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盲ろう者のしおり1998-盲ろう者福祉の理解のために-

盲ろう者の言葉

私達の四つの願い

 私達盲ろう者は、次の四つの願いがかなえられることを、社会に向かって強く訴えます。

  • コミュニケーションと情報摂取の自由が保障され、誰とでも言葉を交わすことができ、様々な情報を自由に知ることができるようになること。
  • 移動の自由が保障され、外出が自由にできるようになること。
  • 教育を受ける機会、訓練を受ける場が提供され、十分な指導やサービスが受けられること。
  • 社会の中で他者とともに生きていく場、とりわけ、働く場が与えられること。

(第1回全国盲ろう者大会の大会宣言から)

 ふと、幼稚園か小学校のとき歌った「小さな手』という歌を思いたしました。
♪『一人の小さな手、何もできないけれど、それでもみんなが、みんなが集まれば、何かできる……』
 たしか、こんな歌詞だったように思います。なにげなく思いだしたこの歌に、ぼくは心を衝かれました。『小さな手』ぼくだ!!
 ぼくは一人では何もできません。でも、仲間がいれば何でもできます。独りぼっちのぼくの世界は、暗黒の静寂。蓋つきの壺に入れられ、海に沈められたような状態がぼくの世界です。しかし、そこに手があれば、たちまちぼくの心は、太陽の光のもとで走りまわることができるのです。

(福島智氏 9歳で失明、18歳で失聴。これは東京都立大学1年生のときの言葉)

 僕は、外で働きたいと思っています。アメリカでは、マクドナルドさんのように、盲ろうでも仕事をしています。スウェーデンという国では、一人で歩けない人は、タクシーで通っていると聞きました。そして、そのお金と券は、国で払ってくれると聞きました。日本では、どうして働く所がないのですか。誰か知っている人がいたら教えて下さい。お願いします。
 僕は人と話をするのが好きです。僕は、友達に会いにでかけるのが、とてもとても難かしくて、できませんです。電話で話ができませんです。もしできたら、いろいろな人と家にいて、話ができます。僕は釣りが大好きです。僕は車とバイクが大好きです。僕は今40歳です

(増田一則氏 先天ろう、3歳で失明。日本で最初に盲ろう児教育を受けた一人)

 私は5年前に失明し、4年前にろうになりました。私は専業主婦です。子供が3人いますので、朝5時に起きまして、子供のご飯とお弁当を作って、子供を学校に出して、それからお掃除、洗濯と追われています。お掃除が終わった後は自分の自由な時間で、とても楽しみな時間です。多くの方と点字で文通しているので、手紙を読んで笑ったり、また悲しんだりしています。

(川淵秀子さん)

 だが、とうとう聴力は回復しなかった。暗黒と静寂。盲ろうの世界とは、なんとむなしい世界であろう。それからの私は世を呪い、人を呪い、生ける屍と我身を呪った。失明してから片時も座右を離れなかったトランジスタ・ラジオが手にさわると、「ええいっ、こんなもんいらんわ」と畳に投げつける。手にふれる物、足にあたる物、あたり構わず、投げ付け、蹴とばす。聞こえないとわかっていながら、「呼んでんのに、返事してくれへんのんか」と夫やさ和子にあたり散らして泣きわめく……。まるで半狂乱--その当時の私を絵筆にするなら、地獄絵図さながらであったろう。

(稲岡幸恵さん 大正13年生まれ、長女出産後失明、20年後長女の死がひきがねとなって失聴)

 今の私の生活、いつも何かに挑戦していないと心が満たされず、恐ろしい孤独感におそわれるという面があります。次から次へと……、人に、「この次はなあに?」と言われるくらい色々なものにチャレンジしたいんです。私の夢も旅行ですね。もうすでにやっていますが、どこかの駅で電車に乗せてもらって、また、降りる駅で向こうの人に迎えに来てもらうという形で一人で旅行するんです。盲ろう者の私が全国を旅行し、そしていつかは全世界を旅行したいという大きな夢があります。

(榎本悠起枝さん 事故で失明、その入院中に失聴。元は三味線の師匠)

 また一粒、目から涙が流れ落ちる。どんなに流しても、流し切れない涙。涙って不思議だね。いつになったら涙が終わるのかな。
 目が見えなくても、風で分かるよ。春風や北風、いろんな風が吹くもの。目が見えなくても分かるよ。
 そんなの可哀相だよ。みんな取り上げてしまって生きていけなんていうの、可哀相だよ。たったひとつ生きる道もみつからないよ。
 どんなことを言われたって、もう平気。治らないって言われたって、もう平気。どんな残酷なことを言われたって、もう平気。今は、何を言われたって、もう平気。
 大声で叫びたいよ。私の耳に聞こえるまで、大声で叫びたいよ。みんなと同じように、大きく聞こえるようになるまで、大きな声で叫び続けたいよ。かすかに聞こえるまででもいいから、ひとり自分の声のこだまする部屋で、大声で叫び続けたいよ。
 心の氷が今溶け始めている自分が分かります、心の氷が溶ければ、心の春が来るかしら。優しい春の日ざしが心にさしこむかしら。今、心の氷が溶け始めているのが分かります。

(千葉かをるさん 高校生の時、脳腫瘍で失明、失聴。以上の言葉はこの盲ろうになって間もないころ記されたもの)

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主題・副題:
盲ろう者のしおり 1998

著者名:

掲載雑誌名:

発行者・出版社:
社会福祉法人 全国盲ろう者協会

巻数・頁数:
 巻 ~頁

発行月日:
西暦 1998年 3月20日

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