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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

霞が関BOX

自然公園等施設におけるユニバーサルデザイン化の取組について

環境省自然環境局自然環境整備課課長補佐 千田智基

1 自然公園における施設の整備

わが国を代表する優れた自然の風景地は自然公園法に基づく国立公園に指定され、その公園数は34か所、総面積は219万ヘクタールあります。都道府県が管理する国定公園を含めると、それらの総面積は360万ヘクタールで国土面積の9.5%に及んでいます。

図1 国立公園の位置
図1 国立公園の位置拡大図・テキスト

自然公園は森林、湿地、海浜、サンゴ礁などの日本の豊かな自然や野生動植物を保護しつつ、自然とのふれあいを通じて、深い感動や安らぎを与えられるよう国民のために適切に利用することが求められております。

環境省ではこの目的を推進するため、施設整備の技術的事項やユニバーサルデザイン化の考え方についてまとめた「自然公園等施設技術指針(平成25年7月)」を策定し、ビジターセンターや広場、公衆トイレ、駐車場等の園地や歩道、登山道、植生復元施設など、自然公園の保護及び利用を進めるための施設整備を進めております。

2 自然公園におけるユニバーサルデザインの考え方

自然公園では、火山や渓谷、断崖等の急峻な地形や山岳地特有の厳しい気象条件等の制約の中で、登山道など自然の魅力のある場所に自然景観を楽しむことを目的とした施設が整備されています。とはいえ、整備によって、自然の魅力が損なわれてはなりません。そのため自然公園においては、都市部と同様の一律のバリアフリー基準などを設定するのではなく、その場所の自然や利用の状況に応じて対応を考える必要があります。地形条件等の制約の中でユニバーサルデザインを実現するには、施設整備による改善に加え、介助サポートや適切な情報提供等のソフト面での補完を組み合わせた総合的なユニバーサルシステムとして対応することが必要と考えています。

自然公園のユニバーサルデザインは、「優れた自然環境から誰もが感動や喜び、安らぎを得られる環境づくり」をテーマとして、魅力の本質である自然資源を損なわず、できる限り多くの利用者が利用しやすい施設の提供やソフトでの対応を含めたさまざまな工夫による改善を継続することを基本理念としています。

3 ゾーニング計画とユニバーサルデザイン整備

自然公園のうち、駐車場、公衆トイレ、情報提供の拠点であるビジターセンター、遊歩道や広場などを複合的に有する主要な利用拠点は、できる限りすべての利用者に対応する区域と位置づけ、自然保護と利用のバランスを図りつつ、ユニバーサルデザインの考え方に沿って整備を進めています。

たとえば、ビジターセンター内の展示は、単に「見る」だけの展示ではなく、「触れてみる」「手にとってみる」「感じてみる」など、体験型の展示を盛り込み、駐車場からビジターセンターまでのアクセス路の幅員や段差などについても、可能な限りすべての人が利用できるよう配慮して整備しています。

さらに、国立公園内の主な案内標識には、バリアフリー対応のコースを表示することにより、障害者の皆様が利用しやすい環境づくりに取り組んでおります。近年では、それらの標識にQRコードやスマートフォンのアプリを活用したビーコン・音声コードによる読み上げ機能などのICT技術を取り込むことで、訪日外国人への多言語対応を含めて、公園利用者により楽しんでいただく取組を進めています。

図2 ユニバーサルデザイン計画におけるゾーニングの概念的整理
図2 ユニバーサルデザイン計画におけるゾーニングの概念的整理拡大図・テキスト

4 国立公園等のユニバーサルデザインプロジェクト

環境省では、平成27年度に国立公園等のユニバーサルデザインに係るプロジェクトチームを立ち上げ、ソフト、ハード両方について自然公園におけるユニバーサルデザインの取組の具体的なアイデアをとりまとめました。これを踏まえ、各国立公園のビジターセンターにおいて、車いすで利用できるような建物やバリアフリー歩道、展示物の配置への配慮などの対応のほか、多目的トイレの有無や貸し出し用車いすの有無などのユニバーサルデザインに関する情報をホームページで発信することなどに取り組んでいます。

また、現地のビジターセンターの窓口に紙とペン等を準備し、「筆談できます」などの掲示を行なったり、はなしことばでの意思疎通が難しい方と指さしでコミュニケーションをとるためのボードを置いたりして窓口対応の向上を図っています。できる限り多くの利用者が利用しやすくなるように今後もこれらの取組を推進します。

5 おわりに

自然公園のユニバーサルデザインは、「優れた自然景観に接して感動や喜び、安らぎを得る環境づくり」を目的に、できることから取り組みを進めておりますが、いまだ十分な水準にあるとはいえない状況です。魅力の本質である自然資源を損なわず、できる限りすべての人が利用しやすい施設の提供と自然の魅力を高める整備や管理を行うためには、さまざまな工夫により、その時点でできることを継続して進めることだと考えております。今後も少しずつでも不具合の改善を継続し、さらなるユニバーサルデザイン化に取り組んでいきたいと考えておりますので、皆様もぜひ、国立公園などの施設に足を運んでいただき、お気づきの点を施設の管理者などにお伝えください。

(ちだともき)