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特集/精神障害者のリハビリテーション

よりよい援助付き雇用のために(抄訳)

抄訳 大江 基*

Ⅰ.援助付き雇用の理念

 最近、職業リハビリテーションの分野において援助付き雇用が重要な位置を占めるようになってきたが、1986年のリハビリテーション法修正条項の中では、援助付き雇用の特徴について次のように述べられている。a)援助つき雇用は一般雇用で働けず、デイ・ケアを受けている人のために企画された。b)従来のデイ・プログラムで受けられたような訓練、指導、援助が職場において継続して与えられる。c)障害者も一般労働者と同様に収入、生活の質、安全性、移動、昇進の機会等、就労によって得られる利益を享受するために企画された。d)障害者が職についたり、仕事を遂行するのを助けるためにいろいろな技術やサービスを取り入れる。すなわち、職場において訓練や指導を行っている企業を援助すること。障害者を雇用するためにかかる余分な経費を雇用主に対して補償すること。重度障害者に対する指導、共に仕事をしながら個人的にケアしてくれる同僚への給料の補助などである。

 援助付き雇用は、これまで重度障害者を保護的場面で扱ってきた伝統的職業リハビリテーションから理念的にも実際的にも方向転換したことを意味している。ただし、援助付き雇用が本来の根本的理念や原理に則って確立されているかどうかには疑問があり、現在実施されている方法を詳しく分析してみる必要があるだろう。

 本章の目的は、援助つき雇用と伝統的な職業リハビリテーションの基本的理念を概観すること、援助付き雇用が開発当初の原則に沿って適用されているかどうかを吟味すること、および、職業リハビリテーション・システムの範囲内で援助付き雇用を実施するためにどのようなステップをとるべきかについて、いくつかの提言を行うことである。

援助付き雇用の原則

 援助付き雇用の原則は次の5項目に集約される。

(1)統合就労 : 障害者が、ケア提供者としての報酬を受けていない健常な同僚と、物理的にも社会的にも近接した場面で働く状態であること。

(2)有給の雇用関係 : 連邦法規では、1週間に平均20時間以上の有給の仕事につくこと。公正労働基準法によると、最低賃金が支払われなければならない。

(3)援助の継続 : 障害者が必要な期間、必要な程度の援助を継続すること。援助は職場の内外を問わず、就労継続に必要な限り提供しなければならない。継続的な援助の典型的なものは指導であるが、職務への適応訓練、障害者に合わせた仕事の修正、移動の援助、個人的相談等のケア、同僚への特別手当、ソーシャルスキルおよび、金銭の管理なども含まれる。

(4)重度障害者への配慮 : 最も重度の障害者に対して援助が提供されるべきこと。援助付き雇用の対象は軽度、中度、重度の精神遅滞、自閉症、重度身体および感覚障害者、頭部外傷者、精神障害者等である。

(5)無条件の受け入れ : 重度の障害者でも援助付き雇用を利用する資格があり、また、ふさわしい対象になり得ること。適当な訓練と援助が与えられれば、障害の種類にかかわらず、地域社会で働く能力と権利があるという前提が含まれている。これは、対象者の選別や排除を避け、できるだけ対象を拡げようという意図からである。

 本論では、以上の基本的観点から連邦および州の職業リハビリテーション・システムを見直してみたい。

連邦および州のシステムと統合就労

 統合就労は連邦および州の職業リハビリテーション・システムの中で公式に述べられているが、実際には多くの障害者は保護的施設にまわされたり、重度障害者は対象からはずされている。また個々の障害者の状況によって多くの可能な選択肢の中から処遇が決められる。たとえば個別の援助付き雇用や、エンクレイブ1)(ワークステーション2))、移動作業班3)、過渡的雇用4)、保護的訓練等である。

 逆に、職業リハビリテーションには不適当ということでデイ・ケアに紹介され、そこからスタートして保護雇用、援助つき雇用、そして最終的に一般雇用まで達する場合もある。このように一つのステップから次のステップへ一段階ずつ上昇することは、一連の職業リハビリテーション・システムの望ましいあり方とされる。

 また、連邦および州のシステムでは統合は訓練の必須条件とはなっていない。ほとんどの重度障害者はレディネスモデルの立場に立つソーシャルクラブ/ジョブクラブや、ワークステーション等の分離された施設で訓練を受けてきた。伝統的職業リハビリテーション・サービスではレディネスモデルの立場から次の仮説を前提にしている:現実の社会で働くためには一定の規定された行動や技術を身につけていなければならない。そのためには障害者専門の施設で評価・訓練を受ける必要があり、レディネスができてからでないと地域社会に入っていけないだろう。

 統合就労とは、障害のタイプやグループによってまちまちに使われるような相対的概念ではなく、通常の雇用関係であって単なるヒューマニズムによるサービス場面ではない。

 一方、援助付き雇用にはレディネス的思考はない。障害者が地域社会の一般雇用まで昇りつめて行く一連の段階などはあり得ないし、障害の程度に応じてプログラムを区別する一定の段階もない。障害者はその種類や程度にかかわらず統合的就労サービスを受ける資格があり、また、その能力、ニーズ、興味に応じた仕事に配属されたり訓練を受けられるようにすべきである。

連邦および州のシステムにおける長期の援助

 保護雇用サービスは、個人にとって必要な援助を提供するものの、なお不十分な点があり、援助付き雇用はそれを充足するために企画された。特に援助付き雇用の目的は、継続的援助なしには一般雇用では力を発揮できない重度障害者に援助を提供することである。継続的援助とは、定期的また不定期的な場合も、持続的に与えられる場合もあるし、また職場内で行われる時も(たとえば、ジョブコーチ、有給の同僚、職場の改良・調整など)、職場外のこともある(通勤介助等の移動の援助、金銭管理など)。この基本的考え方は、雇用を維持していくためには、必要な援助を必要な期間提供すべきだ、ということである。逆に、長期の援助を必要としない人は援助付き雇用の対象ではないと言えるし、従って伝統的職業リハビリテーションで十分な人だと考えられる。

重度障害者へのサービス

(1)重度障害者 「重度障害者」は主観的言葉であり、いろいろな解釈の余地がある。連邦のガイドラインによると、保護的就労の対象群は次の三つのグループを含んでいる:a)学齢後の重度または多重障害者で、かつてはデイ・ケアや保護雇用が適当とされていた者、b)長期間の保護就労者、c)以前は職業リハビリテーション・サービスにも該当しないとされていたほど重度の障害者である。

 しかし、実際に援助付き雇用実施機関は財政的また期間的に州の補助ガイドラインの中ほどに収まるような対象者を選びがちなため、重度障害者が受け入れられる機会は少ない。

(2)無条件の受け入れ 現在の職業リハビリテーション・システムは、就労希望者の雇用可能性を査定するという意味で「条件つき受け入れ」と言える。援助付き雇用の推進派は。すべての人と言わないまでも多くの人が障害の程度にかかわらず地域社会で働く能力があると信じている。また、誰もが地域の現実の仕事につく権利があり、雇用能力を予め決定することはこの権利を阻害することであって差別につながると主張する。ある研究者は、伝統的な評価技法や道具によって重度障害者の職業能力を予測するのでなく、援助つき雇用を実施する中で評価するべきであると主張する。

 一方ある研究者は、重度障害者と判定された人に伝統的な評価を行うことに疑問をもちながらもワークサンプル法や標準テストによる予測の必要性を提起している。なぜならワークサンプルやジョブサンプル法で標準的指示を理解できなかったり指示に従えないなら、実際の課題遂行に必要なことを学習するのは困難だからである。リハビリテーション法の1986年修正条項では、援助つき雇用は、そのためのトレーニングを受ける能力があるか、一般雇用につくために継続的に援助を受ける必要があるか、あるいは、援助つき雇用場面で働く能力があることを認められた者に適用される、としている。

 雇用可能性を査定する伝統的方法を批判する立場の人も、雇用可能性の概念そのものを否定したり、廃止を主張することはできなかった。その代わり、個人の雇用可能性に不確実な点がある時は、18ヵ月以上の「延長評価」を行うことが提案されている。

 重要な点は、ある個人が能力があるかないかではなく、どんな仕事があれば、またどんな援助があれば彼がもっている可能性を最大に発揮できるかということである。このことは、すべての事前の評価を否定しているのではなく、どうしたら統合雇用が可能になるかに重点をおくべきだということである。

提 言

 以下の提言は、当初意図したとおりに援助付き雇用を受け入れるように、伝統的職業リハビリテーション・システムを変えるのに必要である。

1.地域の職場内で障害者同士を集める傾向に歯止めをかけない限り統合は実現しない。

 障害者だけをグループ化することは、障害者と非障害者の社会的距離を拡大するものである。いろいろな援助を必要とする人が職場のいろいろな場所に散らばっていることが望ましい。そのことによってジョブコーチは頻繁にあちこち回ったり、必要な人により多くの時間をさくことができる。

2.職業リハビリテーション・カウンセラーは援助つき雇用についてより深く学び、重度障害者に対してより良くかかわるべきである。

 そのために、a)カウンセラーは重度障害者も雇用可能であり、また統合雇用実現の成否は専門の訓練を受けたカウンセラーにかかっていることを自覚すること。b)保護的作業所にはもはやケースを紹介しないこと。c)評価については伝統的な技法や道具の代わりに、機能的、生態的評価法を取り入れること、d)見せかけの援助付き雇用でサービスを受けている過渡的雇用の対象者を活用すること、等である。

3.援助付き雇用プログラム開発の推進のための対策をたてること。

 どのようなプログラムも財政的、時間的制約はあるが、従来、作業所やデイ・サービスに投入されている多額の資金は、公平の観点から統合雇用を必要とする人のサポートのために使うべきである。

4.援助付き雇用推進に当たって、重度障害者に優先順位がおかれるべきである。

 多くのプログラムでは、ケアしやすい人から職場の配属が決まっていきがちである。援助付き雇用では、連邦政府が当初考えていたように、重度障害者に優先順位をおくべきである。

Ⅱ.援助付き雇用のジョブコーチが退職する要因

 一般に援助付き雇用で最も中心的役割をとるのは職場において障害をもったワーカーを支えるジョブコーチである。この役割を担う優秀なスタッフを確保することが援助付き雇用プログラムにとって決定的に重要である。ジョブコーチの仕事は相当複雑であり、辞めていく者も多い。ジョブコーチが辞めれば重度障害者を雇用しておくことは困難になるし、新人を採用してもすぐには前任者の役割は果たせない。新人ジョブコーチが専門トレーニングを受け、障害者の援助になれ、地域社会のビジネスになじむまでには相当時間がかかる。

 このようにジョブコーチを確保することは重要なので、ジョブコーチの入れ替わりの要因は検討に値する問題である。本章の目的はジョブコーチの退職理由に関して、あるリハビリテーション施設で行われた分析結果を示すことである。

方 法

 この分析はニューイングランドの都市部にある地域型のリハビリテーション施設で行われた。そこでは約500名の障害者がケアを受けており、そこからジョブコーチと共に援助付き雇用に出て働いていた。

 対象者 :本研究の分析に加わった13名のジョブコーチは1987年10月から1988年5月までの8ヵ月間、リハビリテーション施設に在職していた。彼らは16ヵ所の援助付き雇用職場で60名のワーカーを援助しており、各人は1~3ヵ所の職場を担当していた。分析期間の最後の時点では7名のジョブコーチが在職しており6名は退職していた。そのうち4名は自己退職、2名は解雇であった。

 分析情報 : 各人について①在職期間、②学歴、③仕事の種類および、④退職理由に関して、人事記録と面接によって情報を得た。

結果および考察

 学歴 : 13名中大学卒2名、同中退5名で、6名が高卒であった。例数は少ないが、学歴と在職期間には特に関係は見られなかった。

 職歴 : 在職期間は1~21ヵ月にわたっており、在職者のうち5名は14ヵ月以上であったが、退職者はいずれも7ヵ月以内で退職していた。

 職場 : ジョブコーチが配属された職場は、ファーストフードレストラン、会社の郵便集配室、生産工場、食料品店等であった。1名のフローターと呼ばれるジョブコーチは代替要員であり、彼はすべての職場、すべての障害者について知っていなければならない。

 退職理由 : ジョブコーチの退職理由は大別して3つのカテゴリーに分けられる。第1に、個人的理由や配偶者の転勤などの家庭の事情によるものである。ジョブコーチの賃金はリハビリテーション施設の中では最も下の部類に属するので、他により良い条件があれば経済的プレッシャーには弱い結果となる。

 第2に、トレーニングの不十分さがあげられる。ある女性のジョブコーチは、担当していたワーカーの攻撃的な言動をコントロールできずやめるに至ったが、対処の仕方を訓練されていたら続けていただろうと言っていた。他にもワーカーをきちんと指導できないコーチがあり、特に初期のトレーニングの重要性が痛感される。

 第3に、ジョブコーチは与えられた役割を果たせないと感じたり、自分自身を支えてほしいと感じていた。これに対しては、支えが必要な時や自信がない時、現場にスーパーバイザーを呼んだり、仲間のコーチ達と交流するためにしばしばホームベースの施設に戻れるようにすることが必要だと思われる。

 この研究の分析から十分な結論を引き出すには例数が少ないが、いくつかの重要な問題が出されていると思われる。したがって、より大きな施設で、より多くの対象者について同様の分析を行うことが望まれる。

Ⅲ.援助付き雇用のスタッフトレーニングモデル

 援助付き雇用に関する多くの文献で、スタッフの乏しさ、特に援助付き雇用技法について研修を受けたスタッフの少なさが指摘され、そのことがスタッフの歩どまりの悪さと、重度障害者の統合就労の障壁になっている。

 研修のプログラムの側面からみると、日常業務では雇用の専門家は、営業マンであったり、行動科学の専門家であったり、心理学者、カウンセラー、障害をもったワーカーの援助者等の機能が要請される。

 次に教育企画の面からすると、有能なスタッフを速やかに確保するために、熟練、能率および成人の学習に向けた職場内トレーニングモデルが必要となる。リハビリテーション施設の職員が援助つき雇用に対して理解を深めるために、この分野での学習経験のニーズを認識し、そのことが自分達に役立つことを知る必要がある。

 本章では適性重視のスタッフトレーニングモデルの企画および実施結果を報告する。

方 法

 雇用専門スタッフトレーニングシリーズは援助付き雇用スタッフ養成のための教育プログラムである。このシステムは8つの技術領域から成り立っている:1)職場開拓、2)雇用主との合意、3)作業の測定、4)職務とワーカーの組み合わせ方、5)職務分析、6)資料収集、7)技術訓練、8)フォローアップサービスである。各領域について講師用と受講者用の詳細な訓練マニュアルを作成した。

 トレーニングは直接的技術学習と、持続的技術学習の2面から企画された。直接的技術学習とは講師の指導の下に一定の基準に従って個々の具体的課題を実行する能力に関するものである。一方持続的技術学習とは、訓練した技術を構造化された訓練場面を越えて実際の環境、すなわち援助付き雇用の現場で維持し、応用するものである。

調査対象と場面

 このトレーニングプログラムは、ミシガン州の援助付き雇用にかかわる185名の専門家に対して実施された。対象者の内訳は、a)ジョブコーチおよび職場開拓担当98名、b)特殊教育専門家50名、c)援助付き雇用コーディネーター21名、d)リハビリテーション施設長8名、e)大学生8名であった。これに対し、トレーニングの有効性を評価するために統計的にマッチングしたコントロール群として93名の未受講の援助付き雇用の専門家を用いた。

 このセミナーは1987年11月から1988年5月までミシガン州の7ヵ所で行われた。

研究計画

 トレーニングの評価は次の5つの変数に対する受講者の評定によって行われた:1)トレーニング内容の適切性、2)トレーニングの質、3)教材の有用性、4)トレーニングの有効性、5)トレーニングの実務への影響。

 トレーニングの直接的有効性は、受講者とコントロール群のアンケート合計点の比較によって評価された。アンケートは受講者についてはトレーニング直後に、コントロール群については郵送によって行われた。

 トレーニングの持続的有効性については、トレーニング直後に行ったアンケートと、4ヵ月後に行った応用テストとの比較によって評価された。

 実務への影響はトレーニングの6ヵ月後に受講者の中からランダムに40名を選び、電話で回答を求め評価した。

結果および考察

 内容の適切性 : 185名の受講者のうち160名の回答を得たが、そのうち144名(90%)がトレーニング内容は仕事との関連性が高いと評価し、16名(10%)がやや高いと評価した。

 トレーニングの質 : これは指導方法、教材、質問の機会と回答および実習の5項目について5段階で評価された。結果として全項目の平均評点は4.54であり、全体にトレーニングの質が高いと評価された。

 トレーニング教材の有用性 : これは8つの技術領域の各々について評価されたが、平均8.79であり、全領域で教材の有用性が認められた。

 トレーニング効果 : これはトレーニング直後のテストと未受講のコントロール群のテストとの比較によって調べたが、結果は予測どおり受講者の方が統計的に有意に得点が高かった。すなわち、すべての領域で受講者は内容をよく理解していたことが示された。

 実際場面への応用 : トレーニングの応用と維持に関しては、トレーニング直後と4ヵ月後のテスト結果を比較した。結果的に有意差があり、トレーニングは実際場面へ転移され、応用されていることが示された。

 実務への影響 : これは技術と能力、組織、地域連携および担当のワーカーの4領域についてトレーニングの影響度を調査したが、受講者は全体的に6ヵ月後にもトレーニングが専門的知識、技能、活動に有効であると評価していた。

 まとめ : 本研究は援助付き雇用のスタッフトレーニングプログラムが8つのサービス領域にわたる技術の学習に有効であることを示した。これはスタッフの態度や行動を変えただけでなく、6ヵ月後のフォローアップでも、トレーニングが受講者の専門技術や組織に対してもプラスの影響を及ぼしていることが示された。


1)enclave:直訳=飛び地、企業内に障害者のチームを送りこむ、企業内作業所。
2)work station:enclaveと同義、企業内作業所。
3)mobile work crew:チームを組み、注文に応じて車で出かけて作業をする。
4)transitional employment:企業と契約を結び3~6ヶ月間2人ペアで企業で働く。一般就労の前の一時的雇用。
 援助つき雇用に関する以上の3編の論文を紹介していただいた、横浜市生涯保健医療統合センターの加瀬昭彦先生に感謝申し上げます。

*川崎市宮前保健所

出典 略


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1992年1月(第70号)27頁~32頁