療研究事業の医療費助成の対象者(既認定者)については、3年間の患者負担軽減のための経過措置が設けられる(図表2)。

図表2 小児慢性特定疾病に係る新たな医療費助成の制度
図表2 小児慢性特定疾病に係る新たな医療費助成の制度拡大図・テキスト

(3)小児慢性特定疾病医療費支給認定の申請・認定等(新法第19条の3等)

旧法の小児慢性特定疾患治療研究事業においては、申請に関して、医療の給付を受けようとする児童の保護者からの申請に基づき行うものとされ、申請者は、交付申請書に医師の作成した医療意見書を添えて、都道府県知事、指定都市の市長又は中核市の市長(以下「都道府県知事等」という)に申請することとなっていた。

認定に関しては、都道府県知事等は申請を受理したときは、できるだけ速やかに、医学の専門家等から構成される小児慢性特定疾患対策協議会の意見を求め適正に認定するものとされていた。

また、医療の給付方法については、都道府県知事等が、疾患の治療研究を行うに適当な医療機関を選定し、その医療機関に対し費用を支弁することとしていた。

一方、新法では、小児慢性特定疾病医療費の支給を受けようとする小児慢性特定疾病児童等の保護者は、都道府県知事の定める医師の診断書を添えて都道府県に提出しなければならないこととなる(第19条の3第1項)。申請を受けた都道府県は、当該申請に係る小児慢性特定疾病児童等が、小児慢性特定疾病にかかっており、かつ、第6条の2第2項に規定する疾病の状態の程度であると認められる場合は、その医療費支給認定を行うものとされ、医療費支給認定をしないこととするときは、あらかじめ、小児慢性特定疾病審査会に当該申請に係る小児慢性特定疾病児童等の保護者について医療費支給認定をしないことに関し審査を求めなければならないこととされた(同条第3項及び第4項)。

この小児慢性特定疾病審査会は、医療費支給認定をしないことに関し審査を行わせるため、都道府県に設置されるものであり、その委員は、小児慢性特定疾病に関し知見を有する医師その他の関係者のうちから、都道府県知事が任命し、任期は2年とすることとしている(第19条の4)。

医療の給付方法については、都道府県は、医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童等が、都道府県知事が指定する医療機関(第19条の9第1項に基づき指定するもの。「指定小児慢性特定疾病医療機関」という)から当該医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病医療支援を受けたときは、保護者に対し、その医療支援を要した費用について、小児慢性特定疾病医療費を支給することとしている(第19条の2第1項)。その上で、都道府県は、小児慢性特定疾病児童等に係る医療費支給認定保護者が指定小児慢性特定疾病医療機関に支払うべき指定小児慢性特定疾病医療支援に要した費用について、小児慢性特定疾病医療費として当該医療費支給認定に支給すべき額の限度において、当該医療費支給認定保護者に代わり、当該指定小児慢性特定疾病医療機関に支払うことができることとしている(第19条の3第10項)。

なお、都道府県は医療費支給認定をしたときは、指定小児慢性特定疾病医療機関の中から、当該医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童等が小児慢性特定疾病医療支援を受けるものを定めることとしている(同条第5項)。なお、指定の要件は、1.保健医療機関であること、2.専門医師の配置、設備の状況からみて、本制度の実施につき十分な能力を有する医療機関であること等とし、医療機関からの申請に基づき、都道府県が指定することとしている。

(4)小児慢性特定疾病児童等自立支援事業(新法第19条の22)

旧法では、小児慢性特定疾患治療研究事業による医療費助成以外に、小児慢性特定疾患児に対する福祉施策として、小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業、相談支援事業(療育相談指導事業、巡回相談事業、ピアカウンセリング事業)、小児慢性特定疾患児手帳交付事業といった事業が実施されていた。

新法においても、小児慢性特定疾病児童等について、医療のみならず、相談支援、社会参加に関する支援等総合的な支援の強化を図り、その自立を促進することが重要であることから、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の実施について規定されている。

このうち、必須事業として、都道府県は、小児慢性特定疾病児童等に対する医療及び小児慢性特定疾病児童等の福祉に関する各般の問題につき、小児慢性特定疾病児童等、その家族その他関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うとともに、関係機関との連絡調整等便宜を供与する事業を行うものとするとしている(同条第1項)。

また、任意事業として、都道府県知事は、医療機関等において、小児慢性特定疾病児童等を一時的に預かり、必要な療養上の管理、日常生活の世話等を行う事業(同条第2項第1号)、小児慢性特定疾病児童等が相互に交流を行う機会の提供等便宜を供与する事業(同項第2号)、小児慢性特定疾病児童等に対し、雇用情報の提供等就職に関し必要な支援を行う事業(同項第3号)等を行うことができるものとしている(図表3)。

図表3 小児慢性特定疾病児童自立支援事業
図表3 小児慢性特定疾病児童自立支援事業拡大図・テキスト