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盲ろう者のしおり1998-盲ろう者福祉の理解のために-

4 盲ろう者のコミュニケーション

 盲ろう者はどのように他者と会話(コミュニケーション)をしているのでしょうか。
 一般的には大きく分けて①手話、②点字、③手書き文字、④音声、⑤筆談、⑥指文字、⑦その他、に分類でき、盲ろう者はこれらのなかからひとつ、あるいは複数の方法を組み合わせて会話をしています。
 それぞれのコミュニケーション方法と通訳方法を具体的に紹介してみます。

① 手話
 初めはろうで、手話を使ってコミュニケーションをしていた方が、のちに目も悪くなり盲ろうになった(「ろうベースの盲ろう者」ともいう)場合に多く使われています。
 基本的には聴覚障害者のあいだで普通に使われている手話ですが、個々の盲ろう者に適した方法に若干の工夫が必要です。
 例えば、(ア)盲ろう者が全盲の場合には相手の手話が見えません。ですから盲ろう者は通訳者の手に触れて、表わしている手話の形を手で読み取ります。(触読手話または触手話ともいう)
 また、通訳者が盲ろう者の手をもって、盲ろう者自身に手話を表現させる場合もあります。
 次に、(イ)盲ろう者が弱視の場合(視力が残っている場合)は、少し離れて手話を読み取ります。通訳者は、その盲ろう者の見える範囲内で手話を表わす必要があります。(接近手話または弱視手話ともいう)
 いずれの場合でもできるだけゆっくり、はっきりとした表現を心がける必要があります。
「触読手話(触手話)」風景の写真
          手話

② 点字
 初めはで、点字の読み書きに習熟していた人が、のちに耳も悪くなり盲ろうになった(「盲ベースの盲ろう者」ともいう)場合に多く使われます。
 点字器や各種点字タイプライターを使った点字による筆談をすべて含みますが、効率性からいって、次のふたつの方法が主に使われています。

 (ア)ブリスタ ドイツ製の速記用点字タイプライターで、点字を使用する盲ろう者の間では広く使われています。パーキンス式の配列の6つのキーが、それぞれ点字の6つの点に対応しており、キーをたたくとすぐにそれが幅13ミリの紙デープに点字となって打ち出されてきます。
(例えば、通訳者が「1」と「2」のキーを同時にたたくと、「1の点」と「2の点」が点字になって出てきますので、盲ろう者はそれを触って読み取ります。ちなみにこの場合は点字の「い」を表わします)
 ブリスタは、通訳者がキーをたたくとほぼ同時に盲ろう者が点字を読むことができるので、会議や講演会などの通訳に適しています。
「ブリスタ」を使っている様子の写真
        ブリスタ

 (イ)指点字 点字タイプライターのキーの代わりに通訳者が盲ろう者の指を直接たたく方法です。タイプライターのキー配列によって若干の違いはありますが、特別な道具は必要なく、正確に迅速に伝えられる方法であることから、今後利用者が増えていくものと思われます。
「指点字」をしている写真
        指点字

③ 手書き文字
 盲ろう者の手のひらに文字を書いて伝える方法で、「手のひら書き」とも言います。一般的には通訳者の指で、盲ろう者の手のひらにひらがなやカタカナを書きますが、慣れてくるとかなだけでなく漢字、数字、アルファベット等も読みとれるようになる盲ろう者もいます。その他にも、通訳者が盲ろう者の指をとって、もう一方の手のひらや机などに書いていく方法もあります。
 この手書き文字はかなり多くの盲ろう者に通じ、通訳・介助の初心者でも通訳しやすいという長所がある反面、時間がかかり伝えられる情報量が限られてしまうという短所もあります。
「手書き文字」を書いて伝えている写真
       手書き文字

④ 音声
 盲ろう者に聴力が残っている場合、その盲ろう者が聞こえやすいように耳元や補聴器のマイク(集音器)などに向かって話す方法です。盲ろう者の聞こえの状態によって、声の高低、強弱、速さ等に十分な配慮が必要です。
補聴器のマイク(集音器)などに向かって話している写真
          音声

⑤ 筆談
 盲ろう者に視力が残っている場合、通訳者が紙などに書いて盲ろう者に伝える方法です。その盲ろう者の見やすい大きさ、太さ、間隔の文字を書いて伝えます。
 筆談も③手書き文字と同様、通訳・介助の初心者でも通訳しやすいのが長所ですが、時間がかかるのが短所です。
筆談をしているところの写真
          筆談

⑥ 指文字
 大きく分けて次のふたつに分けられます。

 (ア)日本式(50音式)指文字 聴覚障害者の間で一般的に使われている日本語式指文字を、盲ろう者に見せたり触らせたりして伝えます。
 日本語式指文字だけを用いて通訳を受ける盲ろう者もいますが、実際には手話通訳の際に補助的に使われることが多いようです。
「指文字」で伝えている写真
        指文字

 (イ)ローマ字式指文字 有名なアメリカのヘレン・ケラーが主に使っていたアメリカ式アルファベット指文字をローマ字表記で表わし、盲ろう者の片方の手のひらに触らせて伝えます。

(例:こんにちわ→Konnitiwa、おはよう→Ohayoo)

 アメリカ式アルファベットの指文字は動きが小さく、c,j,q,v,xを除いた21文字で表現することができます。また、ローマ字の母音と子音の組合せは点字の構成と共通する部分が多く、点字の学習へとつながりやすいので、主に盲ろう児の教育に使われています。

⑦ その他
 ろう学校で口話教育を補助するために作られた「キュード・スピーチ(cued speech)」などがあります。

(→15頁 参考資料1「盲ろう者のコミュニケーション」参照)


主題・副題:
盲ろう者のしおり 1998