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社会

一地方自治体の障害者援助活動*

How one local authority helps its disabled

A.D.Murray

大木 勉**

 現代の高度工業化社会では、大多数の者は住居外の就労により生計費を得ている。障害者は、地域社会のメンバーたらんとする際に、こうした事情からしばしば深刻な影響を受けるので、その就労を最大限に確保しようとすることが、Croydon市のデイケアの主要な目的となっている。そのために、我々は、多様なニーズに対応できるさまざまなサービスを展開してきたつもりである。

 Croydon市には、9,000人の重度障害者が登録されている。これらの人々のニーズは、移動の援助・余暇利用・専門家のサービスやソーシャルワークによる支持といったことから日々の食事のことまで非常に幅広い。そのなかでかなりの人がデイケア(それのみかまたは他のサービスとあわせて)を求めている。700人は既に就職可能年齢を越えているが、その人たちにとって週日のデイセンターへの参加は、身体的・精神的な福祉の面で欠くべからざることであり、また就職可能年齢者については、デイケアによって保護雇用にすすむ者もあろうし、あるいは訓練を経て雇用に結びつく者もあろう(結果として失敗する者もあるいはあるかも知れない)。

 Croydon市では、ここ10年以上にわたって、生産作業あるいは保護雇用(障害者雇用法により認定された障害者のための雇用をいい、賃金が保障される)についての各種多様なニーズに対応できるさまざまな施設が開設され運営されてきた。まず、これらニーズの内容を吟味する必要があろう。

 一般的ニーズのいくつかはよく知られている。重度の精神発達遅滞のために就労経験のない者には能力の的確な評価とこれに基づく訓練プログラムが必要である。評価や訓練には、ソーシャル・レクリエーション・教育・作業といった各面が含まれていることが肝要であり、その対象である精神薄弱者には、教師・心理専門職・ソーシャルワーカー・作業指導員・(最も大切な)家族から・栄養士・言語士・聴能士等のパラメディカルサービスまでの職種(換言すれば多方面にわたるチームアプローチ)が不可欠である。このようなリハビリテーションアプローチなしには、精神薄弱者の発達保障はできないし、保護雇用にも結びつけられないだろう。

 精神病患者の多くも、援助なしには自立や社会生活が維持できないであろうし、就労のためには、時間をかけた、またコントロールされた再オリエンテーションが必要であって、これが向上を促進し、社会からの落伍を予防することになるのである。ここでもまた多方面にわたるアプローチが必要であり、例えば、センターの指導員・心理専門職・地区保健婦・作業療法士が参加し、社会復帰への原動力となるように体系づけられた評価・再評価をはじめとするダイナミックなリハビリテーション対策が求められることになる。

 英国では、身体障害者のニーズは他の障害群よりは理解されている。身体障害者のための民間サービスや法令に基づく対策が実施されてきた長い歴史があり、医学的その他のアフターケアーも十分であって地域社会にはっきりと確立している。保護雇用は、ニーズに応える数あるサービスのなかでも最も重要なものと認識されている。

デイセンター──作業訓練についての実際上の問題点

 理想と現実はややもするとかみあわないもので、全員が報酬を伴う仕事に従事する保護授産所で、大した作業ではなくともそれが活動の中心であり、しかもその利用者が重度障害者で賃金支給のないというデイセンターとの間では、管理上・組織上の深刻な問題がある。例えば、社会生活能力や身辺処理能力の訓練を実施し、移動や意思伝達の能力の向上を図り、社会性発達の手段として趣味活動を導入しようとする障害者のための小規模デイセンターが、そのためにこそ作業を導入すべきという執拗な要請にどう対処することになるか?管理者は、向上訓練やケアやリハビリテーションプログラムの主要な手段と信ずるが故に、変化に富んだ内容と技能レベルの豊富な下請作業の確保に奔走することになる。

 デイセンターは通常は生産第一ではないが、単独のセンターは、適当な仕事を確保し、納期を念頭に生産工程を維持してゆかねばならないという一般の製造工場のような問題をもっている。ただ、生産を一定水準に維持する労働力があったり、下請の制約は何ら受けないといった事情があれば別であるが。

 「内容の豊富な仕事を」ということは常に叫ばれ、このため下請作業を導入することが多くなるが、これには商業ベースでは常識の納期と品質管理という制約があり、多くのデイセンターの能力を越えてしまうという事情がある。夏季には仕事が十分でも冬季はさっぱりという季節による変動もある。このため、デイセンターのプログラムは不安定の傾向をみせている。作業は訓練のための血液に相当するが、センター利用者のでなく企業のニーズのために導入することになっては、逆効果であろう。その他の活動も失敗に終わろう。作業が手段でなく目的そのものになってしまったからである。結果は無残なものとなり、センターは生産性の必要にせまられて社会生活訓練プログラムを考慮しなくなるか、生産受注の困難さを痛感して一切導入しないかのいずれかになる。下請作業が不十分なときは何かつまらぬ気晴らし作業でごまかし、十分なときはそれにふりまわされるといった安定性のないプログラムになってしまうこともあろう。

 以上のような例のいずれでもなく、それでいて、デイセンターが障害者のために最大限の利便を提供しうるような運営法があることを私は提示したい。管理者や担当者が、そもそもそのエネルギーを障害者の総合的な進歩向上に集中させるべきなのに、下請作業の導入や確保・納期・品質管理に多くの時間をとられるということは本末転倒である。デイセンターの管理者の業務というものは、利用する障害者が個々のニーズに合わせて総合的に計画されたプログラムから最大のメリットを得られるように、保障することであると私は考える。採算性のまかりとおる(例えば生産実績や生産収入が何事にも優先するような)工場にさせてはいけないのである。だからといって、全く作業プログラムのない障害者のセンターも、私には肯定できない。

一つの解決策

 いつでも、批判はたやすいが実行はむずかしい。利用者数の変動も多い障害者のためのセンターの管理者のニーズに的確に対応できるように、地方自治体がどのように仕事の受注を調整できたか? ある程度までしか実はできない。なぜなら、仕事の受注量はセンターのコントロール枠外の政治・経済的要因に依存しているところ大だからである。しかし、受注不足を補う方法の一つとして、デイセンターとは場所がちがっても同じ翼下にある保護授産所を開設することがあげられる。

 保護授産所は、能率的な工場として活動することになろう。それは、被用者に賃金を支給し、デイセンターの何倍も生産能力をもち、採算も度外視せず、産業政策にも柔軟に対応できるだろう。効率よくやれば、デイセンターに下請作業をおろすこともでき、センター管理者の要請に応えて適切な仕事を適切な量だけ流すことも可能である。それは、前に私が指摘したように、作業が重要だが適量でなければならない総合的リハビリテーションプログラムに沿ってセンターが回転できるように、企業からの生産需要に対しての緩衝器の役割を果たせるだろう。時に強烈な圧力がかかっても、必要に応じての時間外勤務等により対応できるのは保護授産所なのである。

 更に、同等かそれ以上大きい長所として、障害者が授産所に移行する準備をしたり移行そのものが円滑円満にゆくというように、センターと授産所間の有機的連携が保持できるということがある。

 このことが、Croydon市で授産所とデイセンターの複合体を発展させてきた根拠なのである。作業を伴う計画的リハビリテーションプログラムによって、障害者の可能性は開発されてゆくという思想も重要な役割を占めている。こうみてくるかぎり、保護授産所はセンターの存立に絶対不可欠であり、またすべてのセンターも授産所の存立にとって同様の意味をもつということになる。

 Croydonの実際は、以下のとおりである。Crosfield Industrial Unitは、生産作業のサービスの司令部または中枢として、他のセンターのために下請作業の確保・割当・管理といったことを担当する。市の直営になるもので、雇用省の補助金を受け、二つの部門から構成されている。つまり、評価・リハビリテーション担当部門と保護授産所部門であり、後者は障害者雇用法の認定を受けている。Crosfieldに紹介された障害者は、まず、精神科医(市の医療技術顧問)を長とする委員会のチェックを受ける。委員会には、ソーシャルワーカー・心理専門職・雇用促進官も参加しており、入所経過の定期的チェックや退所前の面接も行う。Unitにはまた別の委員会があり、地域の有力な実業家たちで構成されていて、生産作業の確保・回転についての援助を担当している。

 主工場は約2万5千平方フィートあり、その地域の地元産業や官公庁の下請作業を行うことで、商業ベースのもとに運営されている。包装・簡単な機械加工・機器の組立等を引き受け、更には市内各所の除草や庭園の簡単な手入れといった工場外作業に従事する移動班もある。Crosfieldは、どの障害群であっても重度者を受け入れ、150人の入所生の受け入れが可能である。Crosfieldの周辺に、各種障害者のためのセンターをもっている。

 精神薄弱者のためには、Waylands Adult Training CentreとHeavers Farm Adult Training Centreがあるが、これらは総合的な訓練プログラムを提供していて、生産的作業訓練はそのなかの一つにすぎない。社会生活能力のある成人精神薄弱者のためのCherry Orchard Advanced Adult Training Centreは、一般雇用や保護雇用に結びつかない人たちへの意味のある働く生活の保障、更には一般雇用・保護雇用に結びつく可能性のある人への進歩向上のための環境を設定している。このセンターでは生産作業が100%行われている。

 身体障害者のためにはWaylands Day Centreがあり、重度身体障害者への目的のある作業の提供と進歩の可能性がある(と思われる)身体障害者の評価を実施している。生産作業は多くの活動の一つにすぎない。老人のための授産所もあり、ここは生産作業中心である。民間団体、例えばSpastic's Work CentreやGuild of Social Serviceといったところが運営するセンターもあり、これらは生産作業をかなりとり入れている。

 精神病患者のためには週4日制病院があり、地域ぐるみの治療(community treatment)を実施している。Lantern Hall Day Centreは長期の精神病に悩む人にデイケアを行っている。大部分が一般雇用の困難な人々であるが、生産作業の行われている環境が効果的なのである。Bensham Day Centreは精神病をもつ老人(若い慢性患者も少しはいるが)のためのデイケアを行っている。ここの生産作業は小規模だが十分効果的である。

 以上の各センターがCrosfieldの保護授産所による作業の提供とかリハビリテーションサービスの観点からの援助協力なしには満足に運営できないということははっきりしている。Crosfieldへの移行も可能という事実は、各センターのプログラムに良い影響を与え、各プログラムに向上目標があるというようになり、更にCrosfieldから一般雇用にもゆけるという事実もあって、各プログラムが活気のあるダイナミックなものになっているということを強調したい。

将来像

 地方及び国の社会サービス政策は、現在、リハビリテーションと障害者の地域への融合に重点が置かれており、このことは、障害者を大規模施設に収容し健常者から隔離しようとした従来の思想からの急激な変化を意味している。症状のコントロールと社会防衛上からの処遇中心であった精神病患者を深く理解できるようになったこととか、精神薄弱者を国家経済に寄与できるようにする訓練技法の進歩とかが、この新しい状況変化に部分的にせよ貢献してきたといえよう。

 この政策遂行には障壁がいくつかある──財源や訓練された専門職の不足、建物の問題、地方自治体当局と病院との間の運営上の深いミゾ。しかし、ここ20~30年の間には全くといっていい程、障害者のためのデイセンターは、評価や作業指導・訓練に基づき一般雇用・保護雇用結びついてゆけるような施設設備をもつようになるだろう。保護授産所は中心となり、多くの意味でこの種のサービスのための存立基盤となろう。

 このサービス体系は、実験試行という形で1~2実現されつつあるわけであるが、保護授産所が拡充すると(少なくとも現在の2倍は開設されるであろう)、生産を維持する必要から事情は複雑になるかも知れない。我々は何とかして、授産所の販売市場を開拓・確保せざるをえなくなるし、これに失敗すれば、財政その他の援助が得られたところで、授産所の多くは存立しえなくなろう。

 医学が進歩しても真に実質的な躍進でないならば、授産所の必要性に影響を与えるまでには至らないだろう。25年前の保護授産所は、失明者・結核回復者・てんかん・傷い軍人のためのものであって、他はほとんどかえりみられなかった。失明は抑制されつつあり、結核は治ゆ率高く絶滅され、てんかんもまた一層コントロールされるようになったが、精神病・二分脊椎・サリドマイド・脳性マヒ・交通事故といったところは、医学の進歩が追いついていないのである。

 将来を見通せば、治療を要しない入院患者(精神病患者や精神薄弱者)を地域社会へという運動によって、次第に、予防の強化とか入院患者の減少化というような方向づけが強調されるものと思われる。つまりこのことは、授産所の数が必要なだけ拡充した後は、(障害者になる人が少なくなってゆくということで)次第に減少してゆくことを意味するものである。

(注) デイセンターとは、私の見解によれば、障害者が自由意思で通所できかつ賃金を受給しないというように制約がきびしくなく、そこでは訓練・作業・社会活動が提供されるセンターのことである。

(Social Work Today,Vol.8,No.9から)

*本稿は、London近郊Croydon市のデイケアサービス担当次長である筆者が、Naidex大会('76年度)に発表した報告の抄録である。
**神奈川県総合リハビリテーションセンター リハビリテーション部副技幹


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1979年11月(第32号)10頁~14頁