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平成18年度厚生労働科学研究
障害保健福祉総合研究成果発表会報告書

講演3-2 支援技術導入の効果を科学する

愛媛大学 教育学部
苅田 知則氏

それでは、先ほどご紹介頂いたように、私のほうから視覚障害者の支援機器利用に関する効果測定ということで、お話させていただこうと思います。愛媛大学の苅田と申します。よろしくお願いします。

それではまず最初に、私のほう、今年度からこの厚生科研の共同研究者として参加させていただくようになりましたので、今回お話するのは、今年度、今データを収集、あと分析している段階の途中の段階のものをお話しすることになるかと思います。

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申し訳ございません、ちょっとプロジェクタとの相性が悪いようなので、切れているようであれば、最大化せずに、、。

(間)

申し訳ないのですが、これでちょっと発表させていただきます。

それでは、話の続きになりますが、私のほうが現在やっておりますのが、視覚障害のある当事者の方に、どのような支援技術を使っているのかということと、同時に資料のほうにも書いてありますが、経済的な効果と精神的な効果、どのくらいの効果があるのかというのを、数値化していこう、という取り組みをしております。

まず最初に費用対効果ということで、いろいろ、視覚障害者の方は支援機器をかなり購入されるのですが、そういうふうに購入したことによって人的支援であったりとか、もしくは人的支援の中でも数値化できない、たとえば家族であったり友だちであったりだとか、ボランティアであったりだとか、そういった方たちを使うということがどのくらい本来は費用がかかっていて、支援機器を使うことによってそれらがどのくらい違うのか、というようなことを考えてみました。

今回、費用対効果に関して、まず最初に検討を加えたのですが、目的としましては先ほどお話ししたように、一応支援機器の利用と人的資源の利用という2つの状態を考えて、つまり障害があることによって生活が生活場面の中で困難がなる、その困難を排除するためにそれらの手段をどのように使うのか。この手段を使う時にどのくらいの費用がかかるのかというのを、あくまでヒアリングを通した概算しかないのですが、そういったものを出してみようということを考えました。

方法としましては、視覚障害といいながら、今回協力していただいたのは、盲聾の方になります。盲聾といいましても視野狭窄のある弱視、ロービジョンですね。と、一応コミュニケーションモードとしては音声でコミュニケーションがとれますので、難聴ではありますが一般的な視覚障害の方に近い状態の方と想像していただければいいと思います。その方にヒアリングを行いました。

この方は、盲学校の教諭をしながら、盲聾者友の会の理事長をされています。かなり支援機器の利用に関しては、他の視覚障害の方よりも多い。つまり、支援機器を購入している数としてはかなりある、というような方です。この方にヒアリングを行ったわけですが、ヒアリングでどういったことを行ったのかというと、一つは外出場面。外出するという状況の時に、人的支援を使う場合にどのくらいの費用がかかるのか。それに関係した、支援機器はどういったものを購入しているのか、ということを聞きました。もう一つは、事務処理ですね。当然、教員もしていますし、先ほどお話ししたように盲聾者友の会で理事長という職を兼任していますので、多くの場合はこの友の会の事務処理をしている時にどのくらいの費用がかかるのかということになるのと思いますが、そこに関しても保有している支援機器でどういったものが発生するのかということと、もしその事務処理を人的支援を使って行うとしたらどのくらい、かかると思うかというところでお話をお聞きしました。

まず最初にこの方がどういった支援機器を持っておられるのか。これも細かいところをついていくともっともっとあるはずなのですが、一応、今、日常的に使っているもの。たとえば日常的に使っていないものとして、この方もDAISYの機械であったりだとか、もしくは点字プリンタなんかも持っているそうなのですが、日常的にはあまり使っていないということですので、一応ここに挙げるものがこの方が日常的に使っているというふうに回答した支援機器になります。見てみますと、一番大きいのはこの方の場合はパソコンになります。パソコンをこの方は勤務している学校と、自宅と、携帯用のノートパソコンを持っていまして、だいたい3台合わせて約70万円ぐらい使っているというふうに回答されました。視覚障害がありますので、アーム付きのディスプレイで角度を変えたりだとか距離を変えたりということをすると便利だということで、このアーム付きのディスプレイを購入されています。4万円です。拡大読書器が約20万円。電子白杖も持たれていまして、約6万円ということになります。ウルトラアイというものですね。それから、白杖になりますが、これも予備を含めて3本購入していて、約9千円ぐらいかなあという回答です。あと、やはり難聴がありますので、補聴器が必要になります。これは盲聾であるゆえんなので、この30万というのをどういうふうに見るかというのは、また細かく考えていかなくてはならないのですが、一応ここでは30万を入れています。あとは懐中電灯。夜歩く時に必要になってきますが、これを2万円で購入されています。当然普通の懐中電灯ではなくて、より強力なものということですので、2万円くらいするということでした。あとルーペ、携帯電話等々で1万円、2万円程度を使うと。あとのほうで出てくるのですが、この方の場合に、テレビを観たりだとか、映画を観る時に、補聴器だとノイズを拾ってしまうので、ワイヤレスヘッドホンを使って聞いているというようなことを言われています。これは非常に重宝しているということなのですが、値段をお聞きすると、だいたい6千円くらいだろうというふうに言われていました。

これらをトータルすると、約136万5千円ぐらい。おおよそどのくらい使いますかというお話を聞くと、だいたい5年くらいを目処にしていますということです。これはおそらく一般のパソコン利用であったりだとか、物品を購入した時の耐用年数とほぼ同じになりますが、5年すると買い換えということになりますので、5年間スパンで136万5千円前後の費用がかかっているという概算になります。

一方で、外出する時に人的な資源をどのくらい使っているのかというのを、お聞きしたところですが、ガイドヘルプされている方であれば当然おわかりだと思うのですが、身近なところとか、よく通い慣れているところであれば当然なのですが、たとえばこの方のように、盲聾者友の会の理事としての仕事をするとか、友の会の仕事をする時に、あまり行ったことのない役所に行ったりだとか、もしくは出張するということが入ってきます。そのような時には、通訳介助の利用が必要不可欠になってきます。歩行訓練を受けていますので、白杖を使って一人で外出するということは可能です、この方も。ですが、そういった仕事というのはあくまで、先ほどお話したように友の会の仕事ということですが、友の会の仕事で外出する時には必ず通訳介助者を二名依頼していると。

この通訳介助者、県内でやる時には時給としては1,670円。平均だいたい役所に行って、諸々の手続きをしたりだとか、もしくは係の方と打ち合わせをしたりということを含めて、平均3時間から4時間くらいは利用することになると。プラス交通費がかかるわけですが、交通費は上限1,000円までは補助されるわけですが、それ以上になると当事者負担ということになりますので、多くの場合は市内、この方は、対象者のすぐ近くに住んでいる方に依頼するということになりますが、こういったところの費用もかかってくるということになります。出張するとなると、時給が2,000円だそうなのですが、仮に東京に日帰りで行くとしたら、一日ということになると、8時間ですね。二人必要になりますので、16,000円×二人で32,000円。プラス交通費がかかりますので、交通費がだいたいまあ、1人7万円として、14万円。おおよそ20万円強の費用が東京の日帰り出張で発生するという概算になっていきます。ただ、話をしていく中で、外出状況に関しては実をいうと支援機器と比較するというのがなかなか難しいということがわかってきました。先ほども言いましたように、基本的には知らないところ、あまり行き慣れないようなところに関しては、通訳介助、ガイドヘルプが必要になってきますので、外出場面でいうと人的支援を利用するというのが前提ということになりますし、費用対効果ということで考えても、後々のことを考えると、人的支援を利用したほうがコストパフォーマンスは高いということが言えます。この方も言っていたのですが、この方は電子白杖、ウルトラアイと、白杖を持っているのですが、ちょっと僕にはこのウルトラアイと普通の白杖とを併用するのは難しいのだと。つまり、白杖を振りながら電子白杖も振るとなると、その2つの情報を頭の中で整理するというのはなかなか厳しい。必然的にやはりガイドヘルプを頼むよね、という話をしています。

そういうことになりますので、比較しましょうという話になったのですが、こちらに関してはまあ、下にも書いていますように、人的資源のほうが、使うのが前提をいうことなので、コストパフォーマンスは高いということがわかります。一方で大きく違いとして出てくるかなと思ったのが、事務処理の状況です。これも先ほど言いましたように、盲聾者友の会の事務処理の手続きを、本来は事務局ですので、ボランティアの方であったりだとか、友だちとか、家族とかをいろいろ使いながら、もしくは実際にバイトも使っているわけなのですが、そういった全ての仕事、対象者の方がしている仕事を、パソコンとか支援機器を使わずにやった時にどのくらいの時間がかかると思いますかというのを聞いています。そうすると、役所に提出する書類が、作成するのにだいたい週1時間から2時間くらい。口頭で伝えて作ってもらうということになるとかかるだろうと。通訳介助者の養成講座もこの方しているんですけれども、これがいろいろな事務処理とかもしくはそれに必要な教材を作ったりだとかしていると、だいたい週に10時間くらいかかるのではないかと言われています。会報、友の会ですから会報を作ったりするわけですが、その会報を郵送するということになると、それぞれに合わせた点字であったりとか、もしくは墨字であったりだとかというのを分けて用意し、さらにそれを発送するのに週1時間から2時間かかると。このように考えるとだいたい週13時間かかるということになるのですが、普段はパソコンと、ウェブブラウザとか、エクセルとかワードとかで、メールを使いながら送っています。なんですが、これを週13時間の1年間を48週と考えて、5年間、人的支源だけで対応すると、時給600円というふうに換算すると、これ、うちの学生のバイト料になるのですが、600円をかけると172万8千円かかるということになります。一方で、ちょっと大学生の値段と一緒でいいのかということになるので、ちょっと上げて、複雑な処理をする時には700円払ったりしますが、その700円支払ったと仮定して計算して場合には、201万6千円かかるということになります。先ほど支援機器全部を使った時の値段としては136万5千円かかるということでしたので、細かい計算というのをもっともっと詰めていかないといけないわけですが、あくまで概算レベルとして考えていくと、やはり人的資源というものだけで行動していこうとすると、多くのコストがかかってしまう。ここには、実をいうと先ほども言いましたが、支援機器を使いながらも、ガイドヘルプとか必要になってくる人的資源とかがありますから、あくまで概算ということになりますが、こういった事務処理をする、つまり、動く頻度が少なくてこの方のようにロービジョンの場合には、特に支援機器を使ったほうが費用対効果が高いであろうということが考えられました。

次に、ちょっと時間もありますので、もう一つ。精神的効果についてお話していこうと思います。先ほどお話したのは、特に経済ですね。経済面での効果ということだったのですが、当事者の方、もしくは支援をされている方であればおわかりだと思うのですが、必ずしもお金では割り切れない所というのがあります。どこかというと、やはり心の問題ということになります。このATACでご紹介している支援機器のように、やはりその支援技術を使うことのメリットというのは、誰かに頼るというのではなくて、一人で困難さを克服できる、自己決定とか自己選択とか、自己実現というのが、支援機器を使っていくことで可能になっていくということがあります。つまり、先ほどお話したような費用対効果だけでは前述の効果というのは充分に測定したとは言い難いところが出てきます。ただ、どうしてもその、使ってよかったですか?というアンケートだけですと「よかったです」という主観的な判断であったりだとか、やっぱりこういうのって普及してもらいたいから、よくつけてしまうとか、そういったバイアスがかかってしまう。そこでもう一つ客観的なデータで精神的にも、こころの面でも必要であるということを考えられないかということで今回行っているのが、アミラーゼの活性度合いというものを使ってストレスを計って、ということをやっています。

具体的には、日常的に支援機器を使用している視覚障害のある方に、支援技術を使用している時と使用していない時を設定して、どの条件で精神的なストレスがどう違うのかというのを比較しているということを、現在行っています。

今実際にデータを取っているのがお二人になるのですが、全盲の方と、先ほど出てきました弱視難聴の方、それぞれに行っています。手続きとしては、支援技術の中で、依存度が高い、つまり日常的によく使っている支援機器について、使っていない時と使っている時とを設定して、それぞれでアミラーゼという、唾液中に現れる酵素なのですが、それを測定するという方法を使っています。全盲の方には、この方はウルトラアイの開発に、ご自身で携わった方で、かなり電子白杖を日常的に使われている方になります。職場内で電子白杖を利用するということが非常に頻度としては多い方ですので、職場内でそういう電子白杖を使った移動というものを課題として設定しました。つまり、日常的に使っている電子白杖を使った移動と、それを使わずに移動するとどう違うのかということを測定しました。一方で、弱視難聴のほうの方には、その方は小型のモニター、だいたい12インチくらいのテレビとワイヤレスヘッドホンを使って普段テレビを観ているという方です。この方も、それまでつまり、小型のテレビとワイヤレスヘッドホンを使うまでは、テレビとはあまりおもしろいものではないなと思っていたそうなのです。最近大きなテレビがあるのですが、視野狭窄の方になると、全体を観ることができませんので、なにをやっているのかよくわからないし、難聴ですから音が、補聴器を付けると回りの生活音が入ってきたりとかするし、雑音も入ってくるのでよくわからない。ただ、小型のモニターだとちょうど僕の視野に入って、なおかつヘッドホンだから他の人の迷惑にならない音量で聞けるということで、これを使い始めてから非常にテレビって面白いなと思うようになったと言われています。なので、この状況で、このワイヤレスヘッドホンを使わない場合と使う時とでどう違うのかというのを測定しました。

実際に、このアミラーゼというか、ストレスの量をどういうふうに測定していくかというと、ニプロ社の「COCORO METER(ココロメーター)」というものが最近販売されています。ご存じの方も多いと思いますが、これが唾液中のアミラーゼの活性度合いを測定するものになります。これが「COCORO METER」ですね。これは簡単なプロセスですが、体内のストレスを感じた時に、交感神経系の興奮が起こります。この交感神経が興奮することによって、唾液腺での酵素の分泌が増加し、結果的に唾液中のアミラーゼ値が上昇するということで、このアミラーゼが上昇した様子を測定することでどのくらいストレスがかかっているかというのを推測していく、数値的に推測していくというものになります。

これが結果になりますが、まず全盲の方が電子白杖を使った時の結果になります。課題としては、午後6時、ちょうど勤務が、この方が盲学校に勤務されているのですが、盲学校が終わった頃、勤務先のその盲学校にて、職員室から使っている教室、2階にありますが、そちらへの移動というものを実際に行っていただきました。普段のストレス状態を計るために、着席している状態でストレスを計ったのですが、これが3回計って平均16kU/Lという数値になります。一方で、統制条件、つまり電子白杖を使って移動するということを普段どおりにしていただいたのですが、この時に通路のポイントポイントで計って、その平均が17.5 kU/Lという数値になりました。一方で電子白杖を使っていない、使わずに移動していただくということをやりましたが、この条件で言うと18.5という数値が出てきました。これは、どう見るかということなのですが、あくまで16、17.5、18.5ということになりますので、今のところ差はないというふうに考えたほうがいいかな、と思います。これはあくまでもその一回限りの結果になりますのであれなのですが、一応今回の結果としては、この方についてはこの条件では差がなかったということになります。ただ、後で一つ回答していただいているのですが、つまりこの結果は支援機器を使おうと使わなかろうと、ストレス量は一緒だということを言ってしまうことになるのでおいおい、ということになるのですが、実際にその後でお聞きすると、実をいうと今回やったのは放課後で、人がいないのはわかっている。だから、普段生徒たちが移動している状態よりは、ストレスを感じなかったというふうにご自身はおっしゃっています。これはあくまでも先ほどの数値をお伝えする前にお聞きしているのですが、そういうふうに言われました。本来電子白杖が必要な時というのは、昼休みとか、昼食の前あたりが一番そうらしいのですが、児童生徒が入り乱れて往来しているような時に特に電子白杖が必要だと。もしくは、文化祭とか何か集会がある時に、人が多いような状態で子どもたちにあたってはまずいと思うような時にやはり電子白杖が必要になってくる、というふうに言われていました。今回の条件というのは、設定状況がちょっと悪かったかなあ、ということがあります。今後の課題としては、よりストレスフルな状態というのを、実験的に作り出す、つまり、昼休みと同じような人が多いような状態を作り出したうえで測定していかないと、この方の場合では正確なストレス量というのが計れないかな、というふうに思います。

一方で、弱視難聴の方ですね。この方のワイヤレスヘッドホンの利用についての実験をつい先日行いました。ワイヤレスヘッドホンを使用している時と補聴器を利用している時、もしくは補聴器のない状態でどういうふうにストレスが変化しているかというのを計っています。この方の平常時の平均25.5、という数字を示しました。一方で、補聴器を付けないでビデオを観ていただいた時のストレス量というのが、31という数値になります。今度、補聴器ありでちょっと音量小さめの状態にしてみた時のストレス量が36という数値が出ました。一方で、補聴器ありなのですが、音量が大きい時、この時はぐっと少なくなりまして、20という数値になります。さらに普段通りにワイヤレスヘッドホンを使った場合は18という結果が出ました。これで見てみますと、統制条件の普段どおりのワイヤレスヘッドホンを使った状態の約倍の値が補聴器あり、音量が小さい時にストレスを感じているというのが出てきます。

ここに書いてありますように、アミラーゼ活性量が少なかった順に並べているのですが、一番少なかったのはこのワイヤレスヘッドホンがありの状態。次が補聴器ありで音量が大きい状態、3番目が補聴器なしの状態。一番ストレスが強かったのが、補聴器ありで音量が小さかった状態、という結果になりました。

今回も、この数値を全くお知らせせずに、後で主観的な評価をお聞きしました。その時に、やはりワイヤレスヘッドホンを使用した時が一番楽だ、というふうにはお答えいただきました。どんな映画をやっていました?というのを、毎回映画を変えているのですが、その映画の内容を分析していくと、やはり映画の内容もこのワイヤレスヘッドホンを使っている時が、詳細なところまで理解している、聞き取れているし、理解しているということがわかってきました。一方で、補聴器ありと、音量が大きかった2番目にストレスが少ない状態の時には、同じように理解はしているのだけれども、粗筋はだいたい理解できているのだけれども、雑音が入るのでやっぱり詳細はわからないということが、主観的な評価としても出てきました。3番目の補聴器なしの場合というのは、ストレスは3番目なのですが、実は聞いている内容、もしくは理解できた内容というのは約1割程度だというふうに言われています。実際に粗筋というかどういう話ですかというのをお聞きしてもほとんどよくわからなくて、人が出てきて何か拳銃の音がして、ということくらいしかちょっとわからない。お話いただけませんでした。要は、何故ストレスが3番目になったかというと、途中であきらめたんだよね、というふうに言われました。つまり、補聴器がなくて、しかも映像としてもはっきりとはわからないからもういいやという感じになって、次に出てくる、補聴器ありで音量が小さい状態よりは、あきらめた分ストレスがかからなかったかもしれないね、という話をしています。

一方で補聴器ありで音量が小さかった場合というのはどうかというと、2割程度は理解できる情報があったというふうに言っています。ただ、反対に2割程度はわかるので、この話ってどういう話なのだろうというのを常に考えながら観ていなくてはならない。考えながら聞いているから、常に頭がフル回転しているような状態で、映画としては楽しめなかったというふうに言っています。そのことから考えていくと、4番目にこれがきたというのはだいたい主観的な評価と一致しているのかなと思います。今後も、数値としては、データとしては集めていかないといけないのですが、この方のデータを見ていると、主観と計測結果というのはおおむね一致しているというデータが出てきました。

今後は、先ほども言いましたように、全盲の方もロービジョンの方も含めて、いろいろな条件を設定していく中でストレス量を測定し、それを分析していくということが必要になっていくのかなと思います。

あと、その他ということで、この厚生科研のものとは若干違うのですが、現在うちのほうでは、昨日もお話したサーモグラフィを使って先ほどの精神的な効果について測定を行っています。今回は客観的なデータの測定ということですので、少しご紹介として、今リラクゼーション環境についての研究をしていまして、顔面の皮膚温を計ることで感情が測定できるという結果が出てきています。リラクゼーション環境に入っていったときに、子どもの場合ちょっと先ほどの「COCORO METER」を使うと、逆に数値がぽーんと上がってしまうんですね。つまり、唾液を取るという行為そのものがストレスになってしまうということがあるので、非接触型の客観的な数値の測定ということでいうと、サーモグラフィを使って皮膚温が一般的にはストレスがかからない状態のほうが体温が高くなるという傾向があるのですが、こういったものを使いながら客観的なデータの集積と、科学的な根拠の収集というのを現在行っています。

ということで、少し長くなりましたが私の発表はここまでにしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。(拍手)