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平成17年度厚生労働科学研究

発表会:「障害のある人をサポートする情報を共有するには?」

-言語的意思伝達に制限のある重度障害者に対してIT技術等を活用した意思伝達手段の確保を支援するための技術開発に関する研究-

講演1「情報共有で障害のある人とのコミュニケーションを変える」

つまり我々が何気なく使っている言葉でも、なかなかこう、お伝えしても分からないことということがあるということです。その時にいったいハシクラさんにはどうやって情報を伝えたらいいのだろうか、どうやって分かりやすくすればいいのだろうかという情報の共有も、実は充分なされていないということです。それで上手くいかない、混乱するということが起こってくるわけです。どうもハシクラさん、ありがとうございました。

ハシクラ:ありがとうございました。

中邑:もう一つ、ハシクラさん、スターバックスでお茶飲まない。ここではハシクラさん、飲むって言ってほしいんだけど。いや?

ハシクラ:困る。

中邑:困る。では今ここでお話をしましょう。ハシクラさん、テレビとか映画とかで何が好き。

ハシクラ:刑事番組。

中邑:刑事番組。今一番好きな刑事番組って何。

ハシクラ:はみだし刑事。

中邑:じゃあ、それについて話さない。今から、ちょっと。

ハシクラ:え、何で。

中邑:というような会話が成り立ちます。ハシクラさん、僕と、ATACカンファレンスについて話をしよう。

ハシクラ:それって何。

中邑:ATACカンファレンスについて話をしよう。

ハシクラ:難しい話はいや。

中邑:難しい話はいや、ということになるわけです。そうですね、つまりここに、例の3なのですが、相対性理論について話しましょう、そんな分からないことはいや、という話になるわけです。つまりコミュニケーションの成立には色々な要素が必要だということです。それを飛び越して我々は、簡単にAACの技法があればコミュニケーションできると思っているということです。そこのところ、ハシクラさんに、相対性理論やATACカンファレンスについて勉強して、それから話をしましょうということは、非常に問題があります。ではなくて、我々がもっと分かるように、楽しい話題を選んで一緒に話をするということが重要だと思います。

今回ハシクラさん、こちらに来て頂いたというのは、ご本人の承諾もあって、ご本人が話をしたいということで今回来て頂いて、カンファレンスの色々裏方のお仕事も手伝って頂いています。

どうもハシクラさん、ありがとうございました。では、あそこで、あるいはもうここが退屈だったら事務局の方で仕事を手伝って下さい。どうもありがとうございました。

ハシクラ:ありがとうございました。

中邑:どうもありがとうございました。ここの話よりは向こうにいるが方が絶対いいでしょう。

ここに書いてあります。コミュニケーションを提示する条件というのは、理解できること。もう一つは話題があること。それ以上に、話題に興味があることという、こういう条件というのが非常に重要なのです。ところが先程もいいましたように、我々は、入力と出力の保障しか今まで考えてこなかったということです。

避という現象が起きてくるわけです。話題がなかったら、これもそうです。無視や反響言語や視線回避同じようなことです。これは坂井先生が経験上、色々詳しく経験しておられると思うのですが、一緒にお話をして頂いていいですか。こういうことで。

坂井:自閉症の方なんかは非常に、とても、無視をしたり反響言語が出たり、視線回避など。中邑さんが今回たまたま歩いて、当てられたくないと思うと、やはり皆さん中邑さんの顔を見ない。見ない人は当てますよ。

中邑:そうですね。僕は嫌われているのかと思いましたが、実はそうではない。

坂井:特に分かっていて当たり前みたいなことを聞かれると言ったけれど、この答え正しいんだろうかという自信のない皆さんは、これ答え言って間違ったらどうしようとか、できれば当てられたくない。コミュニケーション皆さんとりたくないということは、こういうことではないでしょうか。

中邑:ということですね。困っているのは当事者だけではない。先程言いましたが。支援者もそうです。どうすればコミュニケーションできるか分からない。話題づくりも困る。坂井先生、今からどなたかとお話をするということをやってみます。

坂井:1300かっこいいですね。1300。1300好き?全然だめみたいです。

中邑:だめですか。僕となら話ができる。そうですね。今話しかけられた方は困ってしまいます。本当にどうしていいか分からない。

坂井:でも、子供とだってそういうことあるでしょう。

中邑:そうですか。

坂井:だって、昨日どこ行ったんだと、こういうような話題になった時に、我々は子供に聞くわけです。我々が意図しているのは、昨日郊外学習に行っただろうということを意図して話すわけですけれども。昨日どこ行った、食堂にも行った、学校にも行った、ロッテリアにも行った、どこに行ったのかということが分からないと、もう話せなくなって、例えばここで僕がトイレに行きましたと話そうものなら、お前何考えているんだ、ばかにしているのかという話になっていくわけです。だから困るんですね。

中邑:そうですね。だからそこをより具体的に伝えていかないと、向こうも困るということです。ですから先程の方に、坂井先生は、実は自動車が大好きなんです。スバルというメーカーの古い車に乗っておられるんですよ。そのことについてどうもお話がしたかったようなのです。ちょっと話を合わせてあげて頂けますか。これくらいの背景情報を持ったところに、坂井先生がいるわけです。

坂井:1300ってかっこいいですよね。

会場:知らない。

坂井:知らないですか。車のことは知らないと。これはいいですね。分かりませんと言われたら本当に楽しくない。知らなかったら、ああ、知らないのだったら分かりましょうと。分かりませんと言われても、しゃべっていることも分かってもらえない。

中邑:ですけど今私が、支援者を支援する情報を提示することによって、当事者の坂井先生との会話が多少なりとも成り立った。

坂井:1300が何のことか分かりましたか。

会場:1300が分かりません。

坂井:だから、支援者の情報を中邑先生が入れてくれていて。そういうふうに聞いて頂きたい。もう一回いきますよ。1300知ってますか。

会場:車と1300がつながりました。

坂井:1300は車の名前なんですよ。はい、そうなんですよ。ここまで伝えるのも難しいケースもあるということですね。

中邑:それは話題が不適切であったということだと思います。

坂井:そういうことです。これが不適切な話題だということです。

中邑:そうですね、ということです。情報を理解するにはどうすればいいかという。分からない人に分かりやすく指示する方法というのが、いくつか考え出されているわけです。一つは多様なモダリティを用いるということです。言っても分からなければやはり写真を見せるというのは、非常に有効です。我々だってそうだと思いませんか。聞いて分からなくても写真を見たら分かったとか。あるいはビデオを見たらよく分かるということがあります。

昔クッキングブックというのがありましたね。砂糖何グラム、お塩何グラムと書いてあります。それを使って調理をしようと思うのですが、それを加えて煮て、中火で煮て、中火っていったいどれくらいなのか。実は私それがよく分からないということがよくあります。こういう情報が分からない。ところが、絵に描いてあると、鍋にこれくらいあたる火なんだということが分かるということはあるわけです。こういうふうに我々ついつい口頭だけで。

何かもうすでに、何かを持って待っておられる。

坂井:チャレンジし続けますよ。これなんですよ。

中邑:今しつこく自分の車の写真を見せています。

中邑:すばらしいですね、どうも。やっと分かって頂けた。

中邑:今、分かって頂けました。車の写真をあげているんです。

中邑:こういうことがありました。うちの学生たち、実は携帯電話の中に便器の写真を撮っている。変態ですよね。トイレにいって便器をカシャと携帯に撮る。撮っている人、おられますか。携帯の中に便器の写真が入っている。マニアックの方が一人二人おいでになりました。なぜそういうことをしているかというと、こういうことがあります。

普通の小学校の遠足についていった時に、知的障害の子供さんがおられた。遠足から帰る時に先生が、お手洗い行こう、トイレに行こうと言っても、子供、こうしている。いくら言っても、行かないのねと言ってもこうしておられる。それでバスに乗せようとした時に、あーっと思って学生が便器の写真をこうやって見せたら、その子が学生の手を取ってトイレに行った。こういう話です。

非常に言葉によらずに会話をする手段として、写真というのは非常に有効だということです。

坂井:はい、その通りです。携帯電話に色々と入れておくというのはとても大事なことで、分かっていると思って私たちは伝えられるという、こういう事件があったのです。

夏休みの後半に毎日毎日、ヘルパーさんと一緒にプールに行っている人が、ある日プールにずっと行っていて、最初は抵抗していて、途中からどうも毎日プールに行くのは難しい。毎日プールに。9月1日、夏休みが終わって新しく始まったんですね。げた箱の前で寝そべっている。これは行きたくないんだと言うわけなんですよ。お母さんも学校の先生も、どうもわがままな感じがするという感じがしたんです。どう思いますか、皆さん。毎日ぴーちくぴーちくと言われてプールに連れて行かれていたんです。そして27日28日29日30日31日とプールに連れて行かれて、1日、ぴーちくぴーちくと言われてプールの前を通り過ぎようとした。子供はどう思っているかというとプールはないと思っている。その時に、実は携帯電話を使って、プールに行く時には必ずプールの写真、ここに行くからねと伝えておいて、1日に学校の写真を見せて、今日はここだよと伝えたら、子供さん心の準備ができて、学校に行くんだと、僕はそうやって思っています。