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用語の解説

ソーシャル・インクルージョン(social inclusion)

 ソーシャル・インクルージョン(social in clusion)は,1980年代にヨーロッパにおこった政策理念であるとされている。インクルージョンは,包摂,包含,包容とも訳される。その意味は,地域や国によって少し異なる。
 ヨーロッパでは,ソーシャル・エクスクルージョン(social exclusion)すなわち「社会的排除」の対立概念として用いられることが一般的である。1970年代のフランスでは,移民の増加などによる産業構造の変化から長期の失業のために貧困から抜け出せなくなる労働者が多数発生し,この状態をソーシャル・エクスクルージョンと呼んだ。ソーシャル・インクルージョンは,ソーシャル・エクスクルージョンや貧困などの問題をより広く解決するための解決策として位置付けられている。
 わが国では,2000(平成12)年12月8日厚生省(現・厚生労働省)の「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書において,「全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,健康で文化的な生活の実現につなげるよう,社会の構成員として包み支え合う」ことをソーシャル・インクルージョンとしている。対象者をすべての人々としている点や健康で文化的な生活の実現を目的としているなど広くとらえている点が特徴的である。
 2006年に採択された障害者権利条約では,地域社会へのインクルージョンとして,障害者が居住地を選択できること,必要な在宅サービス・居住サービス・その他の地域社会支援サービスを利用できること等を挙げている。ここでは,対象者を障害者に限定しているのは当然としても,サービス利用に着目している点が特徴的である。

社会的障壁(social barrier)

 社会的障壁という概念が注目されるようになったのは1972年の国連の臨時機関連絡会議において,障害者の社会参加を阻害する物理的・社会的な障壁を除去するための行動が必要であると提言されて以来であるとされる。翌年の1973年には,国連障害者生活環境専門家会議で,建築上の障壁の分析とともに社会的な問題についても検討している。
 1982年に第37回国連総会で採択された「障害者に関する世界行動計画」には,物理的および社会的障壁の除去が取り上げられた。そこでは,障害者を社会的文化生活から排除している人々の態度行動を社会的障壁としてとらえている。また,社会的障壁とともに文化的障壁も取り上げられた。
 1993年の第48回国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する標準規則」においては,社会的障壁という用語は使用されておらず,障害者の完全参加を妨げるあらゆる障壁の除去が取り上げられており,そこでは,物理的な障壁に加えて,情報コミュニケーション,雇用などにおける障壁について取り上げている。
 2006年に採択された,障害者権利条約においても,社会的障壁という用語は用いられず,態度および環境による障壁とされている。
 わが国においては,2008(平成20)年3月に閣議決定された「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱~国民一人ひとりが自立しつつ互いに支え合う共生社会の実現を目指して~」において,物理的障壁に加えて,社会的,制度的,心理的なすべての障壁に対処するという考え方をバリアフリーとしている。
 また,障害者基本法第2条では,「社会的障壁」を「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。」と定義している。
 このように,社会的障壁は,最初は物理的障壁に対して障害者の社会参加を妨げている人々の態度等を意味していた。時を経るとともに,物理的障壁に対するさまざまな障壁が取り上げられるようになり,社会的障壁という用語は用いられなくなったが,近年,わが国において,すべての障壁を含む新たな概念として使用されるに至っている。

寺島 彰(浦和大学総合福祉学部教授)


主題・副題:リハビリテーション研究 第161号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第161号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第44巻第3号(通巻161号) 48頁

発行月日:2014年12月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
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